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変わる安保E グレーゾーン 課題残す 離島に自衛隊 調整困難 2015年9月29日2015年9月上旬、米カリフォルニア州サンディエゴ近郊の海岸。水しぶきを上げる海上自衛隊のエアクッション艇が勢いよく浜辺に乗り上げると、銃を構えた自衛官と米兵が次々と降り立ち、身をかがめながら上陸した。「ドーン・ブリッツ」は、敵に占拠された離島の奪還を想定した日米共同訓練だ。 自衛隊と米軍の念頭には、当然中国公船による領海侵入が常態化する沖縄県・尖閣諸島がある。記者会見した米海兵隊のデービッド・コフマン准将は、訓練内容を「情勢不安や地域の脅威に直面した友好国が支援を要請し、我々が兵力を集結させて支援するという内容だ」と説明した。 自衛隊が初めて参加した前回2013年の訓練は離島上陸までだったが、今回は上陸後に司令部を設置し、装備や食料などの補給ラインを確立するまでの訓練を行うなど、より実践的になった。「日本有事」にあたる離島防衛への体制整備は、着々と進んでいる。 有事に至る前のグレーゾーン事態への対応はどうか。安全保障関連法の国会論議を経てもなお、課題は残った。 「ペルシャ湾のような遠くでの集団的自衛権を議論するより、近くの領域警備に万全を期すべきだ」 2015年7月10日の衆院平和安全法制特別委員会。民主党の細野豪志政調会長は、グレーゾーンでの初動を警察や海上保安庁に委ねたままの安保関連法を批判した。民主党は、自衛隊にあらかじめ一定の警察権を与えるべきだと主張、維新の党と共同で対案を国会提出した。 政府は「自衛隊が平時から警察権を行使すれば、日本側が事態を『ミリタリー(軍)対ミリタリー』にエスカレートさせた、との口実を相手に与える恐れがある」(安倍首相)としてこれを退けたが、与党内にも現状は不十分との声がくすぶる。 2014年9月以降、小笠原諸島や伊豆諸島の周辺に中国漁船が集まり、希少な「宝石サンゴ」を大量に密漁していたことが発覚した。最大200隻超の船団が洋上にひしめく姿は世論に大きな衝撃を与えたが、尖閣との「二正面作戦」を強いられた海上保安庁の対応は後手に回った。対応を話し合う自民党の緊急部会では、「自衛隊が出動すべきだ」との声が続出した。 だが、与党は結局、自衛隊と警察・海保の権限見直しに踏み込むことはなかった。同法の与党協議座長を務めた高村正彦自民党副総裁が「これは、軍と警察の100年戦争だ。これ以上突っ込んだら大変なことになる」と語ったように、両者の調整は困難が予想される。武器使用権限の問題も積み残しとなった。今回の安保法制でも自衛隊は、例えば停船命令に従わない相手と向き合った場合、船体への射撃は海保と同じ条件下しか許されない。ただ、治安出動・海上警備行動を発令し、自衛隊が出動するのは、政府が警察や海保には対処できないと判断した事態だ。「海保を量的に補完することは出来ても、質的には難しい」(斉藤隆・元海将)ままで離島防衛が可能なのか。グレーゾーン事態への備えは、今後も不断の検討が求められる。 *グレーゾーン事態 武力攻撃が発生したとは認められないが、平時よりも緊張が高まった状態。武力攻撃は「国家の意思に基づく組織的、計画的な武力の行使」と定義され、これに至らない場合、自衛権に基づく自衛隊の防衛出動は出来ない。警察や海上保安庁が一義的に対処し、自衛隊は補完的な役割を担う。尖閣諸島でも、国籍不明の偽装漁民による上陸・占拠といった事態が懸念されている。 *グレーゾーン事態に当たる可能性がある最近の主な出来事 2001年12月 鹿児島県・奄美大島沖で北朝鮮工作船事件 2010年3月 韓国軍の哨戒艦「天安」が黄海で沈没。韓国側は北朝鮮の魚雷攻撃と断定したが、北朝鮮側は全面否定 2012年9月 日本政府が沖縄県・尖閣諸島の魚釣島などを国有化。