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小林よしのり氏が斬る! 日本の進路を誤らせる「エセ保守」の深刻
http://diamond.jp/articles/-/76641
2015年8月15日 週刊ダイヤモンド編集部
中国、韓国との間に立ちはだかるのが、歴史認識問題だ。歴史認識を巡る相克を乗り越えるには、どうしたらいいのか。言論界でも活躍する漫画家の小林よしのり氏が、現在の日本人が持つ思想的背景にはどんな歴史観が根付いているのか、また日本人はこれからどんな国家観を持つべきかを聞いた。(インタビュー・構成/『週刊ダイヤモンド』論説委員 原 英次郎)
■1970年代に入ると日本に「加害者史観」が出てきた
――小林さんは日本人の歴史認識について、どう捉えていますか。
自分からお金を出して米軍基地を置いている国は、日本と韓国とクウェートだけである
わしが物心ついたときは、まだ戦争体験者が生きていた。テレビで見た『怪傑ハリマオ』のオープニングは、欧米人がアジア人を奴隷のようにムチ打って働かせているところに、ハリマオが拳銃を撃って欧米人をやっつけるところから始まる。
『0戦はやと』『ゼロ戦レッド』などの戦争漫画があったり、戦艦大和がグラビアになったりと、戦争体験者が大人になって物づくりをしていた頃だったので、戦争の感覚がテレビや漫画にあった。戦争に対する罪悪感がなかった。その後、原爆とか戦争被害者という部分が強調されるようになり、「戦争はよくない」と唱える声が増えて行った。
1970年代くらいになると、本田勝一の『中国の旅』などの影響で、日本人がどれだけ残酷なことをしたかという「加害者史観」が出てきた。人間の残虐さがどこまでやれるのか、のぞき見主義も手伝って、事実かどうか検証できない話もあるのに、世間はそうした加害者史観をすぐに丸ごと信じてしまった。
こばやし・よしのり
1953年生まれ。75年、大学在学中に描いた『東大一直線』でデビュー。90年代に『おぼっちゃまくん』が大ヒットし、思想・哲学の領域に踏み込んだ『ゴーマニズム宣言』もヒット。現在、本格的な戦争漫画『卑怯者の島』が発売中。
「こんなに好戦的な漫画を載せていいのか」とPTAが怒り始め、冒険活劇モノとしての戦争漫画がなくなって行った。代わりに、ガンダム、エヴァンゲリオンなどのロボット漫画に移行し、戦争に対する現実感は失われていった。戦争を扱ったドラマや映画はつくられても、「戦争は悲惨だ」「暗くて見る気がしない」という時代になり、子どもや若い人たちはどんどん戦争から遠ざかっていった。
――小林さんはいわゆる「自虐史観」に批判的でしたが、最近は右翼的なものにも批判的ですね。
わしが1990年代に『戦争論』を描いたころは、「自虐史観」「加害者史観」が世の主流だった。加害者史観が徹底的にエスカレートしていって、慰安婦問題なども出てくる。慰安婦を強制連行したという吉田清治の話は、まったくフィクションなのに、歴史の教科書に載りそうだというので、それはおかしいと、わしも「新しい歴史教科書をつくる会」の創設メンバーに参加した。
当時は、すでに自虐史観が浸透し切っていたから、若い人は戦争に行った自分の祖父たちに、「中国で虐殺してきたんだ」「なんて悪い人なんだ」と軽蔑感が芽生え、尊敬しない。祖父たちも、自分がどんな目で見られるかわからないから戦争の話ができない。世代が完全に分断されていた。
そこで『戦争論』を読むと、若い人たちはものすごく生々しく感じ、戦争を戦った日本軍の感覚にショックを受ける。「自分のじいちゃんは悪い奴じゃなかったんじゃないの」ということで、初めて祖父の戦争体験を聞こうという気持ちになり、両方の世代からどんどん感謝の手紙が寄せられた。
子どもの世代からは、「祖父が大嫌いで話も聞きたくなかったが、祖父の言うことが分かるようになった」という声が出た。また祖父母の世代からは、「漫画を読んだこともなかったのに、初めて『戦争論』で漫画を読んで、こんなこと描いてくれる人がいるのか、と感激した」という声が出た。つまり、両方の世代を繋げちゃったんだ。
■自虐史観を葬ったと思ったら今度は「エセ保守」が出て来た
自虐史観を一応は葬ったけれども、今度はそこからネットの時代が本格化する。たとえば、ネットの中の情報だけを集めた韓国を嫌う漫画が出てくる。在日朝鮮人に対する差別、排外主義が生まれてくる。自民党の議員までが、ネットで情報を仕入れるという状態になってくる。
