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不破哲三氏「選挙協力、勝つためなら何でもやる」
日経新聞 2015年10月25日
日経新聞 2015年10月25日
共産党が来年夏の参院選に向け、安全保障関連法の廃止だけを狙って他の野党と協力する「国民連合政府」構想が注目を集めている。独立独歩の同党が各党に選挙協力を呼びかけているためだ。野党が参院で多数になった1998年に同党が進めた「現実・柔軟路線」の復活とみる向きがある。当時、委員長として党を主導した不破哲三氏に聞いた。
――共産党が参院選で躍進した98年、委員長として野党の連合政権に暫定的に参加する構想を発表しました。
「国会では長年、何をやるにしても『共産党を除く』という大原理が支配していた。それが崩れたのが98年だ。主要な野党だった共産党と民主党、自由党がいろんな面で国会共闘を始めた。6月に内閣不信任案を民主党と自由党、共産党の3党で提出。7月の参院選後に橋本龍太郎首相が退陣して首相指名選挙になったとき、民主党の要請に応じて代表の菅直人さんに投票した。首相指名で他党への投票は初めてで、かなりの大問題になった」
「そして8月6日に外国特派員協会で講演した際、『共産党はいつまでも野党であることに満足するな』という質問が出たので、『野党共闘が進んで衆院解散・総選挙になった場合、野党が共同政権をつくることはあり得る』という趣旨の話をした。当たり前のことを言っただけだ。党の綱領には民主連合政府を実現する前でも、一致点があれば政権をつくる用意があるとしている」
「我々は日米安全保障条約に反対している政党だが、他の野党は安保条約存続論だ。存続論と反対論の政党が連合した場合、この問題は凍結する以外になく、それが我々の方針だとも説明した。何か事態が起こったら、現行の条約や法律に従って行動するという意味だ。ただ98年当時は総選挙で野党が多数になった場合を前提にした提起で、今すぐにという話をしたわけではなかった」
■安保法廃止で任務完了
――今回の国民連合政府構想は、他党との選挙協力まで踏み込んだ点がこれまでの共産党による政権構想との最大の違いです。
「国民連合政府という提言は選挙に勝った場合の構想ではなく、今の政治を打開する現実の展望として提案している点が違う。なぜ違うかというと、1つは戦争反対の国民的な世論や運動が、かつての日本では無いくらいまで発展している。2番目にこれまでの暫定政権などの提案と違って、戦争法反対、立憲主義擁護、民主主義擁護という国民的大義がある。3番目は、野党が団結して選挙で勝とうじゃないか、本当に政府をつくろうじゃないかという点だ。戦争法廃案闘争という日本の政治と国民運動の新しい局面を開いたと思う」
――国民連合政府に対し、野党の中で生活の党の小沢一郎共同代表が前向きです。
「小沢さんは僕とは当選同期で、共闘していた98年の頃は非常に親しかった。今度も志位和夫(委員長)さんとよく話し合って意気投合しているようだ。小沢さんは政権のことになると血が騒ぐ人だ」
――民主党内で保守系議員らには共産党への警戒感が強くあります。
「国民連合政府の任務は戦争法廃止だ。これが終わったら任務完了ということで衆院解散・総選挙をやって、それぞれの党の主張も掲げて、次の政府は新しい選挙の結果に基づいてつくろうじゃないかという極めて割り切った提案だ。ずるずるといつまでもやる政府ではない」
――他党の懸念を踏まえ、綱領のさらなる見直しをするつもりはありますか。
「ない。政党間でお互いの組織のあり方を議論する筋はない」
――国民連合政府は、共産党が「革命政権」の前段階として位置づけてきた民主連合政府と切り離して考えているのですか。
「そうですね。我々の革命の大方針は、段階的発展と多数者革命だ。70年代に『共産党の政権はエスカレーターみたいなもので、一度乗ったらどこまでいくか分からない』という話があったが、そういうことでは政治は成り立たない。我々の立場は、新しい段階に進むときには必ず国民多数の意思で進む。これは大原則です」
――菅義偉官房長官は「選挙目当てだ」と批判しています。
「それはそうですよ。選挙で勝とうと言っているんだから。それを選挙目当てと言うのは、ちょっと批判のルールを知らないですね」
■野党統一候補、地域組織が全力で支援
――参院選では党員・支援者全てを総動員して、野党統一候補を支援するのですか。
「そうですよ。うちの場合には全地域に党組織がありますからね。それぞれ地域組織が全力をあげますよ」
――選挙では人もカネも統一候補に提供しますか。
「選挙協力のやり方はいくらでもある。宣伝もあれば、勝つために必要なことは何でもやる」
――国民連合政府の方針は、いつ決まったのですか。
「最終的には強行採決の翌朝の中央委員会総会だ。しかしいきなり中央委員会に提案するわけではないから、闘争中から次の局面をみんな考えますよね」
――不破氏から志位委員長に提案したのですか。
「いや、うちには常任幹部会があり、三役会議もありますから、そういうところで相談して。だいたいこういうのは、言わず語らずでまとまるものなんですよ」
――選挙協力はするが、政権入りしないという選択肢もあるのですか。
「志位さんは閣内、閣外ということは何も前提にしていないと言っている。政権にはこだわっているが、その内容は幅があるということだ」
――安保関連法の廃止を明言する政権ができるなら、あえて政府に入らないこともあると。
「そういう幅もある」
――日本での社会主義と共産主義の展望は。
「日本は国民、市民が自分の手で政治を変えた経験を持たなかったが、今度の戦争法廃止を主権者の力の行使としてやり遂げたら、日本国民が変わりますよ。社会も変わりますよ。国民にとって都合の悪い社会の仕組みをよりベターな方向に変えることについて、現実性が帯びてくる。そういう点で我々の日本の発展についての展望も新しい力を持ってくると思う」 (聞き手は飯塚遼)
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