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「「もし日本が素直に独立を宣言すれば、皆の利益になります。」ガルトゥング博士インタビュー:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/18296.html
2015/9/9 晴耕雨読
https://twitter.com/iwakamiyasumi
8月19日収録、9月6日(日)配信の「岩上安身によるヨハン・ガルトゥング博士インタビュー」の模様を報告ツイートします。現在、Ch1で配信中です。→http://bit.ly/1biXzMu @iwakamiyasumi
岩上「みなさん、こんにちは岩上安身です。本日は、『積極的平和主義』という概念を提唱されました、ヨハン・ガルトゥングさんをお招きしました。ガルトゥングさんよろしくお願いします」
ガルトゥング氏「これは1958年に私が提唱しはじめました。この『積極的平和』は『積極的健康』に平行して考えました。一方、病気の不在を消極的健康ととらえ、同様に暴力の不在を消極的平和ととらえたのです」
ガルトゥング氏「積極的平和とは関連団体が協力し合う、全く武力とは無縁の協力なのですこちらはあなたに良いことするから、あなたも同じようにしてねと。言ってみれば積極的結婚なのです」
ガルトゥング氏「暴力は皆無で、脅しも無縁です。連合組織などと言うものとも全く関係ないわけです。つまり単に平和なのです。北欧やASEAN諸国、欧州共同体などが実例としてあげられます。残念ながら東アジアにはまだ見受けられません」
岩上「長年提唱してきた積極的平和を安倍政権が盗用していると批判されていますが、両者はどのように違うのでしょう?」
ガルトゥング氏「盗用、という言葉を私は使いませんでしたよ。そもそも私から取ったかどうか私には分かりませんが」
ガルトゥング氏「ただ平和学ではこの言葉を使うには条件があります。安倍首相の使用方法とはまるで違います。彼は抑止や必要な場合は強力な武力で戦えるようになることを念頭に置いていますが、それはまさに戦争のことです。我々の積極的平和とは一切関係ありません」
ガルトゥング氏「私はそういう言葉の所有権がありませんが、戦争、あるいは戦争の可能性に備えるのではなく平和の概念として使うことがとても重要なのです。言葉の盗用というより、乱用です。他の言葉にして欲しいと切に願います」
ガルトゥング氏「例えば抑止という言葉もあります。核武装を望む日本の方は核の抑止力という言い方をします。それが実際に平和に貢献するかどうかは実証研究対象です。平和学にもそれに関する研究成果があります」
岩上「70年談話の締めくくりで安倍氏が積極的平和主義という言葉を使い、『いつまでも謝罪しないですむようにする』と述べました。これはメルケル首相の言葉と対照的です。安倍談話は東アジアの平和に貢献しますか?」
ガルトゥング氏「私は日本が永遠に謝罪し続けることはできないという安倍首相の発言には賛成です。メルケル首相の言葉は彼女自身のもので、ドイツ市民の思いを反映しているものではありません」
ガルトゥング氏「ドイツ市民も全く同様にずっと謝罪をし続けることはできないと感じています。結論を出さなければなりません。過去から学ばなければならないです。そこからどういう結論を出すかはあなたがどういう人で何を知っているか、人によって様々です」
ガルトゥング氏「しかし謝罪を続けることが平和につながるとは思いません。謝罪を続けるとその度に感情がかき立てられます。謝罪される側は永遠に正しく謝罪されたとは思わず、他の点も指摘してきます。その結果お互いの敵対心がなくならないのです」
ガルトゥング氏「だから戦後70周年の8月14日金曜日の安倍氏の声明に対して韓国政府があのような反応をしたのだろうと思います」
岩上「平和学とはどのようなものでしょうか。単に戦争が無い状態を消極的平和、構造的な不正義の無い状態を積極的平和と呼ぶそうですが、戦後70年の日本はどちらなのでしょう」
ガルトゥング氏「まずはじめに、人は常に平和について学ぼうとしてきました。私が1951年にはじめたのは平和に関する学術的な研究です。当時平和学研究に携わっていた大学は0でしたが今では500以上あります」
ガルトゥング氏「平和学とはつまり試験があります。単なる教えではなく、まじめな研究をする学科なのです。別に謎めいたものはありません。健康科学と似ています」
