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安倍首相(C)日刊ゲンダイ
安保法案の欠陥を衝く/倉持麟太郎 <第10回>「自衛隊のリスクは減らない」という強弁は「マトリックス」の世界である
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162967
2015年8月22日 日刊ゲンダイ
本安保法制が成立することによってリスクは上がるのか? という問いに、政府は「リスクは上がらない」と強弁している。法案の「運用」や、自衛隊の「訓練」でリスクを最小限に抑えるのだそうだ。しかし、後方支援における“地理的制限”をはずしたことによって、全世界的に自衛隊が展開することになった。これにより、例えば重要影響事態を認定し、遠方での後方支援に向かう海上自衛隊の艦船が攻撃を受けた場合、従来から存在する「武力攻撃事態」を認定し、個別的自衛権で反撃することになる。反撃をすれば再反撃を受ける可能性もある。この問題性を地図で可視化するならば、今までは武力攻撃事態=戦闘状態になり得る範囲を地図に赤塗りすると、それは「日本周辺」だけであったのが、安保法制によって、これが世界中に広がり、地図が全面的に真っ赤になったのである。
これは、「運用」や「訓練」で論じられるリスクの増減ではなく、法律が施行されれば理論的に考えられる法案の「規範レベル」での「リスク」だ。「訓練」で法案のリスクが減るのならば、それは映画「マトリックス」の世界になる。つまり、発砲された人間がスローで弾丸をよけることができるようになるなら、法案のリスクはゼロになるが、そうでない以上、訓練や運用で「規範レベル」のリスクを減らすことはできない。政府は規範的にリスクが上がることを認め、「リスクをとっても得るべき価値があるのだ」という説明をし、運用と訓練で事実上のリスクは下げる、と説明するのが筋だが、これまたはぐらかすわけである。
さらに、本法制では、後方支援の実施区域で安全な実施が確保できない場合や、実施場所または近傍で戦闘行為が行われているか、それが予測される場合、「防衛大臣が」活動の中止命令・一時休止を命じると規定されている。後方支援中の現場が安全でなくなる状況または戦闘行為が行われる状況で反撃しなければ従事している部隊の存続の危機のはずだが、そこで活動中止ならば、いかにして隊員の安全を確保するのか。後方支援中に「危ないからオレ帰る」ということが許されるのか。それは「世界の平和への貢献」と相いれるのか。前線と「一体化しない」からリスクは増えないという無理やり引いたフィクションがもたらすのは、自衛隊員へのリスク丸投げと「世界平和への貢献」の瓦解である。
我々が負う一番のリスクは、無謬と思い込む政府の判断にフリーハンドに「一任せざるを得ない」という、議会制民主主義国家が内包するリスクかもしれない。今我々に突き付けられているのは、自分たちが今まで実は無意識・無自覚であった「権利」や「勇気」を“不断の努力”で「運用」・「訓練」することだ。それこそが民主主義が内包するリスクの進行へのヘッジになるのであろう。
▽くらもち・りんたろう 1983年生まれ。慶大法を経て中大法科大学院卒。安保法案に反対する若手の論客として知られ、衆院特別委にも参考人として呼ばれた。
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