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柴田哲考氏が下山事件に情熱を注ぐようになったきっかけは、祖父が事件の実行グループと深く関わっていたという衝撃の事実だった
日本が永遠にアメリカの植民地であり続ける原点は戦後最大の謀殺ミステリー『下山事件』にあった!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150823-00052483-playboyz-soci
週プレNEWS 8月23日(日)6時0分配信
戦後最大の謀殺ミステリーとされる「下山事件」――1949年7月6日未明、東京都足立区の常磐線と東武伊勢崎線が交差する高架下付近の線路で当時の国鉄総裁、下山定則(さだのり)氏が轢死体(れきしたい)で発見された事件である。
捜査の過程で浮かび上がった物的証拠は明らかに「他殺」の可能性を示していたにもかかわらず、約1ヵ月後、事件は強引な形で自殺説で収束させられ、やがて捜査も打ち切られた。
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多くの謎を残したこの事件に挑んだのが、作家・柴田哲考(てつたか)氏だ。2005年にノンフィクション『下山事件 最後の証言』を発表、今年6月には「小説」の形で『下山事件 暗殺者たちの夏』を刊行した。
柴田氏が事件を追い始めたのは1991年。祖父が事件の実行犯グループにいたことを知ったのがきっかけだった。(前編→「戦後最大の謀殺ミステリー『下山事件 暗殺者たちの夏』著者が激白!「実行犯に祖父が絡んでいたと聞いた時からすべてが始まった」)
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―そうして柴田さんが24年間取り組んできた「下山事件」の真実から何が見えてきたのでしょうか?
柴田 終戦直後の混沌(こんとん)とした社会が「今の日本」に向けて動きだした「分岐点」、それが「下山事件」だったと捉えて間違いないと思います。そのひとつが、米占領軍によってもたらされる「利権」と政治とのつながりです。この本を読めばわかりますが、下山事件の背景にあったのは「国鉄の利権問題」、それもアメリカが絡んだ利権でした。
朝鮮戦争が迫る中、当時のアメリカにとって国鉄は、太平洋側から日本海側に大量の物資を運ぶための軍事的に非常に重要な手段でした。ですから労組が強くなって、ストで輸送が止まったら大変なことになるし、石炭で動く機関車を「電化」して輸送効率を大幅に上げる必要もあった。そこでアメリカは日本に対する融資である「見返り資金」で、国内の電源開発に巨額の資金を注ぎ込み、日本の電力再編と同時に国鉄の電化を図ろうとしたわけです。
ところが、当時の国鉄総裁だった下山さんはあくまでも日本のための「国鉄」という考えで、なかなかアメリカの言いなりになろうとしなかった。汚職などにも一切応じなかった。そういう存在はアメリカにとっても、アメリカの「見返り資金」の上前をハネたい日本の政治家たちにとっても邪魔な存在だったんですね。
彼らが直接、下山さんを殺(や)ったのではないにしても、下山さんがいなくなることを望んでいた人たちが何人もいた。彼らがその後、戦後の電力事業などエネルギー産業で莫大なお金を儲けて、今の日本のシステムを作ってしまったことは事実です。それに、当時の吉田茂政権は明らかにGHQの傀儡(かいらい)で、これは否定しようがない。
例えば、アメリカから「定員法」のように何十万人もの人員を整理する法律を作って日本経済を効率化し、アメリカ資本を投下できる下地を作れと言われれば、「はいはい、その通りにします」と、吉田政権は首切り法案を作って大量解雇をやるわけです。
でも、これって今と同じじゃないですか? アメリカが日本に戦争を手伝わせたいから法律を作る。アメリカが基地を欲しいから沖縄の民意を平気で踏みにじる。TPP問題なんかも同じです。
こうして、アメリカがもたらす「利権」が政治と深くつながり、日本の政治がアメリカの言いなりになってゆく。その転換点となったのが「あの夏」であり、「下山事件」なのだと思います。
―もうひとつ興味深いのは、同じGHQの中でも、現行の日本国憲法を事実上、起草したといわれる「GS」(民政局)と、戦後の対共産主義対策や下山事件にも深く関わったと思われる「G2」(参謀第二部)のせめぎ合いです。
柴田 新憲法制定をはじめ、GHQにおいて日本の民主化政策の中心を担い、労働組合の組織化も進めるなど左派リベラル的な性格を持っていたGSのトップが、汚職問題(昭和電工事件)で失脚させられます。それも白洲次郎や当時の警察、吉田茂らが裏で手を引く形で。
すると、GSによって「公職追放」されたり、巣鴨プリズンに入ったりしていた政治家や右翼などが「共産主義対策」の名の下、ライバルのG2によって次々と復活する。その中には児玉誉士夫(よしお)や笹川良一のような右翼などもいて、今の総理の祖父、岸信介もそのひとりです。
その後、G2が実権を握っていく中で、アメリカの利権を介して、こうした政治家や経済界、右翼などが水面下で強く結びつきながら日本の「戦後」が作られた。そうなると今度は事実上、「GSが作った」日本国憲法が邪魔になってきた。しかし憲法は簡単には変えられない。彼らにとってはそれがずっと「取れない重し」になっていたのです。
―別の言い方をすれば、今、しきりに議論されている憲法の問題も、その根っこはGHQの内部にあった「GS対G2」の構図の中にあるとも言える、と?