以後、中国工船の領海侵入が常態化 2014年5月 南シナ海・パラセル(西沙)諸島周辺で、領有権を争う中国とベトナムの船舶がにらみ合い、衝突や放水を繰り返す 2014年9月 小笠原諸島・伊豆諸島周辺に大量の中国漁船が集結し、希少な「宝石サンゴ」を密漁 2015年5月 南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島周辺での人工島造成や滑走路整備について、中国軍幹部が軍事目的を認める 変わる安保B リスクどう向き合う 2015年9月23日 日本が初めて自衛隊を派遣したカンボジアの国連平和維持活動(PKO)で、初めての犠牲者が出たのは1993年5月のことだった。軽井沢で静養中だった宮沢首相のもとに、文民警察官として参加中の高田晴行警部補(当時)が死亡した、という連絡が入った。初のPKOで死者を出した衝撃は大きく、政府・与党からは「PKO活動を中止すべきでは」という声が上がったが、政府は派遣を続行した。宮沢氏は後に、当時のことを「東京にとって返す車の中で、そういうわけにはいかないと決心し、首相官邸に着くとすぐ河野(洋平)官房長官らに伝えた。日本の国際的な信用を考えたからだ」と振り返った。 安全保障関連法を巡る国会審議では、同法に基づき海外派遣される自衛隊員も「リスク」に焦点があたった。リスク増大を指摘する野党に対し、安倍首相は「リスクを低減させる努力を行う」などと答弁したがリスクそのものを巡る議論は深まらなかった。 日本と同様、侵略や敗戦の過去を背負うドイツは、1990年代以降、多くの犠牲者を出しながらも、数千人単位で連邦軍兵士を派兵・派遣してきた。北大西洋条約機構(NATO)における「軍事貢献」大国となったドイツは、要員のリスクとどう向き合ってきたのか。 2015年9月10日、ドイツ西部・ミュンスター。ドイツ連邦軍とオランダ軍が中核を占める北大西洋条約機構(NATO)即応軍本部は、緊迫した空気に包まれていた。 ウクライナ情勢を巡るロシアの脅威に対抗するため、NATOは即応体制の強化を進めている。同部隊でも、30日はかかるとされる部隊展開までの期間を5〜10日に縮めるため、大規模な演習が予定されているのだという。独連邦軍のフォルカー・ハルバウアー中将は、「世界のどこであっても、必要ならば軍事行動を実施できるよう、準備を整えておく必要がある」と語った。 戦後、基本法(憲法)で集団安全保障システムへの参加を認めたドイツは、再軍備とともにNATOに加盟。NATO域外への連邦軍の派遣は、長い間タブー視されていたが、湾岸戦争を契機に役割分担を求める声が国内外で強まると、コール政権は方針を転換し、独連邦軍はカンボジアPKOなどに参加した。 野党などは「憲法違反」と批判したが、1994年に連邦憲法裁判所が「集団安保システムの機能変化に応じ、連邦軍の活動範囲も変わるべきだ」との憲法解釈を示すと、国会論議の焦点は「違憲論」から兵士の「リスク」に移った。1995年の旧ユーゴスラビア・ボスニア紛争への派遣では、野党からの「もし兵士のひつぎが到着したら、どうするのか」との追及に、外相が「そうなった場合は、国防相とともにひつぎの傍らに一晩立ち続け、死者を悼む」と答弁する場面もあった。 2001年から始まったアフガニスタンでの平和維持活動では、タリバンとの交戦などにより、連邦軍兵士55人が死亡した。ドイツ国民は衝撃を受けたものの、政治レベルで撤収論が広がることはなく、議会下院は2014年12月、アフガニスタンから国際治安支援部隊(ISAF)が撤収して以降も、連邦軍850人を駐留させることを賛成多数で承認した。 独国会の対応について、政策研究大学院大学の岩間陽子教授(国際政治学)は、「与野党が機密を共有し、兵士のリスクについても議論して派遣地域などを決めていることが理由だ」と分析する。 