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王様の耳はロバの耳
安保法案:8.30「3万人」のウソと内閣支持率回復のカラクリ
「戦争法案反対」の「8.30国会前10万人・全国100万人大行動」から、早4日が経過した。
安倍政府は9月11日の参院採決は見送るとしたものの、翌14日の週での「強行採決」を狙っている。相当に追い詰められている証である。政府の焦りは隠せない。
⇒「60日ルール使わず参院採決へ 安保法案で自公一致」(東京新聞 9月2日)
>自民党の谷垣禎一幹事長は二日午前、公明党の井上義久幹事長と東京都内で会談し、安全保障関連法案について、法案の衆院通過から六十日が過ぎても参院が採決しない場合、衆院が再可決できる「六十日ルール」は適用せず、参院で採決して成立させる方針を確認した。谷垣、井上両幹事長は会談で「六十日ルールを前提に考えるのはよくない」との意見で一致した。参院での採決を待たず、衆院で再可決すれば、強引な国会運営との批判は避けられないと判断した。
>一方、与党は二日午前の安保法案を審議する参院特別委員会の理事会で、参考人質疑について「四日開催」の提案を取り下げ、八日とする日程を伝えた。採決の前提となる中央公聴会の日程は決まっていない。
>安倍政権は同法案を九月中旬に成立させる方針。今国会の会期は九月二十七日まで。
「参院での採決を待たず、衆院で再可決すれば、強引な国会運営との批判は避けられないと判断した。」って、どちらにしても強引に過ぎる。
彼らが最も恐れているのは更なる世論の高まりだ。しかし彼らにそれを封じ込める手立てはない。精々がNetやメディアを利用した情報操作ぐらいだ。
⇒「安保デモ「大きな誤解」=菅官房長官」(時事ドットコム 8月31日)
>菅義偉官房長官は31日午前の記者会見で、安全保障関連法案に反対する大規模デモについて「一部の野党やマスコミから戦争法案だとか徴兵制の復活などの宣伝もされ、大きな誤解が生じていることは極めて残念だ。政府として、誤解を解く努力をしっかり行っていきたい」と述べた。同法案に関しては「国民の声に耳を傾けながら、国民の生命と平和な暮らしを守ることは、国としての責務だ」として、成立を急ぐ考えに変わりのないことを強調した。
菅の言葉は白々しく、そして虚しく宙を舞う。
8月30日の「8.30国会前10万人・全国100万人大行動」では特に国会前において時折の雨模様の中、文字通り空前の大集会となったが、集まった人たちは国会周辺に主催者発表ではおよそ12万人、警視庁の調べで3万人余り(公式発表ではない)とされた。数字にはかなりの開きがある。
これを受けて、早速当日夜には「12万人も集まったわけがない」という、賛成・推進派によるネガティブキャンペーンがNet上に展開された。
更に政府広報紙と揶揄されるご用達新聞「産経」は次の記事を配信している。
⇒「安保法案反対デモ、本当の参加者数を本社が試算」(産経ニュース 8月31日)
(※写真は記事掲載写真よりトリミング)
>参院で審議中の安全保障関連法案に反対する市民団体が8月30日に開いた集会への参加者数が、国会正門前は多くても3万2千人程度だったことが産経新聞の試算で分かった。国会周辺にも参加者がいたとはいえ、主催者の「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」が発表した12万人にはほど遠い。警察当局は約3万3千人と発表している。
>試算は上空から撮影した正門前で警備にあたっていた警察車両の前に機動隊員が15人並んでいたことを基準とした。そこに面した正方形部分(矢印)の人数を約225人と計算。白枠の正方形はその16倍で約3600人とした。9つの白枠全てが参加者で埋まっても国会前は約3万2400人となった。菅義偉(すがよしひで)官房長官は31日の記者会見で、主催者と警察当局の参加者数の違いについて「通常よりも、はるかに開きがある感じだ」と述べた。
これはNetで拾ったご丁寧な分析写真。合計すると4,420人? ・・・んなわけないっしょ。(笑)
ほかに、単位面積当たりの密度で計算した記事もあったが、いずれ、何とか「安心材料」をこしらえるのに必死なようだ。
ご苦労なことだが(笑)、これだけを切り取れば、「なるほど」と思わず頷いてしまうのかもしれない。
しかし、これは“苦肉の策”のこじつけであり、そもそも、集まったのは国会前だけではない。テレビのニュースなどで流されたヘリによる空撮画面でも、主に国会前の映像しか扱っていなかった。これは明らかな印象操作である。
実際はこちら。
集会場所は日比谷公園から国会裏にまで渡り、まさに「国会を取り囲む」かたちで人々が集まった。
8月30日、安保法制反対の抗議活動/日比谷公園から国会前へ
2015/08/30公開 動画アップロード元: Kazuhiko Morita
14時から15時くらいの様子です。日比谷公園の図書館前でテストして、霞門の日比谷ステージへ向かい、各省庁のビルの間を抜けながら、外務省前の宣伝カーステージの前を通り、六本木通りを国会前まで移動しています。
地上5メートルくらいからの俯瞰映像。マイク用のブームポールに小さなカメラをつけて撮影しました。
動画を見れば一目瞭然だが、当日は国会前を含む周辺で、これだけの人で溢れかえった。しかも、この動画で映されているのは「6カ所のステージ」の内の「日比谷メインステージ」と国土交通省前の「宣伝カーステージ」、そして動画の最後の「国会正門前」の3つだけで、「6カ所のステージ」の半分でしかないという。
ついてはこちらのブログが詳しい。その検証と解説の記事である。
⇒「12万人以上が参加していた8.30国会前デモ、信用失うのは現場取材せず報道する産経等マスコミの方」
(月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸のブログ 9月1日)
>産経の「3万2千人」というのは、国会10万人行動の「6カ所のステージ」のうちの「1カ所」に過ぎません。加えて「6カ所のステージ」以外にも参加者は霞が関一帯にあふれていたのです。そして、参加者12万人と発表したのは準備したビラ10万枚を配布してなくなったことをもって12万人としたとのことですが、それについて木下ちがやさんによる以下の一連のツイートとリツイートを読むと参加者12万人というのは逆に少なすぎるものだということが分かります。
>こたつぬこ ?@sangituyama
>チラシ配ってるのそもそも気づかない人も大量にいたし、子供はもらわないし、ビラ10万だから参加者12万というのはちょと....
