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「負け」は「負け」を認めた時点で「負け」が決まる。あくまで「希望」を語り続ける山本太郎氏。
山本太郎は安保法成立後もバカみたいに前向きだった!「懲罰委員会にかかれば本望」「まだまだやれることはある」
http://lite-ra.com/2015/10/post-1545.html
2015.10.01. リテラ
【インタビュー】懲りないめげない山本太郎にこれからの闘い方を訊く(前)
安保法案が参議院本会議で可決された瞬間、本サイト編集部は大いにうなだれた。このままこの国はファシスト総理の暴走を止められないまま、戦争に突き進むのか──。うっかり「敗北を抱きしめ」(©江川紹子)そうになった、そんなとき。真夜中の国会前にとどろいたのは、変なイントネーションの、しかしとてつもなく陽気なシュプレヒコールだった。
「アベ〜はヤメ〜ロ!」「センソ〜ウはスル〜ナ!」
声の主は、もちろんあの男だ。そう、あの強行採決を「自民党が死んだ日」と呼び、喪服で数珠を手にお焼香をあげるパフォーマンス≒前衛芸術を繰り広げ、さらにはたったひとり、孤独な牛歩戦術に打って出た参議院議員・山本太郎である。
彼は敗北を抱きしめない。「これからは希望があるだけ」とさえ言う。うなだれている暇なんてない、前を向け──。そんなメッセージを発しつづける山本に、先週9月26日夕刻、本サイトは今後の“安倍政権との闘い方”を聞いた。
ちなみにこの日、山本はテレビ東京の『週刊ニュース新書』に生出演。日本経済新聞社が実質上の親会社にあたるテレ東で、しかも日経がスポンサーの番組で、山本は堂々と経団連批判を展開、またしてもネット上をざわつかせた。叱られてもへっちゃら、自称「みなさまの鉄砲玉」はまだまだ懲りていない、いや、ずっとフルスロットルのままだった!
■山本太郎の暴走は「計算」か「天然」か? 今度はテレ東で経団連批判
──さっそくなんですが、きょうも朝からテレ東で飛ばしていましたね。
山本 最初に牛歩とかアメリカの話で時間を取られてしまったんで、タイミングを見計らって経団連の話をしたんですよ。まあ、個別具体的な企業名を出すと重たいだろうけれど、「経団連」という団体としてなら大丈夫かなー?と考えまして。
ヒヤリとするようなことも、事もなげに笑いながら語る。この「勇気」に多くの人が期待を寄せる。
──いや、あまり大丈夫じゃないですよ! 司会の田勢康弘さんも目が泳いでいたし! それにしても、個別具体的な企業名だと厳しいけれど経団連までならいけるだろうとか、いつも計算して発言しているんですか?
山本 もともとやっていた仕事が仕事ですから、NGワードを教えてもらったほうがラクなんですよ。「何言っちゃダメですか?」ってことを先に教えてくれたら、そこは触れないってことは、さすがに僕もできるんで。でも、なぜかテレビの人って「何を言っていただいても結構です」と説明をするんですよね、だいたいの場合。たとえば日テレとかでも「うちはそういうのはないですから! NGワードとかないですし!」って。
──日テレは思いっきりありそうですけど(笑)。
山本 訊いてもないのに言ってくるんですよ(笑)。「制約は一切ございません」って。そういうことを一生懸命言ってくるあたりが嘘くさいな、って思っちゃう部分はあるんですけど。
たとえば(参院特別委の)質疑のなかでも出した、2012年につくられた第三次アーミテージ・ナイレポートでは、原発の再稼働やTPP参加、特定秘密保護法の施行、そして武器の開発・輸出といったことが書かれている。いま安倍政権が行おうとしていることって、そのまんまこれの完コピじゃないか?っていう。でも、この報告書を書いた人たち(アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国防次官補)が来日したときの講演は、日本経済新聞社が後援なんですよ。つまり、テレ東ですよね(笑)。しかもきょうの番組でもこの話、取り上げましたからね。そもそも、テレ東さんがつくってくれたフリップにも「経団連」って言葉は入っていたんですよ。
──参院本会議での投票時、山本さんが叫んだ「アメリカと経団連にコントロールされた政治家は辞めろ!」という言葉ですね。ほかの番組だとそこはカットして、「外の(反対デモの)声が聞こえないのか」という部分からしか流していなかった。
山本 だからテレ東、すごいっすよね。テレ東はよく「空気を読まない」って言われますけど、そういう点で僕との共通点を感じました。だいたい、僕を出演させてくれるというのも勇気ありますよね。もうあれが最後のテレビ出演になるかもしれない(笑)。
■バッシングと評価をどう受け止めたか? 「坂上忍さんのことは逆に心配(笑)」
──それにしても、山本さんは安保法案の可決後、かなり強いバッシングに遭いながらも、なぜかすごくお元気ですよね。
山本 バカだけが元気だ!っていう(笑)。でも批判には目を通しています。目的は、向こう側がどういうことで足を引っ張ろうとしているのかを知るというのがひとつ、もうひとつは、真剣に批判してくれている方もいらっしゃるし、そこにはやっぱり答えたいと思うんで。エゴサーチしてます(笑)。
──でも、山本さんはバッシングについて、いまはどのように受け止めているんですか?
