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醍醐聰のブログ
もっと現実を直視した国民主体の政権構想を(1)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-ef22.html
2015年10月5日
野党間の選挙協力だけでは安保法を廃止できる政権は実現しない
安保法案が国会で「成立した」とされる事態の後、野党間では来年の参院選さらにはその後の衆院選をにらんだ選挙協力、政権構想が議論されている。きっかけは、安保法(戦争法)を廃止できる政権を目指して野党間の選挙協力を打ち出した日本共産党の提案(「国民連合政府」構想)である。
その骨子は、戦争法の廃止、立憲主義と民主主義を取り戻すという一点で、全野党、各団体、個人が共同で、安倍自公政権に変わる「国民連合政権」を樹立する、その合意を前提にして来るべき参議院選、衆議院選で全野党が選挙協力をする、という提案である。そのためには原則、全選挙区に候補者を擁立するとしてきたこれまでの方針にこだわらないとも述べている。
社民党の吉田党首、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢代表はこれに賛意を示した。民主党の岡田代表は注目に値する提案と前向きに受け止め、社民、生活両党と同様、共産党と話し合いを続けると発言する一方、来年の参院選については野党第1党の民主党と第2党の維新の党の関係を重視し、共通政策のとりまとめ、候補者調整を急ぐ考えを表明している。
とはいえ、民主党の幹部内には岡田氏が志位共産党委員長と会談すること自体に反対する意見があり、党内の保守系の議員も含めて、民主党が全野党の選挙協力について党内合意を集約するのは至難のことと見られる。
これとは別に生活の党の小沢代表は、「政権交代こそ野党連携の最大の目的」と題する談話を発表。その中で、「野党が次の参院選を統一名簿による選挙、つまり「オリーブの木構想」で戦うことを提案している。ここでいう「オリーブの木構想」とは単なる選挙協力や選挙区調整と考え方が根本的に違い、・・・・選挙時の届け出政党を既存の政党とは別に一つつくり、そこに各党の候補者が個人として参加するというもの」である。
目的と方法が乖離した提案
こうした連合政権構想なり、政権交代構想にはさっそく、いくつかの団体や通称「著名人」の間から賛同の声が寄せられている。
しかし、賛否以前に、上記の提案を一読して、そこで掲げられた目的(戦争法を廃止できる政権の樹立等)と、そのためにとして提案された方法(連合政権作り、選挙協力)の間に大きな乖離があることは否定すべくもない。
共産党の提案は「国民連合政府」と名付けられているが、そのための具体的方法として謳われているのは全野党(共産、民主、維新、社民、生活、無所属クラブの5党1会派)の連合、選挙協力である。
しかし、これら全野党の連合、選挙協力がかりに実現したとしても、それで自公両党を上回る議席を獲得できるのか? 答えはNoである。安保法案が「可決」された直後の世論調査を見てみよう。いずれも9月19、20日の調査である。
安保法に賛成か
(括弧内の数字は賛成、反対の残余として表記)
つまり、どの調査でも、安保法案が「成立した」とされる現時点でも法律に反対の意見が過半を占めているのである。
では政党支持率はどうか?