安全保障関連法により、他国との連携による平和貢献の範囲は大幅に広がる。自衛隊の海外派遣については、ドイツ同様、国会の事前承認が前提だ。ドイツ国際政治安全保障研究所のマルクス・カイム博士は「紛争地で軍事的に行動することは、リスクを負うこと。派遣の際に最も大切なのは、政治がゴールを決めることだ」と指摘している。 *国際治安支援部隊(ISAF) 2001年12月の国連安全保障理事会決議に基づき、アフガニスタンの治安維持や国軍、警察の訓練を担当する多国籍部隊。2003年8月以降はNATOが指揮権を持った。国際テロ組織アル・カーイダや、同組織と連携するタリバンの掃討を実施。2010年のピーク時には約50か国が参加し、兵力は計約14万人に上った。2014年12月末で戦闘任務を終了し、アフガンに治安権限を委譲した。 変わる安保F PKO 未知なる貢献へ 訓練「ゼロからスタート」 2015年9月30日 2015年9月25日夕、熊本市の熊本赤十字病院。政情不安の南スーダンに派遣されていた同病院の男性医師2人による、報告会が開かれた。首都ジュバから飛行機で2時間ほどの都市で、外科医を務めた杉本卓哉さん(36)は、患者の多くは戦闘による銃創を受けていた。2015年5月に病院近くで銃撃があり、退避してキャンプ生活を送ったこともある」と証言。ジュバなどで麻酔科医として活動した大塚尚実さん(41)も、現地情勢を「日によって変わる。紛争国なのだと実感した」と振り返った。 南スーダンは、2011年、内戦の末にスーダンから独立した。直後から国連による平和維持活動(PKO)が始まり、日本の自衛隊も参加。現在は陸上自衛隊員約350人が、ジュバで道路建設などにあたっている。政府軍と反政府勢力の衝突が続く現状について、日本政府は「反政府勢力は系統だった組織を持っておらず、支配を確立した領域もない」(中谷防衛相)ことから、PKO参加5原則に反する紛争状態には至っていないと説明するが、反政府勢力が攻勢を強めた時期には、自衛隊が宿営地外での活動休止を余儀なくされたこともあった。従来のPKO協力法は、自分や周囲の人間を守るための最小限の武器使用しか認めておらず、杉本さんら邦人に仮に危険が迫っても、救出に向かうことは出来なかった。 2004年からイラク南部サマワでの復興支援に当たった陸自部隊も、不測の事態に見舞われたことがある。2005年12月、サマワ北部ルメイサの養護学校補修工事の完工式で、デモ隊と遭遇。投石などで陸自の軽装甲機動車が一部破損した。当時の陸自幹部は「治安維持にあたる英豪軍には手を出せず、『弱い』自衛隊に矛先が向いたのだろう」と語った。 安全保障関連法の成立により、今後は離れた場所にいる人の生命・身体を守る「駆け付け警護」や、巡回や検問の際、任務を妨害する相手を排除する「安全確保活動」のための武器使用が、PKOの中で可能になる。2015年9月28日、国連本部でのPKOサミットであいさつした安倍首相は「従事可能な業務範囲が広がった。PKOへの貢献を更に拡充する」と意欲を示した。 政府は南スーダンに派遣中の陸自に、駆け付け警護の任務を与える検討に入った。早ければ2016年春にも追加されるが、防衛省には「未知の国際貢献」を不安視する声もある。2015年6月、自衛隊も参加してモンゴルで行われたPKO国際共同訓練では、「安全確保活動」の類似訓練も実施されたものの、陸自は「安保関連法が成立していない」ことを理由に、視察すら自粛した。新任務に対応した訓練は、「ゼロからのスタート」(陸自幹部)という状態だ。 防衛省は2015年9月28日、いつ、どんな場所で、どういう状況なら武器を使えるのか、を定めた部隊行動基準(ROE)の改定作業に着手した。こちらも難航が予想される。