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大規模なデモが展開された国会議事堂周辺〔PHOTO〕gettyimages
安保国会で大失望&赤っ恥! 民主主義とはほど遠いあの「から騒ぎ」、世界はどう見たか 不思議な国、ニッポン
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45640
2015年10月10日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
数の論理で採決を強行した与党に、それを阻止するためとはいえ、あまりに見苦しい議事妨害をくり返した野党—良識ある民主主義とはほど遠い国会での「から騒ぎ」は世界からどう見えたのか?
■見ていて恥ずかしくなる
「ここまで日本の政治が地に落ちるとは……。あれほど怒号が飛び交う喧騒のなかで、自民党をはじめとする与党が法案を強引に可決したことには、大いに失望しました。参議院でくり広げられた光景は、とても残念なものでした」
こう嘆くのはフランス紙「ロピニオン」のアジア部長クロード・ルブラン氏だ。
9月19日、安倍政権は安保関連法案を強行採決し、日本の安全保障は新しいステージに入った。だが、そこにいたる議論のやりとり、とりわけ参議院における採決の際の混乱ぶりは、日本人から見ても「こんな人たちを議員に選んでしまったのか」と恥ずかしくなるようなものだった。一連の安保国会は世界の識者たちの目にどう映ったのか。ルブラン氏が続ける。
「与党が恐れていたのは、採決が連休にもつれこんで、抗議デモが大きくなることだったのでしょう。だから、民主主義の最低限のルールも、野党を尊重する姿勢もかなぐり捨てて、採決を急いだのです。安倍政権は'14年の総選挙では安保法制の問題を前面に掲げることを避けて、経済問題ばかりを話題にしました。それなのに、今回の採決。国民の大半は騙された気持ちでしょう」
英「エコノミスト」誌・「アイリッシュタイムズ」紙の東京特派員デイビッド・マックニール氏は、「問題は安保法制の中身そのものではなく、法制化の過程にある」と語る。
「日本の憲法学者のほとんどが、安保改定にまつわる憲法解釈の変更を違憲であると認め、世論の大半が改定に反対したにもかかわらず、政府は法制化を推し進めました。議論が長引くほど、反対の声が大きくなったにもかかわらずです」
■歌舞伎のように仰々しい
十分な議論と説明がなされないままに法案が可決されたという不満感が、日本全体を覆っている。元駐日ドイツ大使のフォルカー・シュタンツェル氏が与党の国会運営の非を責める。
「戦後に日本が平和憲法を定めてから、世界情勢は大きく変化しており、一国だけで防衛体制を築くことはもはや不可能です。その意味で、新法案は合理的なものであり、政府はもっとうまく説明することができたはずなのです。
しかし、安倍首相は新法案の論理性をきちんと示して国民の理解を得ることに失敗しました。保守・リベラルを問わず多くのメディアに出演し、国が置かれている状況を地道に説明すべきだったのにそれを怠りました」
その結果、法案は可決されたが、国民の大半はそれに反対しているというねじれ現象が起きてしまった(採決後の読売新聞の調査で、58%が安保法成立を『評価しない』と回答)。
有権者の過半数が安保改定に反対で、いまもデモが行われているのに、安倍政権の狙い通り、このシルバーウィークの連休で多くの人がもう安保のことは過去のものだと考えているようにも感じられる。その原因の一つに、野党の採決妨害のやり口があまりに稚拙だったため、むしろ反感を買い、白けてしまったという側面もあるだろう。
法案の総括質疑が行われていた16日の夜。野党側は理事会室前のドアに福島瑞穂前社民党党首や民主党の辻元清美議員など複数の女性議員を配置し、それをかいくぐって出入りしようとする与党の男性議員たちと揉み合いになると、「触るな!セクハラだ!」とわめきたてた。
さらに野党側は理事会室から隣の部屋につながるドアも長椅子を置いて封鎖。その姿からは、少しでも委員会採決を遅らせれば格好がつくという保身も伝わってくる。
17日の採決でも鴻池祥肇委員長を守ろうとする与党議員とその「人の壁」を乗り越えようとする野党議員のあいだで乱闘がくり広げられた。
このような国会運営は、「まるでラグビーの試合のようだ」と海外メディアの嘲笑を誘った。
「歌舞伎の舞台のように大仰なショーでしたね。結局、多数決で法案が通ることは決まっていたのに、採決間際になって騒ぎ出す野党はおかしい。なぜもっと早い段階で与党と闘わなかったのか」(前出のマックニール氏)
