http://www.asyura2.com/15/senkyo195/msg/301.html
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「欧州の失敗に目をつぶる「軽減税率」論のうさんくささ: 高所得者と特定企業を利する税制をわざわざ導入する狙いは何か:岩本沙弓」
http://www.asyura2.com/15/senkyo195/msg/232.html
でいただいたコメントへの返信です。
【引用】
「4. 天笑 2015年10月21日 00:15:18 : EbiczIh.saKP6 : hCBRXhZRbs
あっしら様
軽減税率に反対するならば、企業の輸出、消費税の輸出益税を問題にすべし。
国外に搬出の時点で消費されている。
非居住者である外国人旅行者などが特典を受ける消費税免税も事業用又は販売用として購入されることが明らかなものについては免税の対象になりません。
それは日本の海外旅行者が酒税、たばこ税等の免税と同様の特典と考えられます。
税率が何%であっても販売価格が変化しない。税率アップが消費の落ち込みを招いてきた過去の現実を無視する暴論です。」
【コメント】
まず、「税率が何%であっても販売価格が変化しない。税率アップが消費の落ち込みを招いてきた過去の現実を無視する暴論です」というご指摘についてレスポンスします。
天笑さんが指摘されるように、消費税の税率アップが消費の落ち込みを招いたのは事実です。そして、消費税の負担が増加した事業者は、その負担を取引先に転嫁したいと考えるので販売価格を引き上げようとします。
しかし、消費税増税で増えた負担の転嫁が思うようにいく保証はありません。また、消費税増税による消費の落ち込みが販売価格のせいかどうかもきちんと検証する必要があります。
それはともかく、「税率が何%であっても販売価格が変化しない」といった説明はしていません。
あくまでも、「「軽減(複数)税率」制度は、至る所で完全自由競争になっている状況であれば値下げ余白を生むものではあるが(税制が利益を増やすから)、一般的には、総額価格(消費税込み)の高低に影響を与えるものではない」という説明です。
売上段階で「軽減税率」の適用を受けると消費税の負担が軽くなりますから、「値下げ余白を生む」わけですが、商売で儲ける基本は、できるだけ安く仕入れできるだけ高く売ることですから、総額価格を下げなくても売れるなら、内税方式にするか、外税方式でも本体価格を調整するなどして総額で価格を下げないようにします。
自由主義経済では、本体価格850円+消費税10%=935円で売っていた商品を、本体価格890円+消費税軽減税率8%=961円で売ることができます。また、内税方式で価格表示を行い980円で売ることもできます。
天笑さんは、「税率アップが消費の落ち込みを招いてきた過去の現実を無視する暴論」と言われていますが、日本の「デフレ不況」は、97年の消費税増税(3%→5%)を引き金として始まっています。
消費者物価指数は消費税込みの価格で計測します。デフレですから、消費税を増税しても、消費者物価は上昇しなかったことを意味します。
たしかに、消費税増税が実施された97年前半の消費者物価指数は上昇しましたが、以降は、逆に消費者物価が下がっていきました。
デフレが続きましたから、99年の消費者物価指数は間違いなくすでに、消費税が増税される前の96年水準よりも物価は下がっています。
消費税の税率アップが消費の落ち込みを招いてきたことは事実ですが、その原因が価格の上昇にあるとは言えません。
消費税増税が消費の落ち込みやデフレにつながった要因をいくつかあげます。
○寡占状態で価格支配力がある自動車や家電などグローバル企業が製造販売している商品は、消費税増税分がまるまる価格に転嫁できる可能性が高いため、日本の購買力総額が同じだと、衣料や食品などほかの商品が売れにくくなり、価格引き下げ圧力が高まる。
○消費税はその名称とは違い内実は付加価値に課される税である。ということは、付加価値から充当される給与や債務履行(利払い及び元本返済)の支払いに圧迫がかかることを意味する。余裕をもって経営している事業者はまだしも、ぎりぎりで経営している事業者は、給与(ボーナス)を引き下げなければ破たんすることになる。よりひどい場合は債務不履行に陥る。(これが97年秋に拓銀などがおかしくなった基本的理由)
○経営が厳しくなる事業者が増加すると、サラリーマンだけでなく企業も購買力を減退させるので、世の中全体が緊縮(消費不振)に向かうことになる。
消費税の税率アップで「輸出免税」を通じて得る利益が増大したグローバル企業が、国内向けでも価格支配力を駆使して価格(総額)を引き上げたため、他の事業者は、思うように価格引き上げや販売数量の維持ができなかったわけです。
ここから、天笑さんの「軽減税率に反対するならば、企業の輸出、消費税の輸出益税を問題にすべし」のレスポンスに移ります。