統合幕僚監部のある幹部は「他国のROEは、やってはいけないことだけを決めるが、日本は逆。任務の質・量が増えるので、ROEは複雑化する。隊員が迷わず実施するまでには、相当の訓練が必要だ」と話している。 *ROE=Rules Of Engagement *イラクでの復興支援 安保関連法で改正されたPKO協力法では、国連主体のPKOとは異なる有志連合の国々による人道復興支援など(PKO類似活動)への参加も新たに認めた。イラク戦争後の自衛隊派遣などが念頭にある。PKO類似活動にも、PKO参加5原則が準用される。 2013.12.7 12:00 【中高生のための国民の憲法講座】 第23講 なぜ憲法に軍隊明記が必要か 百地章先生 http://www.sankei.com/life/news/131207/lif1312070030-n1.html わが国の自衛隊は、通常戦力では世界でもトップレベルにあり、隊員の士気は高く、能力や練度のどれをとっても世界最高の水準にあります。もちろん、政府は自衛隊を合憲としていますし、国民の多数もこれを支持しています。しかし、社民党や共産党のように、いまだに自衛隊を憲法違反とする人たちもいます。だから安倍晋三首相は、憲法を改正して自衛隊を名実ともに合憲の「国防軍」とすべきだと発言したのでした。 安倍首相は現在の自衛隊は国際法上は「軍隊」とされながら、国内では「軍隊ではない」とされており、この矛盾を解消する必要がある、とも言っています。まさにそのとおりです。 しかし、なぜ自衛隊を「軍隊」としなければならないのか。より本質的な理由は、次の点にあります。つまり戦力の不保持を定めた憲法第9条のもとでは、法制度上、自衛隊は軍隊ではなく、警察組織にすぎないとされているからです。 軍隊と警察の違い それでは、軍隊と警察の違いは何でしょうか? 軍隊の権限は「ネガティブ・リスト」方式で規定されています。つまり行ってはならない事柄、例えば、毒ガス等の非人道的兵器の使用禁止や捕虜の虐待禁止などを国際法に列挙し、禁止されていない限り、軍隊の権限行使は無制限とされます。だからネガティブ・リスト方式といいます。 なぜなら、国際社会ではもし武力紛争が発生した場合、国連安保理事会が対処することになっていますが、それができない時は、各国とも自分で主権と独立を守るしかないからです。 これに対し警察の権限行使は、「ポジティブ・リスト」方式です。つまり、国家という統一秩序の中で、国民に対して行使されるのが警察権ですから、制限的なものでなければなりません。だから行使して良い権限だけが法律に列挙されており、これをポジティブ・リスト方式といいます。 それゆえ、もし自衛隊が法制度上、軍隊であれば、領海を侵犯した軍艦や潜水艦に対しては、国際法に従って、まず「領海からの退去」を命じ、それに従わない時は「警告射撃」を行うことができます。さらに、相手側船舶を「撃沈」することさえ可能です。現に、冷戦時代、スウェーデン海軍は領海を侵犯したソ連の潜水艦を撃沈していますが、ソ連は何もいえませんでした。 尖閣諸島を守るために ところが、自衛隊は「軍隊」ではありませんから、自衛隊法に定められた「防衛出動」の場合を除き、武力行使はできません。また、自衛隊法には領域警備規定がありませんから、もし中国の武装漁民が尖閣諸島に強行上陸しても、防ぎようがないのです。相手が発砲してくれば、正当防衛として「武器使用」ができますが、場合により過剰防衛で起訴されかねません。 したがって速やかに憲法を改正して、自衛隊を「軍隊」とする必要があります。そうしなければ尖閣諸島も守れませんし、中国の軍事的脅威を前に、わが国の主権と独立を保持することは難しくなります。 ◇ 【プロフィル】百地章 ももち・あきら 京都大学大学院法学研究科修士課程修了。愛媛大学教授を経て現在、日本大学法学部教授。国士舘大学大学院客員教授。