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2015年09月19日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆米国の忠勇なる下僕・安倍晋三首相が、米上下両院合同会議で、安全保障法制整備関連法案(11本)が未成文化段階なのに、「日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます」と大見得を切って宣言した約束を果たすことのみに、汲々としてきた。だからこそ、衆参両院で強行採決してでも、米国の期待に応えざるを得なかった。日本の国民有権者の意思よりも、米国が築いた「戦後レジーム(体制)」=「米国に隷従する体制」堅持を最優先したのである。
これは、安倍晋三首相が、「戦後レジームからの脱却―連合国(米ソ英3国)首脳のヤルタ会談とポツダム会談で決められた 敗戦後の日本の在り方を維持・継続することをやめる」と提唱してきた自己の信念をあっさりとかなぐり捨てて、「アイデンティティ(自己同一性)」を失うことを意味していた。これでは、安倍晋三首相は、到底「日本の最高指導者(首相)」とは言えず、敗戦国日本を隷属化している米国の傀儡であることをいままで通り、継続する存在にすぎない。
◆しかし、安全保障法制整備関連法(11本)の成立は、大日本帝国陸軍の亡霊たちの大師勝利をもたらした。亡霊たちを背後霊にしている中谷元防衛相(1957年10月14日高知市生まれ、防衛大学校本科理工学専攻24期卒業=陸上自衛官を4年間務め、第20普通科連隊小銃小隊長、第1空挺団空挺教育隊レンジャー教官を経て2等陸尉で退官、自民党高知1区選出、当選9回)と参院平和安全法制特別委員会の佐藤正久理事(1960年10月23日福島県生まれ、防衛大学校応用物理専攻第27期卒業=陸上自衛隊幹部学校指揮幕僚課程修了、第1次ゴラン高原派遣輸送隊長、第1次イラク復興業務支援隊長、第7普通科連隊長などを歴任、1等陸佐で退官、自民党比例代表選出、当選2回)のコンビは、自衛隊の国軍化を目指してきた。
9月17日午後、野党側は、参院平和安全法制特別委員会の鴻池祥肇特別委員長に対する不信任動議が出し、佐藤正久理事が、鴻池祥肇特別委員長に代わって、委員長席に座ってから、趣旨説明の際、議事進行を遅らせる「フィリバスタリー(牛舌戦術)」を3時間以上繰り広げた。だが、自民・公明与党側は、不信任動議が否決されると、すかさず、鴻池祥肇特別委員長が、委員長席に座った途端、締めくくり質疑を行わず、緊急動議により、すかさず、佐藤正久理事の合図で、与党議員が、ドッと委員長席に駆け寄り、鴻池祥肇特別委員長を前後左右からしっかりガード。油断していた野党議員が、一歩遅れて、委員長席に押しかけてもみ合いになるなか、わずか8分で採決・可決、陸上自衛隊で鍛えた佐藤正久理事の戦術・戦闘技術が見事に成功した。
大臣席に座っていた中谷元防衛相が、思わずニンマリ。背広を着ていても、中谷元防衛相と佐藤正久理事の本性は、陸上自衛官である。見方によれば、「陸上自衛官によるクーデター」成功とも言える。
◆帝国陸軍は、大東亜戦争に敗れて連合国軍最高司令部(GHQ)に武装解除されて以来、元陸軍高級将校たちが、「陸軍復活」を悲願・宿願としてきた。警察予備隊、保安隊の創設に尽力、1954年6月1日、防衛庁設置法・自衛隊法公布、7月1日、陸海空3自衛隊発足からこれまで61年間、日本国憲法第9条改正による「国軍創設」を訴え続けてきたのである。
とくに中谷元防衛相は、自民党憲法改正草案(2012年4月27日決定)の起草委員長に就任。自衛隊を廃止して「国防軍創設」に力を入れた。改正草案「第二章 安全保障」は、次のように規定している。
「第二章 安全保障
第9条(平和主義)1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
第9条の2(国防軍)1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
第9条の3(領土等の保全等)国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。」
自民党は、この改正草案に、「緊急事態条項」(緊急自体の際に政府が国民の権利を一時的に制限できる)を盛り込むことも検討中だ。さらに国民の義務として「国民皆兵・徴兵制度(男女平等)」導入が次第に視野に入りつつある。
今回の安全保障法制整備関連法は、日本の安全保障体制を「憲法改正」の一歩手前のところにまで持ってくることに成功した。しかし、帝国陸軍の高級将校たちの悲願・宿願は、「憲法第9条改正」が実現してこそ、叶うのであり、まだ「画竜点睛を欠いている」状態だ。
10か月後に迫っている2016年7月の次期参院議員選挙の結果、自民・公明与党と、これに協力した次世代の党、日本を元気にする会・新党改革が、そろって議席を失う公算が大となっているので、「集団的自衛権行使容認・憲法解釈変更・閣議決定(2014年7月1日)」→「安全保障法制整備関連法案」国会成立路線は、却って「憲法改正」を大幅に遅らせてしまうことになり兼ねない。そうなると、帝国陸軍の高級将校たちの大願成就の日は、かなり遠のいたとも言える。
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