http://www.asyura2.com/15/senkyo194/msg/763.html
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転載する記事の方向に本当に政策が動けば、「新三本の矢」も意味がなくなり(財政支援で底上げしたとしても消費税の転嫁で吹っ飛んでしまうから)、日本経済そのものが立ちゆかなくなるだろう。
最初に技術的な話を少しすると、
インボイス制度は、不正税務処理に対する“抑止力”や税務署のチェックの効率化には多少役立つというだけで、消費税(付加価値税)税額の算定に決定的な意味があるわけではない。
(税務署が本気でチェックするとなれば、いずれにしろ伝票を1枚1枚めくって確認するという作業が必要)
EU諸国でインボイス制度が導入されたのは、「輸出免税」という“国家詐欺”をもっともらしく見せる仕掛けが必要だったからである。
日本では、稼ぐ付加価値が小さく消費税の転嫁も思うようにできない事業者向けに簡易課税制度が導入されている。簡単に言えば、業種別の基準に従い売上額から納付すべき消費税額を算出してしまうものである。
業種別に理屈を付けた調整で簡易課税制度を存続させることもできないわけではないが、「軽減(複数)税率」制度とは整合性が採れない。
また、150万ほどの農家は非課税事業者だが、軽減(複数)税率制度が導入されたら、税金で有利になる課税事業者を選択するようになるから税務署の負担は増大する。
さらに言えば、軽減税率の適用を受けるものを主として仕入れ、標準税率で販売を行う外食産業などは、標準税率のアップを超えた打撃を受けることになる。
(特定事業者が「軽減(複数)税率」制度で利益を得る論理の正反対の論理が働くからである。しかも、生鮮食品は気候変動などで激しく価格が変動する。売上に係わる税率が10%で仕入から控除できる税率が8%になってしまう事業者は、消費税で地獄の苦しみを味わうことになる)
断言するが、軽減(複数)税率制度を導入したら、その打撃は8%に増税したレベルでは済まず、日本経済は沈没する。
島国で近隣諸国との交易がそれほど活発ではない日本は、市場統合が進んでいるEU諸国とは経済構造が異なる。
欧州諸国は相互の市場が緊密に連係しているので、中小企業も活発に自社製品を輸出している。輸出というより少し遠くに配送しているという感覚で、福岡県の企業が岡山県や長野県の住民向けに販売している状況に近い。
それゆえ、付加価値税の税率が20%前後になっていても、EU諸国の製造業は、「輸出免税」制度に助けられて付加価値税をあまり負担しないで済む。
EU諸国の付加価値税税収はサービス業や域外からの輸入に大きく依存しているのである。
(消費税や付加価値税は輸入取引で関税として機能する:乗用車に20%に関税がかかっていると考えるとその大きさがわかるはず。EU内の自動車メーカーは「輸出免税」があるので基本的にチャラ)
一方日本は、大企業の下請的な仕事をこなす中小企業が多く、大企業が販売する最終製品は輸出されるにしても、中小企業はあくまでも“内需”で稼ぐかたちになっているから、消費税の税率アップがもろに付加価値の減少につながっていく。
軽減(複数)税率制度は、特定分野の事業者の利益に貢献するものだから、それが導入されないときと同じ税収を上げようと思ったら、特定事業者に渡す利益の分だけ他の分野の事業者から税収を増やさなければならない。
言い換えれば、利益供与で減少する税収を補うため消費税の標準税率をアップしなければならない。
その増税がまた特定事業者の利益を増大させることになってしまうから、標準税率をまた上げなければならなくなるという異様なイタチごっこにはまってしまう。
特定の事業者が消費税という税制のおかげで肥え太り、他の事業者や消費税の転嫁を受ける一般消費者は、経営や生活がますます困窮していくことになるというのが「軽減(複数)税率」制度なのである。
政治的に(選挙対策として)公明党=創価学会を袖にできないというのであれば、「軽減(複数)税率」騒動を好機と考え、17年4月の消費税増税を中止(延期)するのが現段階ではベストの選択である。
それにしても、「軽減(複数)税率」問題では、「新安保法制」のときのように“正論”を説く財政学者や経済学者がなぜいないのだろうか。
また、かつて消費税打撃緩和策として給付制度を主張していた民主党は、なぜこの論議に参加しないのだろうか。
※ 関連参照投稿
「首相 軽減税率は消費税10%引き上げと同時に導入を:安倍政権Vs.公明党+メディアの暗闘:財務省案の方向性が○」
