http://www.asyura2.com/15/senkyo195/msg/333.html
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国際的発言力に乏しい国がユネスコの決定で理不尽な扱いを受けたようなときに、日本がユネスコを非難したり脅かしたりするのはまだしも、南京事件が“世界の記憶”(世界記憶遺産)に認定されたことをネタに安倍政権のスポークスマン(菅官房長官)が脅迫的言辞を吐くのはあまりに恥ずかしいことだ。
日本政府は、30万人という犠牲者の数はともかく、1937年12月に日本軍が南京を占領する過程で捕虜や民間人に対する殺害があったことを認めている。
むろん、日本軍だけがそのような行為を行ったわけではなく、最近でも米軍がイラクで見せたように、戦争につきものというか、より言えば、外国に踏み込んで軍事活動を行う軍隊が犯しやすい戦争犯罪である。(敵の大海のなかに身を置いている気持ちになり、疑心暗鬼と危機意識が生じやすい)
日本政府(安倍政権)は、ユネスコを責める前に、自分を責めなければならない。
発生からすでに80年近くが経過していることから関係者や資料もほとんどないだろうが、極東軍事裁判で取り上げられた虐殺事件でもあり、政府は、戦後ただちにきちんと事実を調査する責務があったからである。
米国などに保存されている資料や中国側の資料と日本独自の調査を突き合わせて検証できる条件さえないまま、民間の研究家の見解が入り乱れているというのが南京事件をめぐる状況である。
それはともかく、敗戦後占領状態に置かれた日本が独立する条件になったサンフランシスコ講和条約の第十一条では、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする(以下略)」と規定されている。
この講和条約に署名し批准したことで日本は“独立”を果たした。
そして、南京事件は、連合国(UN)が設置した極東軍事裁判で、その犠牲者が20万人以上と“認定”されている。
犠牲者が30万人とする中国側主張と20万人以上とする極東軍事裁判の認定では10万人近くの開きがあるといっても、広島と長崎の原爆犠牲者の数も確定しないのだから、量的な違いでしかない。
言い換えれば、ユネスコの政治的中立性や公平性を非難する根拠や分担金を支払わない可能性を示唆するような問題ではない。(ユネスコ自体がUN(連合国)の機関であり、極東軍事裁判で20万人以上の犠牲者があったと認定されているのだから、中国の申請を認定してもおかしくはない)
中国側の主張やユネスコを批判するのなら、その前に、UNや米国などに申し入れ、極東軍事裁判で南京事件の再審を実現するのがスジであろう。(そんな愚かなことができるわけもないが..)
愛国的右派的心情が増大している日本では、統治をうまく行うために愛国的右派的心情に応える必要があると安倍政権は判断しているのかもしれないが、中国との関係改善のために裏取引を行うというねじれた動きを見せている。
第二次安倍政権が成立して1年3か月後の14年3月に行われた教科書検定(小学生社会)で、政府(文科省)は日本軍の南京占領過程で多数の殺害事件が起きたことを認めている。
「安倍政権は3月に教科書検定という裏口を使い「中国の領有権主張」と「南京虐殺」を認定:靖国不参拝も5月高村副総裁訪中で伝達」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/319.html
より、引用する。
「[申請]
「日本軍が、占領したナンキンで、ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばったと外国に報じられ、非難を受けました。(ナンキン事件)」
[修正]
「日本軍が、占領したナンキンで、ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばいました(ナンキン事件)この事件は、外国に報じられ、非難を受けました。」
どちらの表現が中国側の意に沿うものであるかは言うまでもないだろう。
[申請]の表現はあくまで“外国の報道によれば”というものであるが、[修正]の表現は、日本政府が、主体的に、多くの人々の生命を奪ったことを認めている。外国の報道はそれを伝えたという位置づけになっている。」
日本をいつまでも「先の戦争問題」に縛り付けているのは、中国や韓国ではなく、日本政府自身なのである。
安倍晋三氏のように「戦後レジームからの脱却」や「歴史認識の見直し」を金看板として掲げる政治家が内閣総理大臣になれば、とてつもない犠牲を強いられたと考えている周辺諸国が“東京裁判的歴史認識”の再確認に動くのは当然とも言える。
菅官房長官も、政権に対する強固な支持者に媚びを売るためにあのような発言をしたのだろうが、つまらない遠吠えはほどほどにしたほうがいい。
どのみち、1ヶ月も経たないうちにそんな話もあったっけということになるのだが...
