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安全保障関連法案の参院での採決へ自民、公明両党が歩を進める中、法案を審議する15日の特別委員会は採決の前提とされる中央公聴会を開いた。国会の最終盤にきて、なお、法案の合憲性や必要性など根幹部分に疑問が突きつけられているが、自公は採決に突き進もうとしている。
安保法案をめぐる国会審議の「最終盤」で行われた中央公聴会でも、焦点となったのは、やはり法案が憲法違反かどうかだった。
「違憲だ」「正当性はない」「詭弁(きべん)だ」。野党が推薦した浜田邦夫・元最高裁判事は、安倍内閣が「合憲」とする集団的自衛権の行使容認について、野党議員の質問に答える形で、法案の違憲性や政府の論理の矛盾を次々と突きつけた。
安倍内閣はこれまで、法案が合憲かどうかは最高裁が判断すると再三主張してきた。だが、最高裁判事を5年務めた浜田氏は、政権が「砂川事件」の最高裁判決を「合憲」の根拠としていることについて、判決は日本の自衛権が争われたわけではなかったとして「間違っている」と断言した。
歴代政権が集団的自衛権を行使できない根拠にしてきた1972年政府見解の憲法解釈にも言及。内閣が見解の「基本的論理は全く変わっていない」とする一方で「限定的な集団的自衛権は認められる」とした点について、「法律専門家の検証にたえられない。裁判所では通らない」と指摘した。
一方、与党推薦で首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」メンバーの坂元一哉・大阪大大学院教授(国際政治学)は「法案が成立しても最高裁が違憲とする可能性は低い」と反論し、早期の成立を求めた。
「合憲性」というそもそも論だけでなく、首相が掲げた集団的自衛権の行使例の現実味も問われた。
野党推薦の松井芳郎・名古屋大名誉教授(国際法)は、紛争地から逃げる日本人を乗せた米艦を自衛隊が防護する例について「武力紛争時には軍艦は合法的な攻撃目標になる。(軍艦によって)民間人を退避させることはおよそ考えられない」として、国際的に見て非現実的だと批判。これに対し、与党推薦の白石隆・政策研究大学院大学長(国際関係論)は「安全保障(政策)は最悪の事態を想定していろいろな対処方針を考えるべきだ」と述べ、切れ目のない安全保障政策を目指す法案の必要性を強調した。
200時間を超す国会審議を経ても、違憲の疑いや問題点が解消されない中、与党が法案成立を急ぐ国会運営にも批判が相次いだ。
法案に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」メンバーで、明治学院大学生の奥田愛基さんは「このまま強行採決することは国民を無視することだ。憲法上問題があれば、改憲手続きを行って国民投票で信を問うべきだ」と訴えた。
疑問点を置き去りに法案採決になだれ込もうとしている国会への「警告」もあった。6月の衆院憲法審査会で法案を「憲法違反」と指摘した小林節・慶大名誉教授(憲法学)は「まずは次の参院選、最終的には衆院選で国民が賢い判断をすると思っている」と指摘。浜田氏も法案の是非は国政選で決着をつけるべきだとして「一番早いのは選挙だ。主権者たる国民が審判を下すと、一人ひとり肝に銘じて審議してもらいたい」と話した。(石松恒、二階堂勇)
■採決攻防、徹夜国会も想定
中央公聴会が終わると、与野党の採決日程をめぐる攻防が一気に緊迫した。15日夜、国会議事堂の一室で怒号が飛び交った。
「こんなふざけた強行採決なんて認められない。断固として応じられない」。特別委理事会で、自民党の鴻池祥肇委員長が採決の前提となる安倍晋三首相が出席する締めくくりの質疑を16日の地方公聴会後に開催すると決めると、民主など野党理事がこう反発して席を立った。
これに先立ち、自民の吉田博美参院国対委員長も民主の榛葉賀津也参院国対委員長に「そろそろ出口が見えてきた。採決に応じる準備をしてほしい」と要請。榛葉氏は「全然出口は見えていない。まだまだ審議できる」と拒否。記者団には「(吉田氏は)とにかく『頼む、頼む』の一点張りだった」と語った。
野党は与党が委員会採決に踏み切った場合、参院で安倍首相や関係閣僚らに対する問責決議案、衆院で内閣不信任決議案の提出を検討。これらは資料の印刷や配布、討論と採決に1件あたり約3時間、数本で計十数時間かかるとされ、「徹夜国会」も想定される。民主の岡田克也代表は党会合で「もっと審議をしっかりやらなければいけない。国民と連携し、この難局を乗り越えたい」と強調。参院本会議での採決を遅らせ、徹底抗戦する構えだ。
一方、安倍首相と自民の谷垣禎一幹事長は15日に官邸で会談し、週内に参院本会議で可決、成立させる方針を確認した。与党が野党の強い反発にもかかわらず締めくくりの質疑を急ぐのは、野党の抵抗によって週内成立がずれこみ、連休にかけて国会周辺のデモの激化とタイミングが重なることを避けたいためだ。自民幹部は「我々が最も恐れるのは、人々の熱狂だ」と漏らす。(安倍龍太郎、上地一姫)
9月16日『朝日新聞朝刊より
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