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安倍政権「消費増税再見送り」で来年7月衆参ダブル選へ! 昨年の解散総選挙を的中させた筆者が予測
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44837
2015年08月21日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
■首相が「いの一番」に会う相手
内閣府が8月17日に発表した2015年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報で、実質GDPの前期比伸び率が年率1.6%減となった。景気は踊り場にさしかかっている。この先をみても、中国経済の減速など不安材料がある。安倍晋三政権はどう対応するのか。
自民党の谷垣禎一幹事長は「先を見通して経済対策を打ち出していくことが必要」と述べた。首相のブレーンである本田悦朗内閣官房参与もウォールストリートジャーナル日本版のインタビューで「3兆円を上回る規模」の景気対策が必要と指摘している。
安倍首相は8月15日夜、本田参与を交えて会食し、翌16日にはゴルフも一緒にしている。別荘同士が近いためでもあるが、首相が一仕事を終えて休みをとるときは「いの一番」に本田参与と一緒というのが、最近のパターンだ。
本田参与の意見は相当程度、首相の経済政策運営に反映されるとみて間違いないだろう。ただ、景気対策が3兆円超規模で適当かどうか。
内閣府が試算している需給ギャップは、4.5%のプラス成長だった1〜3月期でもマイナス1.6%(約8兆円の需要不足)だった。今回のマイナス成長を踏まえれば、10兆円規模の大型対策になっても不思議ではない。
いずれにせよ、秋に政権が景気対策を打ち出すのは確実とみる。それは目先の理由だけからではない。来年2016年春から夏にかけて、消費税10%への引き上げ問題が控えているからだ。
安倍首相は昨年暮れの再増税見送り、衆院解散総選挙の際、17年4月に10%への引き上げを約束した。ただし、それはあくまで「決意表明」にとどまる。本当に引き上げるなら、食料品など軽減税率の扱いを定めた増税関連法案を可決成立する必要がある。
軽減税率の導入と10%引き上げはセットだ。軽減税率を導入せずに10%に引き上げるのは、自民党のみならず公明党が絶対に容認しない。
逆に再び先送りする場合でも、増税自体はすでに予定されているから、再び増税先送り法案を可決成立させなければならない。つまり増税を予定通り実施するにせよ先送りするにせよ、あらためて法律措置が必要であり、逆に言えば法定されない限り、10%引き上げは正式決定ではないのである。
はたして、いまの環境で再増税できるだろうか。そこを考える前に、まず予想される今後の日程を確認しておこう。それには昨年秋の展開が参考になる。
■「ポチ取材」では分からない真実
私が最初に増税先送りで衆院解散という見通しを示したのは、14年10月22日放送のニッポン放送「ザ・ボイス〜そこまで言うか」だった(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/40887)。結果として、私の見通しは解散日が予想より2日遅れただけで、12月14日の投開票日を含めてドンピシャリだった。
私がなぜ先送りと解散を当てられたかといえば、菅義偉官房長官が10月22日午前の会見で「14年7〜9月期のGDP速報値をみて判断する」と言ったからだ。菅長官はそれまで「GDP改定値をみて判断する」という言い方だった。
速報値と改定値では、当時の政策運営で天と地ほどの違いがある。速報値が出るのは11月17日。一方、改定値は12月8日だった。前者は臨時国会の開会中だが、後者は国会が閉じているのだ。国会開会中に増税判断をするとなれば、残りの会期は増税するにせよしないにせよ、増税問題一色が焦点になって他の法案審議どころではなくなる。
「法案審議を犠牲にしても増税の扱いを決める」というのは、言い換えれば「臨時国会を捨てる」という話だ。つまり「もう解散してしまうから、残りの会期は関係ない」。解散するなら、選挙でマイナス材料になる増税で解散はありえない。当時の景気状況も考えれば「先送りで解散」というのが、私の読みだった。
増税をめぐる判断が11月中か国会が閉じた後の12月になるかは、それほど決定的な違いがあったのだ。この重要性に気付いた記者は残念ながら、私だけだった。
東京新聞をはじめ多くのマスコミは解散が決まった後になっても「解散に大義があるのか」などとピンぼけ報道を続けた。永田町と霞が関、マスコミに深く根を張った増税派をなぎ倒すためには、解散以外に手はなかったが、そういう分析もない。
なぜマスコミが見通しと分析を間違うかといえば、政治家や官僚に取り入ろうとする「ポチ取材」ばかりしているからだ。この問題は当時のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/41078)を参照していただきたい。
さて、以上の展開を参考に今後の見通しを考えよう。当初15年10月の増税予定を17年4月に先送りしたのだから、今回は時間軸をぴったり1年半ずらせばいい。今回、増税判断の決め手になるのは来年16年1〜3月期のGDPである。速報値が出るのは16年5月、改定値が出るのは同6月だ。
■今回も増税は先送りする!