■わが国ではあり得ない
前出のシュタンツェル氏も「女性議員たちを盾にして、セクハラだと抗議するなんて、きわめて非民主的でくだらない戦術だ」と非難する。
「このようなことは改めて先進国の議員に言う必要のないことかもしれませんが、政治は激しい争いであり、子供のゲームではありません。一国の行く末がかかっている、大切な闘争なのです。しかし政治家の武器は言葉であり、議論することです。言葉で相手を説得しなければなりません」
野党が政権を批判するならば、論理的に議論し、次の選挙で民意を問えばいい。それが民主主義の基本ルールだ。だが、今回の混乱を見ていると、国会議員の誰一人としてそのルールを認識していないかのようだった。シュタンツェル氏が続ける。
「実は民主党が政権を握っていたときも、今回の法案と似たような案を準備していました。しかし今、彼らは次に政権を握ればこの法律を廃止すると言っている。このような一貫しない態度は国民に対して無責任です。
政府はあくまで法律で決められた手続きに則って採決しているのであって、どれだけ中身に反対していても野党はこれが『クーデター』であるかのように騒ぎ立てるべきではありません。こんな調子では、いつまでたっても国民が政治家に対して尊敬の念を抱くことができないし、民主主義が成熟するはずがありません」
「決めるべき時は決めていく。これが民主主義の原則だ」と言いながら、その実、自分がやりたいことだけを都合の良いタイミングで決める安倍総理。一強総理の顔色ばかりうかがう与党議員。そして子供のように騒ぐだけだった野党議員。
安保法への賛否にかかわらず、この国会は国民の感覚とズレまくっていた。だから、海外から「不思議な国」と思われるのだ。前出のルブラン氏が続ける。
「フランスの議会ではこのようなシーンはまず見られません。それは頻繁に政権交代が行われており、与野党間に緊張感があるからでしょう。
日本の民主主義がうまく機能していないのは、何十年にもわたり、同じ人たちによって権力が握られているからです。'09年に政権交代がありましたが、結局うまくいきませんでした。現在の野党にも、自民党出身者がたくさんおり、与野党の政治的かけひきが形骸化しているのです」
もちろん、野党が法案採決を妨害すること自体は必ずしも非難されるべきものではない。モスクワ国際関係大学の東洋学科学科長ドミトリー・ストレリツォフ教授が語る。
「国会議員という責任ある立場の人たちが、芝居じみたことを行うことには、違和感を覚える人もいるかもしれません。
しかし、国会というのは演出された劇場のようなものであることも、また事実です。その劇場で野党の存在をアピールすることも必要なのです」
「古いハリウッド映画に『スミス都へ行く』という作品があります。ジェームズ・スチュアート演じる主人公が延々と演説を行って議事妨害し、議会の腐敗を暴く話です。このように米国の議会においても採決を妨害する伝統があります」(前出のルブラン氏)
ただ、採決を妨害するといってもやり方が問題だ。なかでも、喪服まで用意して、投票の際に焼香のマネごとをしてみせた山本太郎議員の振る舞いなどは、大多数の人の目には「目立ちたいだけのパフォーマンス」としか映らなかったはずだ。前出のストレリツォフ氏が続ける。
「率直に言わせてもらえば、私は野党の妨害活動はもっと骨太で、強力なものであってもよかったと思っています。
それが単なるパフォーマンスに堕してしまったのは、野党が分裂状態にあって、弱体化していることが原因でしょう。採決の現場は混乱しているようにも見えましたが、あくまで間抜けな茶番でした。もう少ししっかりとした社会民主党系の政党が生まれなければ、このような茶番がくり返されることになるでしょう」
与野党ともにこれほど躍起になって「茶番」を演じた安保国会。では、肝心の法律の中身そのものについては、世界の人々はどう見ているのだろうか。アジア研究の専門家でテンプル大学日本校教授のジェフ・キングストン氏が解説する。
「最も注目すべき点は、この法律によって、東アジアにおけるパワーバランスはなにも変わらないということです。日本がアメリカの強い要請で紛争に巻き込まれる可能性が高くなるだけで、日本の安全が高まることはまったくありません。つまりリスクが高くなって、恩恵はゼロです。
安倍首相はペンタゴン(アメリカ国防総省)を喜ばせているようにしか思えません。実際、ペンタゴンは安倍首相のことを日本にいる『忠実な部下』だと考えています」
■これで「普通の国」?