ガルトゥング氏「病気が無い状態を消極的健康とし、体や心を整えて強くさせ、あらゆる衝撃などに対する耐性をもたせ、好ましいものをもたらす積極的健康のように(続)」
ガルトゥング氏「積極的平和では国々が関係改善のために何度も何度も最善を狙って賭けをして行くことが大事なのです。こうしたことを研究するのが平和学なのです」
ガルトゥング氏「そうしたことが複数のレベルで、ミクロの個人レベルで、メゾ・レベルの社会間で、マクロ・レベルの国家間で、さらにメガ・レベルの地域や文明間で行われ得ることが重要であると平和学では考えます。論理は大体同じです」
ガルトゥング氏「しかし例えば、私は午後のひとときに結婚関係を仲裁できますが、西洋対東洋、北半球対南半球となるともっと時間がかかります」
岩上「日本で積極的平和主義の言葉が登場したのは1992年。湾岸戦争で金だけ出して非難されたため自民党が提言。日本だけが平和なら良いとすることを一国平和主義、武力を使った活動をしないことを消極的平和主義としてこれらを否定した」
岩上「憲法前文は自国のことのみに専念して他国を無視してはならないと書いてある。軍事支援が積極的平和主義と規定。このような日本政府の位置づけは評価されなかったトラウマによるとする」
ガルトゥング氏「驚くかも知れませんが、私は自民党に多少賛同しています。というのは私達の世界は本来あるべき姿にないのです。彼らを当選させました」
ガルトゥング氏「憲法9条は平和憲法とされています。実は平和ではなく反戦争なのですが、9条に頼ろうとする日本人は世界の他の地域の状況を全然気にもとめていません」
ガルトゥング氏「日本にある平和推進団体で湾岸地域の紛争解決案で満ちあふれているものを一度も見たことがありません。私とは関係ないといった反応は見たことがあります。平和と取り組む国や団体にはあらゆる地域の平和を考慮する義務があります」
ガルトゥング氏「私が最善だと思うのは深刻化しそうな状況を割り出し、その解決に貢献することです。それによって暴力や戦争を回避させるためです。もう一方で日本政府は、私が45年以上前の1968年に日本に来たときから全く変わっていません」
ガルトゥング氏「紛争を検知して解決する努力が皆無です。米国の立場を繰り返すのみです。それは平和への貢献とはまるで違います。米国は世界飛び抜けて好戦的な国です」
ガルトゥング氏「1805年から248の軍事介入を行ってきました。史上最高です。1990年代前半にローマ帝国を追い抜きました」
岩上「安倍政権はいつまで謝罪すべきかと苛立っている。謝罪は1度で良いのか。加害行為の記憶が薄れ、歴史が積極的に修正され、加害記録を打ち切って、中国韓国との溝が広がっている。どう対処したら良いか」
ガルトゥング氏「日本の歴史を振り返ってみますと犯罪もありますが、それほど不明確ではありません。日本は全ての西側植民地主義諸国と戦ってきた唯一の国です」
ガルトゥング氏「1904に日露戦争、その後第一次世界大戦でドイツと、その後ベトナムではフランス、シンガポールで英国、それからオランダ、そしてもちろん、1941年、ついに米国と東南アジア、フィリピンで戦いました」
ガルトゥング氏「日本が徹底した反植民地主義活動をインドのガンジーの様にやって欲しかったです。インドはそれほど遠くないでしょ。日本のように武力を使うのではなく、インドから学んで反植民地主義活動を伝播できたはずです。しかしそうはなりませんでした」
ガルトゥング氏「申し上げたいのは、植民地支配に反対するのは素晴らしいが、武力を使ってはならないと言うことです。では日本は武力によって占領した地を植民地化したのでしょうか。私は植民地化ではなく日本化したと思っています」
ガルトゥング氏「現地市民を受け入れました。例としてあげれば1895年以降の台湾です。もちろん1910年から、当時の朝鮮も。彼らを日本化し平等な日本との競争条件を許したのです」
ガルトゥング氏「台湾とその後の韓国は香港とシンガポールを合わせてアジアの竜と呼ばれるようになりました。1970年代から80年代にかけてアジアの竜は日本に競り勝っていた」
ガルトゥング氏「西側の植民地支配ではそんなことは起きませんでした。西側で植民地化された国はピラミッドの最下層に追いやられてそのままです。一方で日本化された国は日本の経済から大幅な恩恵を受けました」