前回と今回で違う事情は、16年7月に参院選が決まっている点である。参院選で増税の判断を問うとなると、6月の改定値を待っていると投開票日まで1ヵ月しかない。私が前回、先送りと解散を報じたのは14年10月だった。つまり、総選挙投開票日2ヵ月前の10月段階で安倍政権は方針を決めていたのだ。
私がコラムで報じたからといって「本当に政権が10月段階で先送りと解散を決めていたかどうか分からないじゃないか」と思われる読者もいるかもしれない。私はこういう重要問題はきちんと事後確認して書いている。だれに!? そこは私を信じていただくしかない。
投開票日2ヵ月前に判断していた前例を今回に当てはめれば、参院選投開票日2ヵ月前の16年5月、すなわち1〜3月期のGDP速報値をみて判断することになるだろう。ただし、それはあくまで政権の判断であり、それを世間にどんなタイミングで発表するかは、まったく別の問題である。
以上で日程を整理した。そこで肝心の10%引き上げをするかどうかを考える。結論から言えば、私は現段階では今回も先送りとみる。なぜかといえば、冒頭に書いたように景気の現状が思わしくないからだ。
安倍政権は景気を刺激するために秋に景気対策の補正予算を組むだろう。それは増税を目指す財務省にとっても避けられない。景気対策もしないで景気がこのまま悪化したら、とてもじゃないが、来年春に増税決定などできないからだ。
だが、景気対策で景気が劇的に上向くのは期待薄ではないか。せいぜい一段の悪化を食い止める程度だ。景気を下支えできたとしても、それで「さあ増税」とはいかない。8%に引き上げた14年4月増税の悪影響が1年以上経ったいまに至っても残っているのだ。
このうえ10%に引き上げたら、どれほど消費を冷え込ませることか。安倍政権の最重要課題はデフレ脱却である。だが、日銀が掲げた消費者物価上昇率2%の目標は当初目指した15年中に達成できず、16年半ばに達成時期を先送りしている。
まさに政権が増税判断をするタイミングである。そんな重要な時に政権が日銀の努力に水を差すような増税を決めるだろうか。10%引き上げを決めたら、日銀は一時的に目標を達成できたとしても、たちまち元の木阿弥になってしまうのは確実だろう。日銀の本音は増税ノーだ。
そもそも補正予算で景気対策を決めるなら、その効果も見極められないうちに増税するのは財政政策として根本的に矛盾している。右手で火鉢をあおぎながら、左手で水をかけるようなものだ。こういう政策展開の常識はポチ記者やピンぼけマスコミには分からないが、安倍政権はしっかり理解している。
■来年7月、ダブル選へ
10%引き上げを先送りするなら、安倍政権は来年7月のタイミングで衆参ダブル選に持ち込むのではないか。安倍政権の内閣支持率は終戦70年談話の発表後、持ち直しているが(たとえば産経・FNN合同世論調査で3.8%増の43.1%)、政権選択選挙でない参院選は、強すぎる与党を嫌う国民のバランス感覚が働きやすい。
増税先送りは与党に追い風をもたらす。それならダブル選で政権選択選挙に持ち込み、勢いに乗って参院選も有利に戦う。そんな政治判断は合理的である。
私は2016年ダブル選予想を7月12日放送のテレビ番組『そこまで言って委員会NP』で初めて話した。コラムは同17日発売『週刊ポスト』の「長谷川幸洋の反主流派宣言」(http://www.news-postseven.com/archives/20150717_336635.html)が初出である。そちらもご参考に。いずれマスコミも安保関連法案の熱狂が覚めれば、報じ始めるだろう。
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