http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/819.html
Tweet |
買い物の会計をする際、個人番号カードを提示すると還付を受けられる。上限は年4000円〔PHOTO〕gettyimages
初期投資3000億円マイナンバー制度は、「第2の新国立競技場」になる あまりにも適当、現場担当者は呆然
http://www.asyura2.com/bbsup/up.cgi?ban=hasan100&up=1
2015年09月28日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
突如として降ってわいた、マイナンバーと軽減税率を結びつける「ウルトラC」。発案者のエリート官僚たちは鼻高々かもしれないが、とうてい国民の理解が得られるとも、実現できるとも思えない。
■現場担当者も呆然
「内閣府の職員は、報道されるまで誰ひとり、財務省のプランを知りませんでした。ネットで記事を見て、唖然としましたよ。しかも、その後もまったく詳細が伝わってこない。財務省の連中は特に口が堅いですからね。
ただでさえ、個人カードの発行まで漕ぎ着けられるかどうかの瀬戸際なんです。こっちに断りもなく、勝手に動いていたなんて……。分からない、本当に分からない」
マイナンバーの実務に携わる内閣府官僚が嘆く。
「買い物のときマイナンバーを提示すれば、消費税の還付金がもらえる」
こんな衝撃的な政府計画が9月5日に報じられ、今なお動揺が続いている。震源地は、国家の中枢・霞が関のさらに中枢——「最強の官庁」、財務省だ。
財務省幹部らは、他省庁の幹部、国会議員たちはおろか、マイナンバーを所管する内閣官房や内閣府、総務省にも一切情報を漏らさず、極秘裏に、そして自らが必要と考える相手だけをターゲットに、根回しを進めていた。
「8月中旬、財務省幹部が水面下で公明党の山口那津男代表、北側一雄副代表に会い『これは軽減税率とは少し違いますが、効果は同じです』と説得にあたりました。
公明党は、安保法案に賛成することと引き換えに軽減税率導入を公約していましたが、他ならぬ財務省が『対象品目を決めるのがあまりに煩雑』と難色を示したため、頭を抱えていました。
そこに新たなプランを出されて、公明党側は『渡りに船』とばかりに飛びついた。『ご説明』に来た財務省幹部に、山口代表は『ありがとうございます』と頭を下げたそうです」(全国紙政治部デスク)
自民党でも、この案を知らされたのは、安倍総理、菅義偉官房長官、麻生太郎財務大臣などトップに加え、大蔵官僚出身の野田毅税調会長ら、ごく一部にとどまった。
一方で、事前の説明を受けていなかった議員からは、報道の後で猛反発が出た。元大蔵官僚の伊吹文明元衆議院議長は10日、二階派の会合で「みっともない案だ」と吐き捨てている。
■密室ですべて決まった
初期投資に必要な税金は、小売店のレジに設置するマイナンバー「個人番号カード」読み取り端末の製造・設置費用、全国民の「買い物データ」を集め、還付金の額を弾き出す新たな政府機関「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の設立など、およそ3000億円。
これに加えて、システム構築の費用、職員の人件費、還付額の通知書類にかかる費用など、まだまだ焼け太ることは間違いない。
すべては国民に気付かれないよう、極秘に、密室で、ごく一部の官僚と政治家によって決められた。
だが、彼らの計画を実現するには、現実離れした巨額のカネと高度な技術、莫大な労力が必要で、本当にできるかどうかさえ判然としない。最終的に、すべてのしわ寄せは国民へ——。
まるで、できもしない建設案を無理やり採用したあげく、日本中から「2600億円は高すぎる」と総叩きに遭って白紙撤回に追い込まれた、あの新国立競技場を思い出させるではないか。
ここで、財務省がぶち上げたプランを改めておさらいしよう。予定では'17年4月、消費税が現在の8%から10%に上がる。それ以降、スーパーマーケットで食料品を買ったり、ファミリーレストランで食事をとったりすると、国民ひとりひとりに「軽減ポイント」が与えられる。軽減税率の対象となる飲食料品は、消費税が8%に据え置かれ、10%-8%=2%分がポイントとして返ってくるのだ。
ポイントは、マイナンバーが記された「個人番号カード」をレジの端末で読み取って記録する。つまりは、よくある「ポイントカード」を、国家規模でやろうというわけだ。
ポイントは、ひとりあたり年額4000円分までためられるが、すぐに手元に還付されるわけではない。たまった分を後から申告し、税務署に認められると、ようやく銀行口座に振り込まれる。
こう説明すると「なんだ、思ったより簡単ではないか」と思うかもしれない。確かに、あらゆる食料品について、軽減税率を適用するかどうかを「これはOK、これはNG」などとひとつずつ決めてゆくよりはずっとシンプルだろう。しかし、一連の流れを順に見てゆけば、この仕組みは穴だらけの代物だと分かる。
■あまりに「適当」
まず、そもそもの問題として、「マイナンバーが書かれた個人番号カードを、買い物のたびにレジで出す」ということ自体が、これまでマイナンバー担当官庁が行ってきた説明と真っ向から食い違っている。
ハンドブック『大事なことだけすぐにわかるマイナンバー制度』(講談社刊)を監修した、税理士の青木丈氏が言う。
「マイナンバーはみだりに他人に教えたり、人目に触れたりしないよう、慎重に扱わなければなりません。個人番号カードにはマイナンバーのほかに住所・氏名・生年月日など、個人情報も満載されている。人前で頻繁に取り出せば、当然、紛失する危険も大きくなります。
