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IWJ Independent Web Journal
【全文文字おこし掲載】「公聴会は採決のための『セレモニー』に過ぎないのか」――地方公聴会で釘をさした水上貴央弁護士の懸念通り!安保法制の参院審議が総括審議を行わずに強制終了!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/265516
「この横浜地方公聴会は、慎重で十分な審議をとるための会ですか? それとも採決のための単なる『セレモニー』ですか?」――。
国民による、割れんばかりの「反対!」の声をすべて無視して、2015年9月17日、参院特別委員会にて安保法制の採決が強行された。採決に先立ち、2015年9月15日には国会で中央公聴会、16日には横浜で地方公聴会が開かれたが、出席した公述人が表明した法案への反対意見は、いっさい採決に影響を与えなかった。はじめから、「採決ありき」の姿勢で臨む与党議員たちにとって、公聴会は、定められているから開く、というだけの「セレモニー」であり、「アリバイ作り」だったのだ。
16日の地方公聴会に公述人として出席した、弁護士の水上貴央(みずかみ たかひさ)氏は、公述の中で、「(公述人はみな)公聴会で公述することがより実のある審議に資すると考えるから、参加しているんです」として、公述内容を尊重し、議論に反映するよう釘をさしていたが、ついに与党議員に聞き入れられることはなかった。
与党は、地方公聴会の終了後、17日の法案成立を目指し、16日中にも参院特別委員会の総括審議を行おうとしていたが、野党による「審議の打ち切りは時期尚早」、「地方公聴会での意見を踏まえるべきだ」という激しい反発にあった。自民党の鴻池委員長が、職権で総括質疑の実施を決めたものの、野党議員との攻防が続き、審議が開かれないまま17日にずれ込んだ。そして17日夕、ついに与党は総括審議を行うことなく、強行採決に踏み切った。
公聴会は、そして国民の声は、かくもやすやすと無視されてよいほど軽いものなのか? 長年の知見と専門知識に基づく貴重な意見を政府が無視した光景は、多くの国民の脳裏にしっかりと焼き付いたはずだ。水上公述人は、16日に行われた地方公聴会で、弁護士としての知見から、「我が国の安全保障が重要だと考えるとすれば、このような法律を作ってはいけない!」と、重大な警鐘を鳴らしていた。
以下に、水上弁護士の公述を全文掲載する。
水上貴央公述人「弁護士の水上貴央でございます。よろしくお願いいたします。
さて、『公聴会』とは、国会法第51条に法定された正式な会であり、特に重要な法案については、重要な利害関係者や学識経験者等の意見を聞いて、慎重かつ充実した審議を実現するためにあるものと理解しています。
私も昨日、中央公聴会を拝見させていただきましたが、元最高裁判事の濱田(邦夫)先生が、まさにこの法案を、明確に『違憲』と断じ、さらに今後、裁判手続きにおいて違憲無効判決が出ることについても示唆されるなど、極めて重要な意見を述べられたと考えています。奥田(愛基)公述人の素晴らしいスピーチに心動かされた方も多かったのではないかと思います。
まさに多くの参酌すべき公述がなされ、集中審議を含め最後まで審議を尽くすべきこのタイミングで、その後の理事会において、本日このあと、さらに審議をされ、取りまとめ、終局という審議日程が強行されました。
私は一介の弁護士に過ぎませんが、それでも業務の予定を変更し、この場に来ています。本日隣席されている公述人の方々も、あるいは昨日来られた6人の公述人の方々も、それぞれ大変忙しい方ばかりです。そういった人たちが、日常の仕事を調整してまで公聴会に参加しているのは、一人ひとりの国民が民主主義の一旦を担っているという自覚からです。公聴会で公述することがより実のある審議に資すると考えるから、参加しているんです。
私は昨日、中央公聴会を拝見し、この国の民主主義に希望を持ち、一方、その後の理事会の経緯を見て、この国の民主主義に絶望をしつつあります。公聴会が採決のための単なる『セレモニー』に過ぎず、『茶番』であるならば、私はあえて申し上げるべき意見を持ち合わせておりません。
委員長、公述の前提としてお伺いしたいのですが、この横浜地方公聴会は、慎重で十分な審議をとるための会ですか? それとも採決のための単なる『セレモニー』ですか?
