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小沢一郎氏(C)日刊ゲンダイ
安保法案を潰す秘策を話そう/小沢一郎 <第10回>果たして本当に強行採決に踏み切れるのか
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/163408
2015年9月5日 日刊ゲンダイ
8月30日にあった国会前のデモには僕も参加したが、予定の10万人を超え、本当に多くの人たちが「安保法案を絶対に許すな」ということで集まった。全国でもさまざまな都市でデモが行われ、相当な人数になった。
残念だったのは、警察の規制が厳しくて、国会をぐるりと取り囲むような形になれなかったことだ。あれだけの人数がいたら、裏側の議員会館の前を含め、完全に国会を包囲することができたはずだ。現場で見ていても、警備があまりにも過剰だった。かつての60年安保騒動のようにデモ隊が国会の敷地内に入って、ものを壊すなど過激な行動をしたわけでもない。
今回の異常なほどの警備強化は、たぶん官邸が直接命じたものだろう。それは裏を返せば、安保法案に対する国民の批判の高まりに、安倍政権がこれまでになく神経質になっているということだ。自分たちの法案が正しいと主張するのなら、自信をもって堂々とすればいいだけ。たぶん安倍首相は国民の反発を心底、怖がっているのだと思う。
今回の大規模デモに自民党議員は内心、「えらい人数が集まったな」と震えているだろう。地元に帰っても、安保法案反対の声が多いはずだから、参院で無理して強行採決するのはいかがなものかと思っている議員は決して少なくないんじゃないか。
参院は特に「強行」を嫌がる。国会用語で「荷崩れ」(強行採決など不正常な採決の状態)して与党の単独採決で参院に送られた法案だから、それをすんなりと採決する慣わしにはなっていない。だから審議も遅れている。与党は今月11日の参院採決を目標としていたが、毎日5時間ずつ審議をしたとしても、衆院の116時間にはとても達しない。参院でも事実上、自公の強行採決になる可能性が高いが、これだけ世論の反対が高まっている中で、果たして本当に強行採決をやり切れるのかどうか。
これはあくまで本質論ではなく政治論だけれど、安倍首相の立場に立って言えば、首相が「安保法案はなんとしても日本のために必要だから、これを成立させてくれれば私は首相を辞任する」とでも言えば、国民感情も少しは収まるかもしれない。実は、民主党政権で当時の野田首相が消費税増税の法案を通そうとした時、僕は「通ったら、辞めるべき」と、野田さんに言ったんだ。結局、野田さんはそうしなかったけれども、場合によっては、それだけ命がけだという強い姿勢を国民に示すこと。そういう政治家の生きざまもある。
繰り返すが、これは本質論ではない。違憲の安保法案は廃案にすべきであることは言うまでもない。ただ、昨今の景気後退や株価の暴落で明らかなように、アベノミクスも全くうまくいっていないし、安倍首相には一刻も早く辞めてもらった方が国民のためだ。
民主党の呼びかけで、維新、共産、社民、生活の野党5党は、きょう(4日)党首会談を行い、あらためて安保法案反対の狼煙を上げる。これから、国会最終盤に向け、国民の反対もますます大きくなるだろう。官邸がこの世論の高まりをどう見るのか。それでも強行採決に踏み切れるのか。衆院再議決の60日ルールを使うのか。まだまだ諦めてはいけない。
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