(NHKの調査は9月11〜13日時点)
つまり、どの世論調査を見ても、野党5党の選挙協力がかりに実現したとしても、合計支持率は16〜21%にとどまり、自公両党の合計支持率(31〜38%)のほぼ半分に過ぎないのである。
もっとも、これは全国を1つに束ねた数値で、選挙区ごとに見なければ選挙協力の影響は計れないといえるかもしれない。これについては、『毎日新聞』が9月26日の朝刊で野党5党が来る参議院選挙の改選議席のうち、1人区すべてで候補者を1本化した場合の当落の試算をしている。
それによると、野党統一候補が自民候補を逆転するのは3つの選挙区(新潟、長野、三重)にとどまり、残り27の選挙区は自公候補者が議席を維持するとなっている。つまり、来年の参議院選にあたって、かりに野党5党の選挙協力(それも全選挙区で一本化という究極の選挙協力)が実現したとしても、自公政権に取って変わるには遠く及ばないのである。
もっとも野党の選挙協力の影響はたんなる足し算では測れないのは事実だろう。私はこれを「選挙協力のシナジー効果」と呼んでいる。例えば野党2党が統一候補を擁立すれば、それによる政治的影響力の増大に対する期待が高まり、2プラス1=3プラス・アルファの議席獲得効果を期待できるという予測である。
しかし、「選挙協力のプラスのシナジー効果」がどこまで実現するかは不確かである。そもそも維新の党と共産党の選挙協力が実現する見通しは低く、民主党内でも保守系の議員の非共産意識は簡単に解消しそうにない。むしろ、5党の選挙協力を進めようとすると、民主党に分裂の事態(マイナスのシナジー効果)さえ起こりかねない。そうなると上の試算さえ、机上の足し算となる公算が大きい。
このように考えると、たとえ暫定政権と断っても、それを「既存の野党の連合政府」という構想で提案したのでは、戦争法を廃止できる政府の樹立という目的にそぐわないのは自明である。この事実を直視しないまま、提案された政権構想―――たとえ、それが真剣な提案であっても―――を「戦争法を廃止できる」政権と銘打つのは信頼するに足る提案とは言えない。また、そうした提案に即座に賛意を表した「著名人」は、善意からとは言え、提案の内容をどこまで主体的に吟味したのかが問われるだろう。否、真剣な提案、善意の賛同というなら、なおのこと、その提案は、目指す目的(戦争法の廃止等)に適ったものかどうかを直視することを求められるのである。
もっと現実を直視した国民主体の政権構想を(1)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-ef22.html
2015年10月5日
野党間の選挙協力だけでは安保法を廃止できる政権は実現しない
安保法案が国会で「成立した」とされる事態の後、野党間では来年の参院選さらにはその後の衆院選をにらんだ選挙協力、政権構想が議論されている。きっかけは、安保法(戦争法)を廃止できる政権を目指して野党間の選挙協力を打ち出した日本共産党の提案(「国民連合政府」構想)である。
その骨子は、戦争法の廃止、立憲主義と民主主義を取り戻すという一点で、全野党、各団体、個人が共同で、安倍自公政権に変わる「国民連合政権」を樹立する、その合意を前提にして来るべき参議院選、衆議院選で全野党が選挙協力をする、という提案である。そのためには原則、全選挙区に候補者を擁立するとしてきたこれまでの方針にこだわらないとも述べている。
社民党の吉田党首、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢代表はこれに賛意を示した。民主党の岡田代表は注目に値する提案と前向きに受け止め、社民、生活両党と同様、共産党と話し合いを続けると発言する一方、来年の参院選については野党第1党の民主党と第2党の維新の党の関係を重視し、共通政策のとりまとめ、候補者調整を急ぐ考えを表明している。
とはいえ、民主党の幹部内には岡田氏が志位共産党委員長と会談すること自体に反対する意見があり、党内の保守系の議員も含めて、民主党が全野党の選挙協力について党内合意を集約するのは至難のことと見られる。
これとは別に生活の党の小沢代表は、「政権交代こそ野党連携の最大の目的」と題する談話を発表。その中で、「野党が次の参院選を統一名簿による選挙、つまり「オリーブの木構想」で戦うことを提案している。ここでいう「オリーブの木構想」とは単なる選挙協力や選挙区調整と考え方が根本的に違い、・・・・選挙時の届け出政党を既存の政党とは別に一つつくり、そこに各党の候補者が個人として参加するというもの」である。
目的と方法が乖離した提案
こうした連合政権構想なり、政権交代構想にはさっそく、いくつかの団体や通称「著名人」の間から賛同の声が寄せられている。
しかし、賛否以前に、上記の提案を一読して、そこで掲げられた目的(戦争法を廃止できる政権の樹立等)と、そのためにとして提案された方法(連合政権作り、選挙協力)の間に大きな乖離があることは否定すべくもない。
共産党の提案は「国民連合政府」と名付けられているが、そのための具体的方法として謳われているのは全野党(共産、民主、維新、社民、生活、無所属クラブの5党1会派)の連合、選挙協力である。
しかし、これら全野党の連合、選挙協力がかりに実現したとしても、それで自公両党を上回る議席を獲得できるのか? 答えはNoである。安保法案が「可決」された直後の世論調査を見てみよう。いずれも9月19、20日の調査である。
安保法に賛成か
賛成 | 反対 | 分からない・無回答 | |
---|---|---|---|
朝日新聞 | 30% | 51% | (19%) |
毎日新聞 | 33 | 57 | (10) |
共同通信 | 34.1 | 53.0 | 12.9 |
つまり、どの調査でも、安保法案が「成立した」とされる現時点でも法律に反対の意見が過半を占めているのである。
では政党支持率はどうか?