鴻池祥肇委員長「この件につきましては、各政党の理事間協議において本日の横浜の地方公聴会が決まったわけです。その前段、その後段についてはいまだに協議は整っておりません」
水上公述人「ぜひとも公聴会を開いた甲斐があった、と言えるだけの、十分かつ慎重な審議をお願いしたいと思います。
それでは意見を申し上げたいと思いますが、すでにだいぶん持ち時間、過ぎてしまいました。私、資料を読んで、本当は今日、申し上げたかった原稿をお示ししてありますので、ぜひそちらをご覧頂きたいと思います。ここでは特に重要な点に絞って時間の限りお話したいというふうに思います。
まず、後方支援に関する問題についてお話します。この法案は、『重要影響事態』における後方支援として、世界中の戦闘地域に隣接するものも含めた、現に戦闘が行われている現場以外において、発艦準備中の戦闘機に弾薬の補給等まで行える、としています。この行為が『武力行使に密接な準備行為』であり、『武力行使との一体化』として、憲法第9条に反するのではないか、というのがここでは問題になっています。
これを考えるにあたっては、逆に日本が攻撃されている場面を考えてみることが重要です。資料1の5ページおよび6ページをご覧ください。まず5ページは、『我が国に対してA国が攻撃をしてきている場合』、具体的には、『我が国に対してA国の航空機爆撃機がミサイルで攻撃をしてきて、ミサイルを撃ち終わった航空機が、再び我が国の領海のすぐ外の公海で補給艦で補給を受ける』という場面です。
これは、A国が爆撃機で攻撃してきて、A国の補給船がそこに弾薬を補給する、という場面ですから、政府の説明でも当然に『個別的自衛権を行使できる場面だ』、というふうに説明がされています。
次のページ、6ページをご覧いただきますと、このA国が行った補給艦の部分を、B国が行ったらどうなるか、という事例になります。これについては、国際法上の常識から考えれば当然に、B国に対しても、少なくともこの事例、『爆撃機に対して弾薬を補給して、直ちにその爆撃機が再び日本に攻撃しに来る』、という事例においては、B国の補給艦に対して個別的自衛権が行使出来るはずです。
というのは、このような武力攻撃とまさに密接不可分な行為は、もはや中立国の行為とは認められず、この国、B国自体が交戦国となってしまいますから、国際法上は、B国の補給艦は軍事目標になります。従って当然に個別的自衛権が行使できるはずです。逆に言うと、これができないってことになると、日本はずっと攻撃され続けてしまう、ということになります。我が国の安全保障が極めて深刻な影響を与えられる、ということになります。
ところが今回、政府は、このようなB国に対して、『反撃できない、自衛権行使できない』、という答弁をされました。これはどういうことかと言うと、その次のページ見て頂きますと、今度はこのB国の立場が日本になった場合、どうなるかという話です。
つまり、アメリカがA国の立場になり、その補給をする国が日本になった場合、日本は、『アメリカから攻撃を受けている他国から、個別的自衛権を行使されますか』、というときに、個別的自衛権が行使される、ということになると、個別的自衛権の行使の対象は武力攻撃ですから、日本がやっているの(補給)はアメリカと一体化した武力の行使だ、ということになってしまいますので、日本は、この行為を『武力の行使と一体化していない』と説明をするためには、B国に対しても反撃できない、と言わざるを得ない、という状態になったんです。
これは明らかに、全世界でアメリカの武力攻撃を支援するために、我が国の自国防衛を犠牲にした、ということです。むしろ、我が国の安全保障が重要だと考えるとすれば、このような法律を作ってはいけないんです。
