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参院で審議中の安全保障関連法案をめぐり、永田町から遠く離れた地方で、市議が自民党離党を表明して法案に反対したり、自民県議が法案反対の会の呼びかけ人になったりする動きが出ている。「自分たちの考えは変わっていないが、党が変わってしまった」――。彼らに共通するのは、そんな思いだ。
■「数の力、非常に危険だ」 愛知県あま市
「私はバリバリの自民党だった。しかし、安倍政権は安保法案を数の力で強引に通そうとしている。非常に危険だ」。愛知県あま市の名鉄木田駅前で4日夕、八島進市議(66)が訴えた。自民離党を表明し、法案反対の活動で街頭に立つ。この日も共産市議らと並び、マイクを握った。
議員歴12年。地元では保守系も自民の公認を受けないため、無所属で立候補してきたが、「自分の考えに近い」と入党していた。2009年衆院選で自民が下野し、地元の海部俊樹元首相が落選しても、「風に負ける党であってほしくない」と党費を払い、応援し続けた。
だが、安倍政権の安保法案を巡る手法に納得できなくなった。憲法解釈を内閣だけで変え、11本もの法案を一括で審議し、国民の理解は深まらないまま。「憲法をないがしろにし、国民を置き去りにしている」
8月、無所属3人と共産2人のあま市議からなる「戦争法案に反対する議員有志の会」に参加。30日に全国連携の抗議集会があま市でも開かれると初めて参加した。9月4日には年4千円の党費納入をやめると党県連の関係者に伝えた。
「歴史を見れば、日本もドイツも独裁から戦争へ突き進んだ。今の自民党にはおごりがある。安倍首相の言いなりだ」。今後も声を上げていくつもりだ。
■廃案求める署名集め 広島県庄原市
広島県庄原市では自民の小林秀矩(ひでのり)県議(63)が代表をつとめる超党派の「ストップ・ザ・安保法制 庄原市民の会」が7月末に立ち上がった。小林さんは「今の政府が右に寄りすぎただけ。私の立ち位置は何も変わっていない」と話し、法案反対を理由に離党するつもりはないという。
庄原市は、自民党元幹部で、いまは離党して法案反対を訴える亀井静香衆院議員の地元。小林さんは亀井氏の選挙を取り仕切る「亀井党」を自認している。「市民の会」には庄原市議20人のうち19人が参加。不参加は公明市議1人だけだ。
市民から法案廃案を求める署名を集めると、約1カ月で約1万3千筆になり、1日に首相官邸で衛藤晟一首相補佐官に提出した。「思った以上に手応えがある。特に女性の関心が高い。憲法改正を国民に問わず、一内閣が独断で憲法解釈を変えて内容を捻(ね)じ曲げようとする。まさに国民主権の否定です」
この動きに刺激され、隣接する広島県三次市でも自民県議1人と市議有志13人が法案反対の議員連盟を1日に発足させた。
■「九条守る会」参加 新潟県阿賀野市
新潟県阿賀野市では「九条を守る阿賀野の会」に今春、自民党員として合併前の笹神村で議員を3期務めた田村廣治さん(80)が加わった。平和運動を続ける人や労組関係者らに交ざり、呼びかけ人に名を連ねる。
中学を卒業し、農家で丁稚(でっち)奉公した後、材木屋に勤めた。20代で自民の国政選挙を手伝うようになった。1980年に村議になり、92年にやめるまで党員だった。「党はいい人ばかりで居心地がよかった」
だが、昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定の頃から、「重要なことをこんなに急いで決めていいのか」と政権の姿勢に疑問を抱くようになった。
デモ報道を見て「昔の自民党なら、もっと時間をかけて理解を得ようとしたはずだ」との思いが強まる。「革新派」と組むことに抵抗もある。自民の後輩がどう思っているのかも分からないが、「この年になると怖いものはない」と笑う。(中野龍三、成田康広、伊木緑)
◇
自民党の谷垣禎一幹事長は7日の会見で、「色々な議論が党内でもあるだろう。しかし、それが燎原(りょうげん)の火のごとく広がっている状況ではない。戦後70年、日本が戦争をせず、巻き込まれなかったという原点を守ることを前提に、現在の安全保障環境の変化を丁寧に説明していく」と話した。
http://digital.asahi.com/articles/ASH9161DXH91UTIL053.html
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