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安保法案廃案運動の会見(中央が大森政輔・元内閣法制局長官)(C)日刊ゲンダイ
「国民を誤って導く結論」元法制局長官が“古巣”に異例の苦言
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/163706
2015年9月10日 日刊ゲンダイ
「法の番人」と呼ばれる内閣法制局の元長官が、国会で古巣の後輩に“激怒”した。安保法案を審議する8日の参院特別委の参考人質疑で、大森政輔・元内閣法制局長官は「違憲」の安保法案について、混乱の責任の一端が「内閣法制局」にもあると指摘。「後輩や現役の人たちはもう一度考えてもらいたい」と苦言を呈した。
安倍首相の自民党総裁「再選」で、政府・与党が一気にアクセルを踏み込み始めた安保法案の審議。8日の参院特別委の理事会で、与党側は15日に中央公聴会を開くことを提案。夕方の特別委で賛成多数で議決された。与党は14日に安倍首相が出席する集中審議も提案していて、そのまま16日に特別委で採決し、参院本会議で可決、成立させるつもりだ。
だが、そんな状況に憤りを募らせるのが、大森元長官だ。参考人質疑に出席した大森氏はまず、「政府は今まで、自衛隊の保有は認容できるが、集団的自衛権の行使は否定すべきと確認し、堅持してきた。個別的自衛権と集団的自衛権は決して同質ではなく本質的差異がある」と指摘。
そして、昨夏に解釈改憲を閣議決定したことに対し、「我が国を取り巻く国際的な安保環境の変化を考慮しても、内閣の独断であり許容できない。閣議決定でなし得ることを超えた措置であり無効だ」と斬り捨てた。
政府・与党が“合憲の根拠”に挙げている1959年の砂川事件最高裁判決についても、「砂川判決は集団的自衛権を行使できるかは全く争点でない。政府の主張は法律学の基本理解から想定できない全くの暴論」と断じた。
“異例”の発言はここからだ。大森氏は「国民を誤って導く結論に至ったのは極めて遺憾。内閣法制局が是正しなかったことに発端がある」と、かつての職場と安倍暴政を許した現役の後輩職員を批判。そして「内閣法制局参事官は一騎当千のつわものだ。それが資料を収集して見解を長官に上げる。今回、どこがどう曲がったのか、それが十分になし得ていないのが問題」といら立ちを隠せなかった。
元長官としての「責任感」から出た発言なのだろうが、周辺事態法の成立に関わった大物が古巣について国会で言及するのは極めてまれだろう。
安保法案の“守護神”と呼ばれる横畠裕介・現長官が、大先輩の苦言をどう受け止めたのか聞きたいものだが、とにかく、この法案はそれだけデタラメだということだ。
九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)はこう言う。
「もはや審議をするほど法案のウソがばれるだけ。それも当然です。違憲立法なのだから。安倍政権は何が何でも法案を成立させるでしょうが、国民は引き続き、政府が勝手な運用ができないようプレッシャーをかけ続けるべきです」
大森氏と対照的にヒドかったのが与党推薦で呼ばれた宮家邦彦・立命館大客員教授だ。のっけから安保法案の反対意見を「本質を理解しない観念論」と全否定し、「本当に現行法制だけで21世紀の日本を守れると思っているのか」なんて食って掛かっていた。
ま、マトモな見識の持ち主なら今、法案賛成の立場で国会に出てきたりはしない。なるほど、宮家氏は“安倍御用達”の御用評論家で知られた人物。もはや安保法案「賛成論者」にマトモな識者が存在しない証左である。
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