一方で、そのことに対して追及された政府は、その後の答弁において、『このような場合においてもやはり、個別的自衛権が行使できる場合がある、B国に対して』という答弁をしました。答弁を変えました。このように答弁を変えるということ自体が問題ですが、今度は、もしここにB国に対する個別的自衛権が行使できるとすれば、やはりこのB国の立場に日本がなった場合に、これは武力行使と一体化しているではないか、という問題が生じます。つまり違憲なのです。
どういうことかと申しますと、この法案は、実態において違憲な武力行使と極めて密接な準備行使を行い、それを隠し立てするために我が国の個別的自衛権を犠牲にしている法案なのです。
政府与党が本当に日本の安全保障環境を重視し、我が国を守ろうと思うのであれば、どうしてこのような違憲で、かつ、それを隠すために自国防衛を犠牲にするような法律を作るんでしょうか。この法案はどこを向いて作られているのでしょうか。これがまず一つ、重大な問題です。
もう一つ、大変重要な問題が『自衛官による武器使用』という問題です。資料1で言うと、9ページをご覧ください。本法案では、『他国等の武器を守るために自衛官が武器を使用して守れる』、という条文、これ『自衛隊法95条の2』という条文にございます。この条文の主語は『自衛官』です。自衛隊ではない。国でもない。『自衛官』です。そしてこの守ることができる武器等には、艦船や航空機が含まれています。イージス艦が守れるということになっている。
つまりどういうことかというと、『自衛官個人がアメリカのイージス艦を、武器を使って守る』という、とんでもない規定になっています。このように明らかに不合理な条文になっているのは、この行為をもしも我が国自身がやっている、組織的にやっているということになれば、これは明確に武力の行使だからです。武力の行使だと言われないためには、自衛官個人がやった、ということにしなければならない。しかし、条文に『自衛官』と書いたからといって、この行為の本質は変わるでしょうか。実際には、明らかに武力の行使です。
さらに申し上げますと、この場合には『新三要件』の縛りはありません。『存立危機事態』も認定されません。つまりこれは完全に、『フルスペックの集団的自衛権』です。つまり政府は、この条文において、フルスペックの集団的自衛権を認めてしまっています。限定されてもいません。
以上より、この条文は違憲条文であり、『自衛隊法95条の2』は必ず削除しなければなりません。ちなみに申し上げますが、共産党等が提出された自衛隊の資料によると、この『95条の2』は使う気満々です。
さらにこのような不合理な規定をとったことによって、一番しわ寄せを受けるのは、なんと自衛官です。どういうことかと申しますと、この条文の主語は『自衛官』ですから、もしも万が一、他国が自国の民間船を盾にして攻撃してきたときに、それを自衛官が守って、それが正当防衛や緊急避難を成立させない場合には、自衛官個人が責任をとることになります。我が国の刑法、あるいは、攻撃をしてしまった国の国内法で罰せられる可能性があります。
自衛官は一方で、『自衛隊法122条の2』という条文で、上官の命令に従わなければ罰則が加えられます。自衛官は上官の命令に従って、やむを得ず武器を使用した結果、正当防衛や緊急避難が成立しなければ罰せられる可能性があります。
これは自衛隊、自衛官の皆さんに胸が張れますか?我が国を守ってくれている自衛官の皆さんに胸が張れますか?
このように、この法案は違憲の問題を抱えているだけではなく、法律自体が『欠陥法案』であり、また極めて不当な結論を導くような『不当法案』です。従って、まずは政府は改めるべきところは改め、しっかりと合憲の枠組みをつくることができるのか、ということを模索するべきです。
国会は立法をするところです。政府に白紙委任を与える場所ではありません。ここまで重要な問題が審議において明確になり、今の法案が政府自身の説明とも重大な乖離がある状態で、この法案を通してしまう場合は、もはや国会に存在意義などありません。これは単なる『多数決主義』であって、『民主主義』ではありません!!