専門は憲法学。法学博士。産経新聞「国民の憲法」起草委員。著書に『憲法の常識 常識の憲法』『憲法と日本の再生』『「人権擁護法」と言論の危機』『外国人参政権問題Q&A』など。67歳。 変わる安保C 日米の連携「抑止力」に 半島有事やミサイル防衛 2015年9月24日 2015年8月20日、韓国と北朝鮮の軍事境界線で砲弾が飛び交った。北朝鮮の金正恩第1書記は「準戦時態勢」を宣言し、数十隻の北朝鮮潜水艦が港を離れた。米韓連合軍も5段階の監視態勢を「3」から「2」に上げ、米韓が北朝鮮軍とにらみ合う事態となった。 2015年8月21日夜から山梨県鳴沢村の別荘で休暇を過ごすはずだった安倍首相は、急きょ予定を変更して都内で待機。防衛省も、自衛隊機を出動させて電波情報などを集め、米軍とも情報を共有して警戒に当たった。結局、この時は軍事衝突には至らなかったが、北朝鮮は2015年10月10日の朝鮮労働党創建70周年に合わせ、日本全土を射程に収める長距離弾道ミサイルの発射実験を行う可能性を示唆している。朝鮮半島情勢は「今そこにある危機」であり、日米の切れ目ない連携が問われる場面だ。 朝鮮半島の核危機を受けて1997年に改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)も、半島有事での日米連携がテーマとなったが、集団的自衛権を巡る憲法上の制約が大きな壁となった。協力分野を洗い出すための図上演習では、米軍相手にまかれた機雷の除去など集団的自衛権に抵触する活動はどれも断らざるを得なかったと、当時の海上幕僚監部防衛部長だった斎藤隆・元統合幕僚長は証言する。 安全保障関連法の成立に伴い、こうした制約は取り払われる。日本の国民生活が深刻・重大な被害を受ける「存立危機事態」と認定されれば、機雷除去はもちろん、弾道ミサイル発射を警戒中の米イージス艦や、半島から退避する日本人を乗せた米輸送艦の防護など、集団的自衛権行使を伴う協力が可能だ。 半島有事だけではない。巡航ミサイル開発に力を入れる中国に対しても、日米の一体運用が大きな「抑止力」となる。 2015年6月、米海軍横須賀基地(神奈川県)に最新鋭のイージス艦「チャンセラーズビル」が配備された。空中を監視する早期警戒機などの情報を瞬時に共有し、イージス艦単体では捉えられない水平線の先のミサイルを撃ち落とす新システム「NIFC-CA(ニフカ)」に対応した艦艇だ。今後は自衛隊も、集団的自衛権に基づきその一翼を担うことができる。実際、防衛省はニフカに対応可能な早期警戒機「E2D」の導入を進め、新たに建造中のイージス艦2隻にも、ニフカに関連する最新の情報共有システムを搭載する方針だ。 「米国は世論の国。近海で日本を守る米艦ぐらいは最低限(自衛隊が)守らないと、米政府が日米安保条約の義務を果たそうと思っても、(世論の反発で)果たせないかもしれない」 安保関連法の成立を目前に控えた2015年9月13日、自民党の高村正彦副総裁は法整備の意義をこう強調した。 *存立危機事態 憲法9条の新たな解釈に基づき、集団的自衛権の限定的な行使が認められる事態として安全保障関連法で規定された。米国など日本と密接な関係にある国が第三国から攻撃を受けたことによって日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合を意味し、自衛隊に防衛出動を命じて武力を行使できる。政府は主に、朝鮮半島有事のように日本への攻撃が差し迫った状況を想定しているが、中東・ホルムズ海峡の機雷封鎖のように、地理的に離れた場所でも被害が深刻・重大な場合は要件を満たしうると説明している。 