朝日新聞 | 毎日新聞 | 共同通信 | NHK | |
---|---|---|---|---|
自民党 | 33% | 27% | 32.8% | 34.7% |
民主党 | 10 | 12 | 9.5 | 9.8 |
維新の党 | 2 | 3 | 2.8 | 1.3 |
公明党 | 3 | 4 | 3.8 | 3.7 |
共産党 | 4 | 5 | 3.9 | 4.0 |
次世代の党 | 0 | 0 | 0.5 | 0.1 |
社民党 | 1 | 1 | 1.5 | 0.6 |
生活の党 | 0 | 0 | 0.5 | 0.2 |
元気にする党 | 0 | 0 | - | 0.2 |
新党改革 | 0 | - | 0.2 | |
その他 | 1 | 7 | 0.4 | 0.6 |
支持政党なし | 37 | 38 | 43.6 | 36.2 |
わからない・無回答 | 9.0 | |||
野党5党の合計 | 17% | 21% | 18.2% | 15.9% |
つまり、どの世論調査を見ても、野党5党の選挙協力がかりに実現したとしても、合計支持率は16〜21%にとどまり、自公両党の合計支持率(31〜38%)のほぼ半分に過ぎないのである。
もっとも、これは全国を1つに束ねた数値で、選挙区ごとに見なければ選挙協力の影響は計れないといえるかもしれない。これについては、『毎日新聞』が9月26日の朝刊で野党5党が来る参議院選挙の改選議席のうち、1人区すべてで候補者を1本化した場合の当落の試算をしている。
それによると、野党統一候補が自民候補を逆転するのは3つの選挙区(新潟、長野、三重)にとどまり、残り27の選挙区は自公候補者が議席を維持するとなっている。つまり、来年の参議院選にあたって、かりに野党5党の選挙協力(それも全選挙区で一本化という究極の選挙協力)が実現したとしても、自公政権に取って変わるには遠く及ばないのである。
もっとも野党の選挙協力の影響はたんなる足し算では測れないのは事実だろう。私はこれを「選挙協力のシナジー効果」と呼んでいる。例えば野党2党が統一候補を擁立すれば、それによる政治的影響力の増大に対する期待が高まり、2プラス1=3プラス・アルファの議席獲得効果を期待できるという予測である。
しかし、「選挙協力のプラスのシナジー効果」がどこまで実現するかは不確かである。そもそも維新の党と共産党の選挙協力が実現する見通しは低く、民主党内でも保守系の議員の非共産意識は簡単に解消しそうにない。むしろ、5党の選挙協力を進めようとすると、民主党に分裂の事態(マイナスのシナジー効果)さえ起こりかねない。そうなると上の試算さえ、机上の足し算となる公算が大きい。
このように考えると、たとえ暫定政権と断っても、それを「既存の野党の連合政府」という構想で提案したのでは、戦争法を廃止できる政府の樹立という目的にそぐわないのは自明である。この事実を直視しないまま、提案された政権構想―――たとえ、それが真剣な提案であっても―――を「戦争法を廃止できる」政権と銘打つのは信頼するに足る提案とは言えない。また、そうした提案に即座に賛意を表した「著名人」は、善意からとは言え、提案の内容をどこまで主体的に吟味したのかが問われるだろう。否、真剣な提案、善意の賛同というなら、なおのこと、その提案は、目指す目的(戦争法の廃止等)に適ったものかどうかを直視することを求められるのである。
もっと現実を直視した国民主体の政権構想を(2)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-11c8.html
2015年10月5日
既存の野党の枠組みを超えた政権・選挙構想を
前の記事で書いたように、かりに今の野党5党がまとまって選挙協力(候補者調整等)をしても、政党別支持率を基礎に予測するかぎり、とうてい自公両党を上回る議席を獲得できない。では、自公政権に代わる、安保法を廃止できる政府を実現するには何が必要か?さしあたって、選挙に臨む態勢に限定していうと、次の2つだと思う。