鴻池委員長「陳述時間を過ぎておりますので、簡潔におまとめください」
水上公述人「わかりました。
参議院がその良識を放棄したと、国民に判断されないためには、今まさにしっかりとした審議を尽くすべきです。60日ルールを使われたら参議院の存在意義がなくなる、などと言う方がいますが、参議院がその良識を放棄してしまったら、それこそ参議院の存在意義など国民は決して認めません。今こそ参議院の先生方の良識に期待し、我々はそれを注視していることを申し上げ、私の意見とさせて頂きます。
ありがとうございました」
【全文文字おこし掲載】「公聴会は採決のための『セレモニー』に過ぎないのか」――地方公聴会で釘をさした水上貴央弁護士の懸念通り!安保法制の参院審議が総括審議を行わずに強制終了!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/265516
「この横浜地方公聴会は、慎重で十分な審議をとるための会ですか? それとも採決のための単なる『セレモニー』ですか?」――。
国民による、割れんばかりの「反対!」の声をすべて無視して、2015年9月17日、参院特別委員会にて安保法制の採決が強行された。採決に先立ち、2015年9月15日には国会で中央公聴会、16日には横浜で地方公聴会が開かれたが、出席した公述人が表明した法案への反対意見は、いっさい採決に影響を与えなかった。はじめから、「採決ありき」の姿勢で臨む与党議員たちにとって、公聴会は、定められているから開く、というだけの「セレモニー」であり、「アリバイ作り」だったのだ。
16日の地方公聴会に公述人として出席した、弁護士の水上貴央(みずかみ たかひさ)氏は、公述の中で、「(公述人はみな)公聴会で公述することがより実のある審議に資すると考えるから、参加しているんです」として、公述内容を尊重し、議論に反映するよう釘をさしていたが、ついに与党議員に聞き入れられることはなかった。
与党は、地方公聴会の終了後、17日の法案成立を目指し、16日中にも参院特別委員会の総括審議を行おうとしていたが、野党による「審議の打ち切りは時期尚早」、「地方公聴会での意見を踏まえるべきだ」という激しい反発にあった。自民党の鴻池委員長が、職権で総括質疑の実施を決めたものの、野党議員との攻防が続き、審議が開かれないまま17日にずれ込んだ。そして17日夕、ついに与党は総括審議を行うことなく、強行採決に踏み切った。
公聴会は、そして国民の声は、かくもやすやすと無視されてよいほど軽いものなのか? 長年の知見と専門知識に基づく貴重な意見を政府が無視した光景は、多くの国民の脳裏にしっかりと焼き付いたはずだ。水上公述人は、16日に行われた地方公聴会で、弁護士としての知見から、「我が国の安全保障が重要だと考えるとすれば、このような法律を作ってはいけない!」と、重大な警鐘を鳴らしていた。
以下に、水上弁護士の公述を全文掲載する。
水上弁護士による公述の動画・全文文字起こし
水上貴央公述人「弁護士の水上貴央でございます。よろしくお願いいたします。
さて、『公聴会』とは、国会法第51条に法定された正式な会であり、特に重要な法案については、重要な利害関係者や学識経験者等の意見を聞いて、慎重かつ充実した審議を実現するためにあるものと理解しています。
私も昨日、中央公聴会を拝見させていただきましたが、元最高裁判事の濱田(邦夫)先生が、まさにこの法案を、明確に『違憲』と断じ、さらに今後、裁判手続きにおいて違憲無効判決が出ることについても示唆されるなど、極めて重要な意見を述べられたと考えています。奥田(愛基)公述人の素晴らしいスピーチに心動かされた方も多かったのではないかと思います。
まさに多くの参酌すべき公述がなされ、集中審議を含め最後まで審議を尽くすべきこのタイミングで、その後の理事会において、本日このあと、さらに審議をされ、取りまとめ、終局という審議日程が強行されました。
私は一介の弁護士に過ぎませんが、それでも業務の予定を変更し、この場に来ています。本日隣席されている公述人の方々も、あるいは昨日来られた6人の公述人の方々も、それぞれ大変忙しい方ばかりです。そういった人たちが、日常の仕事を調整してまで公聴会に参加しているのは、一人ひとりの国民が民主主義の一旦を担っているという自覚からです。公聴会で公述することがより実のある審議に資すると考えるから、参加しているんです。
私は昨日、中央公聴会を拝見し、この国の民主主義に希望を持ち、一方、その後の理事会の経緯を見て、この国の民主主義に絶望をしつつあります。公聴会が採決のための単なる『セレモニー』に過ぎず、『茶番』であるならば、私はあえて申し上げるべき意見を持ち合わせておりません。
委員長、公述の前提としてお伺いしたいのですが、この横浜地方公聴会は、慎重で十分な審議をとるための会ですか? それとも採決のための単なる『セレモニー』ですか?