輸出益税すなわち「輸出免税」は、軽減税率制度に即して言うと、品目ではなく輸出という取引形態に対しゼロ%の軽減税率を適用していることになります。
「輸出免税」は、消費税制度を通じて輸出事業者に利益を供与するものです。そして、そうする目的は、輸出企業の国際競争力アップや経営基盤強化です。
14年4月からの消費税税率アップ実施をめぐって官邸や財務省の内部で判断が割れていたと推測できる13年9月の投稿で書いたことですが、まず、1ドル=110円を超える円安になったことで消費税増税の必要性はなくなったと指摘し、それでも、消費税増税が、グローバル企業のたんなる利益になるのではなく日本経済全体の成長や国民生活の改善につながるなら、詐欺であり不平等の極みである消費税の税率アップも受け容れるから説明してほしいと財務省の官僚たちに求めました。
レスポンスはありませんでしたが、14年4月の消費税増税は、日本経済全体の成長や国民生活の改善につながるどころか、円安基調への転換と財政出動でせっかく上向いていた日本経済を再び低迷に押し戻しました。
財務省(安倍首相)が最終的に消費税増税に踏み切ったのは、TPP参加に伴う関税の引き下げに対抗するためだったと推測しています。
(消費税は、財政や社会保障のために導入されたり増税されたりしている税制ではありません。消費税制度は、ひとえに輸出企業を支援する経済政策なのです。消費税は輸入関税の代替でもあり、TPPで関税が撤廃されたといっても消費税相当の“関税”は残ることになります)
フランスが付加価値税(=消費税)を構想したときは輸出促進策としての効果(それを通じて国民経済の成長への寄与)がそれなりにあったと思いますが、現在の日本では、消費税がその機能を果たすことはほとんどないと思っています。
せいぜい、輸出企業が下請けに行う価格引き下げ要求を緩和したり、FTAなどで引き下げられる関税の代替になる程度の効果でしょう。
効果がほとんどないと考える理由は、
○外国為替が固定相場制ではなく変動相場制であること。
固定相場制であれば、消費税の税率を引き上げることは輸出企業にとって通貨の切り下げと同等の役割を果たしますが、日本の円高・円安の変化の度合いを考えればわかるように、変動相場制では外国為替相場の変動が数十%の範囲で動くため消費税の税率は帳消しになります。
それだけでなく、より安い輸出価格に変更して輸出を増加させていくと、購買力平価理論により、外国為替相場が高くなり元の木阿弥になります。(付加価値税の通貨切り下げ機能が働かないことを意味)
○グローバル企業は、需要地近くに生産拠点を移しており、消費税で国際競争力を増強しようとしても、それが輸出増大にはつながらず、グローバル企業が手にする利益が増加するだけで終わってしまいます。国際水平分業が深化した現在では、消費税制度でグローバル(輸出)企業を支援しても、国民経済全体や国民生活の向上にはつながりにくいのです。
なお、「輸出免税」制度の問題点とそれに対する批判は2002年以降ずっと続けています。
※ いくつかの参照投稿
「「軽減税率制度」は、低所得者向け対策ではなく、「輸出戻し税」制度と同じ特定企業に利益を供与する仕組み」
http://www.asyura2.com/14/senkyo161/msg/684.html
「軽減税率で公明幹事長 品目や税率、年内決定を:低所得者対策はウソ、「輸出戻し税」と同じ消費税利得企業創設政策」
http://www.asyura2.com/13/senkyo155/msg/503.html
最後に、天笑さんに伺いたいことがあります。
「非居住者である外国人旅行者などが特典を受ける消費税免税も事業用又は販売用として購入されることが明らかなものについては免税の対象になりません」という規定はどこにあるのでしょうか。
空港の免税品店のみならず百貨店なども行っている輸出物品販売に伴う消費税の免税措置は、トヨタやパナソニックの輸出と同じですから、購入者が本国に持ち帰ったときの制約はあるとしても、日本での販売でそういう制約はないはずです。
本来、日本国内で使うものは免税の対象にならないものですが、訪日外国人優遇策が進み、買ってすぐ使うことができる化粧品なども免税の対象になっています。
天笑さんは、「国外に搬出の時点で消費されている」とも説明されていますが、本来消費税は消費に課される税ではなく稼いだ付加価値に課される税ですから、どの時点で消費されたかという問題はあまり関係がないと思います。
また、「それは日本の海外旅行者が酒税、たばこ税等の免税と同様の特典と考えられます」と説明されていますが、消費税は、酒税やたばこ税等のような間接税ではなく、所得税や法人税と同じ直接税です。(財務省は、消費税の導入や転嫁をスムーズに進めるため、間接税だとウソの説明をしていますが)
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