安倍政権は集団的自衛権の行使について、「日本が『普通の国』として国際社会での責任を果たすために必要だ」との説明をくり返してきた。
しかし、それはあくまで国内向けの聞こえのいい論理に過ぎない。国際社会の目からは、アメリカの圧力で日本が一方的に損な役回りを引き受けているようにしか見えないのだ。英『タイムズ』紙アジア版編集長兼東京支局長リチャード・ロイド・パリー氏が語る。
「アメリカは大いに感謝しているふりをしていますが、それも最初のうちだけでしょう。そもそも日本以外の国においては、安保法制の話題に誰も関心を持っていませんし、ニュースで大きく扱われることもありません。
中国からは『日本が軍国主義化している』というお決まりの文句が出てくるでしょうが、中国政府は内心で一連の安保騒動を喜んでいると思いますよ。日本を『他国を侵略したくてうずうずしている軍国主義の国』と見なすプロパガンダを広めるのに、いい宣伝材料になるのですからね」
日本では、今回の安保法制が国際社会の秩序を大きく転換させる一大トピックであるかのように議論がなされてきた。
しかし、どんなに国会で大乱闘を演じてみたところで、世界から見たら、何をそんなに騒いでいるのかというのが本当のところのようだ。
「安保法で国際社会における日本の役割が飛躍的に大きくなったとか、日本が軍事大国化するといった考えは根本的に間違っています」と語るのは、スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副所長のダニエル・スナイダー氏。
「そもそも日本にはまともな戦闘能力などないのですからね。法律が変わったからといって、安全保障でアメリカに依存している状況は変わりませんし、これほど大騒ぎして憲法解釈を変えなくても、政府が主張しているような日本の果たすべき役割は担えたはずです。
日本は遠隔地で戦闘するためのテクノロジーやマンパワーを持っていません。長距離を飛行する戦闘機も不十分ですし、戦闘機を運ぶシステムもない。海上自衛隊は遠隔地には行けるかもしれませんが、基本的にアメリカの第7艦隊をエスコートしているに過ぎません」
スナイダー氏は、日本の防衛予算の問題も指摘する。
「額面ではそれなりに潤沢なのですが、あまりに非効率的におカネを使っています。日本の防衛予算は、三菱重工や富士重工といった企業への助成金のようになっているのです。弾薬一つとってみても、日本の弾薬はアメリカでは使用できない国内向けのもので、汎用性がなく、コストばかりかかる。
防衛システムが非効率的な上に、集団的自衛権が国民の理解を得られていないとすれば、アメリカが防衛面で日本を責任ある『普通の国』とみなすはずもありません」
これが安全保障の世界における現実なのだとしたら、そもそも安保法制を変える必要などなく、ただ安倍総理の自己満足のために、与野党が「から騒ぎ」しただけ。あまりにむなしい夏の国会だった。
■若者のデモが救いだった
そんななか、海外の人々を驚かせた数少ない出来事が、法案が審議されているあいだ国会議事堂の周辺で続いていた大規模なデモだ。
世界のメディアには日本の若者たちが政治的問題に対して声を上げたこと自体が珍しく映ったようだ。英「フィナンシャル・タイムズ」紙の元東京支局長デビッド・ピリング氏が語る。
「日本人は『政治に無関心だ』というイメージがありましたが、今回のデモを見て、私たちが思う以上に日本の市民社会は強く、成熟していると感じました」
前出のルブラン氏は次のように分析する。
「これまで政治的デモの中心になっていたのは、'60年代から政治運動を経験してきた中高年層でしたが、今回は若者が行動している。彼らが『長いものには巻かれよ』式の生き方を拒否していることは注目に値します。'70~'80年代は、経済が右肩上がりで『よりよい明日』を約束された若者たちが運動から離れて行きました。しかし長い経済停滞のせいで状況が変わってきているのです」
安保改定に関して批判的な報道が多かった韓国においても、一連のデモについては好意的にとらえられていた。
「これからの未来を担う大学生が平和主義に対する見識を見せてくれたことで、日本という国に希望が持てました。アジア諸国の人々にも感銘を与えたと思います」(韓国の週刊誌『時事IN』の元編集長・南文熙氏)
ボストン大学の国際関係・政治学教授のウィリアム・グライムス氏は、若者が政治に関心を持った意義は認めつつ、こう述べた。
「若者が主導するSEALDsは多くの学生運動同様、あまりに理想主義的で、無知に過ぎます。政治問題に関心を持つこと自体は評価すべきですが、法案の内容と日本が置かれている状況をもっと勉強したほうがいいと考えます」
今後、若者たちのデモ活動がどれくらい継続するのかはわからない。だが、「若者たちが、自分の周りで起きていることに強い意見を持つことは、強固な民主政治を築く上で欠かせないこと」(前出のピリング氏)であることもまた事実である。
戦後70年という節目に、安全保障というテーマで大きく揺れた国会とその周辺。今回の騒ぎが世界からどう見られていたのかを省みることが、日本が「不思議の国」から抜け出すための第一歩なのかもしれない。
「週刊現代」2015年10月10日合併号より
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