1つは、有権者の36〜44%を占める「支持政党なし」層のうちで、安保法に反対する層の受け皿となりうる政権構想を示すことである。かりに、この36〜44%の有権者がすべて安保法に反対なら(実際は安保法反対の意思だけで自公政権に代わる政権の支持に直結するとは言い難い。この点は追って触れる)、そうした有権者と、例えば民主党支持層の半分、そして共産党、社民党、生活の党の全支持層を合せて自公両党を上回る議席を獲得できる可能性がある。
ただし、これは比例区について言えることで、小選挙区では単純にそうはならない。また、「支持する政党なし」層の中には選挙となると、消極的にせよ、自公両党に投票する層も少なからずある。
運動論としていえば、「支持政党なし」層の中で、安保法反対を含め、政権交代を支持する層をいかに広げるかが大きな課題である。
もう一つは、現在、自公両党を支持する層の中から反自公政権に転じる人々を生み出すことである。そんな可能性はあるのか? 私は潜在的にその可能性はあると考えている。この点を探る材料として、『朝日新聞』が最近の世論調査で採用している自民党支持層への重ね聞きの設問に注目したい。
例えば、『朝日新聞』は今年の9月12, 13日に実施した世論調査の中で、安倍内閣を支持すると答えた回答者(全体の36%)と支持しないと答えた回答者(全体の42%)に、これからも安倍内閣への支持(不支持)を続けるかという質問をしている。回答結果は次のとおりだった。( )内は全体に対する割合。
安倍内閣を支持すると答えた人々
安倍内閣を支持しないと答えた人々
安倍内閣への支持率の潜在的変動率(ネットの増減可能性)
d−b=▲14%ポイント
つまり、少なくともこの14%ポイントの自民党支持層、さらにはそれを上回る層を政権交代支持層に変えられる可能性が潜在しており、その可能性を実現させることが安保法を廃止し、立憲民主主義を取り戻す政府を実現する上でカギになっていることがわかる。
なお、公明党支持層の中でも安保法案を支持した公明党に公然と反旗を挙げる人々が現われた。ここから、公明党支持層も盤石ではないことが窺えるが、その中から政権交代を待望する層がどれくらい現れるかとなると、予測は難しいので、ここでは立ち入らない。
以上を要約すると、自公政権を退陣させ、安保法を廃止し、立憲民主主義を取り戻す政府を実現するには、@現在の野党の連合だけでは到底及ばず、A有権者の中で自民党支持層に匹敵する割合を占める「支持政党なし」層、ならびにB現在の自民党支持層の中で支持の意思が強固とはいえない層を政権交代支持層に変えることが必須であることがわかる。
しかも、その可能性はないのかというとそうではない。なぜなら、安保法の廃止という目的に関していえば、@ABを合わせた割合(全有権者の約55%)―――Aの「支持政党なし」の約6割(全有権者の約23%)を政権交代支持層にすると仮定―――は、「成立」後も安保法に反対する有権者の割合とほぼ一致し、決して非現実的な見通しではない。しかも、この割合(全有権者の約55%)は自公両党支持層に、その他、政権交代不支持層を加えた割合を上回るから、政権交代を可能にする基盤となる。
とすれば、@ABの足し算が可能な状況をどう切り開くかが問題である。この点を次に考えたい。
無党派の候補者を国民主導で擁立すること
目下、いくつかの野党から提案されている政権構想に欠けているには一口で言うと、既存の野党の連合を追求するのにとどまり、AやBの有権者を政権交代支持層に変える戦略を示せていないということである。これでは目的とする政権交代が到底かなえられないことは先の記事で示した通りである。
このような限界を超えるために私が必要と思う第1は、無党派層や弱い自民党支持層の受け皿となりうる候補者を、既存の野党にとらわれず、国民の間から主体的に擁立することである。
政党である以上、自党の政策の優位性を有権者に訴え、互いに競い合って、自党の政治勢力を議会内外で広げようとするのは当然のことであり、それに自制を求める道理はない。
しかし、国民・有権者がそうした政党の論理に歩調を合わせたり、政党の呼びかけに受け身で応えたりするだけでよいわけではない。
国民が主権者たる自己の地位を自覚し、日本国憲法第12条に従って、「憲法が国民に保障する自由及び権利」を自らの「不断の努力によつて保持しなければならない」以上、有権者は国政選挙にあたっても、自らに保障された自由と権利(幸福追求権を含む)の実現を可能とする選良を賢明に選ぶだけでなく、多くの国民の総意でそれにふさわしい候補者を擁立する権利と義務も有しているとみなすのが至当である。
