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防衛省 統合幕僚監部HPより
閣議決定の半年前に自衛隊統合幕僚長が米軍参謀総長に安保法制を約束! 日本はもはや軍部主導国家か
http://lite-ra.com/2015/09/post-1448.html
2015.09.04. リテラ
今国会で、また新たな安保法制の知られざる暗部が明らかになった。どうやら、この国は着実に、戦中日本の体制に舞い戻りつつあるらしい。
9月2日の参院特別委で、共産党の仁比聡平議員が示した防衛省の内部文書には、恐るべき事実が記載されていた。自衛隊制服組トップである河野克俊統合幕僚長が、2014年12月の衆院選直後に訪米した際、米陸軍のオディエルノ参謀総長に対し、「(新たなガイドラインや安全保障制度の整備は)与党の勝利により2015年夏までには終了する」と説明していたというのだ。この内部文書は河野統合幕僚長とオディエルノ陸軍参謀総長の会議録であり、表紙には「取扱厳重注意」と明記されていた。
昨年12月といえば、今年5月の閣議決定の前であり、さらに言えば、4月の安倍首相による米議会での安保法制フライング宣言の前でもある。会議録の内容が事実であれば、これは明らかに安保法制の先取り。つまり、日本国の行政府や立法府による決定の約半年からそれ以上前に、日米の軍部間で、今夏の安保法制の成立を約束していたことを意味している。
さらにこの会議録には、ほかにもこのような会話が記録されている。
「河野 防衛予算は安倍政権になってからは増加傾向にある。このような流れの中でF-35、E-2D、グローバルホーク、オスプレイの導入が決まった。
ワーク オスプレイ導入に関して、日本国民の不安は低減されただろうか。
河野 以前に比べて低減されたように思う。オスプレイに関しての不完全性をあおるのは、一部の活動家だけである。」
「河野 日中関係について申し上げたい。日本側のアプローチに対して中国からは反応がない状況である。中国中央政府の統制が効いているのかと疑問に思う。
オディエルノ 中国に対しては、外交、軍事等、あらゆる手段を用い対応することが重要である。現在取り組んでいるガイドラインや安保法制作業についても有効な手段である。」
平たく言えば、この会話、「がんばって防衛予算増やしていますよ」「オスプレイを危険機種なんて言わせません」「安保法制で中国に軍事で黙らせるんですね? はいよろこんで!」と言っているようなもの。まるで日本の自衛隊はアメリカ軍に雇われた使用人のような関係ではないか。
しかも、河野統合幕僚長はアメリカ側に対し、「(自衛隊の活動拠点があるアフリカの)ジブチは海賊対処のみならず、他の活動における拠点にしたいと考えている」とも明言。ジブチに関しては今年4月、中谷防衛相が「ジブチの自衛隊拠点の強化や活用をとくに念頭に置いて検討しているというわけではございません」と述べていたはずだが、自衛隊トップはその答弁よりはるか前に、アメリカに“ジブチを拠点に自衛隊の活動を拡大する”とはっきり宣言していたわけだ。
今回発覚したこの内部文書は、日本国憲法を揺るがしかねない大きな問題を孕んでいる。「与党の勝利により2015年夏までには終了する」──これは、日本の自衛隊のトップである統合幕僚長と、アメリカ陸軍のトップである軍参謀長官との間で交わされた“密約”とも言える。ようするに、日本国民が選出した国会議員による議論をまったく経由せずに、日米の軍部が新たな安全保障について約束をしていたということ。“軍部の暴走”を意味していると言わざるをえない。
そもそも我が国の憲法は、第66条で「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」としている。いわゆる文民統制の規定だ。日本における文民とは、旧日本軍の思想的系譜に連なる者や、現役自衛官以外のことをいう。戦後日本は旧日本軍の反省から、文民である防衛大臣が自衛隊の運用を決める制度を表向き堅持してきた。これは、主権者である国民が、選挙により選出した代表者らを通じて、軍事に関しても最終的な決定権をもつという民主主義の基本中の基本である。