つまり日本人というのは、船にたとえたら片方に寄ってしまう傾向がある。みんなが左舷に行ったので、沈没しないようにわしは右舷に行った。そうするとみんな右舷にやってきて、また傾いたので、今度はわしが「おかしいよ」と真中に行くと、右に行った奴がわしのことを左翼と呼ぶんだね。なかなか真ん中では止まらない。
ただ、社会が右傾化していると言っても、これ自体も本当は怪しい。実を言うと、国会で審議している安保法制も完全な「従米化」を意味している。アメリカに従うことが最大の目的。だから安保法制に正確なレッテルを貼ると、「戦争法案」ではなくて「従米法案」。もともとこの法案を夏までに通すとアメリカで約束してきた話で、これ自体が本当は国会を無視したとんでもない問題だ。
保守というのは、伝統と歴史を大切にする。伝統は歴史の中で先祖の知恵が集積され、醸成されて残ったバランス感覚だ。だから、歴史そのものを、知識として知らなければならない。歴史と伝統を損なったら保守ではない。
だから自民党の勉強会の場で、権力者が「俺たちに批判的な新聞は潰せ」と言ってしまうことは、バランス感覚を欠いた人たちで、憲法とは何か、立憲主義とは何かも知らない無知な政治家だ。我々国民の側は言論の自由を行使する「権利」を持っており、権力の側は言論の自由を守る「義務」を負っている。憲法の内容に不満があっても、立憲主義は絶対に守らなければならないもの。自民党はバランス感覚を失しており、政治は劣化している。
なぜ劣化したのかと言えば、ネットの影響がものすごく大きい。簡単に情報を仕入れて、何か知った気になる。ネットに載った情報を鵜呑みにして、安倍首相の秘書がネットに書いてあることをそのままフェイスブックに書いて、当事者から抗議されたこともあった。ネットに影響されているのは若い世代だけではなく、自民党議員も同じ。
ネットの情報は、嘘、インチキだらけなのに、確認もせずそのまま信じる人間がいる。沖縄の新聞を読んだこともないのに、「沖縄の新聞を潰せ」と言う。一部の人が劣化してオジサン的な暴言を吐くと思われているが、それは違う。いまや知識人から政権にいる政治家までもが、真偽が定かではないデタラメな情報によって、暴言を吐いているという状態だ。
■日中・日韓関係を何とかせよ 従米から脱し本当の主権回復を
――歴史認識を巡る中国、韓国との対立は、和解とはいかなくても、果たして何とかなるのでしょうか。
これ、絶対に何とかしなければいけない話で、最終的には戦争すればいいとう話ではない。商業的な観点で見て売れるからと言って、反中、反韓感情ばかりを煽る今の状態は全く健全ではない。
もちろん、韓国においても、中国においても、時の政権が生き残るために自国のナショナリズムを煽り、反日カードを自国内に向かって使う、つまり、国内の政治問題にするという側面はある。そうだとしても、韓国は日本に併合され、中国は日本に侵略されて、いたくプライドが傷ついているということも、同時に認めなければならない。
たとえば、イギリスのように自国から遠い場所にあるアフリカの現地に指導者を立てて、搾取する間接統治の方式ならば、それほど恨みが残らなかったと思う。ところが日本と中国、韓国は、近接した地域であり、文化もかなり入ってきたりして、お互いに影響しあってきた。そういう国を併合したり、侵略したりすると、近親憎悪的に恨みが残る。しかも日本は直接統治してしまったから、中国や韓国の人にとってみたら、より一層屈辱的に感じるだろう。
では、それをどう手当てするのかを考えると、ある意味、村山談話的な謝罪も仕方がないということを、そろそろ日本の保守の側も大人になって、考えないといけない。わしはそういう気がしている。だから、わしは今や村山談話にそんなに否定的ではなくなった。
■日本に真の外交主権はない 改憲して自衛隊を軍隊と認めよ
――小林さんがお考えになる、本当に独立した日本とは……。
外交主権を持つこと。だって「この戦争したくない」と言えなければどうしようもない。たとえば、安倍首相も自民党もいまだにイラク戦争を否定できない。わしはイラク戦争に反対と言い続けて、保守の側からバッシングされたが、これから先も同様なことはあり得る。「イラク戦争は間違っていました」と言うと、アメリカが間違ったことを命令してくることもあるという話になるから、そこを曖昧にしておきたいわけだ。
