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(回答先: <ヤバイ>TPP合意で日本の規制改革の決定権を外国人投資家に譲歩していた事が発覚!日本政府「外国投資家等に付託すること… 投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 11 日 22:36:05)
TPP協定の概要
環太平洋経済連携協定(TPP)の概要は次の通り。
TPP協定の意義
◆21世紀型の新たなルールの構築
○TPPはモノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築するもの。
○成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリューチェーンを作り出すことにより、域内のヒト・モノ・資本・情報の往来が活発化し、この地域を世界で最も豊かな地域にすることに役立つ。
◆中小・中堅企業、地域の発展への寄与
○TPP協定により、大企業だけでなく中小企業や地域の産業が、世界の成長センターであるアジア太平洋地域の市場につながり、活躍の場を広げていくことが可能になり、日本の経済成長が促される。
○ヒト、モノ、資本、情報が自由に行き来するようになることで、国内に新たな投資を呼び込むことも見込め、都市だけでなく地域も世界の活力を取り込んでいくことが可能となる。
◆長期的な、戦略的意義
○自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とともに貿易・投資の新たな基軸を打ち立てることにより、今後の世界の貿易・投資ルールの新たなスタンダードを提供。
○アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々との間で経済的な相互依存関係を深めていくことは、地域の成長・繁栄・安定にも資する。
市場アクセス交渉の結果
(1) 物品市場アクセス
(1)日本市場へのアクセス
1 米
(1)米及び米粉等の国家貿易品目
(1)現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(米の場合341円/キログラム)を維持。
(2) 外国産主食米を流通させる目的で作った売買同時入札(SBS)方式の国別枠を設定。
〈米国:5万トン(当初3年維持)→7万トン(13年目以降) 豪州:0.6万トン(当初3年維持)→0.84万トン(13年目以降)〉〈※国内の需要動向に即した輸入や実需者との実質的な直接取引を促進するため、日本は、既存の世界貿易機関(WTO)枠のミニマムアクセスの運用について見直しを行うこととし、既存の一般輸入の一部について、中粒種・加工用に限定した売買同時入札方式(6万トン)へ変更する予定。〉
(2)米の調製品・加工品等(民間貿易品目)
一定の輸入がある米粉調製品等は関税を5〜25%の削減とし、輸入量が少ないまたは関税率が低い品目等は関税を削減・撤廃。
2 麦
(1)小麦
(1)現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(55円/キログラム)を維持。
(2)米国、豪州、カナダに国別枠を新設〈計19.2万トン(当初)→25.3万トン(7年目以降)・売買同時入札方式〉。
(3)WTO枠内のマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)を9年目までに45%削減し、新設する国別枠内のマークアップも同じ水準に設定。国別枠内に限り、主要5銘柄以外の小麦を輸入する場合にはマークアップを9年目までに50%削減した水準に設定。
(4)小麦製品については、小麦粉調製品等にTPP枠又は国別枠を新設〈4.5万トン(当初)→6万トン(6年目以降)〉し、国家貿易制度で運用している小麦製品は、引き続き全て国家貿易制度で運用。また、マカロニ・スパゲティは、関税を9年目までに60%削減。
(2)大麦
(1)現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(39円/キログラム)を維持。
(2)TPP枠を新設〈2.5万トン(当初)→6.5万トン(9年目以降)・売買同時入札方式〉。
