http://www.asyura2.com/15/senkyo192/msg/588.html
Tweet |
[永田町インサイド]普天間、解けぬ対立 政府・沖縄の集中協議、最終盤へ
(1) なぜ基地が集中
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を巡り、政府と県で5回目の集中協議が7日、首相官邸で開かれる。これまでの議論では、辺野古移設を「唯一の解決策」とする政府と、県外移設を求める県の対立は解けないまま。菅義偉官房長官と翁長雄志知事の発言をもとに問題の3つの疑問に迫った。
(那覇支局 藤田祐樹)
翁長知事「沖縄1県にこれだけ基地を押し付けるのはおかしい。日本全体で安全保障を考えるべきだ」
沖縄本島を南北に貫く国道58号。那覇空港から車で北へ向かうと、沖縄が米軍基地と向き合っている現状がよくわかる。
那覇市の中心部を抜けると左手にはフェンスに囲まれた牧港補給地区が姿を現す。宜野湾市に入ると、右手に普天間基地のゲート、キャンプ瑞慶覧には米軍の兵舎や車両が並ぶ。さらに北へ行けば極東最大の空軍基地、嘉手納基地。頭上を戦闘機が離着陸することも多い。
全国の米軍施設・区域の面積のうち約23%が沖縄県にある。米軍だけが使える専用施設・区域に限れば、約74%を占めている。沖縄側は戦後、本土とは違う歴史を歩んできたのが影響したとみる。
1952年発効のサンフランシスコ講和条約で日本は主権を回復したが、沖縄は米軍統治下。本土の基地返還が進むにつれ沖縄に集中していった。「50年代初頭に本土の10分の1だった」(翁長知事)という米軍専用施設の割合は、復帰直後の73年は6割に上った。
朝鮮戦争やベトナム戦争で米軍の戦略上の要衝となった。いまは新たな役割を担う。
菅長官「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。沖縄を含めて国民の安全を守るのは責務だ」
政府は中国の海洋進出や北朝鮮のミサイルや核開発問題を念頭に、在日米軍が持つ抑止力の重要性を訴える。中谷元・防衛相は「地理的に重要な位置にある沖縄に優れた機動力を持つ米海兵隊が駐留することは、抑止力を構成する重要な要素だ」と繰り返す。尖閣諸島を抱える石垣市の中山義隆市長は「政府は状況悪化を食い止める手立てを講じてほしい」と語る。
翁長知事は「要塞のような抑止力は脆弱性がある」と強調する。ジョセフ・ナイ米ハーバード大教授が中国のミサイル能力向上を踏まえ「基地を1カ所に集中させるべきでない」と述べたのを引き合いに、基地集中はリスクが逆に高まるとの主張だ。
日米両政府は沖縄の海兵隊の約1万9千人を9千人削減してグアムなどに移す計画だ。琉球大の島袋純教授は「海兵隊はローテーション部隊で、沖縄では訓練が目的だ。必ずいなければならない合理性はない」と強調する。
(2) なぜ辺野古だけ
菅長官「普天間基地の危険性除去、閉鎖をなんとしても実現しなければならない」
8月29日、隣接する小学校から基地を視察し決意を新たにした。訪問直前に新型の垂直離着陸輸送機オスプレイが基地に着陸。宜野湾市の佐喜真淳市長は「街のど真ん中にある飛行場が危険だからこそ、閉鎖するのが原点だ」と話した。
普天間基地は海兵隊の基地で宜野湾市内のほぼ中央にある。同市によると、約2800メートルの滑走路が1本ある飛行場で、面積は約481ヘクタールと、市全体の4分の1を占める。基地内の軍人・軍属は約3200人が活動しているという。
安倍政権は空中給油機KC130を米軍岩国基地に移駐させたが、市によると、基地にオスプレイ24機をはじめ、ヘリコプターなど計48機が常駐。有事の際は海兵隊の陸上部隊をヘリで運ぶ機能を持っている。騒音被害に加え、ヘリの部品落下事故が起こることもしばしば。2004年に基地近くの沖縄国際大にヘリが墜落した際は住民の不安がピークに達した。
翁長知事「世界一危険だから、老朽化したから、沖縄に代替案を出せというのは理不尽だ」
県側も普天間の危険除去の重要性に異論はない。問題はなぜ沖縄の、それも環境面でも反対の強い辺野古沿岸部なのか。代替施設は軍港を備えて基地の機能強化になるとの懸念もある。