>https://twitter.com/yamachan831/status/638500444130533376 …
>8:59 AM - 1 Sep 2015
>チオペンタールNa ?@mirumiru2014
>@sangituyama こんにちは。
>上二枚のちらしは国会議事堂前駅四番出口で配っていました。受け取らなかった人・混みすぎて受け取れなかった人が相当数いました。
>というわけで、8月30日の国会デモは12万人以上が実際は参加していたというのが事実です。
ちなみに「チラシ10万枚」がどのくらいかというと・・・
>全部で800kgあるそうです。10万部がまさかこんな量だとは・・・
(写真は「つじのブログ」さんより拝借)
⇒「孫崎享のつぶやき 国会包囲12万人以上。この大事件を前に大手メディアは事実も報道できなければ、社説も書けない」(ニコニコチャンネル 9月1日)
>現場に行けば紛れもない事実である。
>狭義の国会前を超えて、日比谷公園、霞が関、憲政会館、永田町と歩道は身右激できないほど人が詰めかけ、公園などにも人は大挙集まった。
更に当日の19時頃にはSEALDsがTwitterで「今日の国会前抗議、のべ人数35万人だそうです!!!!!」と伝えたが、途中から参加した人、途中で帰った人の入れ替わりなど、参加総人数を換算すれば、それでもあながち「盛っている」とは決して言えないのではないだろうか。
先日の拙記事「8.30 国民大抗議行動」で私は、
「国会周辺に主催者発表でおよそ12万人、警視庁の調べで3万人余りが集まったとされるが、12万人は些かハッタリで(笑)、逆に3万人はどう見ても少な過ぎる見積りだが、実際は霞ヶ関、日比谷周辺まで含めてその数は7〜8万人というところではないだろうか。」
と述べたが、それもどうやら事実誤認であったらしく、改めてこの場を借りてこの発言の訂正とお詫びを申し上げたい。想像を遥かに超えたそれこそ空前の大抗議行動であったことに間違いはない。
これらを鑑みれば、法案賛成・推進派の言説は実に歪曲したものであって、それは単に彼らが「気休め」のために作った材料でしかなく、そうして「慰める」こと以外のなんでもなかったということがお分かりいただけるだろう。
一方、一般メディアは双方の発表値は伝えたが、例えば「12万人」の根拠について、これを一切報じてはいない。
* * * * *
さて一方、8月15日の共同通信社の世論調査、続く8月17日の産経新聞社とFNN(フジテレビ)による世論調査で、内閣の支持率が持ち直したが、更に、日本経済新聞社による世論調査が30日の日曜日に発表となり、いずれも同じような傾向が出た。
⇒「内閣支持率46%に回復、70年談話「評価」42% 本社世論調査」(日本経済新聞 電子版 8月30日)
>日本経済新聞社とテレビ東京による28〜30日の世論調査で、内閣支持率は7月の前回調査から8ポイント上昇し、46%に回復した。不支持率は10ポイント低下して40%。7月は2012年12月の現在の安倍政権発足後、初めて支持と不支持が逆転したが、8月は再び支持が上回った。
折りしも、上述の「8.30国会前10万人・全国100万人大行動」の日である。
一瞬、あれだけの抗議行動が行なわれたのに何故支持率が回復? と思ってしまうが、ここはカラクリ。国会前抗議行動が行なわれる頃にはほぼ調査が終わり、集計に入っていたのである。
従って、抗議行動の影響はほとんどこの世論調査の結果には現れていないことになる。
念のため、産経新聞も日本経済新聞も、ご承知のように“政府系”である。
ちなみに、一連のメディアによる世論調査について、かなり詳細に渡って分析を行なっているのがこちらのブログ。
⇒「はるノート」
直近のグラフなど ⇒「内閣支持率・不支持率」 ついての分析 ⇒「支持率は誰が上げたのか?」
かなり参考になる。
* * * * *
さて、国会、参議院ではなお野党の追及が続いている。
日本共産党の小池晃氏に続き、昨日(2日)、同党の仁比聡平氏がまた新たな内部文書を暴露した。「軍部」(自衛隊)の暴走が目立つ。
ついてはまた後日。
《その他参考記事》
⇒「【マスメディアの動向】8/30国会前デモを各メディアはどう扱ったか&国民の反応」(健康になるためのブログ 8月31日)
⇒「主催者発表12万人なのに警察調べ3万人 デモ参加者数、なぜこんなに違うのか」(J-CASTニュース 8月31日)
⇒「これホント?最近話題の「10万人問題」を比較してみた」(NAVERまとめ 8月31日)
《関連記事》
⇒「8.30 国民大抗議行動」
⇒「か弱く未熟で優しい日本人」
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