そうした権利と義務は政党を含む結社への参集を通じて果たすのが通例といえるのかもしれない。しかし、与野党を問わず、既存の政党が選挙時に掲げた公約をしばしば反故にしたり、自党の勢力拡張を追求したりするあまり、自民党批判票が分散し、結果として自民党の大勝を許すという状況が続いた以上、有権者は既存の野党の枠にとらわれず、独自に無党派の候補者を擁立する行動を起こしても不思議でないどころか、いままさに有権者が政党の動き待ちではなく、主体的にそうした行動を起こすべき時が切迫しているのである。
実際、日本にそうした先例がある。1960年代に大都市部で相次いだ革新首長の誕生がそれである。私は蜷川虎三氏が府知事に当選し再選された時代に京都で学生生活を過ごし、蜷川知事を誕生させる運動の片隅に加わったこともある。あの時の選挙母体は社共両党と言われる。しかし、それは事実の一面ではあったが、労組や地元業者、府下の自治体首長、各界の団体・個人の共同があってのことだった。
「社共統一」というと、今や昔なつかしい言葉となった。また、労組や各界の団体の共同といっても、今はそうした既存の組織に依存しない、三々五々集まる人々が主役の「街角民主主義」という言葉さえ生まれている。
そうであれば、なおさら、相互に無知の人々をつなぐ有為の人材を得て、国民の間から、主体的に安保法廃止、立憲民主主義回復などの公約を掲げ、特定の政党の利害にとらわれない候補者、選挙で支持母体と交わす誓約を忠実に守ると信頼できる人物―――さらに言わせてもらえば、「オレがオレが」の自己顕示欲や独善的な正義感に災いされていない人物―――を擁立して選挙に臨む態勢を早急に整える必要がある。
こうした態勢を整えることが、既存の政党に物足りなさを感じている上記のAやBの有権者層の支持を得る受け皿になる重要な条件なのである。その上で、当選後も無党派として活動しながら、主要な政策で一致する既存の政党と連立政権を組むのである。
共通公約以外の課題を決定する仕組みも公約すること
共産党の今回の提案は「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す」という1点で国民連合政府をつくるというのが要になっている。小沢一郎氏の談話でも、「野党連携の政治的な旗印は、『非自公』、「反安保法」などの主要政策の一致で良い」、「政策論議で細かいところまで詰めて一致させる必要はありません」と述べている。
確かに、多くの政策での一致を目指す余りに、多くの国民が願う安保法の廃止を実現する政権が遠のいてしまうのは避けなければならない。しかし、戦争法廃止、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を取り消すのが主たる課題とは言っても、これらの課題を施行するだけでは政権を運営できず、その他の課題――予算編成などの内政、外交全般――についての決定も迫られるのは自明である。
しかも、安保法以外でも、沖縄辺野古での基地建設をどうするのか、原発再稼働や今後のエネルギー政策をどうするのか、消費税の増税、低所得者対策をどうするのか、TPP交渉をどのように扱うのか、社会保障の充実とそのための財源を、財政再建と並行して、どのように確保するのかなど、眼前に重要な政策課題が山積している。
私は政権構想という以上、「1点」での一致をことさら強調する理由はなく、諸々の重要政策についての合意を追求するべきであると思っている。実際、安保法の廃止にとどまらず、上記のような主要政策でも合意できる可能性は低くないと思える。
その上で、選挙時に掲げた政権構想で共通公約に盛り込まれなかった政策課題を政権発足後、連合政権としてどのように決定するのかという「決め方」を共通公約に掲げる必要があると思う。問題が起こる都度、連合政権に参加した政党間で協議しますでは、AやBの有権者は新しい政権に不安を抱く公算が強く、政権交代に二の足を踏む層を増やす結果になる公算が大きい。これについて私は以下のように考える。
