45. 2015年9月27日 23:19:50
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安保法成立 日米同盟さらに強力に アジアの安定維持へ貢献 2015年9月27日リチャード・アーミテージ元米国務副長官 1945年生まれ。米海軍士官学校卒。ブッシュ政権で国務副長官。現在は「アーミテージ・インターナショナル」代表。 日本の集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法を巡って行われた白熱の論議は、この国の民主主義の強さを物語っている。これは国民的な関心に値する重要な論争である。 成立した法律は、憲法の原理、財政的、政治的な現実という制約の枠内で、今日の安全保障上の挑戦に即した防衛態勢を日本にもたらすだろう。 今回の論議では、平和主義か軍国主義かの二者択一論に陥ってはならない。そうした選択肢は誤りであり、法律の真の重要性を見失わせるものだ。 2000年に私は、ジョセフ・ナイ元米国防次官補と共に、日本が集団的自衛権を禁じているために日米の同盟協力が制約されている、という報告書をまとめた。我々が論じたのは、現実の世界の複雑さだった。 同盟国であるにもかかわらず、米政府高官が日本側の担当者と綿密な防衛計画について協議することは、憲法第9条により禁じられている。集団的自衛権行使を容認する新法が作られないまま、その複雑さは今日まで続いてきた。日本を取り巻く安全保障環境は、2000年当時と比べ、はるかに危険性を帯びている。 過去15年の間に中国は、より強力な軍事態勢を取るようになった。南シナ海では係争中の島々を要塞化した。東シナ海では防空識別圏を設定し、尖閣諸島で日本を威嚇しながら、軍の強化に資源を投じている。 つい最近も、我々は、対日戦争で自分たちが勝利したかのように華々しく祝賀して歴史を書き換える、中国共産党の試みを目の当たりにした。無論、戦争の主役だった国民党は異を唱えるだろう。記念式典では、地域の不安を鎮めるどころか、逆に煽ることを意図したような、不気味な軍事パレードが行われたのである。 こうした厳しい安全保障環境を踏まえて、日本が集団的自衛権の概念を容認することは、2000年当時よりも、はるかに正当性が高いと言える。 同時に私は、憲法第9条の解釈変更によって軍国主義が復活することを、恐れる声があるのも承知している。しかしながら、私の見解では、今回の安全保障関連法では、重要かつ事前に定められた安保協力の分野で、しかも特に日本の安全に直結するものについて、自衛隊の貢献を認めることに対象を絞っている。 容認されるのは、特定の状況下において、他国の軍に兵站と捜索救援の支援を提供することのほか、国際平和協力活動への参加能力の拡大、船舶検査作戦の実施、平時における米軍への補給と役務の提供、そして特定の条件に従って、海外で日本人と非日本人を助けるための武器の使用である。 安全保障関連法の意義は、より積極的な安全保障上のパートナーとなる余地を日本にもたらすことにある。だが、この法制によって、日本が平和主義の諸原則から大きく逸脱することはない。 実際、安全保障関連法は、武力行使に関し3つの要件を設けて自己規制している。その1つは、必要最小限度の武力行使に限定することである。軍事行動への参加能力に関する限り、日本の憲法上の制約はなお、世界で最も厳しいものの1つであり続けるだろう。 そしてまた、財政的、政治的な現実が、過大な役割を自衛隊が演じることへの歯止めとなっている。確かに、安倍首相は防衛予算を増やしているが、首相の念頭にある増加額は、軍国主義に戻るような額には程遠いのである。 これまで、日本の防衛支出は、国内総生産(GDP)の約1%にとどまっている。GDP比率で言うと、現在の日本は世界で100位以下だ。大規模な増額でもすれば、軍国主義の復活という議論に幾らかの信憑性が加わるかもしれないが、目下の財政事情、政治的環境においては、全くあり得ない話である。 安保法制を巡る政治環境もまた、日本の手を縛ることに貢献している。 違憲性を争点とした、国会での活発で侃々諤々の論議は、成熟した民主主義にふさわしいものである。これは、脆弱だった「大正デモクラシー」時代の繰り返しではなく、権力に対する「抑制と均衡」の機能を大いに発揮した民主主義のプロセスを反映したものだからだ。自民党の行き過ぎにブレーキをっける連立与党の存在もある。 そして最後に、日本を注視する国際社会がある。日本がより広範な安全保障の役割を持つことに対して、中国と韓国は反射的に否定的な反応を示すだろう。だが、欧米やアジアなどそれ以外の人々は、日本の変化を大いに喜んでいるのである。 アジアをはじめとする地域の平和と安定を維持するためには、多くの労力が求められる。日本の貢献の増大は歓迎されよう。オバマ米大統領が「安倍首相は日本を世界の舞台での新たな役割に導いている」と述べたのは正しい。 日本の新たな役割と、アジア太平洋における米国の新たなリーダーシップは、間違いなく、より強力な日米同盟のための礎石の役割を果たすだろう。 今回の安全保障関連法案の審議に際して、日本では、「安倍政権が米国の言いなりになっている」という批判の声が一部にあった。しかし、安倍政権は必要なことを行っているに過ぎないというのが私の見解だ。日本政府の姿勢は、日本自身の運命を左右する舵を握る手をより強固なものにすることに他ならない。 |