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岸信介の「安保」と安倍晋三の「安保」はこれほど違うー(田中良紹氏)
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19th Sep 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
安保法案が成立した。
7月中旬に衆議院で強行可決した時点から今国会での成立は
議会運営上確実となっており、
あとは国民の合意形成をどう図るかが問われていた。
しかし安倍政権に合意形成の意思はなく、
ブッシュ(子)政権以来の米国と同様に日本は分断国家への道を進む事になる。
国民の理解が進まないのに安倍総理はなぜ安保法案の成立を急いだのか。
その答えの一つとして、
祖父である岸信介元総理の「60年安保改定」と
自らの「戦後安全保障政策の大転換」を重ね合わせているという指摘がある。
岸元総理が行った「60年安保改定」は国民の猛反発を受け、
空前の反対闘争を引き起こしたが、その後の日本に戦禍は訪れず、
むしろ経済大国へと上り詰めた。
それが蒙昧な大衆にはいまだに理解されずにいる。
その思いを捨てきれない安倍総理は、
自分がやろうとしている事が祖父と同じく国民の反対を押し切ってでもやる価値があると
考えているというのである。
しかしフーテンが昨年3月に書いたブログ「岸信介と安倍晋三はこれほど違う」で
指摘したように、
岸信介の「安保改定」と安倍総理の「安保法案」は目指す方向が真逆である。
「対米自立」を目指した岸信介と、「対米従属」を強化する安倍総理は、
真逆の政治家と言った方が良い。
両者に共通点があるとすれば強気一辺倒の国会運営で
野党と国民の反発を買い、支持を失った事である。
その背景には両者ともが選挙に大勝して盤石な党内基盤と
国会で大量議席を持った。また米国から称賛された事も共通している。
それが強気の政権運営となったのだが共通点はそれだけだ。
岸信介が「安保改定」に踏み出した動機は、
吉田茂の「対米従属」路線からの脱却にあり、
それを後押ししたのは野党の社会党である。
つまり社会党は「60年安保改定」に反対でなかった。
『岸信介証言録』(毎日新聞社)によれば、
岸信介は総理就任直後の国会で社会党から
「日米安保条約と日米行政協定は極めて不平等であるから対等なものに
改める考えはあるか」と質問され、「アメリカを説得する」と何度も答弁したという。
そこで岸はマッカーサー駐日大使に対し、駐留米軍を最大限撤退させ、
米軍基地を日本に返還させるため、日本の防衛力を増強するという提案を行う。
総理就任前に岸はダレス国務長官から「ソ連の軍事力に対し
日本が自主防衛するだけでは無理」と言われ、
日本の防衛力を増強する事で安保条約を対等にしていくしかないと考えたからである。
また岸は社会党の加藤シズエ議員の質問に答える形で、
戦争被害を与えたアジア各国に謙虚に謝罪を表明し、
「アジアの中の日本」という立場をバックに対米交渉を行うため、
米国訪問の前に東南アジア各国を歴訪した。
そして岸はそこが「妖怪」と言われるゆえんだが、
対米交渉に於いて社会党政権誕生の可能性に言及し、
本人は反共主義者である事を強く強調する。
そうして米国を安心させ、
駐留米軍について規定した日米行政協定の大幅改定を実現しようとしたのである。
行政協定は日本の独立後も米国の占領体制を維持するものだが、
米軍は改定にはあくまでも反対し、
岸の思い通りにはならずに名称を「日米地位協定」と変えて継続される事になる。
しかしいずれにしても岸の外交術は「取引の出来る男」として米国に気に入られた。
米国社会は果敢にチャレンジする人間が好きである。
吉田茂の「対米従属路線」は米国に都合が良かったが、
それにチャレンジしながらも現実主義を貫く岸を米国は政治家として高く評価したのである。
岸と社会党との対立は総理就任の翌年、総選挙で自民党が大勝し、
絶対安定多数を確保したところから始まる。
党内基盤を盤石にし、大量議席を得た事で岸は警職法改正を打ち出す。
GHQが「民主警察」と称して警察力を弱めたのに対し、
警察力で反体制的な政治運動を防止できる仕組みを作ろうとしたのである。
これに社会党が激しく反発して大衆運動が盛り上がり、
自民党反主流派も同調する中で法案は廃案に追い込まれた。
「60年安保闘争」はその流れの延長にある。
「安保改定」に反対というより岸の強権的な政治手法への反発が
広範な反対運動を生み出した。
それが「反米闘争」の様相を帯びるようになると米国は岸を切り捨てる。
吉田茂を復活させようと工作し池田内閣が誕生した。
吉田路線に対抗した岸の「60年安保改定」を吉田はどう見ていたか。
吉田は一日も早く占領体制から脱するため「対米従属路線」を受け入れ、
批判を覚悟で旧安保条約と行政協定に署名した。
しかしGHQから命じられた再軍備に吉田は徹底して抵抗する。
抵抗の切り札は憲法9条である。
そこでGHQは軍隊ではない軍隊、警察予備隊を作るよう命令し、
それが自衛隊という世界に例のない実力部隊に変貌した。
吉田は米国がアジアの戦争に米軍ではなく日本人の血を流させようとしている事を
見抜いていた。そのため岸の「安保改定」に際し、集団的自衛権の行使が
盛り込まれるかどうかに注目し、
日本防衛の見返りが基地の提供だけだったことを知って岸を支持した。
以来、日本政府は集団的自衛権行使を認めない事を国是としてきたのである。
それを安倍総理が覆した。
「60年安保」は「対米自立」を求めて岸が米国に要求を飲ませたが、
安倍総理の「安保法案」は朝鮮戦争で30万人規模の軍隊を日本に復活させ、
戦場に行かせようとした米国の要求が半世紀以上たって実現した性格のものである。
日本の歴代自民党政権は集団的自衛権を認めずに専守防衛に徹し、
日本の軍事負担をできる限り軽減して経済成長に力を入れた。
ところが日本の経済力が米国を脅かすようになり、
そこから米国は集団的自衛権行使要求を強める。
そして遂に安倍政権が米国の要求に屈したのである。
安倍総理と与党は、国会を取り巻く反対運動を「60年安保闘争」と同じで
一過性のものと見ている。
時間が経てば国民が法案の有効性を理解すると考えている。
しかし岸信介と安倍総理が真逆のように、反対運動もまた真逆である。
「60年安保」での野党の反対は「改定」より岸の政治体質に危機感を感じ、
それを「戦争反対」の声で代弁していた。
従って岸が退陣すれば反対運動は雲散霧消した。
しかし今回は安倍総理の政治手法だけでなく、
法案の中身に「憲法違反」の疑いがかけられている。
従って安倍総理が職にとどまる限り、あるいは安倍総理が退陣しても
法案が「違憲」の疑いを晴らさない限り、反対運動が雲散霧消する事はない。
また「60年安保」は専守防衛を守った事で
自衛隊が戦争に巻き込まれる事はなかったが、今回はそうではない。
戦場で自衛隊に死傷者が出る事態が現実になる。
時間が経てば経つほど国民は法案と向き合う事になる。
5月の連休明けにフーテンは「安倍政権は地雷原に踏み込んだ」と書いたが、
この法案成立を見て「安倍政権は自ら墓穴を掘った」と感じている。
政治の「奥」を知らずに「政治ごっこ」をしてきた政治家だから、
歴史を覆す恐ろしさを感じずに突っ走ったのかも知れないが、
これからその恐ろしさをじわじわ感じていく事になるのではないかと思う。
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