ガルトゥング氏「経済政策学者の赤松要という重要人物について話したいのです。こうした経済発展をもたらしたのは彼の功績が大きい。彼が軍のコンサルタントであったことは知っていますが、(続)」
ガルトゥング氏「(続)彼の西洋経済理論に対して実践的に挑むやり方はうまく功を奏し、中国は当時日本占領下の残忍な方法で日本から学んだ方法から得たものを今日も実践しているのです」
ガルトゥング氏「言い換えれば歴史は正しいものと悪しきものがごちゃまぜなのです。心を成熟させて両方を理解しなければならないのだと思います」
岩上「あなたはご本の中で、ミクロからメガまで語っている。国家間のような大問題と個人間の争いの共通性とはどのようなものなのでしょうか。また、日常的な争いの回避方法にはどのようなものがあるのでしょうか」
ガルトゥング氏「こうした問題は、『紛争』の定義がなんであるのかと関わります。『紛争』と暴力とは違います。『紛争』では目指すものが衝突するのです」
ガルトゥング氏「私はこれが欲しい、あなたはこれが欲しいと、両立できない場合。もちろん解決しなければなりません。ですが、そうはならずに『お前どけ』と言い争ったり暴力的になったりするのです」
ガルトゥング氏「社会や国家規模でもまるっきり同じことが起きます。論理も同じです。繰り返しますが『紛争』とは暴力そのものではなく暴力を生み出し得るものです。『紛争』とは相容れない目標なのです」
ガルトゥング氏「結婚は過剰に美化されています。そこに成長した子供も加わり、子供も暴力をふるうかも知れない。妻が子供を虐待しているかも知れないし、夫が妻に暴力をふるっているかも知れない」
ガルトゥング氏「残酷な状態にもなり得るのです。殺しが起きてしまうこともあります。しかし重要なのは本当の課題が何であるのかです。意見の不一致が何処で生じ、解決策を見いだせるかどうか」
ガルトゥング氏「私は結婚の問題を25回解決しました。世界中で約200の『紛争』の仲介をしています。繰り返しますが、論理は同じです。解決のために重要なのは想像力です。お互いの相性ではありません。想像力が鍵なのです」
ガルトゥング氏「日本は問題を抱えている。中国とどうつきあうか。中国が復讐するかも知れないという恐怖がある。尽くしても米国は守ってくれるか」
ガルトゥング氏「中国と日本の関係についてはですが、一般的に一方がもう一方に暴力をふるった場合、残忍であった場合、報復を怖れて暴力行使者が被害者を憎むものです」
ガルトゥング氏「この憎しみを我々は対立の前段階と呼びます。憎しみで関係に距離を置くと暴力をふるいやすくなるからです。ノルウェーとロシアの関係がそうでした。1050年前、ノルウェーがロシアを攻撃し、それ以来ロシアを嫌っています。でもロシアは決して復讐しませんでした」
ガルトゥング氏「私は絶対中国は報復しないと思います。また同時に30年から50年程度さかのぼれば東アジアとは日本でした。今日では中国となりました」
ガルトゥング氏「以前は東京に訪れていた人々が今日では上海や北京に行くのです。つまり日本はかつて攻撃した国に追い抜かれました。さらに尖閣諸島あるいは中国語でヤーユーダウ、台湾中国語でヤーユタイと呼ばれていると思います」
ガルトゥング氏「台湾も紛争関係国です。互いの主張は異なり、それぞれが自分の主張を根拠づける歴史資料を持ち出しています。どう解決するか。私は同様な様々な場で提案したものと同じ提案をします」
ガルトゥング氏「共同所有です。そこをどんな名前で呼ぶかはわかりませんが、どんな名前でも良いので、共同所有して、海産物や海底資源からなどの利益を定めた通りにシェアするのです」
ガルトゥング氏「私は40:40:20の割合を提案します。中国が40%、そこから例えば5%を台湾へ、日本が40%、その他の20%を東アジア共同体へ分けて環境状況を改善し、乱獲漁業を取り締まるなど。こうした解決策は想像力の点では基礎的です」
ガルトゥング氏「タイ・マレーシア間でこの解決策が実施されました。海岸線で争っていたゾーンがあったのです。両国の首相が共同所有で合意し、利益を50:50で分けたのです」
ガルトゥング氏「ノルウェーとロシア(当時のソ連)間でもグレーゾーンと呼ばれたものがあり、同様な方法で解決しました。ですから以前の解決策を知っていれば、ある程度、解決のための想像力がついてくるのです」
