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京都新聞 社説
首相の会見 中身伴わぬ軸足シフト
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150926_4.html
安倍晋三首相は、今後の政権運営で経済再生と社会保障の充実に全力を挙げる方針を打ち出した。強い反対世論を押し切って安全保障関連法を成立させたことから、来夏の参院選を見据えて生活重視に軸足を移し、離れた国民の支持を呼び戻す狙いなのだろう。
「国内総生産(GDP)600兆円」「1億総活躍社会」といった威勢のいいスローガンを並べたが、内容には目新しさも具体性も乏しい。実現への道筋も見えず、これで国民の批判をかわすつもりなら、甘すぎるのではないか。
安倍首相は、自民党総裁の再選と国会の事実上閉幕を受けた会見で「アベノミクスは第2ステージへ移る」と経済優先を強調。2020年に向けた新「三本の矢」として「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を挙げた。
掲げたGDP目標は、14年度の実績から約2割増しとなる。内閣府がはじいた名目3%の成長率が前提だが、バブル後に達したことのない高さだ。昨春の消費税増税後、戻らぬ個人消費から今年4〜6月期はマイナス成長に陥り、中国をはじめ世界的な景気減速が強まる中、現実味を欠いたアドバルーンと言わざるを得ない。
1960年の日米安保条約改定への反対世論を経済成長への関心へ向かわせた「所得倍増計画」に倣ったのだろうが、経済復興期とは環境が大きく異なる。
アベノミクスは大企業の収益を膨らませた一方、恩恵は家計や地方に一向に届かない。新たな表紙で覆ったところで行き詰まりを隠せるものではない。そもそもGDPの規模を豊かさ実現の目標にする発想自体に違和感を覚える人も多いのではないか。
経済とともに子育て支援、社会保障の充実も挙げた。こちらも「出生率1・8」「介護離職ゼロ」と高い目標を掲げたが、具体策は保育所や介護施設の入所待ち解消、人材育成など代わり映えなく、財源の裏付けも未知数だ。
安倍首相は10月上旬の内閣改造で担当閣僚を置き、これら少子高齢化対策による「1億総活躍社会」実現をアピールする方針だが、地方創生や女性の活躍と同様に既存政策の寄せ集めにならないか。
参院選で安倍首相は、引き続き憲法改正を公約に掲げる考えだ。経済政策で国民の関心を集めて政権を維持し、実現に向けた地ならしをしたいのだろう。だが打ち上げ花火のような経済目標も中身を伴わなければ国民の失望と不信を増す。
[京都新聞 2015年09月26日掲載]
首相の会見 中身伴わぬ軸足シフト
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150926_4.html
安倍晋三首相は、今後の政権運営で経済再生と社会保障の充実に全力を挙げる方針を打ち出した。強い反対世論を押し切って安全保障関連法を成立させたことから、来夏の参院選を見据えて生活重視に軸足を移し、離れた国民の支持を呼び戻す狙いなのだろう。
「国内総生産(GDP)600兆円」「1億総活躍社会」といった威勢のいいスローガンを並べたが、内容には目新しさも具体性も乏しい。実現への道筋も見えず、これで国民の批判をかわすつもりなら、甘すぎるのではないか。
安倍首相は、自民党総裁の再選と国会の事実上閉幕を受けた会見で「アベノミクスは第2ステージへ移る」と経済優先を強調。2020年に向けた新「三本の矢」として「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を挙げた。
掲げたGDP目標は、14年度の実績から約2割増しとなる。内閣府がはじいた名目3%の成長率が前提だが、バブル後に達したことのない高さだ。昨春の消費税増税後、戻らぬ個人消費から今年4〜6月期はマイナス成長に陥り、中国をはじめ世界的な景気減速が強まる中、現実味を欠いたアドバルーンと言わざるを得ない。
1960年の日米安保条約改定への反対世論を経済成長への関心へ向かわせた「所得倍増計画」に倣ったのだろうが、経済復興期とは環境が大きく異なる。
アベノミクスは大企業の収益を膨らませた一方、恩恵は家計や地方に一向に届かない。新たな表紙で覆ったところで行き詰まりを隠せるものではない。そもそもGDPの規模を豊かさ実現の目標にする発想自体に違和感を覚える人も多いのではないか。
経済とともに子育て支援、社会保障の充実も挙げた。こちらも「出生率1・8」「介護離職ゼロ」と高い目標を掲げたが、具体策は保育所や介護施設の入所待ち解消、人材育成など代わり映えなく、財源の裏付けも未知数だ。
安倍首相は10月上旬の内閣改造で担当閣僚を置き、これら少子高齢化対策による「1億総活躍社会」実現をアピールする方針だが、地方創生や女性の活躍と同様に既存政策の寄せ集めにならないか。
参院選で安倍首相は、引き続き憲法改正を公約に掲げる考えだ。経済政策で国民の関心を集めて政権を維持し、実現に向けた地ならしをしたいのだろう。だが打ち上げ花火のような経済目標も中身を伴わなければ国民の失望と不信を増す。
[京都新聞 2015年09月26日掲載]
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