2. 2015年10月21日 08:01:06
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米国は日本に戦争に加わってほしいとは思っていない〜元米国防総省高官が語る「日本に期待すること」 2015.10.21(水) 古森 義久 安保法案が参院本会議で可決、成立 2015年9月19日、参議院本会議場で安全保障関連法案が可決された。(資料写真)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News〕 平和安保法制関連法は国会での長い審議の末、成立し、日本の集団的自衛権も一部を行使することが可能になった。 だが、反対派はこの法律が日本を自国の安全保障とは関係のない米国の戦争に巻き込むことになると主張する。 実際のところ、日米同盟の運用にはどんな影響を与えるのか? 米国政府で長年、同盟諸国との集団防衛や多国間の安全保障を担当してきた元国防総省高官に尋ねてみた。 同高官は、日本の安全とは直接的な関係がない米国の軍事行動に、日本が意思に反して参加させられる可能性は現実にはないという。そして、今回の安保関連法が日米同盟の強化に大きく役立つと明言した。 元米国防総省高官ブルース・ワインロッド氏はレーガン政権でNATO政策担当の国防次官補代理前を務め、前ブッシュ政権では国防総省北大西洋条約機構(NATO)駐在首席代表を務めた。その間、多国間同盟のNATOの機能、特に集団的自衛権の発動に関する戦略を扱った。同氏は民間の「ジャパン・ソサエティー」の特別研究員として半年ほど日本に滞在し、日米同盟について研究したこともある。 以下はワインロッド氏との一問一答である。 米国は超党派で歓迎している ――日本の平和安保法制関連法案が国会で可決され、実際の法律となったことを、米国の立場からどう見ますか。 ブルース・ワインロッド氏(以下、敬称略) この法律は、米国と共同防衛することに関する日本のより大きな責任と意欲を示しており、米国では超党派で歓迎されています。 ブルース・ワインロッド氏 米国は本来、日本が武力攻撃された際に日本の防衛努力を支援することを誓約しています。今回の新法の大きな目的は日本が防衛で米国との協力を広げるわけですから、米国側の『日本防衛への堅固な誓約』を強める効果を持つでしょう。さらに国際安全保障への寄与という意味もあります。 ――この法律が国際安全保障に寄与するということですか。 ワインロッド はい。近年、東アジアの地域的安全保障への脅威が深刻となっています。最も直接的なチャレンジは中国から発せられています。中国は南シナ海、東シナ海の広大な海域を制圧する権利を主張し、軍事費を大幅に増やして軍事能力を強化しています。 北朝鮮の脅威も重大です。多数の弾道ミサイル、そして核兵器も事実上すでに保有しています。新法の有無にかかわらず、北朝鮮は日本にとって現実の脅威であるわけです。 新法は日本にとって、この種の脅威に対処するうえで立場を同じくするアジア、太平洋の他の民主主義国家、例えばインドやオーストラリア、さらには韓国、フィリピンなどとの地域的な安保協力を可能にするでしょう。 有志連合での地域的な安保協力ができる。多国間的な地域安全保障協力への参加も可能になる。もちろん日本自身がそういう選択肢を選べば、ということですが。 歴史的に見ても、拡張主義をとったり、あるいは好戦的な国家というのは、利害がぶつかる相手が弱いとき、あるいは孤立しているときに軍事行動をとりがちです。日本が他の民主主義諸国と安保協力を強めれば、潜在敵国の軍事行動をそれだけ抑止することになります。 集団的自衛権の行使容認は自国の防衛にも役立つ ――今回の安保法制関連法は、日本の集団的自衛権の行使を容認することで、国連や多国籍の平和維持活動への参加も容易にするはずです。しかし、日本国内の議論ではあまり話題になりませんでした。 ワインロッド 日本は1990年代前半の第1次湾岸戦争の際、多国籍軍を支援して機雷除去の掃海活動を行いました。アフガニスタンでテロ勢力と戦う多国籍軍の艦艇に対しては、インド洋で給油支援をしました。