柴田 そう、結局すべては「下山事件」が起きた時代と地続きなんです。そして僕はその時、日本が踏み込む道を間違えたのではなかったのかと思う。
例えば、原発の問題もそうです。下山事件の時に国鉄の総電力化で政治家が利権をむさぼっていたのと同じようなことが、福島で原発を造った時にも起きていた。それもアメリカの言いなりになって、もう使わなくなった古い型の原子炉かなんか買わされてね。
今も集団的自衛権を含む法整備をやっていますよね。あれも日本のために必要な法整備ではないし、当然、憲法改正もせず、その解釈を無理やり変えてでもやろうという話でもない。実は集団的自衛権で焦っているのはアメリカのほうなんですよ。アメリカはたぶん、中国と南シナ海の問題で一戦あってもおかしくないと踏んでいる。その時にアメリカだけが泥をかぶりたくないから日本の自衛隊も使いたい。
そうやって、日本は永遠にアメリカの言いなりになり続ける。本当に今の日本はアメリカの植民地ですよね。僕は昔から言っているんだけど、最近、本当にそうなってきた気がします。
―戦後70年を迎えた今、僕たちが下山事件から学ぶべきこととは?
柴田 例えば、ひとりの人間を見る時に、その人の今だけを見ても本質はわからない。でも、その人間がどう生まれて、どのように育ったのか? 過程を見ることができたら、なぜそういう人間になったかわかりますよね。
僕は単に「下山事件」の真相を暴くために書いているのではない。当時の世相の中で、なぜこの事件が起きたのかを知ってもらいたい、それによって「今、我々の生きている日本の社会がなぜこうなったのか?」ということをわかってほしいから書いたんです。
そこに真剣に向き合い、“今”を自分なりにつかみ取ろうという努力をすれば、そこから自分がやるべきことが見えてくる。それはおそらく権力者の思い通りにならない、権力者にとって都合が悪い存在。自分なりの知識と、しっかりとした考え、哲学を持った「ひとりひとりの国民になる」ということだと思います。
その意味で、今回の本は今の日本の「原点」を考えるための、とてもいいテキストになるはずです。もちろん、エンターテインメントとしても絶対に面白いモノを書いたという自信はある。僕の書いた本で面白くないモノって絶対にないと思っていますから!
■柴田哲考(しばた・てつたか)
1957年生まれ、東京都出身。2006年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)と日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年に『TENGU』で大藪春彦賞を受賞する。ほかに探偵・神山健介シリーズ、『GEQ』『異聞 太平洋戦記』『中国毒』『国境の雪』など多数
(取材・文/川喜田 研 撮影/五十嵐和博)
戦後最大の謀殺ミステリー『下山事件 暗殺者たちの夏』著者が激白!「実行犯に祖父が絡んでいたと聞いた時からすべてが始まった」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150822-00052406-playboyz-soci
週プレNEWS 8月22日(土)6時0分配信
1949年7月6日未明、東京都足立区の常磐線と東武伊勢崎線が交差する高架下付近の線路で、轢死体(れきしたい)が発見された。
死んでいたのは当時の国鉄総裁、下山定則(さだのり)氏。これが後に「下山事件」という戦後最大の謎に満ちた事件となる。
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死の理由は、国鉄合理化に伴う人員整理を苦にした自殺なのか、それとも何者かによる他殺なのか。他殺だとすれば、犯人は人員整理に反対する労働組合関係者か、それともGHQ(占領軍)の秘密機関による破壊工作なのか?
捜査の過程で浮かび上がった物的証拠は明らかに「他殺」の可能性を示していた。にもかかわらず、約1ヵ月後、事件は強引な形で自殺説で収束させられ、やがて捜査も打ち切られてしまう。
同じ1949年の「夏」に起こった「三鷹事件」(注1)「松川事件」(注2)とともに「国鉄3大ミステリー」として知られるこの事件の真相を今回、小説の形で描き出したのが柴田哲孝氏の新刊『下山事件 暗殺者たちの夏』(祥伝社)だ。
(注1)1949年7月15日、下山事件の10日後に東京・三鷹駅構内で起こった無人列車暴走事件
(注2)1949年8月17日、福島県の東北本線・松川駅〜金谷川駅間で起こった列車の脱線・転覆事件。容疑者は逮捕・起訴されたが、全員が無罪となった
「下山事件こそは日本の戦後史の重要な転換点だった」と著者の柴田氏は語る。敗戦後の混沌(こんとん)の中から、日本の「戦後」がどのように始まったのか? そしてそれがどのようにして「下山事件」と関わり、この国の「現在」へとつながっているのだろうか?
