68. 2015年8月28日 02:49:35
: TF11GXF11k
>>63 NLb6JYniloさま面白いグラフでした(所得格差の推移・先進国の国際比較1と2)。 >小選挙区制による「2大政党国家」のイギリス、アメリカの特徴は「格差社会」になっていることだ。格差社会の指標となるジニ係数は、先進国のなかで1位アメリカ、2位イギリスとなっている。 > http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4660.html イギリスの選挙制度をウィキペディアで調べたところ、比例代表制その他6種類もあるので、単純な小選挙区制のみではないようですが、今年五月の総選挙はイングランドがほとんど保守党一色、スコットランドはSNP(スコットランド国民党)一色で、 現在はSNPの女性党首二コラ・スタージョンがスコットランド首相の座についていることから、総選挙は小選挙区制がメインかも知れません(曖昧ですみません)。 また、こんな報告書をみつけました(PDFです)。 (2011年初頭の段階では、小選挙区制を廃止しようという動きが主に英国自民党、労働党の一部、市民団体を中心に活発にあったようです。その後の国民投票で、小選挙区制は維持されることになった)。 『機能不全に陥るイギリス小選挙区制から何を学ぶか 選挙制度問題イギリス調査報告書 2011年2月21日〜26日』 http://www.jlaf.jp/menu/pdf/2011/110627_01.pdf 長いですが、面白い報告書なので部分的に引用します(以下引用)。 目次(一部) ・イギリスの選挙制度概要と現在に至る流れ ・機能不全に陥るイギリスの小選挙区制 ・「少数者」であるサッチャー、ブレアの暴走とそれへの批判 ・イギリスの小選挙区制の存立基盤は失われつつある ・正当性のないイギリス政治の「抜け殻」の輸入 ・小選挙区制の強化は日本の民主主義を破壊する イギリスでは2011年5月5日に国会下院の小選挙区制を廃止と対案投票制 (Alternative Vote)の導入の賛否を問う国民投票を行うことが決定された。 それを受け、自由法曹団ではイギリスの選挙制度をめぐる情勢を調査する調査団(奥村一彦、馬屋原潔、渡辺輝人)をイギリスに派遣し、立命館大学の小堀眞裕教授の援助を受けながら、2011年2月21日から26日にかけて、労働党国会議員や労働党の「AV賛成」運動の責任者、また、従前から選挙制度の改革を訴えてきた市民団体等にインタビューを行った。国民投票の結果は、小選挙区制が維持されるものとなったが、調査を通じて、イギリスの小選挙区制が行き詰まっている状況が如実に表れた。 以下はそれらのインタビューの成果を踏まえ、イギリス小選挙区制の現状を報告し、あわせて、イギリスの選挙制度を模範にして作ったとされる、日本の小選挙区制下での二大政党制について考察する。 (中略) イギリスで小選挙区制が導入されたのは1885年である。 小選挙区制導入の理由は、労働者階級が台頭する情勢の下、有産階級に支えられた保守党、自由党の二大政党が、有産階級による政治支配を維持するためだったとされる。イギリスは階級によって居住地域がはっきり色分けされたため、労働者階級が居住する地域の議席は労働者階級に取られてしまっても、全体としては保守党、自由党が議席を維持できると考えたのである。 なお、イギリスでは小選挙区制は競馬になぞらえてFPTP(First Past The Post)=「ゴールポスト一位通過」制度と呼ばれている。この名前は、5馬身差でも、ハナ差でも、とにかく一位でゴールすれば議席を得られる小選挙区制の本質が現れている。 (インタビューから引用) ●シェフィールド大学政治学部マーティン・スミス教授 ・調査団 現在、イギリスでは小選挙区制と二大政党制が揺れていますが、これはウェストミンスター・モデルの重要な部分でしょうか。 ・スミス教授 そうですね。私が考えるのは、最も面白いのが得票率で、実際のところ二大政党制モデルは1970 年ころから長期的に後退しています。1950 年代には、保守党と労働党とで90%以上もの投票を得ていたが、1970 年代に彼らのシェアはかなり落ち始めた。それで、二大政党のシェアは70%くらいに落ちていった。 2010 年の総選挙がその中でも際立ったのは、自民党が単独政党による政権を阻止するのに十分な得票を得たことでした。もちろん、このことは、イギリスの政治的文脈から見れば、極めて大きな変化です。というのは、これまでずっと私たちは、単独政党による単独政権を得てきたからです。 ・調査団 日本では、イギリスのマニフェスト政治はずいぶんと有名になってしまったのですが、マニフェストの強制力については、どの程度あるのですか。政治家は全てを実現しないといけないのですか。それとも、ある部分だけでもよいのですか。 ・スミス教授 確かに、政府としては、やっていることの正当性を主張しなければならないので、国民から負託されたと言うことでマニフェストは国民からの命令ということになりますが、しかし、マニフェストに書いてないことも沢山やっていますし、書いてあることでもやらないことが沢山あります。 今、自民党が苦しんでいるのは、マニフェストに全く書いてなかった大学の学費の値上げなどをやらなければならないこと、また連立政権は森林を売るということをやろうとしているが、それもマニフェストには書いていないことです。状況も変わったりするので、マニフェストに書いていないこともやるわけです。 しかし、ただ、実際のところ、自分たちの正当性を示すためにマニフェストというアイディアを使います。一種のレトリックともいえます。 ・調査団 ということは、マニフェストはある種のレトリックであるということも、いえるわけですか。 ・スミス教授 ある意味では、そうです。イギリスの政治システムを考えるとき、とくに選挙制度を考えるとき、選挙制度はあまり民主的なものではありません。というのは、議員が少数派の得票で選出されるからです。だから、マニフェストの命令があるからだ、議会主権だといわざるを得ないわけです。 ・調査団 昨年の総選挙後には、労働党、自民党、スコットランド民族党、ウェールズ民族党、緑の党のような多党による連立が議論されたが、このように多くの政党が連立政権を組むことになったときに、国民は支持すると思いますか。機能すると思いますか。 ・スミス教授 それは、難しいと思う。どのように機能するのかという問題もある。ものすごく沢山の政党が連立するようになったときはイギリス国民はわかりにくいし、支持しないかもしれません。 ●ベン・ブラッドショウ下院議員 「小選挙区制の目的はひとえに強力な単独政権を作ることなんですが、それはもうイギリスではお分かりのように、すでに破綻しています」(労働党・ブラッドショウ下院議員)。 ・調査団 今回、小選挙区制を廃止しようとしているわけですが、イギリスの小選挙区制は何が間違っているのですか。 ・ブラッドショウ議員 まず最初の理由は小選挙区制が比例的でないことです。人々の声が反映されていないことです。これを使っている国は、非常に少ないという点もあります。 日本が小選挙区制に向かおうとしているのは興味深いですね。 最近、小選挙区制から離れる国はあってもそこに戻っていく国はありません。 また、イギリスの小選挙区制では、安全区の議席があまり動かない一方、激戦区の1.6%の人々の意見で結果が大幅に動いてしまい、政党もそこに資金や運動や勢力をつぎ込みます。この結果、多様な人々の意見が無視されていることが非常に問題だと考えています。これらが、私の小選挙区制に対する批判点です。 ・ブラッドショウ議員 日本でも、選挙制度を変えるときには、国民投票をするんですか。 ・調査団 しません。ただ、政治家が決めます。 ・ブラッドショウ議員 それで、国民は怒らないんですか。 ・調査団 国民はそうしなければいけないと気づいていないし、怒っても、ほかに手段がありません。 (引用終了) >>63 >2大政党となるとどうしても富者、強者の代表になるのではないか。貧者、弱者は、富者や強者が支配する国家のほどこしを受けるだけになり格差はますます拡大する。 上記報告書では、イギリスで小選挙区制が導入されたのは1885年(なんと130年も前)とあり、「小選挙区制導入の理由は、労働者階級が台頭する情勢の下、有産階級に支えられた保守党、自由党の二大政党が、有産階級による政治支配を維持するためだったとされる。」とあるので、英国における導入の目的は最初から「有産階級による支配」だったわけですね。 しかし労働党が予想以上に育ったため、保守党と労働党の二大政党が政権交代を繰り返す形で、まあまあうまくいっていた時期もあると、書いてありました。 >日本で2大政党にこだわると、結局第2自民党が生まれるのではないか。第1自民と第2自民の政権たらい回しでは、これは喜劇だ(いや悲劇か)。 それが懸念されるところです。 結局、民主党が第二自民党のようになってしまっている背景には(最初から確信犯的に入り込んでいたネオコンは別として)、そうならざるをえない仕組み(米国の支配、日米合同委員会、官僚の従米姿勢、経団連の発言力の強さ等々)がありますし、民主党自体が新自由主義者の多い政党であるということもあります。 軍国主義者や極右は少ないでしょうが、消費増税も原発再稼動もTPPも、結局なしくずしに賛成したわけですから。 官僚や米国に盾ついた政治家がどうなるかは、阿修羅の読者はよく知っています。 しかし新自由主義的傾向に走ったのは、ブレア時代からの英国労働党も同じで、イラク戦争参戦の悪評もあり、大幅に支持を落として回復しないため、今年五月の総選挙で保守党に負けてしまったと、イギリス在住のライターは書いています。 労働党の支持率が落ちて、かつての二大政党制が機能しなくなり、小選挙区制度をやめようという動きが何年も前にイギリスで出ていたこと(今後も再燃するかもしれません)は、面白い。今の日本で起きている小選挙区制の問題点が、本家のイギリスで出ているわけですので。 |