ガルトゥング氏「我々は関係当事者の立場を越えて考えるべきです。より高い次元を見渡すのです。きっと5年後には共同所有しているのじゃないかとも思えますが、2020年までには。戦争を始める、または戦争に備える必要は全くありません」
ガルトゥング氏「共同所有はお互いが得する、より優れた解決案です。なぜ40:40や50:50かと言うと、一方を優遇しないためです。その割合をいろいろと議論することは良いことではありますが、同等に扱うことで解決策を見いだせるのです」
ガルトゥング氏「さて米国についてですが、確かに米国は自己中心的です。自国の都合を押しつけます。しかしそこまで自己中心的であるのには理由があります。単に自分が神に選ばれたと思っているのです」
ガルトゥング氏「神聖な国なのです。日本も同様な症状で苦しみました。かつて、日本は天皇を中心とした神の国だと主張した総理がいました。しかし重要なのはこの人はその発言の日の午後に辞職しなければならなかったことです。森氏のことです」
ガルトゥング氏「しかし米国では自らを世界の例外だと言えるのです。そうした言葉は愛国的だとされ1日に何度発言しても罰せられることはありません。この態度は行動にも表れています」
ガルトゥング氏「そんな国が日本のために核戦争の危険を冒すとは思えません。核の傘は一度も存在しなかったと言う軍事専門家もいます。ですからもちろん私は平和の傘が必要だと論じているのです」
ガルトゥング氏「私は東アジアにおける島の共同所有のみを論じているわけではなく、米国との考えられ得る最善の関係について基地や軍事活動など一切抜きで、市民中心の関係を論じているのです」
ガルトゥング氏「ですから日本が米国に尽くしても米国が日本を軍事的に助けるかについて、米国は助けないと思いますよ。米国は他国のために自国にリスクをもたらすことはしないでしょう」
ガルトゥング氏「覚えておくべきことは米国も日本も核爆弾を必要としないほど脆弱な社会です。両国に対しても的確な通常ミサイル1発で絶大な被害を与えることができます。米国は日本に対する専門的な攻撃方法を知っています」
ガルトゥング氏「多くの人が広島や長崎の原爆のひどさを口にしますが、私は東京大空襲の方がひどかったと思っています。事前に容赦なく周到に計画されたのです。間違いなくやり方を熟知しています」
ガルトゥング氏「しかしだからと言って、他国に同じことをされる危険を冒したいわけではないのです」
岩上「米国との関係について。戦後米国は、在日米軍を置いて再武装を抑えこみ、日本が半人前の国家であることを望んできました。国会で審議中の安保法制は、日本に平和をもたらすのでしょうか?ガルトゥング氏「日本・中国・米国の三角関係ですね。もっともよいのは、お互いが相手を独立した国と認識することです。この点で問題なのは、中国ではなく米国で、米国は事実上日本を占領していることです」
ガルトゥング氏「占領を象徴しているのが、ある六本木のビルのヘリポートです。ここはその占領用地に近いですね。占領というのは、アメリカ大使による、細部にまで日本の行政を支配するやり方で、しかも日本のリーダーはそれを受け入れています」
ガルトゥング氏「『はいはいはいはいはい』と全面的に従順です。それを70 年も続けているのです。いつからかの議論はあり得ますが何十年間も続いています。ですから、米国が問題なだけではなく、日本も問題なのです」
ガルトゥング氏「もし日本が素直に独立を宣言すれば、皆の利益になります。大げさな宣言ではなく、行動で独立するのです。例えば、中国との尖閣を巡る紛争を軍事化の口実に利用せず、創造的な解決策をもたらすチャンスとして利用すること」
ガルトゥング氏「日米はこうした解決策を計画していません。日本は単にそれを実行してしまえば良いのです。しかしそれは米国が許さないだろうとの意見も出るでしょう。近隣国との問題を解決することになぜ日本が米国の許可を得なければならないのでしょうか」
ガルトゥング氏「米国の許可なんて、全く必要ありません。日本は条約に調印した1952年、53年以降、ある意味、事実上、独立国です。この決して米国にとって脅威とはなり得ない方法を単純に実行し、ちゃんと自立した国になければならない」
ガルトゥング氏「尖閣諸島の共同所有が米国の安全を脅かすことなんてあり得ません。単に独立した国としてふさわしくふるまうことなのです」
岩上「日本抜きで行われているG2、チャイメリカについて。米国は覇権の交代を認めるか。中国のシルクロード構想などが実現すると、米国中心G7の見通しは明るくないようですが。新旧の覇権はどう関わり合うのか」