さらにアフリカ沖では、米国、インド、オーストラリアなどとともに海賊を防ぐ活動にも加わりました。 日本はすでに長年にわたり、カンボジア、イラク、ハイチ、南スーダン、ゴラン高原などでも国際平和維持活動に参加しています。 その際は集団的自衛権の行使禁止のために現地で他国軍と協力することが難しかったのですが、今後はその種の国際的協力が円滑に行えるようになるでしょう。この点は日本側でも認識しておくべきです。 ――集団的自衛権の行使容認は、日本の自国防衛のために具体的にどう役立つのでしょうか。 ワインロッド まず、米国との共同ミサイル防衛を大幅に強化することができるでしょう。米国以外の民主主義国家と安保協力を深めることも日本の安全に寄与します。民主主義国家同士があまり戦争をしないことは歴史的に証明されています。 現在、アジア・太平洋地域では、日本を含む民主主義諸国への軍事的脅威が高まっています。その状況のなかで、今こそ日本が安保面での国際的な貢献を増やす時期であり、その貢献が日本自体の防衛にもつながります。 日本は米国の戦争に巻き込まれるのか? ――日本国内では、今回の法律で日本の防衛政策ががらりと変わり、対外的にも打って出るようになると予測する向きもありますが。 ワインロッド 今回の法律が施行されても、日本の従来の安保政策が過激に変わることを示す要素は見出すことができません。新法によって拡大できる防衛努力も、基本的には専守防衛の範囲でしょう。 集団的自衛権というのは国連憲章の第51条で明確に認められた、どの国も保持して行使のできる権利です。日本は成熟した民主主義国家として、その権利を慎重に自国の防衛のために使うということであって、他の国への軍事侵略を始めるようになるとは考えられません。 ――それでも日本国内には、安保法制法の成立によって「日本が自国の安全に関係のない米国の戦争に巻き込まれる」という主張が一部に根強く存在します。その種の主張をどう考えますか。 ワインロッド 米国の軍事行動は全世界的です。軍事行動の対象地域を主眼に、米軍主体の態勢を組むため、その地域に直接関わりのない国の軍事支援を求める必要はありません。例えばバルカン半島での紛争に日本の軍事支援を要請する理由はないのです。 もし米国が日本に軍事的支援を要請しても、今回の日本の新法では、日本の安全保障利害を左右する、あるいは日本自体の存立に関わる事例でなければ、日本は何もできないことが規定されています。 日本は日本独自の判断で米国からの要請を拒むことができるはずです。実際に米国のその種の要請を同盟国が断ることは頻繁にあります。 米国が日本に期待すること ――米国が、日本に直接関わりのない紛争や戦争に日本の支援を求める可能性はあるのでしょうか。 ワインロッド 米国には、遠隔地の紛争で日本に米軍への支援をしてほしいというような期待はまったくありません。 ただしこれまで、日本の防衛に直接的に寄与する米国側の安保努力、防衛努力に対しては、日本の領土や領海を少し離れた範囲までは日本に支援してほしいという期待はずっとありました。しかし、日本の国家安全保障が影響を受ける状況下でも、日本は集団的自衛権の禁止を理由に米国の防衛努力に協力をしませんでした。 その状態がこのまま続けば、米国の国民や議会から、米国がなぜ日本防衛のためにこれほどの軍事関連資産を投入し続けるのか、米国の青年男女がなぜ日本のために生命を犠牲にする危険を冒すのか、という疑問が必ずや投げつけられることになったでしょう。 ――日本が集団的自衛権の行使をいつまでも禁止していると、米国からの日米同盟への支援を減らしてしまう危険がある、ということでしょうか。 ワインロッド そのとおりです。もし日本がいつまでも集団的自衛権の行使容認を拒むならば、日米同盟の基盤はやがて確実に深刻な浸食の危機に瀕することになったでしょう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45039
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