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2015年10月22日 (木) 午前0:00〜[NHK総合]
時論公論 「政治問題化するユネスコ遺産」
出石 直 解説委員 / 名越 章浩 解説委員
旧日本軍が多くの中国人を殺害したなどとされる「南京事件」に関する資料が、ユネスコ=国連教育科学文化機関の「世界記憶遺産」に登録され、波紋が広がっています。
日本政府は、公平性や透明性が確保されていないとして、ユネスコへの分担金などの支払い停止も含めて対応を検討しています。ユネスコの遺産事業については、明治日本の産業革命遺産をめぐって韓国が一時反対し、両国の外交問題にまで発展したことが記憶に新しいところです。
きょうは外交・国際問題担当の出石委員とともにユネスコの遺産事業の課題について考えます。
【南京事件の登録】
(名越)
登録された資料には、旧日本軍が南京を占領した当時の様子を、旧日本軍の兵士が撮影したという写真や、中国人女性がつづった日記のほか、戦後の、いわゆる東京裁判や蒋介石率いる国民党政府が旧日本軍関係者を裁いた南京軍事法廷に関する資料などが含まれています。
この南京軍事法廷に関する資料は、犠牲者の数について30万人以上だと記しています。
犠牲者の数など議論が分かれている問題であるにも関わらず、なぜ今回、記憶遺産に登録されたのでしょうか。
出石さん、日本政府は登録にずっと反対していましたね。
【後手に回った日本】
(出石)
去年6月に中国が申請を行った直後から日本政府は「記録の信ぴょう性に疑いがあり一方的な主張に基づくものだ」として、中国政府やユネスコに対して様々なルートで抗議し申請を取り下げるよう求めてきました。しかし、今回のような議論の分かれる事象が記憶遺産に申請されること自体そもそも想定されておらず、虚を突かれた感は否めません。中国側は専門家を動員してすでに外堀を固めており、申請を覆すことはできませんでした。
【審査制度にも問題】
(名越)
記憶遺産の審査の仕組みにも問題があったと思います。
記憶遺産は、ユネスコが取り組んでいる「世界遺産」「無形文化遺産」とならぶ、「遺産事業」の1つです。
富士山や法隆寺など、建造物や自然などを対象に保護するのが世界遺産、和食や能楽など形のない文化を対象とするのが無形文化遺産。
これに対し、文書や、楽譜、絵画などの記録史料をデジタル化してアーカイブするのが「世界記憶遺産」です。
この3つは「3大遺産事業」とも呼ばれますが、記憶遺産の場合は、条約に基づいて締約国に保護の義務が課せられている世界遺産や無形文化遺産とは違って、ユネスコのひとつの事業に過ぎず、審査の手続きも厳格ではありません。
国際諮問委員会が申請書類を審査し、登録へのGOサインを出せば、ユネスコの事務局長が追認するだけです。
しかも諮問委員会のメンバーには記録保存の専門家はいても近現代史の専門家はいません。
公平な審査ができる体制になっていなかったわけです。
【日中対立】
(出石)
その審査の過程も不透明でした。審査は非公開、日本側は申請された資料を見ることができず、反論する機会も与えられませんでした。
菅官房長官は「記憶遺産が政治的に利用されている。分担金の支払い停止を含めて見直しを検討していきたい」と、今回の決定に強く反発しています。
これに対して、中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は「ユネスコの活動を妨害し脅す発言だ」と日本を非難しています。
【対抗措置の是非】
(名越)
日本はこれまでユネスコの活動に大きな貢献をしてきましたよね。
(出石)
こちらはユネスコの分担金を国別に示したものです。日本は11%を負担しています。アメリカがパレスチナ問題を理由に支払いを停止しているため、実際には日本が第一位です。
それだけにユネスコへの分担金の支払い停止をめぐっては慎重な意見も少なくありません。