また本来、マイナンバーの個人番号カードは希望者のみ交付されます。麻生財務大臣は『カードを持ちたくなければ持って行かなくていい。その分の減税はないだけだ』と言いますが、最初から4000円を定額で全国民に支給するほうが、はるかに合理的で公平です」
個人番号カードを常に持ち歩かなければ損をする——こんな意識を国民に植え付けることに成功すれば、マイナンバーの認知度はぐんと上がる。政府としても、1500億円の税金をかけて全く浸透しなかった「住基ネット」の轍は踏めない。
財務省はそれが分かっているから、「マイナンバーを国民に周知するうえで、『カネが貰える』ということ以上のエサはないだろう。これなら関係省庁も文句は言えまい。もちろん、還付申請されなかった分の税金は丸儲けだ」とばかり、ほくそ笑んでいるというわけだ。
ちなみに、カード紛失時のトラブルやクレームに対応するのは、財務省ではなく総務省である。
一方で、ポイントをどのようにして処理するのかという具体的な技術の部分については、まだ何も決まっていないのが実情のようだ。前出と別の内閣府官僚が漏らす。
「カードとサーバーの両方にポイントのデータを保存する仕組みだと、実現は厳しいと思います。JRの『Suica』をチャージするときと似た仕組みになるので、カード自体の記憶容量が足りなくなるかもしれず、データの処理に時間もかかる。それに、処理中に間違ってポイントが消えたら、その場でお金を返すわけにもいかないので、どうしようもありません。
山奥の個人商店とか、自動販売機は端末をどうするのか、という問題もあります。財務省の側が、ベンダー(システムを開発するIT企業)に打診した様子はないみたいですが……」
民間のポイントカードなら、会員数5000万人を超える「Tカード」などがすでにある。もしかすると財務省は、「Suicaや民間のポイントカードのシステムを流用すれば、何とかなるだろう」と高をくくっているのかもしれないが、そう一筋縄ではいかないのだ。
新国立競技場の巨大な「キールアーチ」よろしく、「日本の技術力ならできると思っていたけど、結局無理でした」となるのが目に見えるようだ。
さらに、財務省のプランでは「マイナンバーが個人の銀行口座と一対一で紐づけられている」ことが、いつのまにか大前提になっている。そうでなければ、消費税の還付が受けられないからだ。
つい先日まで内閣府は、「マイナンバーを本格的に銀行口座と連動させるのは'18年度以降」「紐づけするかどうかは、当面は任意制」と説明していたが、これも事実上ひっくり返されることになる。
新たな政府発表では「レジの端末では、マイナンバーをはじめ、個人の特定につながるような名前・住所・生年月日などは読み取らない」という。
しかし、そもそも買い物の内訳と個人情報や口座の情報を突き合わせなければ、還付金の計算も支払いもできないのだから、いかにも適当な「建て前」としか聞こえない。
「買ったものをすべてデータ化して当局が把握するような制度は、世界中のどの国でも実施されていません。最終的には、国民の財布をすべてガラス張りにして、支出や納税状況を把握できるようにするのが目的でしょう」(弁護士の紀藤正樹氏)
巷間言われているように、マイナンバーは「国民ひとりひとりの銀行口座とカネの出入りを監視し、税金の取りっぱぐれをなくす」という、税務当局の悲願を成しとげる絶好の手段になる。
サラリーマンが会社に内緒で副業をやっていないかどうかや、主婦がアルバイトで年間103万円以上稼いでいないかどうかも、口座と納税状況を名寄せすれば一発でバレる。近い将来、隠し立てやチョロまかしは一切できない世の中に変わるだろう。
■ダメなら、また税金がパー
一方で、国民のカネの使い道をすべて記録することは、思わぬ副産物をもたらすという。「誰が、どこで、何を買ったか」という情報は、今や「宝の山」なのだ。IT技術に詳しいジャーナリストの佃均氏が指摘する。
「今、アマゾンやグーグルといった米国のIT企業は、どんな消費者が何を購入したかという膨大な情報を集めて分析し、経営に活用しています。
経団連が今回の財務省の提案を即座に支持した背景には、『全国民の買い物と行動の記録』という、未曾有のビッグデータを手に入れる思惑があったのかもしれません。
また、このデータは政権運営に応用することもできるでしょう。『国民が何を求めているのか』というのは、国家にとって最も知りたい情報ですからね」
年額4000円の還付金は、3人家族であれば1万円を超える。「1万円が戻ってくるのなら、多少面倒でもカードを持ち歩きたい」という人も少なくないだろう。だが一方で、「年間1万円のために、個人情報を満載したカードを持ち歩きたくない」という人も多いはずだ。
こんな中途半端な状態が続けば、じきに国民から「制度そのものを全面的に見直すべき」という声が上がるのは間違いない。もちろん、3000億円を超える「投資」はすべてパーだ。
ただでさえ、マイナンバー制度は先行きが危ぶまれている。来月から各世帯に簡易書留で送付が始まる「通知カード」は、ちゃんと届くのか。来年1月から、各自治体で受け取れる個人番号カードの発行はスムーズにできるのか。本当に情報漏洩は起きないのか……。
国民の不安をよそに、官僚たちは「何とかなる」と言い張るばかり。現実から目を背け、ひとりよがりで突っ走っていては、最後にはマイナンバーそのものが「白紙撤回」に追い込まれるハメになる。
「週刊現代」2015年9月26日・10月6日合併号より
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK193掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。