逆に言えば、文民統制の崩壊は、戦中日本のような軍部の暴走を招く危険性があるということだ。たとえば第二次世界大戦時、ときの首相東條英機は陸軍大臣を兼務する軍人であったが、これは、軍事という強大な暴力による実力行使を国民が食い止める術がないことを意味していた。繰り返すが、今回の会議録が示すのは、国民の代表による閣議決定や国会審議よりも前に、自衛隊の統合幕僚長が米軍部に法制の確約をしていたということだ。つまり、政治家による軍部の制御が正常に発揮されていないということと同義なのである。
しかも、中谷元防衛相はこの内部文書を突きつけられると、「ご指摘の資料については確認できておりませんので、この時点での言及は控えたい」「資料がいかなるものかは承知しておりません」と逃げてばかりだった。もしもほんとうに、防衛大臣がこの報告書で書かれている日米軍トップ間の約束を知らなかったというのならば、それこそシビリアンコントロールができていない証拠だ。かたちなりとも文民たる防衛相が今後どのような返答をするのか、国民は注視せねばならないだろう。
とはいえ、実際には、この会議録の内容を文字通り“軍部の暴走”と考えるよりも、安倍政権による軍事国家化の顕現ととらえるほうが、より自然だ。第一次政権時に防衛庁を省に格上げした安倍晋三首相は、今年3月の衆院予算委員会で、自衛隊を「わが軍」と呼び波紋を広げたが、この宰相の頭の中は、すでに戦中並みの軍隊の増長と私物化を想定しているのだろう。
本サイトでも既報のとおり、昨年1月から2月にかけて、陸上自衛隊が米陸軍と、中東を模したアメリカの砂漠地帯で、対テロ戦を想定した大規模な日米合同訓練を行っていたことが判明している。今年8月の沖縄ヘリ墜落事故でも、特殊作戦の訓練中とみられる米軍ヘリに日本の自衛隊員が搭乗していた。また、先日8月31日には防衛省が16年度予算の概算要求を過去最大の5兆911億円で計上することを決めている。集団的自衛権の行使容認を閣議決定する前から今日に至るまで、安倍政権下でのアメリカ軍との一体化、軍事国家化は着々と進行していたのだ。
このように、今国会での安保法案をめぐる答弁や一部報道から、これまで国民が知ることのなかった安倍政権の危険極まりない本質が次々と明らかになっている。ところが、こうした状況を伝えるマスコミはほんの一部だ。
たとえば、冒頭に挙げた日米軍部間の“密約”疑惑について、2日夜のテレビニュースで詳しく報じたのはテレビ朝日『報道ステーション』とTBS『NEWS23』だけ。また、『NEWS23』は、先日本サイトでも報じた、安保法案が「アーミテージ・ナイリポート」をトレースしたものであるということについても取り上げたが、これらに関して、ほかのテレビ局は黙殺と言ってもいい状況にある。これはどういうことだろうか。
とりわけ、日米軍部間“密約”会議録は、安保法案に批判的な野党による抽象的な法案批判や安倍政権批判ではない、完全に物的証拠として提示された、政権にとって“爆弾モノの疑惑”だ。ニュースの優先度としては最上位にあると言って間違いないわけだが、それすらも、安倍政権の締め付けによって身動きできなくなっているということなのだろうか。
いや、もはや圧力の有無は関係ない。テレビ局の内部には、政権と懇ろになるためすり寄っている連中がいる。そういうことだろう。
戦中日本では、新聞などは検閲を受け、大本営に不利な報道は著しく制限されていた。だが、マスコミは決して“被害者”であっただけではない。権力の暴走の監視を放棄し、対外強硬論を煽った、あの戦争の“共犯者”でもあったのだ。そして今度は、当時は存在しなかったテレビが、そうした共犯者になろうとしている。
“軍部の暴走”に“マスコミの頽落”。やはり歴史は繰り返すのか。現在の腑抜けた報道姿勢を見ているとそう思わざるをえないが、いずれにせよ、主権在民の基本原則を無視し、身勝手にも戦争へ接近しようとしている安倍政権に対して、われわれひとりひとりが必死の思いでNOを言い続けるしかない。
(宮島みつや)
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