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公聴会直後の採決は公述人に対する侮辱
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-e4a2.html
濱田邦夫・元最高裁判事の痛烈な政府・内閣法制局批判
与党は安保関連法案について、今日、横浜で開かれる地方公聴会の後、国会へ戻り、参院安保特別委員会を開いて法案の採決に踏み切るか、遅くとも明日には採決の構えと伝えられている。
しかし、中央であれ、地方であれ、公聴会とは特定の法案なりテーマなりに深い造詣を持つ公述人が述べた意見、提出した知見を法案等の審議の参照にするための制度である。
にもかかわらず、15日の中央公聴会、今日16日の地方公聴会の即日あるいは翌日に採決とは何事か? 周到に準備のうえ意見を述べた公述人に対する非礼極まりない暴挙である。
私は今日の地方公聴会で公述人が述べた意見は未知であるが、15日の中央公聴会で奥田愛基さんや濱田邦夫さん(元最高裁長官)が述べた意見には傾聴すべき貴重な意見・知見が含まれていたと思う。そのうち、濱田さんが述べた意見の中で特に印象に残った点を摘記しておきたい(IWJが起こした原稿からの引用)。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/264771
「今回の法制については、聞くところによると、この伝統ある内閣法制局の合憲性のチェックというものが、ほとんどなされていない、というふうにうかがっておりますが、これは、将来、司法判断にその色々な法案が任されるというような事態にもなるんではないかというような感じもします。」
「砂川判決の具体的事案としては、米国の軍隊の存在が憲法に違反するかということがですね、中心的な事案でございまして、その理由として、自衛権というものがあるという抽象的な判断、それから統治権理論ということで、軽々に司法府が立法府の判断を覆すということは許されないということが述べられておりますけれども、個別的であろうが集団的であろうが、そういう自衛隊そのもの、元は警察予備隊と言っていたそういう存在について、争われた事案ではないという意味において、これを理由とするということは非常に問題がある、ということでございます。」
「この47年の政府見解なるものの、作成経過およびその後の、その当時の国会での答弁等を考えますとですね、政府としては明らかに、外国による武力行使というものの対象は、我が国である、と。これは日本語の読み方としてですね、普通の知的レベルの人ならば、問題なく、それは最後のほうを読めばですね、『従って』という第3段ではっきりしているわけで、それを強引にですね、その外国の武力行使というものが、日本に対するものに限らないんだと読み替えをするというのは、非常にこれはなんと言いますか、字義をあやつって、法律そのものを、法文そのものの意図するところとはかけ離れたことを主張する、と。これは悪しき例である、と。
こういうことでございまして、とても法律専門家の検証に耐えられない、と。まあ私なり、山口元長官が言っていることはですね、これは常識的なことを言っているまでで、・・・・・」
これらはどの意見も、政府が集団的自衛権の行使容認を現憲法の範囲内とする際に挙げる根拠―――砂川事件最高裁判決、1972年政府見解―――を牽強付会と断罪し、こうした違憲の政府解釈をチェックせず放置してきた内閣法制局を「今は亡き内閣法制局」と痛烈に批判したのが印象深い。
元最高裁裁判官の批判を一私人の意見と切り捨てる閣僚の傲慢と知的荒廃
山口繁・元最高裁長官も9月3日、共同通信の新聞のインタビューで、安保法案をめぐって「集団的自衛権の行使を認める立法は違憲と言わざるを得ない」と述べたうえで、安倍総理が集団的自衛権を行使できる根拠としている1972年政府見解の強引な読み替えについて、「何を言っているのか理解できない。『憲法上許されない』と『許される』。こんなプラスとマイナスが両方成り立てば、憲法解釈とは言えない」と厳しく批判した。
しかし、これについて安倍晋三首相は9月11日の参院安安保特別委の集中審議で、「今や一私人になられている方について、いちいちコメントするのは差し控える」と述べた。
中谷防衛大臣も9月4日の参院安保特別委で、「現役を引退された一私人の発言に政府の立場でコメントするのは控える」と述べた。
それなら、与党推薦も含め、国会が中央・地方の公聴会に招致した公述人もすべて「一私人」であるし、安倍首相が設置した安保法制懇のメンバーも私人である。
私人であるがゆえに、聴く意味がないという物言いは公聴会の存在も否定し、公述人が披瀝する専門知に対する冒涜であると同時に自己欺瞞でもある。公述人の意見に承服できない点があるなら、国会の場で堂々と反論し、国民の判断を仰ぐのが国民主権のもとでの議会制民主主義のイロハである。
さらに言えば、私人であるがゆえに、聴く意味がないという物言いは、私人の意思の総和である民意を聞く耳を持たないというのと同じである。現に、安倍首相や高自民党総裁は「たとえ国民の理解が得られていなくても決めるべき時には決める」という発言を何度か繰り返している。
自民党の多数議席獲得は国政全般への信任ではない
こうした発言は、我こそは、いかなる専門家の意見よりも、国民多数の意思よりも、優っているという独善の表明そのものである。
国会の場で質問者に品のないヤジを繰り返す安倍首相の理性のレベルは既に知れわたっているが、直近の選挙で自民党が多数議席を得たことを以て国政全般への信任を得たと菅官房長官は強弁する。しかし、多岐にわたる公約の中で自民党が主たる争点にしたのは「アベノミックス」だったことは衆目が一致している。選挙結果が国政全般への信任というなら、国会は与党の意のままに事を決める採決あって審議無用の大勢翼賛の場に過ぎなくなり、国会審議は無用の長物と化す。いわんや、重要課題について国民が民意を表明する行動は無価値も同然になる。
しかし、安保法案にせよ、沖縄の辺野古基地建設にせよ、消費税増にせよ、原発再稼働に背よ、すべて民意の多数に背いた強行政治である。このような事実は選挙結果が国政全般に対する信任ではないことを示すなによりの証拠である。
また、今回の安保法案に関して言うと、一昨日(9月14日)、NHKがまとめた世論調査では、与党支持者のなかでも、安保法案を今国会で成立させるという政府・与党の方針について、「賛成」は35%、「反対」は25%、「どちらともいえない」は37%で、「賛成」は与党支持者の中でも約3分の1に過ぎない。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/227302.html
安保法案を今の国会で成立させるという政府・与党の方針をどう思うか?
全体 | 与党支持者 | 野党支持者 | 無党派 | |
---|---|---|---|---|
賛成 | 19 | 35 | 7 | 10 |
反対 | 45 | 25 | 78 | 56 |
どちらともいえない | 30 | 37 | 13 | 32 |
安保法案の採決がいかに理不尽か、阻止すべきかを示す証拠は出そろっている。
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