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貧困と戦争のリアル ウォール街から国会前へ
http://tanakaryusaku.jp/2015/09/00012038
2015年9月21日 17:08 田中龍作ジャーナル
ウォール街に集結した元海兵隊員と元アーミー。「我々イラク帰還兵は戦争に反対する」。Tシャツには強いメッセージが。=2011年11月、ズコッティパーク前 写真:筆者=
激しく打ち鳴らされるドラムの音に向かって筆者は駆け出していた。4年前のニューヨーク・ウォール街は、体制批判のコールとドンドコドンドコが空を突き破るように響いていた。
「安倍は辞めろ」「戦争反対」・・・ドンドコドンドコ。この3ヵ月間、国会正門前に集まった人々を鼓舞してきたのも、ドラムの音と政権批判のコールだった。
与党が安保法案の委員会採決を強行した9月17日。4年前のこの日は、ニューヨークのウォール街で若者たちが公園占拠(Occupy)を始めた日だ。
強欲金融資本によって作り出された超格差社会に反発する若者たちが、体を張って抗議したのである。
利子つきの奨学金を借り高い授業料を払って、大学は出たもののロクな仕事に就けない。16歳から24歳までの失業率は16・7%にものぼっていた(2011年10月、米政府統計)。6人に1人が職に就いていないのだ。貧困が米国の若者を支配していた。
「ステューデント・ローン(奨学金)に正義の裁きを」。プラカードをテントに貼ってOccupyを続ける若者もいた。
「奨学金の債務で身動きが取れない」。大学院生は窮状を訴えていた。=2011年11月、ウォール街 写真:筆者=
目もくらむような高額の奨学金返済に追われたくなければ、軍に入隊して大学の分校などで学ぶか、大学で軍事教練を受けなければならない。経済的徴兵制である。
Occupyの取材中、イラク・アフガン帰還兵40人がウォール街にデモをかける場面に出くわした。彼らは分厚い貧困層を作り出した強欲金融資本の本拠地で抗議の行進を決行したのである。
イラクに2度派遣された元海兵隊員は唸りをあげるように話した。「長い間、我々の声は抑圧され、ウォール街に無視されてきた。銀行、大企業そしてホワイトハウスと政府に我々の実情を聞かせたい」と。
「経団連とアメリカにコントロールされた政治しかできないのか。外の声が聞こえないのか」。参院本会議の採決(19日)で山本太郎議員が与党議員を一喝した。元海兵隊員の唸りは山本太郎議員の言葉とも呼応する。
経済同友会の前副代表幹事が経済的徴兵制を促す発言をした。この人物は「日本学生支援機構」の運営評議会委員でもあった。
昨年5月に開かれた文科省の「学生への経済的支援の在り方に関する検討会で「奨学金を返せない人は1〜2年、防衛省(自衛隊)でインターンをやってもらえば就職(率)が良くなる」と発言していたのである。
国会前でもブラスと鳴り物が存在をアピールし参加者を勇気づけた。=16日、写真:筆者=
安保法制が可決成立したことにより経済的徴兵制は現実味を帯びる。彼らがコールする「戦争反対」は、「戦場で殺し殺されたくない」という魂の叫びだ。
「学校に行きたい若者が昼夜バイトを掛け持ちするこの国で、なぜ私たちは国のために戦わなければならないのか?」。こう話す大学4年生は560万円もの奨学金を背負う。
「正規社員として就職できなければ、返せる金額ではない。海外脱出も考えている」。日本にいても絶望しかないことを彼は知っていた。
今や学生3人に1人が奨学金の受給者だ(文科省・2012年まとめ)。安保法制と共に米国からの要請を受け労働者派遣法が今国会で改正(悪)された。「新卒派遣」なる言葉が人口に膾炙しつつある。「労働者皆貧乏」の時代に突入したのである。
「安倍総理、御願いです。もう国民を守るためとウソをつくのは止めて下さい」。(6月27日、渋谷反戦集会)
学生の言葉は米強欲金融資本の走狗とも言える安倍政権の本質を突いていた。
〜終わり〜
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