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放送大教授(政治学)御厨貴みくりや・たかし/1951年、東京都生まれ。東大法学部卒。東大教授を経て放送大教授(政治学)。TBS「時事放談」キャスターも務める。主な著書に『知の格闘―掟破りの政治学講義』(ちくま新書)(撮影/写真部・堀内慶太郎)
創価学会のおかげ? 御厨貴「官僚が頼りにしているのは公明党」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151009-00000004-sasahi-pol
週刊朝日 2015年10月16日号より抜粋
「安全保障関連法案」が最大のテーマだった通常国会。身内のミスに足を引っ張られながらも、数にものを言わせて安保法を成立させた安倍政権に、東大・松原隆一郎教授(社会経済学)と放送大・御厨貴教授(政治学)の2人が迫る。
* * *
松原:非常に残念だったのは、安倍首相は今回も自衛隊員のありうべき死について踏み込みませんでした。
御厨:首相は「安保法案で日本は平和になる」「隊員のリスクは下がる」で進めてしまいましたから。そちらの議論は必要とはわかっていても、今さらできないのでしょう。
松原:活動範囲が広がれば、隊員のリスクが高まるのは明らかです。最悪の事態が起きたとき、国はどう責任を取るのか、どこに祀(まつ)るのか、どのような遺族補償をするのか。今から議論を進めておかないと。隊員も家族もやってられませんよ。
御厨:自衛隊員が死ぬということのリアリティーをほとんどの政治家がわかっていないように思います。死ぬかもしれないけど、かつての大戦のように死ぬわけではない。数もごく少数という、どこか楽観的な雰囲気が広がっている。非常に危うさを感じます。
松原:どうせ数で押し切られるなら、軍事的に何が起きるのか議論してみる。それは民主党しかできなかったことでしょう。でも、決定的な論点を生み出せなかった。「安倍首相の暴走だ」と批判しましたが、民主党政権に呆れた国民が安倍支持に雪崩をうったことの結果です。その根本的な反省がないから、何も出てこない。
御厨:学生団体「SEALDs(シールズ)」による抗議活動が注目を集め始めたとき、民主党はものすごく喜んで「連帯しよう」と近寄りました。学生と連帯してどうするんですか。しかも、向こうの中心メンバーから民主党は信用しないと言われたのだから、目も当てられません。
松原:与党とはいえ「平和の党」を標榜(標榜)する公明党が、あっさり法案に賛成したことも特徴的でした。
御厨:反対して再び野党に戻るなんてことは、全く考えていないのでしょう。官僚に聞いたところ、安保法案の勉強会をやると自民党より、公明党のほうがはるかに熱心だったようです。
松原:バックに創価学会がいるから、彼らにしっかり説明しなければという重圧があるんですかね。
御厨:かつて自民党に強い派閥があったときは、官僚の人たちはそこに法案を持ち込んで「お願いします。進めてください」というスタイルでした。それが今では最初に公明党に持ち込んでいる。東大の法学部卒の弁護士が多く、説明すると理屈で何とかなる。
松原:公明が今や自民党の有力派閥になっているんですね(笑)。
御厨:官僚がいま頼りにしているのは間違いなく公明党。公明を巻き込み自民党にぶつかっていく。公明は補完勢力ではなく、前衛勢力に変わりつつあります。
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