新しい政権が特定の政党単独政権として成り立つならともかく、連立政権を想定すると、政権に参加する政党はどこも単独では過半の議席を得てない状況のはずである。その場合、共通公約に掲げた以外の課題について、新しい政権がどのような判断をしそうか、「決められない政権」になりはしないかという不安をどこまで払拭できるは、政権交代に対する支持をどれほど広げられるかを決める重要な要素になると思われる。
これについて私の提案は至って単純明快で、「連合政権内で協議を重ねた末、まとまらなければ、それぞれの問題に関する時々の世論調査で示された多数の民意に従う」というものである。問題となった課題について世論調査がない場合は、政権が外部の独立した機関に世論調査を委託し、その結果に従って決定をするという仕組みである。
議会で絶対多数の議席を占めた自公政権でも、民意を無視した政策を遂行しようとした時は国民から強い批判を浴びた。同じことは自公政権に代わる政権が誕生した場合にも通じるはずである。というより、民意を無視した政権運営が安倍政権に対する国民の不支持を広めた事実を教訓にして、新しい政権は民意尊重の姿勢を単に言葉でではなく、今述べたような政権運営の柱の中に具体的な形で組み入れることが強く望まれる。そうした民意尊重の姿勢を共通公約に掲げることは、上記のAやBの有権者層にも新政権に対する信任を広げ、政権交代を実現する大きな力にもなるという認識を、無党派で擁立される候補者も既存の野党も共有することが極めて重要である。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-11c8.html
2015年10月5日
既存の野党の枠組みを超えた政権・選挙構想を
前の記事で書いたように、かりに今の野党5党がまとまって選挙協力(候補者調整等)をしても、政党別支持率を基礎に予測するかぎり、とうてい自公両党を上回る議席を獲得できない。では、自公政権に代わる、安保法を廃止できる政府を実現するには何が必要か?さしあたって、選挙に臨む態勢に限定していうと、次の2つだと思う。
1つは、有権者の36〜44%を占める「支持政党なし」層のうちで、安保法に反対する層の受け皿となりうる政権構想を示すことである。かりに、この36〜44%の有権者がすべて安保法に反対なら(実際は安保法反対の意思だけで自公政権に代わる政権の支持に直結するとは言い難い。この点は追って触れる)、そうした有権者と、例えば民主党支持層の半分、そして共産党、社民党、生活の党の全支持層を合せて自公両党を上回る議席を獲得できる可能性がある。
ただし、これは比例区について言えることで、小選挙区では単純にそうはならない。また、「支持する政党なし」層の中には選挙となると、消極的にせよ、自公両党に投票する層も少なからずある。
運動論としていえば、「支持政党なし」層の中で、安保法反対を含め、政権交代を支持する層をいかに広げるかが大きな課題である。
もう一つは、現在、自公両党を支持する層の中から反自公政権に転じる人々を生み出すことである。そんな可能性はあるのか? 私は潜在的にその可能性はあると考えている。この点を探る材料として、『朝日新聞』が最近の世論調査で採用している自民党支持層への重ね聞きの設問に注目したい。
例えば、『朝日新聞』は今年の9月12, 13日に実施した世論調査の中で、安倍内閣を支持すると答えた回答者(全体の36%)と支持しないと答えた回答者(全体の42%)に、これからも安倍内閣への支持(不支持)を続けるかという質問をしている。回答結果は次のとおりだった。( )内は全体に対する割合。
安倍内閣を支持すると答えた人々
a. これからも支持を続ける | 48%(17%) |
b. 支持を続けるとは限らない | 47%(17%) |
安倍内閣を支持しないと答えた人々
c. これからも支持しない | 63%(27%) |
d. 支持するかもしれない | 33%(14%) |
安倍内閣への支持率の潜在的変動率(ネットの増減可能性)
d−b=▲14%ポイント
つまり、少なくともこの14%ポイントの自民党支持層、さらにはそれを上回る層を政権交代支持層に変えられる可能性が潜在しており、その可能性を実現させることが安保法を廃止し、立憲民主主義を取り戻す政府を実現する上でカギになっていることがわかる。