ガルトゥング氏「1980年代、トウ小平政権下に毛沢東の反封建政策で国民を総動員して経済成長経済成長を実現すると決めたとき、日本を越えようと決意したのです。奇跡的な出来事ではありませんが、中国がそこでどうしたのでしょうか」
ガルトゥング氏「シルクロードのことを言いましたね。シルク鉄道、シルク航路、シルク飛行機もあります。つまり、インフラです。中国は賢く、世界中でインフラを造っているのです。はじめて東中国からマドリッドまで鉄道ができました」
ガルトゥング氏「すぐに高速列車が通るでしょう。何百万人もの中国人旅行者を運びます。人々がユーラシアを行き来します。韓国はチャンスを逃してしまいました」
ガルトゥング氏「釜山から福岡までつなげることもできたでしょう。朝鮮半島から西ヨーロッパまでも可能でしょう。福岡から西ヨーロッパまでできたはず。中国はその機会を活かしました。中国はインフラを重要視し、彼らは何処でも造っています」
ガルトゥング氏「妻と二人で中国の副首相に会ったとき私はアフリカでの鉄道建設を提案しました。中国と東アフリカはシルク航路があったことを思い出すべきです。500年から1500年までの1000年間も、ポルトガルとイギリスとが破壊するまで存在したのです」
ガルトゥング氏「両国は中国を閉じ込めるために マカオと香港を植民地化しました。インフラを再構築することは中国外交政策の基本中の基本なのです。ですから私は、東アフリカから西アフリカまでの鉄道建設を提案しました」
ガルトゥング氏「両側にコンテナ船で輸送するのです。私の提案がどの程度考慮されたかは知りません。同様な提案をした人も非常に多いですから。同様な案が東アフリカ側からも出され、ともかく線路は現在建設中なのです」
ガルトゥング氏「こうして中国はたやすく世界を変えているのです。西洋や日本よりはるかに。純粋に自らの貿易利益のためです。こうした中国人の賢さを素直に認めましょう。そうしたことも含めて北アジア共同体や東アジア共同体について議論すべきです」
ガルトゥング氏「二つの中国、韓国、北朝鮮、日本、そしてロシア極東部の共同体です。6カ国です。1958年の欧州経済共同体6カ国と同様です。今はEU28カ国になりましたが、それほど多いと。想像を超える困難が伴います。気をつけましょう」
ガルトゥング氏「東アジア共同体は、6カ国であることが加盟国にも世界にも喜ばしいでしょう。こうしたことが、私が積極的平和主義と呼ぶものです。こうした積極的平和を構築することで、あらゆる暴力と暴力の脅威を防げるのです」
ガルトゥング氏「当事各国は共同でしっかりと学び合うことに、より大きな利益を見いだすでしょうから。もう一点、付け加えさせてください。その中心地は何処が良いでしょうか」
ガルトゥング氏「EUを見てみますと、ルクセンブルグという小さな場所とブリュッセルにもありますが、さらにフランスとドイツの境界、ストラスブールにもあります。それに相当するのは何処でしょう。沖縄、琉球があるじゃないですか」
ガルトゥング氏「日本が沖縄を日本国内の特別な県にし、北東アジア共同体の本部にするのです。沖縄こそふさわしいですよ。1872年に日本に併合される前の、独立国の伝統もあります。恐らく陸軍を持たなかった。東アジアの一部だった」
ガルトゥング氏「日本人や中国人その他多く地の出身者がいました。それぞれが何パーセントでいつ来たか等は問題ではありません。そこを、東アジア共同体の中心にするのです。日本は大きく貢献できます」
ガルトゥング氏「今日の日本は米国の従属国として、集団的自衛権となるもので自らを軍事的に差しだそうとしている。当然それは憲法9条の解釈たりえず、破壊するものです。そんな解釈はあり得ません」
ガルトゥング氏「もちろん9条は基本的に日米間の条約として書かれました。日本が絶対に軍事的に米国に敵対できないようにさせるためです。でもそれは一般化して書かれていて、だからこそ想像力を要するものなのです」
ガルトゥング氏「とは言うものの、私には多くの可能性が見えます。それらは共同的なものです。しかし絶対に米国を東アジアの一ヵ国として招き入れてはなりません。北米大陸のアメリカ合衆国は中南米諸国との関係改善に真摯に取り組むべきです」
岩上「沖縄の問題は複雑ですが、どのようにお考えでしょうか?」