わしが言いたいのは、日本には本当の主権はないということで、ここが一番の問題。国家の体を成していない。自分で決められない。だから沖縄の基地の問題も解決できない。自分からお金を出して米軍基地を置いている国は、日本と韓国とクウェートしかない。フィリピンにしろ、他国はみな米国がお金を出して基地を置いている。
主権を回復するためには、自分の国は自分で守る。憲法を改正して、自衛隊は軍隊だと認める。そうしても、軍事費は言われているほどは増えない。沖縄に駐留している米軍に使っている思いやり予算が必要なくなるからだ。今のように自衛隊をあいまいな存在にしておく方が、国際法的にはよほど危ない。
国際法上、軍隊はネガティブ・リスト(原則として規制がない中で、例外として禁止すること)だ。たとえば「捕虜は虐待してはいけない」と決められているが、自衛隊は軍隊ではないから、捕虜として相手国に扱われるのか。また、自衛隊員が誤って民間人を殺してしまった場合、軍隊は敵を殺すことが認められているが、自衛隊には軍法会議がないため、国内法の殺人罪に問われる局面も出てくるのではないか。
自衛隊はポジティブ・リストでできることだけを書いていくので、ネガティブ・リストで動く米軍と一体になって戦場に行くのは無理がある。国際法上規定があやふやなままの状態でどんどん外に出て行くのは、自衛隊員にとっても危険すぎる。
ベトナム戦争でも、アフガン・イラク戦争でもアメリカは負けた。侵略して負けたわけだ。軍事大国が軍事小国に勝つことはない。軍事大国は、軍事力に経済をかけすぎて、疲弊していく。日本はそんなアメリカについて行かないように、憲法を改正して、「侵略戦争はしない」「外国の軍事基地は置かない」と憲法に書くべきだ。
実際に日本が戦争する可能性があるとしたら、北朝鮮しかない。中国とは外交でうまくやることに全力を注ぐ。基本的には竹島も尖閣もそこで意地を張り通すよりも、どこかで「棚上げ状態にできませんか」という提案をする。共同開発とか共同観光地とか、国家という枠組みを非常に曖昧にするような解決方法を探る。そういう外交的な発想があってもいいではないか。
安保法案の議論の際、昔とは国際安全環境が変わったと強調されていたが、それは恐怖を煽ってでっち上げているプロパガンダだ。スプラトリー諸島に中国が軍島をつくっているのは、フィリピン、インドネシア、ベトナムなど東南アジアの国々にしてみれば脅威だが、日本の存立危機にはつながらない。シーレーンのことを持ち出す人もいるが、万が一シーレーンが封鎖されたらそれは宣戦布告に当たる。
■そもそも中国にとって日本と戦争をするメリットはない
果たして、そこまでのことを中国はやるのか? そもそも日本と戦争をするメリットがない。日本は東南アジアの国と中国への共同監視体制をとればいい。日本の存立危機と関係ないところで集団的自衛権を行使して攻撃したら、それこそ戦争だ。
また、中国や北朝鮮が核兵器を保有しているから、日本も核武装して抑止力を持った方がいいのではないかという意見もある。北朝鮮に対しては抑止力になるかもしれないが、中国に対しては抑止力にならない。日本人は、冷戦時代から核の脅威という緊張感の中でずっと耐えて生きてきた。核を持たずとも、国民全員が「絶対に侵略は許さない」と思っているだけでいい。これが最大の抑止力になる。
――小林さんのお話は、自民党の右翼の人から見るとすごく左翼的に聞こえそうですが、小林さんは左翼とはどう違うのですか?
自衛隊を軍隊にすると言っているところが、一番違う。軍隊にして日本に主権を取り戻す。左翼の人たちが言っているのは、日米安保を前提にした平和主義であって、米国依存。安保反対と主張しても、安保が破棄されることがない前提で、沖縄の基地に反対する。保守も左翼も親に守ってもらっているニートみたいなものだ。親が見えているか、見えてないかの差ではないか。
あくまでも自国は自国の軍隊で守るのが基本。日本が米国から主権を取り戻し自立した上で、部分的に安保を結ぶのであればいいが、今のように米国に依存し切って言いなりになっている日本は「奴隷国家」であって、真の独立国ではない。米国が日本の自立を認めないのならば、世界に訴えればいい。日本は、正当なことを言い続けなければならない。
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