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瀧野隆浩『自衛隊のリアル』(河出書房新社)
安保法制成立で自衛隊が始める準備とは? すでに棺桶と遺体処理班を用意! 市ヶ谷駐屯地内に墓地建設計画も
http://lite-ra.com/2015/09/post-1526.html
2015.09.25. リテラ
安保法制がとうとう可決されてしまった。いよいよ、日本は戦争のできる国になり、自衛隊は近い将来、米国が戦争を行っている中東の最前線に派遣されることが目に見えていて、その戦死リスクはこれまでと比べ物にならないほど大きなものになる。
実際、自衛隊では着々と“自衛隊員の戦死”の準備がなされているという。
これまで本サイトでは、戦死を想定した“隊員家族連絡カード”の存在や家族に遺すため手紙を書くことを指示されていたことを報じたが、しかし自衛隊内はこれからもっとリアルな準備を進め、組織として「死」を制度化していくだろうと予測される。
では、いったい自衛隊は具体的にいったいどんな準備を進めるのか。そのヒントになりそうなのが、防衛大学を卒業し、毎日新聞に入社した異色の記者・瀧野隆浩による『自衛隊のリアル』(河出書房新社)だ。同書は、著者が防衛大学時代の独自のネットワークを使って取材したものだが、過去、自衛隊がはじめて海外で戦死のリスク、準備を始めたときのことがまさにリアルに描かれている。
それは、2005年6月23日、陸上自衛隊がイラク・サマワの復興支援に派兵された際のことだ。このときは、陸上自衛隊が攻撃を受けている。車列に向けて遠隔式のIED(即席爆破装置)が破裂したり、ロケット弾攻撃は、派遣期間中、13回におよんだ。このうち、宿営地内に着弾する事案が4回発生したという。
特に04年10月31日、夜間に発射されたロケット弾は、地面に衝突した後、鉄製の荷物用コンテナを貫通して土嚢に当たり、宿営地外に抜けるという「一つ間違えば甚大な被害に結びついた可能性もあった」というもので、「むしろ犠牲者がでなかったのは幸運としかいいようがない」ものだったのだ。しかもこれは自衛隊が明確に狙われたことに他ならず、「戦闘状態」にあったと同書は記している。
現場の隊員にとって“死”と隣合わせだったのだ。しかも、このイラク派兵の際、攻撃とは別のあまりに衝撃な“事実”もあったという。
〈イラク派遣部隊の宿営地に積まれたコンテナの中には、一切開けられることのなかったコンテナがひとつだけあった。そこに棺桶が入っていたことを知っていたのは、各群長と幕僚数名だった。派遣経験のある高級幹部は私にこう告げた。
「隊員たちの士気が下がるから、特にその存在を知らせる必要はないのは当然だろう。だが、一方で、もしものときに備えておく必要もあった」〉
もしもの時、戦死さえも想定して棺桶を用意していた。これは確かに「自衛隊のリアル」である。
安全な日本の地で政治家たちが何を言おうと、現場は戦場という現実に直面する。自衛隊内では既にカンボジアPKOの際から、“戦死”を想定した様々な検討が行われていたという。
〈陸自は極秘裡に、死者が出た場合の遺体収容方法などの検討を開始していた。具体的には『遺体袋』の購入など。予算上、どう処理すべきかも検討された。陸自舞台が派遣されるのに、攻撃を受けないと考えるほうが非現実的だった。国会対策上、表沙汰にはできない。だが、リアリスト集団としてはやらざるをえなかった〉
その後のイラク派兵では前述のように秘密裏に棺桶が用意されたが、それだけではなかった。戦死を想定した詳細なまでの具体的“手順”までもが検討されていたのだ。
〈現場から中継地、そして帰国までに遺体を後方の安全な場所に運搬する方法。羽田空港での出迎え態勢。その参加者リスト。首相は無理か。だが最低でも、官房長の出迎えは欲しい。「国葬級」の葬儀が可能かどうか。場所は東京・九段の武道館でいいのかどうか。開いている日程は絶えず掌握された。(略)そして医官・衛生隊員は順次、「エンバーミング」と呼ばれる遺体保存・修復の技術を関西の葬儀社で研修させた。傷んだままの遺体では、帰国させられるはずもなかった。部内ではそれらのことを「R検討」と呼んでいた〉
復興のための派遣という名目だったイラク派遣ですらこういう準備が必要だったのだ。おそらくこうした戦死を想定した準備はもっと具体的に大々的なものになっていくだろう。
そのひとつと思われるのが、戦死した自衛隊員の墓地計画だ。あまり知られていないが東京・市ヶ谷の防衛省敷地内にメモリアルゾーン「自衛隊殉職者慰霊碑」がある。そこには青色の端末機があり、1851人の殉職者のデータを見られるというが、10年ほど前そこを“アーリントン国立墓地のような場所にする”との計画が防衛省内で持ち上がったというのだ。
〈(イラク)派兵部隊に戦死者は出なかったが、それはまさに僥倖だった。自衛隊の戦死者はいつ出てもおかしくない状態だったのだ。だから『国立墓地』のようなもの、が必要だった。政治が主導しないから、防衛省・自衛隊独自で」
計画は具体的に煮詰まっていった。
「陸海空各自衛隊から儀杖隊要員を出す」「観光客の鑑賞に堪えられる儀式を考案する」
しかし各自衛隊からの「人を出す余裕がない」との理由で、墓地計画は頓挫したという〉
実際、ここにきて、すでに防衛省内部ではひそかにこの「自衛隊のための国立墓地」の計画を進め始めたという情報もある。
安倍政権は安保法制によって自衛隊員のリスクが高まることをぎりぎりまで認めようとしなかった。兵站=後方支援は敵の最大の標的になるというのは軍事の常識なのに、「後方支援なので安全」というインチキな詭弁を繰り返し続けた。
だが、政権がどういいつくろおうと、戦死リスクはすぐそこまで迫っており、当の自衛隊が一番それをリアルにわかっているということだろう。
(伊勢崎馨)
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