ガルトゥング氏「複雑さに深入りすることは避けます。と言うのは複雑さというものは変化を望まない人々によってもたらされることが多いからです」
ガルトゥング氏「問題の核心は東京とワシントン間で取られた合意があることです。沖縄を最初に攻撃を受ける基地所在地として使用する合意です。最初の標的です。大切なのは基礎的な基地へ攻撃を向けさせることです」
ガルトゥング氏「もちろん東京周辺にも基地があることは知っていますが、日本や米国に強い敵意をもつあらゆる敵はまず沖縄を攻撃します。私はワシントンと東京で沖縄を犠牲にする合意があると見ています」
ガルトゥング氏「それが沖縄にまつわる複雑な過去のあらゆる事柄よりも極めて重要だと思うのです。当然、多くの人が米国から沖縄を守るために犠牲となったことは知っております」
ガルトゥング氏「本州には上陸しなかった。沖縄のみで戦闘がなされ、硫黄島やミッドウェーなどの戦闘同様、敗戦を大きく決定づけました。そうしたことは全て重要ですが、沖縄を犠牲にするというワシントン・東京間の合意との比較ではそれほど重要ではないのです」
ガルトゥング氏「そこから脱却するためには沖縄から基地をなくせばよいのです。もし米国は、ワシントンから遠く離れた場所に基地が欲しいのなら、米国が所有していると思っている太平洋のどこかの島 におけばよいでしょう。さらに再計画を始めるべきです」
ガルトゥング氏「しかし沖縄を北東アジア共同体の本部にする方がずっと素晴らしいと思うのです」
岩上「沖縄は日本に負担の軽減を求めています。特に辺野古新基地。米国にも直訴した。国連でも翁長知事は演説予定。どうしてもだめなら独立するという声まで上がっています。互いによい関係を築き沖縄を尊重できればよいのだがどうしたらよいか」
ガルトゥング氏「これは状況を2極化して単純に取られすぎています。沖縄が徹底して東京に従順な県であり続けるか、独立かと。私はその中間を提案します。私はそれを特殊な県と呼びます」
ガルトゥング氏「東京もそのうちふと気づくでしょう、沖縄を特殊な県にすることは東京の利益にもなると。北東アジアの本部としての役割を持つからです」
ガルトゥング氏「この北東アジア共同体をANEAN、Association of North East Asian NationsとASEANと似た名前をつけることもできます。そしてASEANから学ぶことも出来るのではないでしょうか」
ガルトゥング氏「今日の東京が賛成しませんが、2020年頃なら賛成するかも知れません。その間、東京への全面的従順か独立かの間の第3の可能性、特殊な県になるか考えてみてはどうでしょう」
ガルトゥング氏「1945年、ヨーロッパで起きた出来事をふりかえらせてください。アジア同様、恐ろしく悲惨な戦争が終わりました。その後ドイツとフランス、米国はどのように共存したのでしょう。共存できたのです」
ガルトゥング氏「解決策はフランスが提案しました。それは次のようなものです。ドイツは極悪にふるまったので家族の一員となりなさい。そもそもそういう家族がなかったので欧州共同体をつくりました。1958年の1月にそれは現実となりました」
ガルトゥング氏「それ以前は、フランスとドイツ間で特別な関係を築き、さらに米国との関係も築きました。1949年に始まり、NATOと呼ばれました。その当時のNATOは防衛的連合体でした。協定国への攻撃は全体への攻撃と見なし、全体で反撃する」
ガルトゥング氏「今日では米国専用攻撃的軍事マシーンへと変質しました。ウクライナでのNATO軍事行動にドイツとフランスが参加を拒否しているのは興味深いですね。米国だけが部隊を展開させていて、その攻撃性が明らかになってきました」
ガルトゥング氏「東アジアも同様な共同体をつくれるはずです。決して安保条約解消を提案しているわけではありません。手順の問題とも言えます。安保解消、安保改定という言葉が出たとたんいろんな反対勢力が押しかけます」
ガルトゥング氏「安保を維持しつつ、基地を減らし、同時に欧州共同体に相当する、北東アジア共同体をつくれば、ある日、安保はもう不要だと気づくのです。核の傘の代わりに平和の傘が存在するのです。平和の傘は共同体各国が助け合うことで創られるのです」
ガルトゥング氏「私は共同所有について述べましたが、過去の重要なトラウマについて論じることも可能です。よく南京のことが話題に上がりますね。731部隊もそうです。話題にはすべきです。従軍慰安婦や強制労働も大事な話題です」