1996年、日米両政府による普天間基地の返還合意は県内移設が前提だった。米海兵隊の一部機能だけを県外に移設するのは困難なためだ。空軍の嘉手納基地との統合案が出たが、米軍は「一体運用は困難」と難色。中部のキャンプ・ハンセンへの移設や、軍港があるホワイト・ビーチ地区への移設案も周辺への影響を懸念し却下された。
政府は本島東沖の海上ヘリポート建設案を決め、海兵隊の基地のある名護市辺野古が有力候補となった。北部訓練場に近く人口が集中する南部を避けられる。
97年、名護市は住民投票で反対多数だったが、当時の比嘉鉄也市長は受け入れ表明し辞任。98年の知事選で期限つき移設容認の稲嶺恵一氏が勝ち、99年に受け入れを決めた。それでも海上工事に反対運動が激化し、計画の再考を強いられた。
05年以降、キャンプ・シュワブ内に移設する陸上案が浮かび、米軍や名護市が反発。06年、辺野古沿岸部にV字に2本の滑走路を建設する計画で合意した。
しかし09年、政権交代した民主党の鳩山由紀夫首相は「最低でも県外」と訴えていた。鹿児島県徳之島への移転案などを探ったものの米側などに相手にされず、最後は辺野古沿岸部に戻さざるを得なかった。
(3) なぜこじれたか
翁長知事「沖縄県民には『魂の飢餓感』がある」
8月11日、那覇市内で菅長官を沖縄料理でもてなしながら訴えた。初の協議では普天間問題の原点は「米軍に銃剣とブルドーザーで土地が強制接収された」ところから始まると語った。
沖縄は70年前の戦争で激しい地上戦を経験し、大きな犠牲を払ったにもかかわらず、今も多くの米軍基地を抱える。苦難の歴史を理解してもらえない点を「飢餓感」と表現した。
鳩山政権の迷走も事態をこじらせた。感情を逆なでされた県民が票を投じる選挙で「県内容認」を正面から訴えにくくなった。県外移設を掲げ当選した仲井真弘多前知事は自民党政権に戻った後、辺野古の埋め立てを承認。14年の知事選で翁長氏に敗れた。同年の衆院選は全選挙区で移設反対を訴える候補が勝った。
今年6月、自民党若手議員の勉強会で、作家の百田尚樹氏が「沖縄の2つの新聞はつぶさないとならない」と発言し、県内に反発が広がった。同党議員は「かつてない逆風」と漏らす。
菅長官「できることはすべてやる」
政府は21年度まで沖縄振興予算について毎年3千億円台を確保し、オスプレイの訓練移転など基地負担軽減も進める。共同通信社が14年の知事選時に実施した世論調査は辺野古移設に「賛成」「どちらかと言えば賛成」が3割ほどあった。
地元に容認する意見もある。経済界などで振興策への悪影響を懸念するからだ。人口が少ない北部で公共工事の依存度は高いという。埋め立てに使う土砂搬入などを請け負えば地元の波及効果は大きい。
辺野古地区を含めた地元3区長は受け入れる代わりに、インフラ整備や移設工事の資材調達などで配慮するよう求める。市街地は西海岸で、辺野古は山を隔てて東海岸側。市民の中に「基地反対は市街地に住む人が多い」との声もある。
辺野古周辺の住民は基地を受け入れる苦渋の決断をしてきた。「島ぐるみ闘争」と呼ばれる反米運動が激化した1950年代も受け入れを表明した。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
法廷闘争にらむ展開再び
政府は辺野古移設作業の中断期間を9日までとしていた。沖縄県は12日ごろまで海底のサンゴ礁が壊れていないかの潜水調査を実施中。これが終われば政府が作業を再開する見通しだ。
県は辺野古沿岸部で沖縄防衛局が設置したコンクリート製ブロックが、許可した区域外でサンゴ礁を壊していないかを調査している。翁長雄志知事は調査結果や県の第三者委員会が手続きに「法的な瑕疵(かし)がある」とした報告書を受け、前知事が出した埋め立て承認を取り消す意向だ。
政府は対抗措置として行政不服審査法による不服審査請求で県の措置を一時停止させる構え。公有水面埋立法を所管する国土交通省に申し立て、埋め立て工事に着手する段取りを描く。県は工事中止などを求める訴訟に踏み切る事態が想定される。法廷闘争に入れば対立の長期化は必至だ。
[日経新聞9月6日朝刊P.14]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK192掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。