(3)既存のWTO枠内のマークアップを9年目までに45%削減し、新設するTPP枠内のマークアップも同じ水準に設定。
(4)麦芽については、現行の関税割当数量の範囲内において、米国、豪州、カナダの国別枠を設定〈計18.9万トン(当初)→20.1万トン(11年目以降)〉。
3 甘味資源作物
砂糖
(1)粗糖・精製糖等については、現行の糖価調整制度を維持した上で、以下を措置。
ア 高糖度(糖度98.5度以上99.3度未満)の精製用原料糖に限り、関税を無税とし、調整金を少額削減。
イ 新商品開発用の試験輸入に限定して、既存の枠組みを活用した無税・無調整金での輸入(粗糖・精製糖で500トン)を認める。
(2)加糖調製品については、品目ごとにTPP枠を設定〈計6.2万トン(当初)→9.6万トン(品目ごとに6〜11年目以降)〉。
(2)でんぷん
現行の糖価調整制度を維持した上で、以下を措置。
(1)現行の関税割当数量の範囲内で、TPP枠を設定(7・5千トン)。
(2)TPP参加国からの現行輸入量が少量のでんぷん等(コーンスターチ、ばれいしょでんぷん等)については、国別枠を設定〈計2・7千トン(当初)→3・6千トン(品目ごとに6〜11年目以降)〉。
4 牛肉
(1)関税撤廃を回避し、セーフガード付きで関税を削減。〈38.5%(現行)→27.5%(当初)→20%(10年目)→9%(16年目以降)〉
(2)セーフガード
(1)発動数量(年間):59万トン(当初)→69.6万トン(10年目)→73.8万トン(16年目)(関税が20%を切る11年目以降5年間は四半期ごとの発動数量も設定。)
(3) セーフガード税率:38.5%(当初)→30%(4年目)→20%(11年目)→18%(15年目)
〈16年目以降のセーフガード税率は、毎年1%ずつ削減(セーフガードが発動されれば次の年は削減されない)、4年間発動がなければ廃止。家畜疾病により輸入が3年以上実質的に停止された場合には、実質的解禁の時点から最長5年間不適用(当該条項により、米国・カナダには最長2018年1月末まで不適用)。〉
5 豚肉
(1)差額関税制度を維持するとともに、分岐点価格(524円/キログラム)を維持。
(2)従量税は関税撤廃を回避。〈従価税(現行4.3%):2.2%(当初)→0%(10年目以降) 従量税(現行482円/キログラム):125円/キログラム(当初)→50円/キログラム(10年目以降)〉
(3)セーフガード:輸入急増に対し、従量税を100〜70円/キログラムに、従価税を4.0〜2.2%に、それぞれ戻すセーフガードを措置(11年目まで)。
6 乳製品
(1)脱脂粉乳・バター
(1)現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(脱脂粉乳21.3%+396円/キログラム等、バター29.8%+985円/キログラム等)を維持。
(2)TPP枠を設定(生乳換算)
脱脂粉乳2万659トン(当初)→2万4102トン(6年目以降)(製品3188トン→3719トンに相当)
バター3万9341トン(当初)→4万5898トン(6年目以降)(製品3188トン→3719トンに相当)
合計6万トン(当初)→7万トン(6年目以降)
(2)ホエイ 脱脂粉乳と競合する可能性が高いものについて、21年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置。
(3)チーズ
(1)モッツァレラ、カマンベールなどについては、現行関税を維持。
(2)チェダー、ゴーダ、クリームチーズ等については、16年目までの長期の関税撤廃期間を設定。
(3)プロセスチーズについては少量の国別枠、シュレッドチーズ原料用フレッシュチーズについては国産使用条件付き無税枠を設定。
7 5品目以外の農産物
(1)小豆及びインゲン豆については、枠内関税を撤廃するものの、枠外税率を維持。コンニャク及び、パイナップル缶詰については、枠外税率を15%削減。いずれも関税割当制度を維持。
(2)このほか、鶏肉、鶏卵、オレンジジュース、リンゴ等一部の品目について、11年目までまたはそれを超える関税撤廃期間を設定。
(3)また、競走馬、オレンジについて、セーフガードを措置。
8 林産物
