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【強行採決目前!】安保法制「天下分け目の戦い」投票日迫る山形市長選、与党推薦候補とオール野党の一騎打ち!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/263761
2015.09.12 IWJ Independent Web Journal
与野党推薦候補が対決する「山形市長選(2015年9月13日投開票)」が、安保法制をゴシ押しする安倍政権に対する審判を問う”天下分け目の決戦(地方選挙)”になっている。自公推薦の元経産官僚・佐藤孝弘氏(39)と、野党4党(民主・共産・生活・社民)推薦の元防衛官僚・梅津庸成氏(48)が激突し、安保法制の強行採決を間近に控える13日に投開票が行われるためだ。
山形市は遠藤利明・五輪担当大臣(山形1区)の地元。「東京財団研究員だった佐藤氏を引っ張ってきたのは遠藤大臣」(県政関係者)で、遠藤氏は自らの直系候補の街頭演説や個人演説会でマイクを握って支持を訴えている。
一方の梅津氏は、安保法制審議の潮目を変えた憲法学者のひとり、小林節・慶応大学名誉教授の教え子。 小林氏は「政治は、権力を用いて最大多数の人々の幸福を増進する業ですが、貴君こそ、その地位にふさわしいと私は確信しています」との激励のメッセージを寄せ、告示前から応援に駆けつけ、告示日後の7日にも山形入り、こんな応援演説をした。
▲国会審議の潮目を変えた小林節・慶応大学名誉教授が梅津候補を全面支援
「私の可愛い愛弟子の梅津庸成君を皆さまのお力で市長にしていただきたい、それだけのために参りました。(拍手)『安保法制は今回の論点ではない』と向こう(自公)は言っていますが、影響があるからこそ、たくさんの人とお金を投入していると東京で聞きました。例によって、『安保法制は国の問題である』『地方自治の選挙では関係ない』と言って、万が一勝ったら、『安保法制が承認された』と言って強行するでしょう。これはいつものやり方ですよね」
小林氏は選挙期間中に付きっきりで滞在・支援することも表明。10日の梅津陣営の総決起大会でも「安保法案は自衛隊を米軍の2軍として戦場に送るもの」と戦争法案を一刀両断にした。
福山哲郎参院議員(民主党)や小池晃・副委員長(共産党)ら野党幹部も応援に駆けつけている。8月14日には維新の党の柿沢未途幹事長が応援で山形市に入り、安保法制を批判。「山形市民の民意で政府案の軌道修正をできるかどうかという非常に重要な市長選」と強調した。
豪雨で山形新幹線が運休となった11日にも、民主党代表代行の蓮舫参院議員が東北新幹線と車を乗り継いで駆けつけた。「(総裁選無投票になった自民党の)全員が安倍首相の向いている」「(山形市長選の)選挙を通じて安倍首相に(安保法制反対の民意を)届けてほしい」と呼びかけた。
梅津氏の出陣式には、吉村美栄子山形県知事や現職の市川昭男山形市長が駆けつけ、3000人が集まった。3000人という人数は、国政選挙を含め山形市内で行われた出陣式で過去最高。山形市は「平和都市」を宣言していることから、梅津氏は「安保法制は山形から止める」と安保法案を争点化。自公が「安全保障は国の問題。市長選には関係がない」と主張していることに対し梅津氏は、「市長には自衛官募集に協力する義務がある。山形市長が募集した自衛官が危険なところに海外派遣されることがあってはならない」と訴えて反論。また「山形で軍縮の国連国際会議を開きたい」とも表明、軍事力強化路線の安倍政権に地方から異議申し立てをしているといえるのだ。
▲異例の3000人集会
■「安保法制は市長選には関係ない」徹底的に争点化を避ける自公
これに対し自公推薦の佐藤候補は第一声でも安保には一切触れず、市政を変えることや中央とのパイプをアピールしている。「佐藤陣営には東京から選挙のプロが30人ほど送り込まれているそうです。『梅津支持なら売り上げが減るぞ』などと梅津候補のポスターを貼っていた中小企業を”脅す”など市内の企業にギリギリと圧力をかけ、締め付けを強めているようです」(県政関係者)。
11日には、自民党の石破茂地方創生大臣が山形市入りし、応援演説。「地方創生の時代に目標のないまちは衰退する。健康医療先進都市という夢に向かい、一緒にチャレンジしよう」「これから人口が減り、かつてのような経済成長も望めない。その中で全国の市町村と競争して勝ち抜かなければならない」と訴えた。