なお、公明党支持層の中でも安保法案を支持した公明党に公然と反旗を挙げる人々が現われた。ここから、公明党支持層も盤石ではないことが窺えるが、その中から政権交代を待望する層がどれくらい現れるかとなると、予測は難しいので、ここでは立ち入らない。
以上を要約すると、自公政権を退陣させ、安保法を廃止し、立憲民主主義を取り戻す政府を実現するには、@現在の野党の連合だけでは到底及ばず、A有権者の中で自民党支持層に匹敵する割合を占める「支持政党なし」層、ならびにB現在の自民党支持層の中で支持の意思が強固とはいえない層を政権交代支持層に変えることが必須であることがわかる。
しかも、その可能性はないのかというとそうではない。なぜなら、安保法の廃止という目的に関していえば、@ABを合わせた割合(全有権者の約55%)―――Aの「支持政党なし」の約6割(全有権者の約23%)を政権交代支持層にすると仮定―――は、「成立」後も安保法に反対する有権者の割合とほぼ一致し、決して非現実的な見通しではない。しかも、この割合(全有権者の約55%)は自公両党支持層に、その他、政権交代不支持層を加えた割合を上回るから、政権交代を可能にする基盤となる。
とすれば、@ABの足し算が可能な状況をどう切り開くかが問題である。この点を次に考えたい。
無党派の候補者を国民主導で擁立すること
目下、いくつかの野党から提案されている政権構想に欠けているには一口で言うと、既存の野党の連合を追求するのにとどまり、AやBの有権者を政権交代支持層に変える戦略を示せていないということである。これでは目的とする政権交代が到底かなえられないことは先の記事で示した通りである。
このような限界を超えるために私が必要と思う第1は、無党派層や弱い自民党支持層の受け皿となりうる候補者を、既存の野党にとらわれず、国民の間から主体的に擁立することである。
政党である以上、自党の政策の優位性を有権者に訴え、互いに競い合って、自党の政治勢力を議会内外で広げようとするのは当然のことであり、それに自制を求める道理はない。
しかし、国民・有権者がそうした政党の論理に歩調を合わせたり、政党の呼びかけに受け身で応えたりするだけでよいわけではない。
国民が主権者たる自己の地位を自覚し、日本国憲法第12条に従って、「憲法が国民に保障する自由及び権利」を自らの「不断の努力によつて保持しなければならない」以上、有権者は国政選挙にあたっても、自らに保障された自由と権利(幸福追求権を含む)の実現を可能とする選良を賢明に選ぶだけでなく、多くの国民の総意でそれにふさわしい候補者を擁立する権利と義務も有しているとみなすのが至当である。
そうした権利と義務は政党を含む結社への参集を通じて果たすのが通例といえるのかもしれない。しかし、与野党を問わず、既存の政党が選挙時に掲げた公約をしばしば反故にしたり、自党の勢力拡張を追求したりするあまり、自民党批判票が分散し、結果として自民党の大勝を許すという状況が続いた以上、有権者は既存の野党の枠にとらわれず、独自に無党派の候補者を擁立する行動を起こしても不思議でないどころか、いままさに有権者が政党の動き待ちではなく、主体的にそうした行動を起こすべき時が切迫しているのである。
実際、日本にそうした先例がある。1960年代に大都市部で相次いだ革新首長の誕生がそれである。私は蜷川虎三氏が府知事に当選し再選された時代に京都で学生生活を過ごし、蜷川知事を誕生させる運動の片隅に加わったこともある。あの時の選挙母体は社共両党と言われる。しかし、それは事実の一面ではあったが、労組や地元業者、府下の自治体首長、各界の団体・個人の共同があってのことだった。
「社共統一」というと、今や昔なつかしい言葉となった。また、労組や各界の団体の共同といっても、今はそうした既存の組織に依存しない、三々五々集まる人々が主役の「街角民主主義」という言葉さえ生まれている。