(1)輸入額又は近年の輸入額の伸びが大きいもの(マレーシア、NZ、カナダ、チリ及びベトナムからの合板並びにカナダからの製材)については、16年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置。
(2)なお、違法に伐採された木材の貿易に対する規律についても合意。
9 水産物
(1)アジ・サバは12〜16年目までの長期の関税撤廃期間を、主要なマグロ類、主要なサケ・マス類、ブリ、スルメイカ等は11年目までの関税撤廃期間をそれぞれ設定。
(2)海藻類(ノリ、コンブ等)は関税を15%削減。
(3)現行の漁業補助金は禁止補助金に該当せず、政策決定権を維持。
10 酒、たばこ及び塩
(1)ボトルワインは8年目、清酒、焼酎は11年目までの関税撤廃期間を設定。
(2)紙巻きたばこ(現在は暫定税率で無税)は協定税率として無税とする。葉巻たばこは11年目までの関税撤廃期間を設定。
(3)精製塩は11年目までの関税撤廃期間を設定。
(2)11カ国市場へのアクセス
1 農林水産品
日本の農林水産物、食品の輸出拡大の重点品目の全て(牛肉、米、水産物、茶等)で関税撤廃を獲得。
米国向けの牛肉は15年目で関税が撤廃されるまでの間、現行の米国向け輸出実績の20〜40倍に相当する数量の無税枠。
(2)米国向けの米は5年目で関税撤廃。
(3)近年、輸出の伸びが著しいベトナム向け水産物については、ブリ、サバ、サンマなど全ての生鮮魚・冷凍魚は即時の関税撤廃。
(4)酒類は全締約国において関税撤廃。特に米国、カナダの清酒は即時撤廃。
2 工業製品
工業製品は11カ国全体で99.9%の品目の関税撤廃を実現。輸出額(11カ国向け合計約19兆円)で見ても99.9%を達成。(即時撤廃の割合は76.6%)
EPA未締結の米国、カナダ、ニュージーランドはTPP発効時点で工業製品の無税割合が、米国39%→67%、カナダ47%→68%、ニュージーランド79%→98%に直ちに上昇。(3カ国合計で約7兆8000億円分)
▼米国
・全体として工業製品の輸出額(約10兆円)の100%の関税撤廃を実現。
・自動車部品(輸出額2兆円弱:現行税率は主に2.5%)に関し、8割以上の即時撤廃で合意。これは米韓自由貿易協定(FTA)を上回る高い水準。
〈即時撤廃率〉
日米(TPP)品目数87.4%、輸出額81.3%
米韓FTA品目数83%、輸出額77.5%
・乗用車(現行税率2.5%)は15年目から削減開始、20年目で半減、22年目で0.5%まで削減、25年目で撤廃。
・日米並行交渉の結果、自動車分野の非関税措置やセーフガード措置、紛争解決手続き等に関するルールを日米の譲許表に付表として規定。
・自動車に次ぐ主力分野である家電、産業用機械、化学では輸出額の99%以上の即時撤廃を実現。
▼カナダ
・全体として工業製品の輸出額(約1兆円)の100%の関税撤廃を実現。
・乗用車(輸出の約3割現行税率6.1%)は5年目撤廃を実現。これはカナダ・EUFTAの内容(8年目撤廃)を上回る高い水準。
・自動車部品(現行税率主に6%)は日本からの輸出の9割弱が即時撤廃。
〈即時撤廃率〉
日加(TPP)品目数95.4%、貿易額87.5%、
加韓FTA品目数72.2%、貿易額59.1%
・自動車分野のセーフガード措置、紛争解決手続き等に関するルールを日加の譲許表に付表として規定。
・自動車に次ぐ主力分野である化学、家電、産業用機械では輸出額の99%以上の即時撤廃を実現。
▼ニュージーランド
・輸出額の98%以上の工業製品が即時撤廃。残りも8年目までには関税無税化。
▼豪州
・輸出額約1兆円のうち、日豪EPAでは82.6%が即時撤廃されたが、TPPではこれを上回る94.2%の即時撤廃で合意。特に主力の乗用車、バス、トラック(輸出の5割弱、現行税率5%)の新車は100%即時撤廃。日豪EPA(輸出額の75%が即時撤廃)からの深掘りを実現。
▼ベトナム
・日ベトナムEPAで最終的には工業製品の輸出額の92%が関税撤廃される予定だが、TPPではこれに加え、特に輸出関心の高い3000cc超の乗用車(現行、最高70%弱の高関税で保護)について10年目撤廃を実現。
(2)物品以外の市場アクセス
1 サービス・投資
市場アクセス改善は原則すべてのサービス及び投資分野を自由化の対象とし、規制の根拠となる措置や分野を列挙。日本企業の海外進出の観点から、諸規制の緩和や撤廃が進んだうえ、現状が明確化され、透明性が向上。
