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アジサシ〔PHOTO〕gettyimages
政府がどんな策を弄しても、辺野古に基地は造れない〜その簡単な理由 弾圧は抵抗を呼び、抵抗は友を呼ぶ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44811
2015年08月30日(日) 魚住 昭 週刊現代 :現代ビジネス
■政府と県民がぶつか合う現場の海へ
アジサシという鳥をご存じだろうか。白いユリカモメを小さく、鋭くした体形で、空から急降下して海中の小魚を捕る。
その手並みの鮮やかさ。海面から空に戻るアジサシの嘴(くちばし)に咥えた小魚の鱗が輝いている。
「オスは、ああやって捕った魚をメスにプレゼントするんですよ」と、船長のアシスタントを務める女性が説明してくれる。
アジサシは渡り鳥だ。冬はオーストラリアで過ごし、夏場になると沖縄にやってきて無人島などで卵を産み、子育てする。
でも、真夏の沖縄はひどく暑い。せっかく産んでもゆで卵になるんじゃない? 同船した琉球新報の若い記者は以前、小学生にそう聞かれ「親が海水を運んできて卵を冷やすから大丈夫なんだよ」と答えたのだと言う。
申し遅れたが、私は沖縄県名護市の大浦湾の沖合に来ている。米海兵隊の新基地建設をめぐって、政府と県民が真っ向からぶつかり合う現場である。
■正気の沙汰ではない
私たちが乗っているのは全長7mの白い小型クルーザー。埋め立て阻止のため昨年秋、沖縄のキリスト者らが寄付を募って購入した抗議船『不屈』である。
船名は、反基地闘争の指導者だった瀬長(せなが)亀次郎('01年没・元共産党副委員長)が愛した言葉に由来する。文字も瀬長自身の墨書を再現したものだ。
「キリスト教徒が共産党幹部の言葉を掲げるなんて沖縄らしいでしょ。まさに『イデオロギーよりアイデンティティ』(翁長雄志知事の言葉)なんですよ」
と、沖縄在住10年目のノンフィクション作家・渡瀬夏彦さん(56歳)が言って笑う。
船は穏やかな海を滑るように進む。浅い所はエメラルド色に光り、底まで透けて見える。深い所は澄んだ群青色だ。「やんばる(山原)」の亜熱帯雨林で浄化された水が川となって注ぎ込むので水質が極上なのである。
一帯の海には絶滅危惧種のジュゴンが数頭いる。彼らが好むウミヒルモの藻場があちこちにあるからだ。藻場はあらゆる魚の産卵場にもなり、ユビエダサンゴの大群落はクマノミなどサンゴ礁生物のオアシスである。
そんな「宝の海」に政府は10tトラック340万台分の土砂を放り込み、海面より10m高いコンクリート護岸を築こうとしている。そして1800mのV字型滑走路2本と、強襲揚陸艦用の岸壁を造るというのだから正気の沙汰ではない。
埋め立ての結果がどうなるかは素人にも想像がつく。潮の流れが変わるので周辺の生物生態系が壊され、ジュゴンやアジサシは寄り付けなくなる。サンゴの大群落も危機に瀕する。大浦湾・辺野古一帯が「死の海」になってしまう恐れもある。
■現れた海上保安庁のボート
オレンジ色のフロート(直径数十cm)が数珠のように連なって海面に浮かび、湾の半分近くを「立ち入り禁止区域」にしている。そこに近づくと、海上保安庁の黒いボートが現れてハンドマイクで警告する。
「不屈の皆さま。黄色いブイの内側は立ち入り禁止区域です。今すぐ退去してください」
フロートのさらに外側に浮かぶブイの内側に入ることすら法令違反だと言うのだ。『不屈』は警告をあっさり無視してフロート沿いに進む。海保のボートが至近距離に来て警告を繰り返す。あんまりしつこいので船長の牧志治さん(65歳・カメラマン)が一喝する。
「それは自民党が決めたことだろ! 僕らは認めてないからっ」
迫力に気おされてボート上の海保職員4人が黙り込む。実力で排除するつもりはないようだ。肝心のボーリング調査を行う台船がいないせいだろう。相次ぐ台風で台船は沖縄本島西側の内海に避難している。
牧志船長は船を辺野古岬の突端に向けた。すぐそばに緑に覆われた無人島が2つある。長島と平島だ。アジサシの群れがギュイッ、ギュイッと鳴きながら周りを飛び交う。島でたくさんの巣を営んでいるのだろう。
〔PHOTO〕gettyimages(2015年2月2日撮影)
計画では、滑走路は長島をかすめるように敷設される。ということは、目前の海に高さ10mのコンクリート護岸がそびえ立つことになる。
その光景を想像しようとしたのだが、非現実的すぎて想像できない。あまりに海が美しく、穏やかだからだろうか。それとも基地建設の理由に説得力がないからか。
米軍再編で沖縄の海兵隊は最盛時の半分以下の9000人に減る。しかもその主力部隊は年間9ヵ月は外に出て東アジアなどを巡回する。ほとんど沖縄にいない海兵隊のために巨大基地を造る合理性がまるでない。
■「弾圧は抵抗を呼ぶ 抵抗は友を呼ぶ」
左前方の海上に色鮮やかなカヌー十数艘が現れた。埋め立て阻止のため結成されたカヌー隊だ。昨年夏以来、連日のように海に漕ぎ出し、海保と壮絶な攻防を繰り返しているが、今日は操船術を磨くための訓練らしい。
アシスタントの女性が「カヌーって熟練しないと危ないんです。風に煽られて岩礁にぶつかると大ケガしますから」と言う。
そう。危ないのは岩だけじゃない。海保のボートに衝突されたらひとたまりもない。スクリューに巻き込まれると死ぬ。それでも彼らはフロートの継ぎ目を乗り越え、台船目指して突っ込んでいく。海保に拘束されても翌日また突っ込んでいく。身を挺しての抗議行動である。
そんな彼らの背後には何十万もの人々の怒りがある。土砂の搬入が始まると人々はダンプの前に身を投げ出すだろう。そこで惨事が起きたら怒りが爆発して、もう誰にも止められない。
「弾圧は抵抗を呼ぶ 抵抗は友を呼ぶ」と訴えて党派を超える支持を集めたのは瀬長亀次郎だった。その言葉が正しかったことを今の沖縄が証明している。
『不屈』の舳先(へさき)にいると波の飛沫が頬にあたる。強い陽射しで火照っているのでヒンヤリする。海水をなめると生き返った心地がする。蒼空を舞うアジサシを見ながら今更のように思う。
政府がどんな策を弄しても基地は造れない。沖縄の心は揺るがない。だって、これほど豊かな自然の命と人間の尊厳が掛かっているのだからと。
*参考:『虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発安全保障政策の新機軸』(新外交イニシャティブ編)
『週刊現代』2015年8月29日号より
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