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河野洋平氏こうの・ようへい/1937年、神奈川県生まれ。67年に衆院初当選。官房長官、副総理兼外相、自民党総裁などを歴任。2003年から衆院議長、09年に政界を引退(撮影/写真部・堀内慶太郎)
村山談話に携わった元自民党総裁・河野洋平氏が直言「安倍さんに対する信頼が低くなった」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150820-00000002-sasahi-pol
週刊朝日 2015年8月28日号より抜粋
安倍内閣は8月14日、戦後70年の談話を閣議決定した。過去の談話の3倍以上の長さで、おわび、反省、侵略、植民地支配の言葉はいちおう盛り込まれたものの、首相は持論である「積極的平和主義」も展開した。20年前、村山談話に深く関わった元自民党総裁、河野洋平氏は何を思うか。
──14日に、安倍首相が戦後70年談話を発表しました。河野さんは、村山富市内閣が発表した戦後50年の「村山談話」にも深く関与されましたが、ご感想は。
村山談話は、連立政権で複数の政党が関わって作られました。多様な意見が反映されて、それがかえって良かったと思います。
一方、安倍さんが発表した戦後70年談話は、安倍さんの意見に近い人たちをたくさん集めた私的諮問機関が報告書をまとめ、それが談話の元になっています。
──「侵略」や「おわび」の表現をめぐって、さまざまな意見が出ました。
そもそも、村山談話は戦後50年という大きな節目で出したものです。それに比べれば戦後70年というのは、大きな節目ではありません。それでも談話を出すのであれば、談話を出す意味をはっきりさせなければなりません。
意味があるとすれば、今の安倍政権への疑念を払拭することです。安倍政権は今、外国から「歴史認識を変えようとしているのでは」と疑われている部分もあります。中国や韓国だけでなく、米国からもそう思われることがある。その疑いを解くという意味でなら、談話を出す意味があります。
それが、「おわび」や「侵略」の表現について国内外から批判され、最後は詰将棋で王を取られるような形で両方ともいちおう談話に入るには入りました。最初からきちんと「おわび」や「侵略」の言葉を入れることを前提に発表していれば、国内外への印象は大きく変わったと思います。問題はこの安倍談話の精神が今後、どういう形で具体的に実践されていくかで、私たちはそれを注視していかなければなりません。
──安倍談話は疑いの目で見られたのでしょうか。
率直に言えば、安倍さんに対する信頼が低くなっていることが原因です。8月6日に開かれた広島での「原爆の日」の式典で、安倍さんが非核三原則について言及しなかったことで、何か真意があるのではと疑われました。すると、9日の長崎での式典では一転して言及する。いま、安倍さんは何を言っても疑われる。そういう立場になったことを自覚しなければならない。国内ですらそうだから、外国からはなおさらです。安倍さん自身は村山談話を引き継ぐと何度も言っているのに、それが外国にしっかりと伝わっていない。
──現在、参議院で審議中の新しい安保法制についてはどう思いますか。
今国会での成立は見送るべきです。合憲か違憲かという基本的問題に、いまだ決着がついていません。今回の安保法制は、憲法の精神を超えているところが最大の問題です。国会での一番大事な論点は合憲か違憲かです。どこで決着をつけるのか。本来は最高裁が判断するけれど、国会審議中のものには最高裁は判断しない。以前は内閣法制局長官が出てきて判断すると、野党も引き下がることもありましたが、今は絶対に引き下がりません。
なぜかというと内閣法制局長官が政治的信用を失ってしまったからです。安倍さんが自分の主張に近い人を据えたときから内閣法制局は中立ではなくなってしまいました。行司役がおらず、いくら合憲と言っても社会が認めません。どうするか。もちろん憲法学者は譲りません。決着をつけるには一度、法案を引っ込めるのが一番いい。違憲か合憲かの議論に決着をつけてから、憲法に沿った内容の法案を出すべきというのが私の意見です。
(構成 本誌・西岡千史、長倉克枝)
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