しかし梅津候補が争点の一つとして訴えている安保法制については一言も触れず、車に乗り込む前にこのことを問われた石破氏は「安保法制は市長選には関係ない」と答えた。
しかし、その後の佐藤候補の個人演説会では大内理加県議が「石破大臣は安保法制について触れて欲しかった」と批判。「自民党支持者層が固め切れていない。安保法制への不安から『今回は自公推薦候補に入れない』という声が支持者から出ている」という。
■もう一人の強力な助っ人・吉村美栄子知事——遠藤利明五輪担当大臣の”恫喝発言疑惑”も浮上
梅津候補の強力な助っ人は他にもいた。吉村美栄子山形県知事のことだ。県政関係者はこう話す。「吉村美栄子知事が梅津氏支持を表明したのが大きい。2年前の参院選では、同じく遠藤氏が東京から引っ張ってきた大沼みずほ参院議員が接戦を制しましたが、山形市内の得票は次点の舟山康江・前参院議員の方が上だった。この時、吉村知事は自民党に遠慮して舟山支援を抑え気味にしていたんです。それが今回はフル稼働に近い形で支援する。梅津氏勝利の可能性は十分にあります」。
政治家が「風を読む」ことに「日和見的である」との批判もありえるだろうが、逆に言えば「風を読まないと政界でサバイバルできない」のが政治家であるなら、前回は反自民候補を全面的には支援しなかった吉村県知事が、今回は正面きって反自民候補を応援しているというのは、それだけ安保法制という、トンデモ違憲法案を通してはならない危機感の表れであると同時に、今度は民意の風は自民に対する逆風として吹くと読んだということではないか。
告示日の出陣式でも知事は挨拶、その後の個人演説会などでも梅津支持を訴えている。
これに対し自民党側は強く反発、支持撤回を求める声が相次いだが、そんな中で、遠藤利明五輪担当大臣の“知事恫喝疑惑”が浮上した。梅津候補が7月30日に開いたキックオフ大会の直前、遠藤大臣から細谷知行副知事に電話が入り、そこで、「今後、(梅津候補を支援する)吉村美栄子知事を各大臣に会わせないぞ」と言ったというのだ。この話は吉村知事の耳に入り、知事は激怒したという。告示日の6日、地元入りした遠藤大臣を直撃、事実関係を確認した。
――「(吉村)知事に梅津さんを応援したら大臣に会えなくなるぞ」と電話をかけられたと。
「ううん(と否定)」
――7月30日に副知事にかけられませんでした?
「勝手に言っているのだよ」
――電話をしていないのですか。
「(副知事とは)同級生だから。『(知事が梅津候補を応援すると)大変だな、俺もやりにくいな』と言っただけで、後は何も言っていないよ」
――(大臣に会えなくなると)言っていないのですか。
「言っていないですよ。勝手にーー、そんなの捏造ですよ」
――捏造ですか。
「捏造だよ」
こう否定した遠藤大臣だが、この話はかなり広まっている。
▲佐藤候補の応援演説をする遠藤利明五輪担当大臣
選挙情勢は告示時点ではほぼ横一線。佐藤氏は4年前の前回の市長選で落選した後、遠藤大臣の指導・支援を受けながら地元も回っていた。そのため、「出馬表明が遅かった梅津氏を10ポイントから15ポイント程度引き離していた」(地元記者)が、安保法案への反対世論が高まるにつれて「安保法案は山形からとめる」と訴える梅津氏が猛追、追い抜く勢いだ。
昨年7月13日投開票の滋賀県知事選と同じパターンになってきた。この時も自公候補優位が予想されていたのに、安倍政権が同年7月1日に解釈改憲で集団的自衛権の行使容認を閣議決定した時期と重なり、公明党支持者(創価学会員)の動きが鈍くなって大接戦となり、焦った自公は国会議員を次々を送り込み、徹底的な組織選挙で企業を締め付けたが、結局1万3000票差で負けてしまった(当選した民主支援の三日月大造氏25万3728票、自公推薦の小鑓隆史氏は24万652票だった)。
山形市長選も”滋賀ショック”の再現になる可能性が出てきたのだ。
山形市長選で野党推薦の梅津氏が勝利すれば、安倍政権は「安保法制(戦争法案)ノー」の民意を突きつけられ、安保法案の強行採決のハードルはさらに上がることになるのだ。
(ジャーナリスト・横田一)
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