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2015年09月28日 (月) [NHK総合]
視点・論点 「安保法制を考える(1)〜なぜこの法制が必要か〜」
拓殖大学 特任教授 森本 敏
このたび、安全保障関連法いわゆる平和安全法制が成立しました。この法制についてはいろいろな意見や見方がありますが、本日は、この法制の背景や意味合いについてお話ししたいと思います。
まず、この法制の背景にある国際情勢の変化についてですが、その特徴は第一に、世界のパワーバランスが構造的に変化しているという点です。特に、米国の相対的国力が低下し、対米戦略上の協調を進めているロシアと中国が経済的には難しい状況に直面しつつも、軍事面では軍の近代化につとめ、クリミア・ウクライナや南シナ海などで見られるように力を周辺に押し出して国際秩序の現状変更を試みるなど国際社会の不安定要因となっています。
第二は国際経済面で経済連携の進展に伴い発展と成長を享受する地域がある一方で、経済格差や難民・移民・環境・人権・人口の構造変化などの問題が深刻化し、先進国による国際協力だけでは、十分に対応できない状況が続いていることです。
第三は、中東・湾岸・北アフリカや欧州・アジアなどで、IS=過激派組織イスラミックステートのテロ活動や国家と非国家主体の混在するハイブリッド紛争や平時と有事の間に混在するグレイゾーン事態が見られ、海洋における領有権問題・サイバー戦争や大量破壊兵器の拡散などが国際社会を不安定にしているという現象が広がっていることです。
アジア太平洋においては、北朝鮮が依然として弾道ミサイルや核兵器の開発を進め、特に、日本を射程に入れた弾道ミサイルの配備は数百発に上っています。また、核実験も過去3回行っており、核兵器の小型化・軽量化が進むことが懸念されます。
中国は、9月3日に抗日戦勝記念式典と軍事パレードを行い、日米両国を目標とした各種兵器を示威し、30万人の兵員削減を提唱しつつも海・空軍の近代化、統合化を加速させる方向を強調しました。南シナ海では埋立て施設をすすめ、東シナ海では海洋プラットフォームを建設するなど海洋権益の拡大・保護にまい進しています。また、過去3年間にわたり尖閣諸島への領海侵入を続け、航空機の接近も顕著です。こうした中国の軍事動向は米国はじめアジア・太平洋諸国の共通懸念となっていますが、これに対しては多国間協力や同盟関係を軸とした抑止機能を強化しつつ対応することが一層重要になりつつあります。
このような安全保障環境のもとで、日本は、@米国が進めているリバランスーいわゆるアジア太平洋を重視した兵力展開と米軍再編計画―を支援しつつ、日米防衛協力ガイドライン見直し合意に基づき相互の役割・任務・機能の分担をすすめるとともに、A国際社会の平和と安全に対する一層の協力・貢献をすすめることによって、抑止機能を強化し日本の安全を確保していく必要があります。即ち、日本の防衛力を適切に整備するとともに日米同盟の信頼性を一層向上することにより、国の主権・領域・国民の安全を守ることは最優先課題ですが、同時に、国際社会の平和と安定のために協力し、貢献することも重要であることを意味します。今日の国際安全保障環境下では一国のみで自国や地域の平和と安定を確保することはもはや不可能に近く、一国平和主義は成り立たないからです。
日本がこのたび、憲法下において日本の平和と安全を守るために国会審議を通じて制定した平和安全法制は以上のような背景のもとに制定されたものですが、この法制は大別して2つの法制から構成されています。
第1は、いかなる事態においても日本の平和と安全を守るため、抑止力を一層強化することを狙いとした備えの体制をつくるために必要な法制です。
その1つは、存立危機事態−即ち、我が国と密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる事態−など新三要件のもとで日本の防衛のために集団的自衛権を行使するための法制です。これは日本防衛のための活動をしている米軍等に対する武力攻撃が発動要件であり、実際に自衛隊に防衛出動を命ずる場合は原則として事前の国会承認が求められています。
もう1つは、すでに制定されている周辺事態安全確保法の中で、「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」という法制上の目的を継承しつつ、現実にこのような事態に対して、日本の防衛に資する活動をする米軍等に対し、後方支援を行うための法制です。この法制を重要影響事態安全確保法と言います。この法律のもとで行う後方支援には補給・輸送・施設の利用・修理・整備・医療・通信などが含まれており、武力の行使に当たる行動は含まれていません。
第2は、日本だけでなく、国際社会の平和と安定に一層の協力・貢献をするための法制です。これにも2つの法制が含まれています。
その1つは、国連安保理決議に基づいて国際平和のために脅威を取り除く活動をする他国軍に対して後方支援を行うための法制であり、これは、国際平和支援法という新法として制定したものです。この後方支援にも武力の行使に当たる行動は含まれていません。日本が多国籍軍等に参加することもありません。
もう1つは、国際平和協力(PKO)法の改正であり、1992年に制定したPKO法では例えば、PKO活動中の自衛隊の近くにいる国連関係者などから救援要請があった際に、従来は救援活動ができなかったのですが、これら関係者の保護を行えるようにするなど活動内容の充実を図ろうとしたものです。
これらの法制について憲法違反であるとの指摘が一部から行われてきましたが、憲法の唯一の番人である最高裁は、「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置は国家固有の機能の行使として当然である」という見解を示しており、平和安全保障法制は決して違憲ではありません。
また、この法制は戦争法案であるという意見が一部にみられますが、我が国が戦争をするといった違法な行為をこの法制によって行おうとしているといった指摘は極めて不適切です。この法制は国に対するリスクや危険を未然に防ぐためのものであり、抑止力を強化する法制です。決して戦争をするための法制ではありません。
この平和安保法制に関連して徴兵制を議論する意見もありますが、徴兵制はそもそも憲法違反であり、この法制のどこにも書いてありません。今日、ハイテク化された戦闘活動は長い時間と労力をかけて育成されたプロ集団のみが従事できる活動であり、今や、G-7諸国はいずれも徴兵制をとっておりません。
また、法制に基づいて活動する自衛隊員のリスクが高まるのではないかという議論があることも承知していますが、本来、自衛隊員の活動にはリスクがあります。新たな任務も同様にリスクを伴いますが、隊員のリスクを減らす努力は、今後、この法制に基づいて活動するための基準を整備し、訓練をすすめることによって果たしていくべきであると考えます。
いずれにしても、国の安全保障には失敗が許されないのであり、この法制が将来の日本にとって真に国民の平和と安全を守るためのものであると確信しています。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/228327.html
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