個別の具体的成果として、日本の産業界からの主要関心分野であったコンビニを含む流通業における外資規制の緩和。
▼ベトナム
TPP発効後5年の猶予期間を経て、コンビニ、スーパー等の小売流通業の出店について、ベトナム全土で「経済需要テスト」を廃止。
▼マレーシア
小売業(コンビニ)への外資規制の緩和(コンビニへの外資出資禁止→出資上限30%)小売業の諸手続きが緩和され、透明性も向上。
その他の外資に対する規制緩和の例
▼ベトナム
・電気通信業の外資出資比率規制の緩和(65%→75%等)
・地場銀行への外資出資比率規制の緩和(15%→20%等)
▼マレーシア
・外国銀行の支店数の上限拡大(8支店→16支店)
・外国銀行の店舗外の新規ATM設置制限の原則撤廃。
・国営再保険事業体からの再保険購入義務の緩和(購入割合一律30%→2.5%)
・信用格付け会社への外資出資比率規制の撤廃(現行上限49%)
・ブミプトラ政策に関する留保が大幅に限定。留保内容が明確化。
▼カナダ
・投資の事前審査の閾値(いきち)の引き上げ(369百万カナダドル→15億カナダドル)
クールジャパン推進の障害となりうる文化関連規制も限定された。
▼カナダ
・オンラインで提供される外国の音響映像コンテンツに対して規制を設けない。
▼ベトナム
・劇場、ライブハウス等娯楽サービスの外資規制緩和(現行上限49%→51%)、国内映画優先指定の緩和
2 政府調達
・ベトナム、マレーシア、ブルネイにおける日本企業の政府調達市場参入機会を初めて国際約束として規定。
・米国、豪州、カナダ、シンガポールは既存の国際約束以上の対象機関について政府調達市場を開放。
・豪州、チリ、ペルーは既存の国際約束より対象となる調達の基準額を引き下げ。
3 ビジネス関係者の一時的な入国
・米国及びシンガポール以外の全ての国について一時的な入国及び滞在を認める自然人のカテゴリー及び滞在期間に関し、WTO・GATSを上回る約束。
(例)カナダ、マレーシア及びペルーは滞在可能期間の長期化を実現。豪州、カナダ、メキシコ、チリ等は「短期商用訪問者」以外のカテゴリーの自然人が帯同する配偶者についても本人と同一の滞在期間を許可することを約束。
ルール分野の概要
1 知的財産
▽商標、地理的表示、特許、意匠、著作権、開示されていない情報などを指す。世界貿易機関(WTO)協定の一部である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を上回る水準の保護と、知的財産権の行使(民事上及び刑事上の権利行使手続き並びに国境措置等)について規定し、もって、知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっている。
▽知的財産章の主な規定は以下の通り。
○医薬品の知的財産保護を強化する制度の導入
(1)特許期間延長制度(販売承認の手続きの結果による効果的な特許期間の不合理な短縮について特許権者に補償するために特許期間の調整を認める制度)、(2)新薬のデータ保護期間にかかるルールの構築、(3)特許リンケージ制度(後発医薬品承認時に有効特許を考慮する仕組み)
○商標
・商標権の取得の円滑化:国際的な商標の一括出願を規定した標章の国際登録を定めるマドリード協定議定書(マレーシア、カナダ、ペルー等が未締結)または商標出願手続きの国際的な制度調和と簡略化を図るためのシンガポール商標法条約(マレーシア、カナダ、ペルー、メキシコ等が未締結)の締結を義務付け
・商標の不正使用について、法定損害賠償制度または追加的損害賠償制度を設ける
○特許
・特許期間延長制度(出願から5年、審査請求から3年を超過した特許出願の権利化までに生じた不合理な遅滞につき、特許期間の延長を認める制度)の導入の義務付け
・新規性喪失の例外規定(特許出願前に自ら発明を公表した場合等に公表日から12月以内にその者がした特許出願にかかる発明は、その公表によって新規性等が否定されないとする規定)の導入を義務付け
○オンラインの著作権侵害の防止
インターネット上の著作権侵害コンテンツの対策のため、権利者からの通報を受けてプロバイダー事業者が対応することで賠償免責を得る制度を導入。プロバイダー事業者に著作権侵害防止のためのインセンティブを与える制度を担保
○知的財産権保護の権利行使
