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日本に勝ってから一度も戦争に勝てない「軍事大国」アメリカ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakayoshitsugu/20151019-00050600/
2015年10月19日 0時53分配信 田中良紹 | ジャーナリスト
オバマ大統領は15日、来年末までにアフガニスタンから米軍を完全撤退させる計画を見直し、5500人規模の兵力を再来年以降も残留させる方針を発表した。
12年間続いたベトナム戦争でアメリカは「泥沼に陥り」、建国以来初めての敗北を喫したが、2001年から始まったアフガン戦争は既にベトナム戦争を超えて史上最も長い戦争になっている。しかも戦争を終結させる道筋は見えず「どこまで続くぬかるみぞ」の状態にある。
安倍政権は世界最強の軍事力を誇るアメリカに守ってもらう事が日本防衛の柱だと言うが、アメリカは太平洋戦争で日本に勝利して以来、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争といずれの戦争にも勝利していない。世界最強の軍事力と戦争に勝つこととはイコールではないのである。
ベトナム戦争はアメリカ社会に根本的な変革をもたらした。従軍したのは徴兵された普通の若者で、「反共」を正義と信じてベトナムに赴くが、そこで民衆に支持されない南ベトナム政府の実態を知る。反共は正義なのか。彼らは戦争の大義に疑問を抱き「反共イデオロギー」より「デモクラシー」の重要さに目が向き、それは国内の反戦運動にも反映された。
そして敗戦はアメリカに「政治改革」を促す。ペンタゴンやCIAの秘密主義は批判され、政治プロセスの「透明化」が求められ、情報公開法や資産公開法が成立し、議会の情報調査力を充実する事で政府の情報に頼らない体制も作られた。
日本では田中角栄元総理の金権体質だけに国民の目が向けられたが、アメリカの軍需産業と世界の反共人脈との癒着を示すロッキード事件が暴露されたのは敗戦直後である。アイゼンハワー大統領が退任演説で警告した「軍産複合体」の政治支配に厳しい目が向けられるようになったのもその頃だ。
ところがその流れを受けたカーター政権が、イランの米国大使館人質事件で有効な対応が出来ず、アメリカ国民の意識に再び揺り戻しが起こる。ソ連を「悪の帝国」と呼ぶレーガン大統領が登場し、アメリカに「反共イデオロギー」が復活した。ところが軍事費の膨張で財政と貿易の「双子の赤字」が深刻になると、平和憲法を盾に「安保タダ乗り」で経済を成長させた日本への反発が強まり、日米経済戦争が勃発した。
レーガン時代の赤字を消したのは湾岸戦争である。湾岸戦争は国連主導の多国籍軍がクウェートに侵攻したイラクを撤退させた戦争で、アメリカが中心ではあるがアメリカの戦争ではない。これに日本は135億ドルを拠出した。国際社会からは総額540億ドルの支援金が集まり、その大部分がアメリカの懐に入る。しかしこの戦争に使用された武器弾薬はすでに予算で消化されており、実際に使用された経費は100億ドル以下と言われる。アメリカは戦争で赤字を消すことに成功した。
この戦争で日本が人的貢献をしなかった事に国際社会から厳しい目が向けられていると言われるが、それはアメリカが都合よく作り上げたまやかしである。アメリカは本音では大変に評価していた。しかし経済戦争で煮え湯を飲まされた日本には一物ある。それが「ショウ・ザ・フラッグ」とか「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」という一種の脅しを言わせ、日本はそれを本気にしてそれがトラウマとなり、アメリカの言うまま安倍政権が集団的自衛権行使容認にまで突き進むことになった。
ソ連が崩壊して冷戦が終わると、クリントン大統領はアメリカ経済の立て直しに取り組み、ITと金融で世界経済の覇権を目指す。アメリカに脅威を感じさせた日本経済を無視して韓国や中国との経済連携に力を入れ、中国との戦略的パートナーシップを推進する戦略である。それが21世紀に中国を経済大国にした。
また唯一の超大国となったアメリカは「デモクラシー」を看板にアメリカ的価値観を世界に広めて一極支配する事を考えた。これに最も反発したのがイスラム社会である。過激派組織アルカイダは9・11同時多発テロを引き起こし、ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を宣言して報復戦争に出た。アメリカはNATOなど有志連合と共に犯人を匿った理由でアフガニスタンを空爆し、タリバン政権を転覆させた。
ブッシュ政権は次いでイラクを攻撃しサダム・フセイン政権を崩壊させる。しかしそれが中東の力のバランスを破壊し、後に「イスラム国」という超過激派組織を誕生させ、中東情勢を終わりの見えない混乱に突入させる。軍事的にも財政的にも成算のない戦争にアメリカ国民はうんざりし、戦争の終結を求めてオバマ大統領を選出し、泥沼からの脱出を託した。
オバマは財政負担を減らすため軍を完全撤退させる事にするが、その代替としてCIAなどの諜報機関を使い、テロ組織の幹部を暗殺する路線に踏み切る。通信傍受を基に無人機や特殊部隊が標的を殺害するのである。それによってアメリカはアルカイダのウサマ・ビン・ラディンの殺害に成功するが、ほとんどの場合は無関係の民間人が被害を受け、反米感情を高めるだけだと批判される。
そうした時に元CIAのスノーデン容疑者が諜報活動の実態を暴露してロシアに亡命した。それは軍ではなく諜報機関に頼ってきたオバマ政権に致命的な打撃を与え、スノーデン容疑者を匿ったロシアとオバマ政権との対立も決定的になる。
一方でオバマは「リバランス」政策により中東からアジアに外交の重点を移そうとした。ところがシリアの内戦にロシアが軍事的関与を強め始めた事でアメリカは中東から引くに引けない状態である。さらにイスラエル、イラン、サウジアラビアなどの動きも考えると中東情勢はますます複雑化しオバマの思惑通りにならない。
そもそもオバマの「リバランス」は、アメリカが経済大国にした中国が軍事大国化するのを抑える目的を持つものだが、中東からも足が抜けなければ、アメリカの戦線は拡大こそすれ縮小は極めて困難になる。戦争の終結を託して選んだ大統領によってアメリカはますます戦争から引くことの出来ない泥沼に陥る。
考えられるのはアメリカが他国に肩代わりを担わせる道である。すると肩代わりに道を拓いたばかりの日本の安倍政権という従順な羊が目に映る。オバマ政権が何を日本に求めて来るか。また次期大統領候補がこの泥沼をどう捉え、どのような軍事戦略を描こうとするか。あるいはアメリカにベトナム戦争の時のような「名誉ある撤退」の戦略が生まれる可能性はないか。
我々は安保法案の乱暴極まりない成立過程を見せられたばかりだが、アメリカの動きに目を見開き、日本の進むべき道を考える必要がある。オバマのアフガン撤退断念発表の直前には米軍が「国境なき医師団」の病院をなぜか誤爆し、それが完全撤退を断念させるきっかけともなった。戦争を続けさせたい勢力は内側にいるのかもしれない。それも含めて考えてみる必要がある。
田中良紹
ジャーナリスト
「1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材。89年 米国の政治専門テレビ局C−SPANの配給権を取得し(株)シー・ネットを設立。日本に米国議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年からCS放送で「国会TV」を放送。07年退職し現在はブログを執筆しながら政治塾を主宰」
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