ガルトゥング氏「これらの問題への最善の対処方法は国際的事実検証委員会の設立です。その目的は純粋に事実を検証することです。やりにくく、困難を伴いますが。特定の当事国を優遇する必要はありません。各地で大げさな言い主張や、嘘を調査します」
ガルトゥング氏「しかし私は過去のトラウマを調査することに過大な労力を注ぐよりも、積極的平和やよき未来を築き上げることの方が重要であることを強調させていただきたい」
岩上「福島原発事故も日本は原発維持しています。エネルギー資源の不足以外に、核武装の可能性を維持するためです。もう一方で、原発への他国からの攻撃手段を取ろうとしない政府。原発を抱えながら戦争するのは破滅を意味するのになぜでしょうか」
ガルトゥング氏「現在の私の理解では、54基程度の原発が存在すると思っています。エネルギーは過剰にあります。この過剰さは原子力発電によるものだと指摘する方もいました。必要ではないと」
ガルトゥング氏「もう一方で持続可能な発電技術も増えてきました。原子力から解放されることがとても容易になったのです。1968年に日本は米国とある人たちが原子力安保と呼んだ条約を結びました。その目的は原子力発電所建設でした」
ガルトゥング氏「原子力発電により兵器級に濃縮された放射性物質の生成が可能なのです。ここからが重要なのですが、海岸沿いに原発が建てられたのはそれを米国へ運び出しやすくするためなのか。米国が日本に生成させているのかもしれません」
ガルトゥング氏「また、ご質問にもありましたように、中国が原発を攻撃したらどうなるでしょう。日本をより無防備にさせます。福島原発事故のように津波も原発を損傷させますが、直接攻撃にも弱いのです。核ではなく通常爆撃でも破壊できます」
ガルトゥング氏「壊滅的な打撃にもなり得るのです。原発が多ければ多いほど無防備です。自国内でやりたくない作業を日本にやらせているのでしょう。日本の従属以外の要因でこれがなされているとは考えにくいです」
ガルトゥング氏「スリーマイル島やその他の事故以来、危機一髪の事態がどれほどあったかはわかりませんが、その危険性を知り、日本に危険な作業をやらせたのでしょう。日本は従属国家として『はいはいはいはい』と進めるわけです。」
ガルトゥング氏「歴史的には帝国は入れ替わります。米国も例外ではありません。1960年代世界は英国、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ帝国から解放されました。大規模な非植民地化です。米国の時も来ているのです」
ガルトゥング氏「広がりすぎたのかも知れません。疲労効果なのかも知れません。私は本質的に抵抗運動によるのだと思います。帝国周辺が反発してやり返したのです。1812年の独立戦争から1953年まで米国は必ず戦争に勝ってきました」
ガルトゥング氏「もちろんご存じの通り、北朝鮮に援軍があったせいです。それに加えて北朝鮮の反撃も猛烈でした。米国は北朝鮮を嫌っています。そのために和平条約と正常化を拒否し、東アジア共同体実現を阻止しています」
ガルトゥング氏「私は、日本は北朝鮮と国交正常化し、和平条約を結び、外交を始めるべきだと思います。言い換えるなら、単純に自立した行動を行うべきです。大げさな独立宣言は必要ありません。単純に実行に移せばよいのです」
ガルトゥング氏「それをふまえた上で、米国は今後どうなるのでしょう。私もアメリカ帝国衰退に関する本を書きました。同様な本が多くあります。その後どうなるのでしょう。米国を助けるべきです。親切にして、決して友好外交を止めるべきではありません」
ガルトゥング氏「米国には待避位置が必要です。私はそれにメキソスカンを提案します。メキシコ、米国、カナダ、主に北米ですが、メキシコには同時に中南米・カリビアン地域共同体にも所属してもらい、他の2国の仲介役をかって出てもらいたいのです」
ガルトゥング氏「うまくいくと思います。米国人は革新的なことにたけていますから、底辺を引き上げることが出来るはずです。その点は中国からも学べるはずです」
ガルトゥング氏「底辺を沈ませるのではなく引き上げるべきです。沈めてしまっては経済に貢献できません。現在は想像し得る間違いのかぎりを尽くしていますが、変われるはずです。変わって欲しいと思います」
ガルトゥング氏「暴力依存のこの国の友としてやるべきことは軍事同盟を強化することではありません。アルコール中毒の方に追加のワインを差し出すようなものです。そんなことをしてはいけません。そうではない方法を指し示すのです」