WTO・TRIPS協定やACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)と同等またはそれを上回る規範の導入
○著作権
著作権に関しては次のルール等が規定されている。
・著作物(映画を含む)、実演またはレコードの保護期間を以下の通りとする。(1)自然人の生存期間に基づき計算される場合には著作者の生存期間及び著作者の死から少なくとも70年(2)自然人の生存期間に基づき計算されない場合には次のいずれかの期間(1)当該著作物、実演またはレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも70年(2)当該著作物、実演またはレコードの創作から一定期間内に権利者の許諾を得た公表がされない場合には当該著作物、実演またはレコードの創作の年の終わりから少なくとも70年
・故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。
・著作物等の侵害について法定損害賠償制度または追加的損害賠償制度を設ける
○地理的表示(GI)
地理的表示の保護または認定のための行政手続きを定める場合、(1)過度の負担となる手続きを課することなく申請等を処理すること(2)申請等の対象である地理的表示を公開し、異議を申し立てる手続きを定めること(3)地理的表示の保護または認定の取り消しについて定めること等が規定されている。
2 国有企業及び指定独占企業
▽締約国は国有企業及び指定独占企業が物品またはサービスの売買を行う際、商業的考慮に従い行動すること、他の締約国の企業に対して無差別の待遇を与えることを確保すること、国有企業への非商業的援助(贈与・商業的に存在するものよりも有利な条件での貸し付け等)を通じて他の締約国の利益に悪影響を及ぼしてはならないこと、国有企業及び指定独占企業に関する情報を他の締約国に対して提供すること等を規定している。
▽各締約国は特定の規律を自国の特定の国有企業等の特定の活動については適用しないとして国別付属書で留保している。日本は地方政府の所有・支配する国有企業・指定独占企業を留保している。
▽国有企業等に特化した規律はWTO協定及び日本が締結済みの既存のEPAには盛り込まれていない。これらの規律により外国企業が国有企業と対等な競争条件で事業を行うことができる基盤が確保されることとなる。
3 投資
▽投資財産の設立段階及び設立後の内国民待遇及び最恵国待遇(MFN)、投資財産に対する公正衡平待遇並びに十分な保護及び保障、特定措置の履行要求(現地調達、技術移転等)の原則禁止、正当な補償等を伴わない収用の禁止等を規定している。投資家と国との間の紛争の解決(ISDS)のための手続きも規定している。
▽日本にとってメリットが大きいと考えられる投資章の主な規定は以下の通り。(1)投資財産の設立段階及び設立後の内国民待遇及び最恵国待遇、(2)投資家に対する特定の措置の履行要求の禁止(例:ローカルコンテンツ要求、技術移転要求、投資家が締結するライセンス契約に関するロイヤルティー規制の禁止、特定技術使用要求の禁止等)、(3)ISDS手続きの採用、(4)地方政府の措置に関する国家間協議のメカニズムの導入 米国、カナダ、豪州等の連邦制国家では州政府が多くの規制を導入している。こうした地方政府による協定違反の投資規制に対して国家間で対応策を協議するメカニズムを新たに導入
▽ISDS手続きに関しては様々な乱訴抑制につながる規定が置かれている。またTPP協定投資章で投資受け入れ国が正当な公共目的等に基づく規制措置を採用することが妨げられないことが確認されている。
4 国境を越えるサービスの貿易
▽国境を越える取引、海外での消費の態様によるサービスの提供、自然人の移動によるサービスの提供に関し、内国民待遇、最恵国待遇、市場アクセス(数量制限の禁止等)等について規定している。
▽原則全てのサービス分野を対象とした上で内国民待遇、最恵国待遇、市場アクセス等の義務が適用されない措置や分野を付属書に列挙する方式(いわゆるネガティブ・リスト方式)を採用している。