鴻池祥肇委員長「この件につきましては、各政党の理事間協議において本日の横浜の地方公聴会が決まったわけです。その前段、その後段についてはいまだに協議は整っておりません」
水上公述人「ぜひとも公聴会を開いた甲斐があった、と言えるだけの、十分かつ慎重な審議をお願いしたいと思います。
それでは意見を申し上げたいと思いますが、すでにだいぶん持ち時間、過ぎてしまいました。私、資料を読んで、本当は今日、申し上げたかった原稿をお示ししてありますので、ぜひそちらをご覧頂きたいと思います。ここでは特に重要な点に絞って時間の限りお話したいというふうに思います。
まず、後方支援に関する問題についてお話します。この法案は、『重要影響事態』における後方支援として、世界中の戦闘地域に隣接するものも含めた、現に戦闘が行われている現場以外において、発艦準備中の戦闘機に弾薬の補給等まで行える、としています。この行為が『武力行使に密接な準備行為』であり、『武力行使との一体化』として、憲法第9条に反するのではないか、というのがここでは問題になっています。
これを考えるにあたっては、逆に日本が攻撃されている場面を考えてみることが重要です。資料1の5ページおよび6ページをご覧ください。まず5ページは、『我が国に対してA国が攻撃をしてきている場合』、具体的には、『我が国に対してA国の航空機爆撃機がミサイルで攻撃をしてきて、ミサイルを撃ち終わった航空機が、再び我が国の領海のすぐ外の公海で補給艦で補給を受ける』という場面です。
これは、A国が爆撃機で攻撃してきて、A国の補給船がそこに弾薬を補給する、という場面ですから、政府の説明でも当然に『個別的自衛権を行使できる場面だ』、というふうに説明がされています。
次のページ、6ページをご覧いただきますと、このA国が行った補給艦の部分を、B国が行ったらどうなるか、という事例になります。これについては、国際法上の常識から考えれば当然に、B国に対しても、少なくともこの事例、『爆撃機に対して弾薬を補給して、直ちにその爆撃機が再び日本に攻撃しに来る』、という事例においては、B国の補給艦に対して個別的自衛権が行使出来るはずです。
というのは、このような武力攻撃とまさに密接不可分な行為は、もはや中立国の行為とは認められず、この国、B国自体が交戦国となってしまいますから、国際法上は、B国の補給艦は軍事目標になります。従って当然に個別的自衛権が行使できるはずです。逆に言うと、これができないってことになると、日本はずっと攻撃され続けてしまう、ということになります。我が国の安全保障が極めて深刻な影響を与えられる、ということになります。
ところが今回、政府は、このようなB国に対して、『反撃できない、自衛権行使できない』、という答弁をされました。これはどういうことかと言うと、その次のページ見て頂きますと、今度はこのB国の立場が日本になった場合、どうなるかという話です。
つまり、アメリカがA国の立場になり、その補給をする国が日本になった場合、日本は、『アメリカから攻撃を受けている他国から、個別的自衛権を行使されますか』、というときに、個別的自衛権が行使される、ということになると、個別的自衛権の行使の対象は武力攻撃ですから、日本がやっているの(補給)はアメリカと一体化した武力の行使だ、ということになってしまいますので、日本は、この行為を『武力の行使と一体化していない』と説明をするためには、B国に対しても反撃できない、と言わざるを得ない、という状態になったんです。
これは明らかに、全世界でアメリカの武力攻撃を支援するために、我が国の自国防衛を犠牲にした、ということです。むしろ、我が国の安全保障が重要だと考えるとすれば、このような法律を作ってはいけないんです。
一方で、そのことに対して追及された政府は、その後の答弁において、『このような場合においてもやはり、個別的自衛権が行使できる場合がある、B国に対して』という答弁をしました。答弁を変えました。このように答弁を変えるということ自体が問題ですが、今度は、もしここにB国に対する個別的自衛権が行使できるとすれば、やはりこのB国の立場に日本がなった場合に、これは武力行使と一体化しているではないか、という問題が生じます。つまり違憲なのです。