ガルトゥング氏「つまり私の提案には反米的なものは何もありません。中国と米国、北朝鮮、韓国との関係を改善して欲しいのです。ついでにもう少し言わせてください。世界には陸軍を持たない国が26ヵ国存在します。コスタリカもそうした国に追加してください」
ガルトゥング氏「そうした国々があるということと、もう1つ、より大事なのは、そうした国々は攻撃されたことがないということです。それに比べて日本は多くを所有し、大国が攻撃欲求を向けやすい国です。米国にとってもそうです。事実上占領されています」
ガルトゥング氏「ですから私は日本に防衛的防衛戦略を提案します。自衛ではなく。攻撃には仕えない短距離射程の兵器を日本領土のみに配置を制限するため、沿岸警備用の大砲を装備した日本国内に配置された市民軍であり、ガンジー的な非軍事的防衛手段も行使すべきです」
ガルトゥング氏「モデル国としてはスイスです。スイスは700年間そうした方法を実施しています。ナポレオンに攻撃されたこともありますが、非軍事的抵抗が効果的で、8年後、ナポレオンさえも撤退しました」
ガルトゥング氏「北東アジア共同体に防衛的防衛戦略と、米国との友好関係を足してください。それで太平洋全域に及ぶ平和の傘が出来ます。米国が牛耳る秘密の経済協定、TPPや、世界中で戦争する米国との軍事協力よりもはるかに優れています」
ガルトゥング氏「事実、米国はこれまでに138ヵ国と戦ってきました。日本は本当にそんなことに関わりたいのですか」
ガルトゥング氏「日本国憲法第9条1項は素晴らしい条項です。国際紛争を解決する手段として戦争を非難し、放棄するとしています。第2項はそれよりさらに踏み込んで戦力をいっさい放棄します」
ガルトゥング氏「私はある程度の武力と非武装手段をもつ防衛的防衛を提案しているので、第2項に対する確信がそれほどありませんが。第1項に戻りましょう。うまく表現されていますが、積極的平和ではありません」
ガルトゥング氏「協力関係が出てきませんから。でも反戦争です。私には夢があります。その夢とは日本政府が9条1項を世界の全ての人々にアクセスさせることです」
ガルトゥング氏「米国や日本について述べていないこの表現を、もちろん日米関係に関するものではありますが、全ての人のものとして広げることが出来ます。それを遵守し、さらに(続)」
ガルトゥング氏「(続)公平な協力関係と共感的理解に調和、安全を保持する機構による積極的平和をつけ加え、北東アジアを一例とし、欧州共同体を模範として、同時にその問題からも学びつつ、全てのものには善と悪の両面があります」
ガルトゥング氏「私から見るとある人たちは陰、もう一方は陽の立場で不毛な議論をしているように見えます。両者がお互いの立場を取り入れたら状況は改善されるはずです」
ガルトゥング氏「9条1項をすべての人に広げましょう。日本は世界のリーダーになれます。なぜなら、いまだに憲法にこの条文を維持しているからです。私はある意味、安倍首相は手続きがあまりに困難なため、ある意味憲法改正を諦めたのだと理解しています」
ガルトゥング氏「そこで解釈を変えるという古い手を使いますが、解釈になっていません。彼が望むような方向での解釈はなり立ちません。現在最も好戦的な国との軍事関係は論外です」
ガルトゥング氏「とは言うものの、日本には大きな可能性があります。繰り返しになりますが、特殊県沖縄を本部とする北東アジア共同体またはANEAN(Association of North East Asian Nations)(続)」
ガルトゥング氏「協力体制による積極的平和を促進し、また1つは防衛的防衛で沿岸防御、本土の民兵に非軍事的防衛手段をつけ加え、世界中を9条1項に基づいて構築する日本が世界のリーダーとなる。そういうビジョンです」
ガルトゥング氏「私は安倍首相の後の総理が、民主党がしなかった仕事、つまり宿題をして良き政策を熟慮すること、例えば私の言ったことをそのままではなく改善して実行することを望みます」
ガルトゥング氏「日本はとても創造力のある国です。でも外交には想像力がありません」
岩上「ありがとございました」
ガルトゥング氏「こちらこそありがとうございました。本当にとても良い質問でした」
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