そうであれば、なおさら、相互に無知の人々をつなぐ有為の人材を得て、国民の間から、主体的に安保法廃止、立憲民主主義回復などの公約を掲げ、特定の政党の利害にとらわれない候補者、選挙で支持母体と交わす誓約を忠実に守ると信頼できる人物―――さらに言わせてもらえば、「オレがオレが」の自己顕示欲や独善的な正義感に災いされていない人物―――を擁立して選挙に臨む態勢を早急に整える必要がある。
こうした態勢を整えることが、既存の政党に物足りなさを感じている上記のAやBの有権者層の支持を得る受け皿になる重要な条件なのである。その上で、当選後も無党派として活動しながら、主要な政策で一致する既存の政党と連立政権を組むのである。
共通公約以外の課題を決定する仕組みも公約すること
共産党の今回の提案は「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す」という1点で国民連合政府をつくるというのが要になっている。小沢一郎氏の談話でも、「野党連携の政治的な旗印は、『非自公』、「反安保法」などの主要政策の一致で良い」、「政策論議で細かいところまで詰めて一致させる必要はありません」と述べている。
確かに、多くの政策での一致を目指す余りに、多くの国民が願う安保法の廃止を実現する政権が遠のいてしまうのは避けなければならない。しかし、戦争法廃止、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を取り消すのが主たる課題とは言っても、これらの課題を施行するだけでは政権を運営できず、その他の課題――予算編成などの内政、外交全般――についての決定も迫られるのは自明である。
しかも、安保法以外でも、沖縄辺野古での基地建設をどうするのか、原発再稼働や今後のエネルギー政策をどうするのか、消費税の増税、低所得者対策をどうするのか、TPP交渉をどのように扱うのか、社会保障の充実とそのための財源を、財政再建と並行して、どのように確保するのかなど、眼前に重要な政策課題が山積している。
私は政権構想という以上、「1点」での一致をことさら強調する理由はなく、諸々の重要政策についての合意を追求するべきであると思っている。実際、安保法の廃止にとどまらず、上記のような主要政策でも合意できる可能性は低くないと思える。
その上で、選挙時に掲げた政権構想で共通公約に盛り込まれなかった政策課題を政権発足後、連合政権としてどのように決定するのかという「決め方」を共通公約に掲げる必要があると思う。問題が起こる都度、連合政権に参加した政党間で協議しますでは、AやBの有権者は新しい政権に不安を抱く公算が強く、政権交代に二の足を踏む層を増やす結果になる公算が大きい。これについて私は以下のように考える。
新しい政権が特定の政党単独政権として成り立つならともかく、連立政権を想定すると、政権に参加する政党はどこも単独では過半の議席を得てない状況のはずである。その場合、共通公約に掲げた以外の課題について、新しい政権がどのような判断をしそうか、「決められない政権」になりはしないかという不安をどこまで払拭できるは、政権交代に対する支持をどれほど広げられるかを決める重要な要素になると思われる。
これについて私の提案は至って単純明快で、「連合政権内で協議を重ねた末、まとまらなければ、それぞれの問題に関する時々の世論調査で示された多数の民意に従う」というものである。問題となった課題について世論調査がない場合は、政権が外部の独立した機関に世論調査を委託し、その結果に従って決定をするという仕組みである。
議会で絶対多数の議席を占めた自公政権でも、民意を無視した政策を遂行しようとした時は国民から強い批判を浴びた。同じことは自公政権に代わる政権が誕生した場合にも通じるはずである。というより、民意を無視した政権運営が安倍政権に対する国民の不支持を広めた事実を教訓にして、新しい政権は民意尊重の姿勢を単に言葉でではなく、今述べたような政権運営の柱の中に具体的な形で組み入れることが強く望まれる。そうした民意尊重の姿勢を共通公約に掲げることは、上記のAやBの有権者層にも新政権に対する信任を広げ、政権交代を実現する大きな力にもなるという認識を、無党派で擁立される候補者も既存の野党も共有することが極めて重要である。
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