山本 ふたつあると思うんですよ。牛歩に関してと、喪服を着て数珠を持ったという表現に関してと。でも、牛歩に関しての批判は何ひとつ当たるものではない。議長の議事整理権の範囲のなかで僕が表現したことなので、これは問題がないと思っています。7〜8割の方々は今国会での成立なんてあり得ないだろ?という考え方を示していましたから、そうした声を聞かないという政治に対して表現をするというのは当然のことです。
ただ、まあもうひとつの、喪服を着て数珠を持って、ということに関しては、あれをやって叩かれないわけはないと思います。あれだけのおいしい材料を提供すれば……ってことですよね。実際、参議院の品位を貶めたという話になっています。厳重注意も受けましたが、もちろん議長から見てそのような状態であったならば素直に受け止めるというのが筋であり、それは自分のなかで受け止めます、と。
でもその一方で、議会制民主主義が破壊されるような強行採決……人間かまくらという防護壁までつくり、何をやっているのかもわからないうちに採決されてしまった。しかも、かまくらづくりに特別委員会の人間だけじゃなく、与党側の関係のない議員、秘書まで混ざっていたとなれば、それは品位を貶めていないの?と普通は考えますよね。いまも、あちらはお咎めなし、ですし。だとしたら、その品位とは状況によって変わるものなのかな、とは思います。
──それにしても、除名にならなくてよかったです。
山本 除名を決断するのは議長ではないんですよ。懲罰委員会にかかり、全議員の3分の2以上が同意した上で除名になる。つまり、除名というのは非常にハードルが高い。ですが、たとえそこで除名になったとしても、向こうは逆に損をするんですよ。だって、強行採決の流れで除名をされた議員が出てくれば、反対派の批判の受け皿になる。向こうにとってはあまりおいしくないんですよ。逆に言うと、「非常識なバカ」という批判が起こり、それを叱るというかたちで受け流したほうが正解なんですよね。ちょうどいい落としどころだった、ということです。
──ってことは、安保法反対の流れをつくるためには懲罰委員会にかけられるのもアリだった?
山本 いや、アリです、アリです。当然ですよ。何のためにやっているかってことですもんね。盛り上がってくれたら最高!と言いますか、そこまで行けば、ほんとうに本望だなと思うんですけども。
──今回の安保法案をめぐる議論の大きな変化のひとつに、多くの芸能人が反対の声をあげたこともあると思います。まさに参議院で山本さんが踏ん張っていた裏では、国会前に石田純一さんがスピーチに立ったりですとか、坂上忍さんは生放送の番組で「安保に大反対」と発言。さらに坂上さんは「いま、政治家でいちばんまともなのは山本太郎ぐらい。まともすぎて逆に心配」とまで言っていました。
山本 逆に僕が心配ですよ(笑)。もちろん、そういうエールは非常にありがたくて、ぐっとくるものがありますけど、やっぱりそれぞれを大切にしてもらいたいなと思うんですよ。だって、そういう影響力をもっている立場にある方が、わざわざ山本太郎のことなんかに触れなくても、全然、問題ないじゃないですか(笑)。すごいリスクのある発言ですって(笑)。でも、ほんとうにありがたいですね、うん。ぜひ政治献金を、とお伝えしたいです。ガハハハハ!
■大切なのは最悪の安倍政権をどうするか? 野党がひとつになるしかない!
