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「本当にアメリカがパートナーだと言うなら、アメリカに『戦争やめろ』と言え!」――映像作家・丹下紘希氏が国会前で安倍を斬る!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/261785
IWJ Independent Web Journal
「国防をかっこいいと思っていること自体、かっこ悪い」――。
映像作家として、数多くのミュージシャンらのプロモーション・ビデオを手がけてきた、Yellow Brain代表・丹下紘希氏が、2015年9月4日、「SEALDs」の国会前抗議行動でマイクを握った。
丹下氏は、2001年の9.11米同時多発テロの直後にも、反戦のメッセージを伝えるため、スペースシャワーTV(SSTV)で非商業広告を出した。広告収入に頼るマスメディアが、スポンサー企業への配慮から自由な報道を展開しない傍らで、丹下氏は自らの意思を示したのだ。丹下氏は、「知らない間に自分が加害者となっている、その方がよっぽど怖い」と語る。今回の抗議行動への参加も、その言葉に表れた衝動に突き動かされたからこそであろう。
表現者として、また、いち大人として、平和の意味を真剣に考え、安倍政権の怖さをストレートな言葉で訴える丹下氏のスピーチは、この日、誰よりも大きな拍手と声援を参加者から集めた。
記事目次
・無自覚のうちに自分も戦争へ加担していく恐怖
・政府がヒロイックに「国防」を語るときは危ない
・人を見る政治家を
「本当にアメリカがパートナーだと言うなら、アメリカに『戦争やめろ』と言え!」――映像作家・丹下紘希氏が国会前で安倍を斬る!
■無自覚のうちに自分も戦争へ加担していく恐怖
「戦争はビジネス。一番怖いのは、戦争はみんなの仕事を奪うということだ」
この日もたくさんの参加者が集まった国会前で、「SEALDs」の奥田愛基さんに紹介され、登壇した丹下氏は、開口一番にこう語った。
「戦争ビジネス」の例として丹下氏があげたのは、内戦の続くシリアで、2013年8月、アサド政権が自国民を化学兵器のサリンを用いて虐殺したとされる問題だ。サリンを用いたのは誰なのか、その点について議論は分かれている。いまだに真相は不明である。が、たくさんの子供を含む一般市民が犠牲になったことは間違いない。
そのときに、多くの国がアサド政権への非難を表明したが、丹下氏が恐ろしさを感じたのは、「サリンの原材料を売ったのは(非難を表明した当の)ヨーロッパ諸国だった」ということだ。
ひとたび戦争が始まれば、多くの企業が戦争へ無自覚に加担することになる。ヨーロッパでサリンの原料を売った企業も、いくつもの中間業者をはさんでいるうちに、自分たちが戦争に加担しているなどとは、想像できなくなっていたのではないだろうか。このような「無自覚」こそが、戦争を作り戦争を大きくしていくのだ。丹下氏は、「武器製造・輸出のビジネスに間接的にみんなが関わりだしたら、もう抜け出せなくなっちゃう。生活の糧を得るためと言って、カネに言論を奪われ意思を剥奪される」と、怖さを語った。
さらに丹下氏が危機感を持つのは、企業と政治の結びつきだ。2015年6月25日に、自民党若手議員による勉強会で、議員から「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番」との発言が出た問題に関連して、丹下氏は、「企業と政治がくっついているって、まともな社会じゃない」とした上で、「命にかかわることはみんな無視、という社会。それなら原発もなくならないし、戦争も止められないじゃないか」と訴えた。
■政府がヒロイックに「国防」を語るときは危ない
▲国会前でスピーチする映像作家・丹下紘希氏
国会会期末のせまる参院で現在審議中の『戦争法案』について、安倍政権は法案の必要性を語る際に、「日本を守る」とお決まりの文句を述べる。
この言葉の危険性についても、丹下氏は、「政府がヒロイックに『国防』を語るときは危ない」と警告する。「国防」という言葉は、「国に任せれば大丈夫」と国民に言い聞かせているようだが、そんなことはあり得ない。「『国防』をかっこいいと思っていること自体、かっこ悪い」と、丹下氏は吐き捨てた。
美しい言葉と、近隣諸国の「脅威」を煽る政治家、そしてそこで国民が思考停止してしまうことで戦争が始まる歴史は、何度も繰り返されてきた。丹下氏は、「『国』ってことで全部片づけてしまうのではなく、自分たちにできることをやりましょうよ」と、より多くの人の参加者を促した。
「国防」という言葉を語る人は、あらかじめ「敵」の存在を想定しているのだろう。丹下氏は、そのような「戦争ありき」の考え方にも警告を発する。「なぜ、過去に人類が戦争をし続けて、今もなくならないのか」と問いかけた上で、「相手も自分もお互いに殺し合わないように、お互いの命を守りましょうよ」と訴えた。
そして、安倍首相が、「集団的自衛権を行使すれば、日米同盟が強化される」としていることに関連して、丹下氏は、「本当にアメリカがパートナーだと言うなら、アメリカに『戦争をやめろ』と言ったほうがいいんじゃないか」と冷笑すると、参加者からは大きな声援が上がった。
■人を見る政治家を
スピーチの終盤にさしかかると、丹下氏の言葉は、より切実なものになっていった。国会の外を見ようとしない与党政治家たちに対して、「自民党のみなさん、民主主義は多数決じゃないんですよ。僕ら国民一人ひとりに主権がある」と訴えかけ、「僕たちは、どうしたら誰も恨まず、殺さずにいけるかを考えたいんです」と、思いを語った。
また、なにかと「国」「国」という政治家に対し、丹下氏は、「僕は国に所属する以前に一個人だ」とした上で、「本当に僕は、一人の人間として、自分の子供を被害者にも加害者にもしたくない」と、『戦争法案』への嫌悪を見せた。
そして、戦争の被害や加害に苦しむ人たちのことを想像もせずに、『戦争法案』を強行しようとする安倍首相に対して、「あなたも首相という役職を降りて、個人になってみてはどうですか」と、怒りの問いかけをした。
さらに丹下氏は、「国境」に縛られた政治家の考え方を非難した。丹下氏は、そのような政治家が「国」ばかりを意識して「人」を見ないことに、「どの国にもみんな、そこに人がいる」とした上で、「その国の人を友達と考える、そういう美しい気持ちがなければ、何を僕ら信じて生きていけばいいのか」と問いかけ、『戦争法案』の浅はかさを糾弾した。
「『国』の為に頑張りますっていう政治家なんかじゃなくて、『人』のために頑張る政治家、探しましょうよ」と、参加者に語りかけた丹下氏は、最後に「PEACE!」と言って、壇上を後にした。
8月30日の大集会後、初めて行われた金曜デモは、以前にも増して熱を帯びてきたようだ。『安保法案絶対反対』と絶叫する人たちの声は、ますます大きくなっている。「僕たちは一人ひとり考え続ける」と宣言した丹下氏の言葉は、自ら考え主張し続ける多くの人たちの声でもあるのだ。
(取材・撮影 城石裕幸 記事・城石愛麻)
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