どういうことかと申しますと、この法案は、実態において違憲な武力行使と極めて密接な準備行使を行い、それを隠し立てするために我が国の個別的自衛権を犠牲にしている法案なのです。
政府与党が本当に日本の安全保障環境を重視し、我が国を守ろうと思うのであれば、どうしてこのような違憲で、かつ、それを隠すために自国防衛を犠牲にするような法律を作るんでしょうか。この法案はどこを向いて作られているのでしょうか。これがまず一つ、重大な問題です。
もう一つ、大変重要な問題が『自衛官による武器使用』という問題です。資料1で言うと、9ページをご覧ください。本法案では、『他国等の武器を守るために自衛官が武器を使用して守れる』、という条文、これ『自衛隊法95条の2』という条文にございます。この条文の主語は『自衛官』です。自衛隊ではない。国でもない。『自衛官』です。そしてこの守ることができる武器等には、艦船や航空機が含まれています。イージス艦が守れるということになっている。
つまりどういうことかというと、『自衛官個人がアメリカのイージス艦を、武器を使って守る』という、とんでもない規定になっています。このように明らかに不合理な条文になっているのは、この行為をもしも我が国自身がやっている、組織的にやっているということになれば、これは明確に武力の行使だからです。武力の行使だと言われないためには、自衛官個人がやった、ということにしなければならない。しかし、条文に『自衛官』と書いたからといって、この行為の本質は変わるでしょうか。実際には、明らかに武力の行使です。
さらに申し上げますと、この場合には『新三要件』の縛りはありません。『存立危機事態』も認定されません。つまりこれは完全に、『フルスペックの集団的自衛権』です。つまり政府は、この条文において、フルスペックの集団的自衛権を認めてしまっています。限定されてもいません。
以上より、この条文は違憲条文であり、『自衛隊法95条の2』は必ず削除しなければなりません。ちなみに申し上げますが、共産党等が提出された自衛隊の資料によると、この『95条の2』は使う気満々です。
さらにこのような不合理な規定をとったことによって、一番しわ寄せを受けるのは、なんと自衛官です。どういうことかと申しますと、この条文の主語は『自衛官』ですから、もしも万が一、他国が自国の民間船を盾にして攻撃してきたときに、それを自衛官が守って、それが正当防衛や緊急避難を成立させない場合には、自衛官個人が責任をとることになります。我が国の刑法、あるいは、攻撃をしてしまった国の国内法で罰せられる可能性があります。
自衛官は一方で、『自衛隊法122条の2』という条文で、上官の命令に従わなければ罰則が加えられます。自衛官は上官の命令に従って、やむを得ず武器を使用した結果、正当防衛や緊急避難が成立しなければ罰せられる可能性があります。
これは自衛隊、自衛官の皆さんに胸が張れますか?我が国を守ってくれている自衛官の皆さんに胸が張れますか?
このように、この法案は違憲の問題を抱えているだけではなく、法律自体が『欠陥法案』であり、また極めて不当な結論を導くような『不当法案』です。従って、まずは政府は改めるべきところは改め、しっかりと合憲の枠組みをつくることができるのか、ということを模索するべきです。
国会は立法をするところです。政府に白紙委任を与える場所ではありません。ここまで重要な問題が審議において明確になり、今の法案が政府自身の説明とも重大な乖離がある状態で、この法案を通してしまう場合は、もはや国会に存在意義などありません。これは単なる『多数決主義』であって、『民主主義』ではありません!!
鴻池委員長「陳述時間を過ぎておりますので、簡潔におまとめください」
水上公述人「わかりました。
参議院がその良識を放棄したと、国民に判断されないためには、今まさにしっかりとした審議を尽くすべきです。60日ルールを使われたら参議院の存在意義がなくなる、などと言う方がいますが、参議院がその良識を放棄してしまったら、それこそ参議院の存在意義など国民は決して認めません。今こそ参議院の先生方の良識に期待し、我々はそれを注視していることを申し上げ、私の意見とさせて頂きます。
ありがとうございました」
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