10年間にわたってユネスコのトップを務めた松浦晃一郎前事務局長は、
「分担金を停止するなどの発言は加盟国からの反発を招きかねず逆効果だ。透明性を確保するための制度改革を急ぐべきだ」と指摘しています。
中国と韓国は、今回は登録が認められなかった慰安婦関係の資料を再申請して2年後の登録を目指しています。南京事件と同様、議論の分かれる事案だけに、まずは審査過程の透明化を目指して加盟各国の賛同を得ることを急ぐべきではないでしょうか。
【政治問題化するユネスコ遺産】
(名越)
審査が厳格でない記憶遺産が抱えてきた課題が、ここにきて一気に露呈した格好ですが、
出石さん、ユネスコの遺産事業をめぐっては、記憶遺産に限らず、このところ、政治問題化することが目立っていますね。
(出石)
その通りです。
南京事件と同時に記憶遺産に登録された「シベリア抑留資料」をめぐっては、ロシア政府が「ユネスコに政府問題を持ち込んだ」として登録を申請した日本を批判しています。
ことし7月に世界遺産に登録された明治日本の産業革命遺産をめぐっては、韓国政府が「朝鮮半島出身者が強制的に徴用された場所が含まれている」として登録に反対し、両国の外交問題に発展しました。今も大きなしこりとなっています。
(名越)
こうした問題の背景には、ユネスコの世界遺産や記憶遺産などへの登録に向けた競争があります。
世界遺産の事業が始まった40年以上前は、いわば地味な存在でしたが、次第に注目が集まり、経済効果も大きくなって、登録競争が過熱していきました。
注目度が増せば増すほど、それを利用して、特定の国を批判したり、外交交渉を有利にしたりする道具にするケースも出てきました。
「政治間題になると、本来の文化的、学術的な議論は関係なくなり、相手が反対するからそれに対抗する。そのために、ユネスコ内でもロビー活動が不可欠となり、公平な審査を妨げるようになっている」と指摘する関係者もいます。
(出石)
制度改革に向けた動きはすでに始まっています。
ユネスコ代表部の佐藤大使は、現在、パリのユネスコ本部で行われている執行委員会で、審査のプロセスを加盟国に周知するなど透明性を確保するための制度改革が必要だと提言しました。
文化と政治、これはとても難しい問題です。
政治的対立を呼ぶ可能性があるものについては登録を控えるべきとの意見もあります。
ただこれでは、原爆ドームやアウシュビッツ収容所跡のような世界遺産は、今後は登録されなくなってしまいます。政治的な意味合いがあるかどうかではなく、政治的に悪用されないようにすることが重要だと思います。
具体的な例を2つ挙げます。
2013年に記憶遺産に登録された慶長遣欧使節関係資料は、日本とスペインとの共同申請でした。
江戸時代に日本と朝鮮との交流に貢献した朝鮮通信使を日本と韓国が共同で記憶遺産に申請しようという動きも進められています。
政治対立を煽るのではなく、相互理解や友好親善に資するのであれば、ユネスコ遺産の政治利用も許されるのではないでしょうか。
(名越)
その通りだと思います。
そのためには、ユネスコ憲章の原点に立ち戻るべきではないでしょうか。
戦後、宣言されたユネスコ憲章の前文には、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とあります。
政治的な対立をなくすためにも、心の中に平和のとりでを築く。そのためには、文化をはじめ、教育や科学が必要だという理念でユネスコは生まれたはずです。
その原点に立ち戻る必要があることを、来月3日からのユネスコ総会で、日本が先頭に立って、世界に呼びかけてほしいと思います。
(出石 直 解説委員/名越章浩 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/230015.html
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