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小藪の暴論に坂上は…(左・吉本興業株式会社公式HP 芸人プロフィールより/右・アヴァンセプロダクション・スクールHPより)
“俺はわかってる芸人”小藪千豊の「独裁政治待望」発言に坂上忍が「安保法案採決は独裁」と反論! でも大勢は…
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2015.10.12. リテラ
安保法制の強行採決に公約違反のTPP合意、内閣のお友だち人事……。安倍政権のやりたい放題は、もはや独裁政治と言っていい状態にあるが、そんななか、お笑い芸人の小藪千豊が「独裁待望論」を語って、話題を集めている。
小籔の発言が飛び出したのは、10日に放送された『池上彰のニュースそうだったのか!! 2時間SP』(テレビ朝日)でのこと。この日の番組テーマは「民主主義」。番組後半では、資本主義/社会主義、独裁/民主主義という縦横軸のマトリクスをつくり、世界の国をマッピング。池上は日本を、資本主義度が高く、民主主義度はそこそこ、というアメリカの下・イギリスの上という位置に配置。その上で、日本はどこの位置を目指すべきだと思うか?とひな壇のゲスト陣に問いかけた。
そこでゲスト席の北村晴男弁護士と坂上忍は、民主主義度が高く、かつ資本主義と社会主義の境目あたりに位置するドイツやフランス、オランダなどの位置がいい、と意見。資本主義でありながら社会主義的な福祉政策を取り入れているそれらの国々の位置あたりで「ちょろちょろして実験を繰り返す」のが良いのでは……。そう北村と坂上が話をしていると、「お言葉ですけど、僕はそれには反対です」と言い、割って入ったのが小籔だった。
「僕はライト独裁。ちょっと独裁に寄る。独裁する人をみんなで決めて、独裁する人のギャラ減らす。ほんで、その人の任期が終わったときに良かったらみんなで国民投票していっぱいお金あげる。民主主義独裁です」
「いま、民主主義やったら、みんなで話し合いますやん。じゃなくて、『お前、全部決めてエエわ』って」
まあ、いかにも小藪らしい物言いではある。このところ、情報番組やワイドショーのコメンテーターに引っ張りだこの小藪だが、口をついて出るのは大概、“遅れてきた頑固オヤジの俺、カッコええやろ”の空気を全開にした保守的主張。安保法制についても、反対デモを批判するコメントや、安倍政権に丸ノリした中国脅威論を連発していた。
しかも、小藪はもともと“浪速の独裁者”の橋下徹とべったりの関係だ。2011年には彼の主宰するイベント「コヤブソニック」に橋下市長が特別ゲストとして登場したこともあるし、都構想の住民投票のときには、自分のツイートで、「住民説明会行ってない方 個人的にコレわかりやすかったです」などと維新HPを紹介。公平なふりをして、ウソと誇張だらけの維新側の説明会動画をオススメする応援団ぶりを見せつけた。
おそらく、今回も「一旦、選挙で選んだんだから文句を言うな」という橋下の主張に感化され、調子に乗ってこんなことを言い出したのだろう。
しかし、「ライト独裁」って、この男は独裁の怖さをまったくわかっていないらしい。番組中に池上も解説していたが、ナチスのヒトラーだって最初は選挙で選ばれたが、それからワイマール憲法の解釈改憲で誰も口出しのできない統帥となり、虐殺や弾圧にひた走った。一定期間であっても、為政者に全権を委任してしまったら、法律を好き勝手にされて、国民が一切の異論を言えないような体制がつくられてしまうのは目に見えている。独裁に「ライト」なんてありえないのだ。
しかも、「良かったら高い報酬を払う」とか、まるでマンガみたいなことを平気で口にするのだから、開いた口がふさがらない。
もっとも、これも小藪の特徴だ。「俺はわかってるよ、大人やから」みたいなトーンで語るため、何かもっともらしいことを言ってるように聞こえるが、実際の主張は幼稚かつ支離滅裂で、気がついたら、たんに強者の既得権益を守るものでしかなかったりする。
たとえば、以前、小籔は「夢は絶対に叶わへん」「やりたくないことをやるのが社会や」などと語り、「これが真実」「小籔の話は気持ちいい」と絶賛されたことがある。でも、当の小藪自身は夢だった芸人となり、その道で食っているのだ。ようは“自分たちはエエけど前らはアカンよ”と言っているだけなのである。そんな発言をありがたがって「大人の意見」などと誉めそやしているのだから、おめでたいとしか言いようがない。
しかし、一方で、小藪のメンタリティというのは、いまの日本社会を覆っている空気を反映しているともいえる。知識や教養を鼻で笑い、実用性にのみ価値を求め、歴史の流れや客観性を軽んじ、世界を自分が理解したいようにしか理解しない反知性主義というやつだ。
そして、この空気は、政治という分野では、それこそ小籔の言う「ライト独裁」を求める行動と結びついている。民主主義的な手続きに「まどろっこっしい」と苛立ち、“改革”“危機管理”などというキャッチーな言葉に簡単に踊らされ、中身を検証しないまま飛びつく。そして、民主主義を口汚く罵るような扇情的な政治家の言葉に熱狂し、独裁者をつくりだしていく。
実際、橋下徹や安倍晋三などはその典型と言っていいだろう。彼らは「ダブル行政の無駄」「国際社会の激変」「中国の脅威」などをことさら強調し、市民の怒りや不安を駆り立ててきた。そうした話の裏側には、都構想による無駄や安保法制がテロの危険を生むという“さらなる問題”が隠されているにもかかわらず、国民はいとも簡単に騙され、彼らを支持し続けている。
しかも、テレビで堂々と「ライト独裁」を求める声が放映され、それが支持されるようになったいま、この動きはこれからもさらにエスカレートしていくだろう。安倍首相や橋下徹の独裁の道は市民の側から用意されようとしているのかと、ため息をついたそのとき。小籔の発言を受けて、ひとり、声をあげた芸能人がいた。坂上忍だ。
「安保法案のときの採決の仕方なんかは独裁っていったら独裁の匂いもしますからね。あんなやり方」
坂上は安保法制が可決されようとしていたときにも、生放送の『バイキング』(フジテレビ)で、「(安保法案は)ぼく、大反対なんですね」「武器持たないで憲法9条持ってりゃいいんじゃないの? だって、被爆国なんだから。被爆国にしかできないことあるわけで、いまだからこそ、武器持たない日本でいてほしいなっていうのが強い想いですかね」と発言。現在進行形の独裁政治に対し、“勝手に決めるな”と意思表示していた。今回も、小籔のように安易な改革煽動や独裁者のまやかしの言葉に乗せられてたまるか、という、坂上らしい反骨心と、しっかりとした民主主義の考え方が表れた発言だった。
坂上のような存在には光を見る思いだが、しかし、残念ながら大勢はやはり、小藪の側にあるだろう。
「ライトだから大丈夫」と言っているうちに、安倍がさらにこの国の民主主義を解体し、それを引き継いだ橋下が本物の独裁を完成させる。そして、橋下の宣伝部長として引っ張りだこになった小藪が「いやいや、橋下さんの独裁は素晴らしい独裁ですから」とドヤ顔で語る……。そんな恐怖の未来は、すぐ目の前にきているのかもしれない。
(水井多賀子)
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