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「安倍政権には我慢ならない」と上野千鶴子氏(C)日刊ゲンダイ
社会学者・上野千鶴子氏「国民が動き出した実績と経験大きい」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/167276
2015年10月26日 日刊ゲンダイ
■学生が闘っているのに教師が黙っていていいのか
「学者の言うことを無視していいのでしょうか。違憲の法案を国会で審議すること自体がばかげています」――。「安保法制に反対する学者の会」のメンバーとして、抗議集会でこう叫んでいたのがこの人だ。フェミニズムの先駆者でもある社会学者の上野千鶴子氏は「安倍政権が続けばこの国が沈没するのは確実」と断言した。
――「学者の会」では先頭に立って安保法反対の声を上げていました。
「学者の会」に参加したのは、仕掛け人である佐藤学さんから声を掛けられたのがきっかけです。もともと(安倍政権に対し)我慢がならないとも思っていました。学者が動いたのは、学問をないがしろにされたと感じたことが大きいでしょう。
――「学問をないがしろ」とはどういう意味ですか。
やはり、国会の憲法学者の参考人招致ですね。自分たちが専門家を呼んでおいて、その意見を聞かない。最後に決めるのは司法であって、学問は関係ない、と暴言を言い始めました。改憲賛成派の保守的な憲法学者も含めて蓄積してきた学界の知見を踏みにじった。おかげで立憲主義という言葉が国民の間に定着しました。弁護士会や法曹関係者だけでなく、学問の分野を超えて危機感に火をつけたと言っていいでしょう。
――「SEALDs」など学生にも反対運動が広がりました。
若者には触発されましたね。学生がこれだけ動くのに教師が黙ってていいのかと。しかも、デモの現場で彼らが行うスピーチがすごくいい。例えば、こんなことを言っていました。「戦後70年、まがりなりにも、殺さず、殺されずの平和を保ってきて、憲法9条を維持してこれたのは、これまで闘ってきてくれた先輩たちのおかげだ」と。私は学園闘争が激しかった70年世代。当時の学生は、教師と激突した。その経験を振り返ると、若者と教師が共闘するとは思いもよりませんでした。60年安保当時は世代を超えた共闘がありましたが、それが再現されたような感慨がありました。
――「安倍政権には我慢ならない」と言いましたが、最大の問題はどこにあると思いますか。
何といっても理がまったく通らないことですね。憲法96条の改憲を言い出したとき、憲法学者の小林節さんは「裏口入学」と批判しましたが、それができないとわかると解釈改憲をやってのけた。私は「壊憲記念日」と呼んでいますが、2014年7月14日の集団的自衛権の行使容認の閣議決定で、ルビコン川を渡った。憲法解釈の限界を踏み越え、憲法を壊しました。安倍政権はそれをあからさまにやってのけたのです。
――それでも安保法は強行採決されてしまいました。安倍政権は「ヤレヤレ」と思っているようですが。
国会外の運動がどれだけ盛り上がろうとも、それが国会内の勢力配置を変えることはないので、国会採決は予想されていました。自公政権は昨年12月の総選挙で絶対安定多数と4年間の長期政権を確保し、すぐに安保関連法に取り組んだ。用意周到でしたね。安保関連法の廃案が運動の目標だったとすれば、確かに目標の達成はありませんでした。しかし、今回の運動に敗北感はそれほどないと思います。予期した通りの結果だったからです。それ以上に大きな変化は、国民の多くが「黙ってはいられない」と動き出したという「実績」と「経験」が大きいということ。この経験の蓄積はなくなりません。これが今後、どのような展開をするのかは、(安倍政権の)対抗勢力の求心力にかかってくるでしょう。
■安倍政権の本音は「女性を都合よく使う」
安保法案反対運動は学者と学生が共闘(C)日刊ゲンダイ
――安倍政権は安保法の次に何を狙っていると思いますか。
おそらく次のシナリオは教育改革でしょう。第1次安倍政権では、教育基本法を改正しました。今度は教育委員会を廃止し、教科書の選定権を自治体首長の専権事項にすると思います。そうやって彼(安倍)が思い描くような「国の形」にしていくつもりでしょう。
――国家のために貢献する国民をつくる教育ですね。
安倍首相が考える教育改革とは「右向け右と言われれば黙って従う国民」をつくること。国民教育によって規格品をつくりたいと思っているわけで、それはグローバリゼーションの中で求められる人材とは対極にあります。私自身が教育現場にいたから実感していますが、この先、求められる人材は情報付加価値の生産性の高い人。情報付加価値生産性とは、今あるものと違うものを生み出すことです。これまでの工業立国型の生産性のように、言われたことに丁寧に真面目に取り組み、故障のない製品を作るという生産性とはまったく違う。学問とは答えのない問いを考えることが大事なのです。例えば、SEALDsに参加する学生たちに対して「就活が危うい」なんて批判が出ましたが、あのくらい自分のアタマで考える学生を積極的に採用するつもりがなければ、グローバル企業とは言えませんよ。
――安倍政権は「女性活躍」「1億総活躍」とも言っています。
言っていることとやっていることが裏腹ですね。女性には子供も産んでほしい、働いてもほしい。ただし、国や企業に都合のよい働き方で、という考え方です。女性の非正規労働者は今や6割近くに達しています。そんな中で、労働者派遣法を改悪して「生涯派遣」をどんどんつくり出している。男並みに使える女性は使うが、使えない女性は使い捨て。これが安倍政権の本音ですよ。少子化対策もウソっぱち。諸外国では出生率への婚外子寄与率が高くなっています。日本でも離別や非婚のシングルマザーが増えていますが、私は国家がシングルマザーを支援する制度をつくらない限り、少子化対策は本気じゃないと考えています。子供が生まれても貧困の連鎖が続き、その子供が次世代の社会を支える人材に育たない可能性があるからです。子供の貧困は親が貧困だからで、特に非正規労働しかないシングルマザーの貧困は深刻です。
――確かに貧困格差は大きな社会問題になってきています。
養育費の強制徴収制度をつくればいいのです。離別者なら別れた夫から、非婚なら国や社会が支援すればいい。北欧では子供を認知した男性から、たとえ結婚しなくても、その子供の養育費を18歳になるまで国が強制徴収する制度があります。男性が払わない場合は国がまず代理で負担し、その分を男性の負債にする仕組みです。逃れようと思ったら、無収入になるか、国外に脱出するしかない。そういう意味では、日本は男性にほんとうに甘い社会ですね。
――安倍政権では国民生活が豊かになるとは思えませんね。
安倍首相が目指しているのは対米自立と国連安保理入りでしょう。そのために国民の支持を得ようと得意分野でない経済政策をアピールしているわけですが、やったことは「3本の矢」というバクチです。短期的には株価が上昇し、円安基調になって輸出企業の利益は増えましたが、長期的にみれば円安というのは国富に対する国際評価の下落です。そのツケは借金の増加と株の暴落、物価上昇と消費増税となってこれから返ってくる。全部、国民生活にボディーブローをくらわすものばかりです。全身にじっくり回る毒薬みたいなもので、そのうち、再起不能になるかもしれない。こんな危ない船頭じゃ困ります。ドロ舟が沈没するときに、国民も無理心中させられたらたまりませんよ。
▽うえの・ちづこ 1948年、富山県生まれ。京大大学院社会学博士課程修了。95年から2011年3月まで、東大大学院人文社会系研究科教授。11年4月から、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。「上野千鶴子の選憲論」(集英社新書)など著書多数。
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