▽内国民待遇等の自由化に関わる規律を適用しないことが認められた措置について協定発効後に規制の緩和や撤廃を行った場合は変更時点でとられている措置よりも後退しない、すなわち自由化の程度をより悪化させないことを約束するラチェット条項が置かれている。この条項は投資・サービス分野において海外で日本企業が長期的に活動するに際し、規制の予見可能性が高まることを通じて想定外の規制強化によって損害を被ることを防ぐ効果がある。他方、政策上、将来にわたって規制を導入し、または強化する必要があり得る分野については留保が認められている。包括的な留保をした分野にはラチェット条項は適用されない。
▽日本は社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)、政府財産、公営競技等、放送業、初等及び中等教育、エネルギー産業、領海等における漁業、警備業、土地取引等について包括的な留保を行っている。
5 原産地規則及び原産地手続き
▽輸入される産品について関税の撤廃・引き下げの関税上の特恵待遇の対象となるTPP域内の原産品として認められるための要件及び特恵待遇を受けるための証明手続き等を定める。
▽本章のルールにより例えば以下のようなメリットが考えられる。(1)TPP特恵税率の適用が可能な12カ国内の原産地規則の統一(事業者の制度利用負担の緩和)(2)輸出者、生産者または輸入者自らが原産地証明書を作成する制度の導入(貿易手続きの円滑化)(3)完全累積制度の実現 TPP協定においては複数の締約国において付加価値・加工工程の足し上げを行い、原産性を判断する完全累積制度を採用。日本が締結済みのEPAにおいてもメキシコ、ペルー等で完全累積制度を採用している。
(4)広域FTA化による原産品輸送の容易化(立証負担の緩和)
6 衛生植物検疫(SPS)措置
▽人、動物または植物の生命または健康を保護しつつ、各締約国が実施する衛生植物検疫措置が貿易に対する不当な障害をもたらすことのないようにすることを確保することに関する規定を設けている。WTO・SPS協定の内容を上回る規定として、締約国がWTO衛生植物検疫委員会の関連する指針並びに国際的な基準、指針及び勧告を考慮することや各締約国のSPS措置にかかる手続きの透明性の向上に関する規定等がある。
▽さらに地域的な状況に対応した調整、措置の同等、科学及び危険性の分析、監査、輸入検査、証明、透明性、協議等について規定。
▽次のような規定により日本から農産品を輸出する際の障壁の改善が図られると期待される。(1)自国の物品の輸入に関連する全てのSPS措置に関する情報を求めに応じ、他の締約国に提供する。(2)SPS章の規定の下で生ずる事項について懸念がある場合には180日以内に解決することを目的として要請の受領から37日以内に専門家が関与する協議(TPP協定独自の協力的な技術的協議)を求めることができる。
▽SPS章は科学的な原則に基づいて、加盟国に食品の安全(人の健康または生命の保護)を確保するために必要な措置をとる権利を認めるWTO・SPS協定を踏まえた規定となっており、日本の制度変更が必要となる規定は設けられておらず、日本の食品の安全が脅かされるようなことはない。
7 電子商取引
▽TPP協定の電子商取引章はWTO協定には規定はなく、また日本が締結済みのEPAの電子商取引章と比較しても包括的かつ高いレベルの内容が達成されている。具体的には以下の内容が規定されている。(1)締約国間における電子的な送信に対して関税を賦課してはならない。(2)他の締約国において生産等されたデジタル・プロダクト(コンピュータ・プログラム等、デジタル式に符号化され、商業的販売または流通のために生産され、電子的に送信されることができるもの)に対し、同種のデジタル・プロダクトに与える待遇よりも不利な待遇を与えてはならない。(3)企業等のビジネスの遂行のためである場合には、電子的手段による国境を越える情報(個人情報を含む)の移転を認める。(4)企業等が自国の領域内でビジネスを遂行するための条件として、コンピューター関連設備を自国の領域内に設置すること等を要求してはならない。(5)他の締約国の者が所有する大量販売用ソフトウエアのソース・コードの移転または当該ソース・コードへのアクセスを原則として要求してはならない。
▽同時に電子商取引利用者及びオンライン消費者の保護に関する規律が定められるなど消費者が電子商取引を安心して利用できる環境の整備も図られている。
[日経新聞10月6日朝刊P.4]
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