変わる安保D ホルムズ海峡 警戒解かず 2015年9月27日 安全保障関連法を巡る参院特別委員会での審議が大詰めを迎えていた2015年9月14日、安倍首相は、自衛隊による中東・ホルムズ海峡での機雷除去について、「今現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定していない」と答弁した。 安倍首相はそれまで、ホルムズ海峡での機雷掃海を、武力行使の目的で自衛隊を他国領域に派遣する「海外派兵」の唯一のケースと強調してきた。答弁のトーンを微妙に変化させたのは、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革との修正協議を前進させるためだった。3党は自衛隊の海外派遣に「例外なき国会の事前承認」を求めていたが、首相答弁や、国会関与の強化を閣議決定で担保することを評価。2015年9月16日に法案への賛成を決めた。 ホルムズ海峡での機雷掃海に対しては、維新の党が衆院審議の段階から撤回を求めていた。橋本徹最高顧問(大阪市長、当時)は、「経済的な理由のみでは、自衛権行使の要件を満たさない」と主張した。法案に対する世論の支持が広がらなかったこともあり、政府・与党は維新の協力を重視した。安倍首相と自民党幹部との間では、「一時、ホルムズ海峡を海外派兵の対象から外す法案修正も検討された」(政府関係者)という。だが、首相周辺からは強い慎重論が上がった。「イランによる機雷敷設の脅威は変わっていない」(政府関係者)との見方が、根強かったためだ。 イランの革命防衛隊は2015年2月、ホルムズ海峡付近の海上で、大規模な軍事演習を行った。機雷敷設の演習も初めて公開され、イランの革命防衛隊のアリ・ファダビ司令官は国営テレビのマイクに向かい、こう胸を張った。 「イランは、米国の想像を超える最新鋭の機雷を備えている」 イランは現在、機雷を2000〜3000個、機雷敷設に使う高速ボートは200〜300隻保有しているとされる。米国のデンプシー統合参謀本部議長は2015年7月、米上院軍事委員会の公聴会で、弾道ミサイルやサイバー攻撃と並び、イランの機雷が大きな脅威だと説明した。輸入原油の約8割が通るホルムズ海峡をタンカーが通れなくなれば、日本の存立も脅かされる。 維新は2015年5月17日の大阪都構想を巡る住民投票で敗北、これ以降、橋本氏の影響力が低下したこともあり、法案修正を巡る与党と維新との協議は、その後宙に浮いた。2015年9月14日の参院特別委で、安倍首相はホルムズ海峡における機雷掃海を「具体的に想定していない」とする一方、「(自衛権行使の)新3要件に該当する場合もあり得る」と加えた。安保関連法の作成に携わった政府関係者は、首相答弁について「中東で何か起きた時に自衛隊が行動できる、という基本線は変わらない」と説明している。 イランが大規模軍事演習、標的は米空母の複製 Iran stages military exercises in Strait of Hormuz https://www.youtube.com/watch?v=Z_fbqv4-HcA *ホルムズ海峡 ペルシャ湾からアラビア海に抜ける海峡で、最も狭い地点で幅33q。日本が輸入する原油の8割がホルムズ海峡を通過しているため、海上交通路(シーレーン)の要衝と位置付けられている。沿岸諸国が機雷を敷設すれば、日本へのエネルギー供給が滞る可能性が高まることから、政府は集団的自衛権を行使する存立危機事態の事例に、ホルムズ海峡での機雷掃海を含めている。 *与野党5党の合意のポイント ▼存立危機事態に当たるが、武力攻撃切迫事態に当たらない防衛出動は例外なく国会の事前承認を求める ▼重要影響事態では、国民の生死に関わる場合を除き国会の事前承認を求める ▼海外派遣時などの自衛隊の活動は180日ごとに国会に報告する
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