http://www.asyura2.com/15/senkyo194/msg/738.html
「混迷する「軽減(複数)税率」問題を考えるための基礎的理解」
http://www.asyura2.com/15/senkyo194/msg/707.html
「消費税の負担軽減どころか重税化につながる「軽減税率」(複数税率)を負担緩和策と称して要求する公明党などを批判した論説」
http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/936.html
「軽減税率できねば参院選惨敗」公明税調会長:軽減税率「議論進める」 首相、公明代表と合意:逃げて財務省と公明党の喧嘩任せ
http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/778.html
「消費税制度は“悪魔の税制”:「軽減税率」(複数税率)制度は、悪魔にさらなる武器と栄養を与える大愚策」
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/868.html
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軽減税率、簡易税額票導入を軸に 政府・与党検討[日経新聞]
厳格なEU型も議論
2015/10/15 2:00
政府・与党は2017年4月に消費税率を10%に引き上げ、同時に食料品などに軽減税率を設ける際、事業者の事務負担が少ない簡易版インボイス(税額票)の導入を検討する。現行の請求書に対象品目や取引金額を明記する案が軸になる。将来は専用の伝票をつくる欧州連合(EU)並みの厳格なインボイスの採用も議論する。
安倍晋三首相は14日、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と会談し、消費増税と同時に軽減税率を導入するよう検討を指示した。宮沢氏を税調会長に充てる手続きは同日までに終わった。近く税調幹部会合を開いて、軽減税率と簡易版インボイスの検討に入る。公明党とも協議し、年末の2016年度の与党税制改正大綱に盛り込む。
軽減税率を導入しているEUでは、モノの売り手が買い手に渡す請求書に事業者番号と消費税率、税額の記載を義務づけるインボイスを取り入れている。買い手の事業者はインボイスをもとに正確な納税額を計算する義務を負う。納税すべき消費税が事業者の手元に残ってしまう「益税」を防ぐ狙いだ。
日本はこれまで請求書には一定期間の取引内容をまとめて書いたり、税込み価格でよかったりとおおざっぱな区分経理を認めている。EU並みのインボイスには「商店など事業者の取引に大きな事務負担が発生し、現場で混乱する」として自民党内に反対論が強い。経済界も反対の構えだ。
公明党は請求書に軽減税率の対象商品の取引金額と税率10%の商品の取引金額をそれぞれ大まかに書き込む方法を提案している。軽減税率の取引には印をつけてわかるようにする。日本のいまの経理区分とEU型の折衷案といえる内容だ。
首相は宮沢氏に「公明党とよく話をしてほしい」と指示。政府関係者は「公明党の案をもとに、増税時から3〜5年間は簡易版インボイスを採用する。将来はEU型を目指す」と語った。
与党は軽減税率の対象品目の線引きも検討する。これまで酒を除く飲食料品(軽減額約1兆3千億円)、生鮮食品(約3400億円)、精米だけ(約400億円)の3案が出ている。公明党は幅広く対象にする考えだが、自民党内では「対象品目を広げると社会保障財源が少なくなってしまう」という意見が多い。
線引きには難しい面がある。たとえば「カット野菜」は生鮮食品か、通常税率の加工食品かという課題がでてくる。自民党税調幹部は「公明党の主張は実現性は低いと判断して一度は見送った。議論が堂々巡りになる可能性がある」と指摘する。年末まで激しい議論になりそうだ。
▼インボイス(税額票) 商品を売る事業者が買い手の事業者に発行する伝票。商品ごとの税率や税額を書き込む。事業者は顧客から受け取った消費税額から、仕入れ先に払った税額を控除した額を税務署に納める。控除額を証明するインボイスがあれば、消費税の税率が複数になった場合でも、事業者が納めるべき税額を正確に把握できる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H4V_U5A011C1MM8000/?dg=1
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