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「安保法制の国会審議を見て、自民党の劣化を痛感せざるを得なかった」
田原総一朗「旧ソ連や中国に似てきた自民党からは国民が離れていく」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151002-00000004-sasahi-pol
週刊朝日 2015年10月9日号
ジャーナリストの田原総一朗氏は、「自民党の劣化」を感じるという。
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国会の周囲を数万人の国民が埋め尽くし「廃案」を叫び続ける中で、9月19日午前2時18分に安保法制は可決された。安保法制を一貫して支持し続けた読売新聞の世論調査で、成立を「評価しない」が58%、産経新聞でも「評価しない」が56.7%である。安保法制の国会審議を見て、自民党の劣化を痛感せざるを得なかった。たとえば、安倍首相は集団的自衛権行使の具体例として挙げていたホルムズ海峡での機雷掃海を、後に「現実問題として想定していない」と否定し、また、やはり代表的事例として挙げていた邦人輸送中の米艦防護についても、中谷元・防衛相は「邦人が乗っているかは絶対的なものではない」と答えている。
このような事柄は、かつての自民党ならば党内で議論され、基本的な矛盾がそのまま持ち越されることはなかった。いつの時代にも、自民党には主流派に厳しく論争を挑む反主流派、非主流派などの議員がいて、政治ジャーナリストたちは、自民党内の論争の取材にこそエネルギーと神経のほとんどを注いだのであった。
岸信介首相の60年安保騒動のときも、自民党内に公然と岸首相のやり方を批判する勢力があり、岸首相が安保改定と心中するかたちで首相を辞任せざるを得なかったのも、いわば党内事情であった。自民党にはタカ派もいればハト派もいて、自由に自分の意見を表明して討論できるという柔構造になっていて、それゆえに長期間政権を持続し得たのである。
だが、一つには衆院の選挙制度が小選挙区制に変わり、執行部が推薦する人物しか立候補できなくなったため、反主流派、非主流派がなくなってしまった。今回の安保法制も、批判をしているのは山崎拓氏、古賀誠氏、野中広務氏などのOBばかりで、現役の自民党議員からは意見が出てこない。誰もが自分の意見を表明するのを怖がっているようでさえある。
たとえば総裁選も、かつての自民党ならば複数の議員が出馬して、それぞれの自民党論を打ち上げて競うのが通常のパターンだった。そのことで、国民は自民党の議員の発想の広さを知ることができた。ところが今回は、全派閥がまるで忠誠心を競うように安倍首相支持を打ち出し、自民党の広さを示すために立候補を決意した野田聖子氏の推薦人が強引にはぎとられ、ついに20人を割ってしまった。自民党は旧ソ連や中国の政権を「独裁」だと、半ば揶揄(やゆ)するように批判していたのだが、それに酷似してきたわけだ。
野党にも問題がある。野党第1党の民主党が、最後まで対案を示さなかった。共産党のように政権を狙わず、企業で言えば監査役のような政党ならば、批判の鋭さで勝負すればよい。私は共産党を批判するつもりはなく、監査役のような野党の必要は認めている。だが、民主党は一度は政権を奪取し、これからも政権を狙っているはずの政党である。
あらためては記さないが、今回の安保法制には多くの問題がある。だからこそ各紙の世論調査でも「反対」が「賛成」を大きく上回っている。民主党はどのような安保法制を考えているのか。実は対案はつくられていたようなのだが、党内に異論があり、対立を恐れて「反対」でまとめたのだという。自民党だけでなく、野党の民主党までが、党内論議、討論を嫌がるとはどういうことなのか。これでは政治が劣化し、国民からどんどん遊離してしまうばかりだ。
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