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2015年09月15日 (火) NHK総合放送
くらし☆解説 「安保法案採決と国民の視線」
島田 敏男 解説委員
(岩渕)
こんにちは、岩渕梢です。きょうの「くらし☆解説」の担当は、島田敏男解説委員です。
テーマは「安保法案採決と国民の視線」です。
島田さん、激しい議論が続いている法案ですけれども、安倍総理大臣は今月27日までの今の国会で、必ず成立させると繰り返していますね?
(島田)
◇そうですね。安倍総理は、ことし4月にアメリカ議会の上下両院合同会議で演説して、「ことしの夏までに成立させる」と宣言しました。
◇しかし、自衛隊の活動を大幅拡大する内容ですから議論が分かれるのは当然です。
◇きのうまとまったNHK世論調査をもとに、政府・与党が目指す参議院での法案採決を国民がどう見ているのかをお伝えします。
Q1)その前に安倍内閣の支持率ですが、先月よりも少し上がったようですね?
◇はい。安倍内閣を支持すると答えた人は、先月より6ポイント上がって43%。これに対し、支持しないと答えた人は7ポイント下がって39%という結果でした。
◇7月、8月と2か月連続で支持しないが支持するを上回っていましたが、今月は支持が不支持を上回りました。
Q2)その差は4ポイントですが、この開きをどう見たらいいんでしょう?
◇統計的には横並び、つまり誤差の範囲内の開きです。
Q3)先月からの変化は、誤差の範囲を超えているんですか?
◇はい。年代別に見ると60歳以上の人たちで、安倍内閣を支持すると答えた人が増えたのが目立っていますが、これが理由だというはっきりしたものは見えてきません
◇一つ考えられるのは、8月の調査の時には原発の再稼働、戦後70年の総理談話、普天間基地の代替施設建設といった対立の大きな課題が眼の前に並び、国民の視線が特に厳しかった。
◇それと比べると、今回は課題がやや分散したことが影響しているのかもしれません。
Q4)安全保障関連法案に対する国民の見方が変わったということはないんですか?
◇あまり大きく変わってはいません。こちらをご覧ください。
◇安保法案を今の国会で成立させるという政府・与党の方針について聞いた結果です。
◇今月は賛成19%、反対45%、どちらともいえない30%という結果でした。
Q5)先月と比べると賛成が3ポイント増えているんですね?
◇6月以降の調査で、初めて前の月より増えました。これについて自民党の幹部は「法案審議が参議院に移ってから、支持者などへの説明に力を入れた成果だろう」と言います。
◇しかし、今の国会での成立に反対と答えた人が、依然45%と半数近くに上っているのですから、国民全体の厳しい見方に変化はないと思います。
Q6)自民党・公明党の与党支持者では、かなり理解が進んでいるんですか?
◇そうとも言えません。今月の調査結果を詳しく見ると、与党支持者で今の国会での成立に賛成と答えた人は、少し増えたと言っても4割弱にとどまっています。
◇そして、それと同じぐらいの人が「どちらともいえない」と答えていますので、与党支持者への浸透もまだまだという状況です。
◇野党支持者、無党派層では、依然として反対が多数を占めています。
Q7)安倍総理は「審議は尽くされてきた」と言いますがどうなんでしょう?
◇衆参両院で合計200時間近い審議を重ねてきましたが、野党の多くは「平行線の議論が続き、詰めるべき問題点はまだまだたくさんある」と反発しています。
◇そこで国民は「議論は尽くされたと見ているのか」ですが、今月の調査で尽くされたと答えた人は6%、尽くされていないが58%、どちらともいえないが28%でした。
◇衆議院の採決の直前に行われた7月の世論調査の結果と比べると、尽くされたがやや減った分だけ、尽くされていないが増えています。
Q8)国民の目に、議論が必要な点がはっきり見えてきているということでしょうか?
◇おっしゃる通りです。政府の説明を聞いていても、なかなか納得できないと感じる人が少なくないということです。
◇例えば政府は「この法案の成立で抑止力が高まり、日本が攻撃を受けるリスクが下がる」と説明しています。この説明に納得できるかどうか聞きました。
◇全体では納得できるが31%、納得できないが63%でダブルスコアです。
◇与党支持者では何とか過半数が納得できると答えていますが、野党支持者、無党派層は8割前後が納得できないです。
Q9)政府の説明が国民に中々理解されないのはどうしてなんでしょう?
◇私はこの法案の国会提出の仕方に大きな問題があったと思います。
◇こちらにあるのは安全保障関連法案、細かく分けると11本の法案の内容を、主な柱で整理した図です。
◇集団的自衛権行使の限定容認、二つの法案に分かれている外国軍隊への後方支援の拡大、そして国連PKOなどへの協力拡大など多岐にわたっています。
◇従って様々に違いのある活動を一からげにして「納得してくれ」と言われても、「政府にお任せします」という人以外はNOと答えるということです。
Q10)でも、政府・与党は今の国会で成立させる姿勢を変えていませんよね?
◇カレンダーを見て行きましょう。参議院が採決をしなくても、衆議院の3分の2以上の賛成で法案を可決できる60日ルールは、きのうから適用が可能になっています。
◇そういう中で、きょう午後には参議院の特別委員会で中央公聴会が開かれ、与野党双方が推薦する専門家などの公述人が意見を述べます。
◇そして明日は横浜市で地方公聴会が開かれます。
◇与党側は、この後の17日、18日で一気に参議院での採決に踏み切りたい考えです。これに対し民主党などは、参議院で採決が強行されるならば、衆議院に内閣不信任決議案を提出したりして抵抗する構えです。
Q11)今の国会の会期末は27日ですから、24日、25日もありますよね?
◇野党の中には連休も返上して24日、25日まで審議を重ねるべきだという意見もありますが、与党はそこまで行くと法案が廃案になりかねず危険だと考えています。
◇そこで、17日、18日が大きな山場になりそうなんです。
Q12)野党の中には法案を廃案に追い込もうと訴える党だけでなく、与党と修正の話し合いをしている党もあります。こうした違いをどう見たらいいんでしょう?
◇この各政党の支持率を見て下さい。自民党の1強の状態が続いています。
◇その中で、どの政党も来年夏の参議院選挙で党勢を拡大するために、今この場面でどう振舞うのが得策かを考えているわけです。
◇与党側は、衆議院の3分の2の再可決という国民の反発を買いやすい手段を使わないで法案を成立させたいのが本音です。
◇そして野党の中のばらつきは、独自性を示したいという思惑から出ているものです。
Q13)安全保障法案に対する各党の姿勢を、私達はしっかり見る必要がありますね?
◇今後の政治の流れを左右するのが、この国会の終わり方ということになると思います。
◇国民一人一人の政治に向ける視線が、厳しく問われる局面です。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/227302.html
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