──でも、坂上さんの「政治家でいちばんまとも」という評は、頷けるんです。うちのサイトは「野党は牛歩をやれ」としつこく訴えていたので、結局、山本さんしか実行しなかったことには失望も大きかった。それはきっと、わたしたちだけの感想ではないと思うんですが。
山本 自分のなかでも悩んだんです。参議院議員になって最初の年に特定秘密保護法があって、そのときは無所属だったので指をくわえて見ていることしかできなかった。でも今回は、新兵ながら、はじめて現場に立つことができた。ただ、「どうやらこれはそこまで粘らなさそうだな」というのは感じていて。みんな、精神的にも体力的にも限界が見えていたし、とくに先輩で年配の女性議員とかも「膝がねぇ……」みたいな話をしていたり、実際、歩くのだけの移動がすでに牛歩みたいになっている方もいらっしゃって(笑)。そんな方々に「そんなこと言わずに議長室前を占拠して、みんなで閉じ込めましょうよ!」みたいなことは言えないという雰囲気もあった。そうなると、自分は何ができるかということを選択していくことしかない。これはひとりでもやるしかないな、と。
──問題は今後です。牛歩もやれなかった野党が果たして結束できるのか、という不安がありますよね。
山本 いや、野党がひとつになる、これしかないんですよ。いま、共産党が呼びかけていることは、小沢一郎さんがずっと言っていた「オリーブの木構想」と同じようなこと。今後は、たとえば何か共通の名前を選挙で掲げて、この名前を書けばそこに票が入る……というような仕組みのようなものをつくるしかない。野党は解党せず、ただひとつの受け皿に乗るしかないってことですね。やれることはあるんです。一人区なんて、いままではほとんど自民党が獲っている状態。参議院でねじれをつくるためには、まずは一人区を全部勝つという気がないとダメでしょう。野党がひとつになる、それ以下でもそれ以上でもないという話なんですよ。
この先どうやって闘っていくのかということを考えたとき、安保法案の国会成立をピークに考えるというゴール設定自体が、きっと違っていたと思うんです。みんなわかっていたけれど、与野党のパワーバランスを考えれば、採決で負けるというのは確実なことだった。そんなこと、はじめからわかっていた。でも、それをなんとか止められないかと、みんなが力を合わせた。そしてあれだけのうねりが生まれた。ただ、あまりに盛り上がったことで、「これは止められるかも!?」という希望を抱く部分も出てきた。だから、いまはあらためてピークのリセットをしなくてはいけないんですよ。安保法廃止のための最初のピークは、来年の7月の参議院選挙。まずはここが焦点なんだ、と。参議院選挙でねじれをつくることができたら、衆議院からいくらとんでもない法案がきたとしても、自衛隊の海外派兵の国会承認がきても、参議院で止められるという構図になる。で、これではうまく立ち行かないとなれば、そのうち解散になる。
そうは言っても、「あの党は鬱陶しい」「あの党は嫌いや」っていうような気持ちは、みなさんのなかにいろいろあると思うんですよ。とくに支持政党をお持ちの方のなかには、そういう考え方がとても強くあると思う。だけど、まず考えていただきたいのは、目の前にある、この最悪の安倍政権をどうするよ?という話。ただ、これ、安倍さんじゃなくなっても一緒なんです。たんに踊り子が変わるだけで、やり方は同じですよ。
だから、どっちがいいかと考えてみてほしい。嫌な奴でも手を握って、いちばん嫌な奴を引きずり降ろすのか。それとも各自各党で闘うのか。各自で闘った場合は、いまの状態が継続されるだけですよ、と。
──たしかに、もうすでに安保法案は忘れられかけて、安倍首相も経済で目をそらさせようとしていますよね。
山本 とにかく安保法は廃止しかない。そもそも、いまのこの政治状況のなかで憲法改正するなんて、絶対にあり得ないでしょ? たぶん、向こう何十年もいじってはダメなんじゃないですか? 少なくとも、市民が政治をコントロールする、そのことがこの国に定着するまでは──。
……………………………………
そう話したあと、山本は「いまの状況は、戦前・戦中によく似ている」とつづけた。山本をひとり牛歩、そして葬儀パフォーマンスに駆り立てたもの、それは安倍政権への強い危機感だ。後編では、さらに今後の山本氏の闘い方にフォーカスしていきたい。
(編集部)
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