―柴田さんは2005年に『下山事件 最後の証言』というノンフィクション作品を発表し、その2年後には多くの新事実を追補して再構成した「完全版」を刊行されています。今回、新たに「小説」の形で下山事件を描こうと思われたのはなぜですか?
柴田 ひと言で言えば、小説だからこそ書ける「真実」があるからです。ノンフィクションというのはあくまでも「事実」の積み重ねですから、ある「事実」ともうひとつの「事実」の間が確実に「こうだ!」とわかっていても、そこに作者の推論や主観を差し挟めば、その時点でノンフィクションではなくなってしまうというジレンマがあります。そこで、膨大な数の証言、証拠の空白部分を「小説」という創作の形で埋め、全体像を再現すれば「真実」に迫れると考えたのです。
ただし、小説の形で事実と事実をつないだ部分でも、全部ちゃんと裏付けとなる証言があるんですけどね。だからこれ、決して捏造(ねつぞう)や空想で書いているんじゃないんですよ。
でも、これを小説で書くのにはかなりの労力がいりました。事実関係をもう一回洗い直す作業が必要ですから、そう簡単にはできない。それで書き上げるまでに10年もかかってしまった…。
―ノンフィクション版の取材と執筆に14年費やしていますから、今回の小説を入れると約四半世紀! これほどの情熱を下山事件に注がれるのは、実のおじいさま(故・柴田宏[ゆたか]氏)が事件の実行犯グループと深く関わっていた、つまり自分の血縁と戦後の大事件が直接つながっていたという部分が大きいのでしょうか?
柴田 そうですね。1991年の法事の席で突然、大叔母(祖父の妹)から「下山事件に祖父が絡んでいた」という話を聞いた時から、すべてが始まりました。僕にとって一番身近な肉親のひとりだった祖父の「秘密」に対する愛着、興味、好奇心というのが原動力だったと思います。
当時は僕も下山事件について「確か国鉄の総裁が殺された事件だよね…」程度のことしか知りませんでした。ですから大叔母の話を聞いても「えっ、この人、何を言っているの?」という感じでした。祖父が事件に関わっていたというので、国鉄の仕事でもしていたのかと思ったら、殺害の実行犯グループだって聞いてショックでしたね。
最初は松本清張さんの『日本の黒い霧』とかを読んで、この事件に、かつて祖父が働いていた「亜細亜産業」という会社が深く関わっていることを知るわけです。そこから好奇心に任せて掘り続けてみたら、どんどんと坑道が広がって、初めは石炭だけだったのに金が出てくる、ダイヤモンドが出てくる…という感じで、次々と新たな証言や新事実が出てきた。気がつけば14年が経っていました。
そうして、2005年に『下山事件 最後の証言』を発表し、自分でも「これで最後だ」と思っていたのですが、今度は本の反響とともに次々と当時の「関係者」から新事実が僕のところに寄せられるようになり、「最後の証言」ではなくなった。
亜細亜産業の元社員や陸軍中野学校(注3)、国鉄労組の関係者の方などから「これだけ知っているなら、教えてあげたいことがある」とか「あなたはこう書いているけど真実はこうだ」とか「この事実を知らないと真相には近づけないぞ」みたいな手紙や電話をいただき、その中には下山事件の実行犯もいたのです。
(注3)大日本帝国陸軍の軍学校であり情報機関。諜報や防諜、宣伝など秘密戦に関する教育や訓練を目的とした
―自分から掘っていたはずなのに、気がつけば逆に自分が未知の世界へとのみ込まれていくような感じですね。
柴田 正直、途中の1年か2年、これはもう自分の手には負えないと思って諦めかけた時期もありました。でも、どんどんと自分が事件の核心にのみ込まれていく中で、次第に自分の手で真実を明らかにし、いい加減な情報で犯人扱いされている人たちの汚名をそそぐ責任があると考えるようになった。
自分でもよく、こんなことを四半世紀もやっていたと思いますが、その意味でこの小説は自分がこれまで取り組んできたことの「終着点」だと言ってもいいと思います。
●この続きは、明日配信予定!
■柴田哲考(しばた・てつたか)
1957年生まれ、東京都出身。2006年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)と日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年に『TENGU』で大藪春彦賞を受賞する。ほかに探偵・神山健介シリーズ、『GEQ』『異聞 太平洋戦記』『中国毒』『国境の雪』など多数
(取材・文/川喜田 研 撮影/五十嵐和博)
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