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自由民主党公式ホームページより
「戦後70年談話」で妥協しても何の痛痒も感じず⁉ 安倍晋三の浅く軽薄な思想は戦前の軍部そっくりだった
http://lite-ra.com/2015/08/post-1388.html
2015.08.14. リテラ
本日、閣議決定後、発表された安倍首相による戦後70年談話。いろいろすったもんだはあったが、一応、「おわび」や「侵略」などの言葉は盛り込まれた。
もともと安倍首相は日本会議や右派の意向丸出しに「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」の4点セットが入った村山談話を“上書き”すると意気込み、その後もなんとか、「侵略」「おわび」だけは拒否する方法はないか、と抵抗していた。それが、こういう結果になって、さぞ苦々しく感じているのではないか――。そう思っていたのだが、全国紙政治部デスクは苦笑しつつこう否定する。
「いや、安倍さんはそういうメンタリティの持ち主じゃない。むしろ、安保法制成立のために勇気ある決断をした、と自画自賛していると思いますよ。そもそも、安倍さんは戦争認識についても、ネトウヨ陰謀論を聞きかじったようなレベルで、たいした歴史観があるわけではない。ただ、謝るのは悔しいというプライドがあるだけ。そういう意味じゃ、今回も自分が『おわび』を表明したというより、『歴代内閣が痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた』と言ってるだけですからね。そういう形をとることでプライドを満足させたんでしょう」
たしかに、今回の談話を注意深く読むと、「侵略」「植民地支配」についても「二度とも用いてはならない」など、今後の決意表明という形で使い、巧妙に自分のプライドを守ろうとする姿勢が見え隠れする。
また、安倍首相は今回、「おわび」「侵略」を盛り込む代わりに「積極的平和主義」を強く打ち出した。これはつまり、歴史修正主義者の正体を隠して、対米追従路線を鮮明にしたということだろう。
実際、今回の談話で妥協したのも米国への配慮が一番大きかったというのは先の全国紙政治部デスクだ。
「メディアは公明党への配慮といっているが、むしろ、官邸が恐れていたのは、安倍首相の歴史認識に批判的な天皇陛下のお言葉と、米国の反応です。とくに米国についてはせっかく集団的自衛権行使を容認して、軍事一体化をはかっているのに、ここで『歴史修正主義』の烙印を押されてしまったら元も子もない。それで、安保法制で支持率が急落する中、有識者懇談会とあうんの呼吸で『侵略』を認めるべきだとの報告書を出してもらい『おわび』を入れることになった。そして、そのぶん、安保法制を意識して、積極的平和主義を打ち出すことで、自分のプライドを満足させたということでしょう」
なんともゲンキンな話だが、しかし、これが安倍晋三という政治家の本質だ。たいして深い考えもないまま勇ましい言葉を口走り、周囲がいかに論理的に説得をこころみても耳を傾けようとしない。ところが、自分に立場が危うくなったり、もっと強い圧力に直面すると、平気で態度を一変。今度は二枚舌を駆使してまったくちがうこといいはじめる。
実は、70年談話の少し前にも同じようなことがあった。8月6日の広島「原爆の日」式典でのあいさつで非核三原則に触れなかった問題だ。
安倍が挨拶をしたのが午前8時半ごろのこと。直後からネット上で非核三原則に触れなかったことが話題となって、批判の論調が増え始めた。すると安倍首相は、同日21時24分に首相官邸の公式フェイスブックにこう書き込んだのだ。
〈広島市原爆死没者慰霊式並びに平和記念式に出席し、多くの犠牲者の御霊に哀悼の誠を捧げました。平和に尊さに想いを致しながら、改めて、核兵器の惨禍が決して繰り返されることのないよう、非核三原則を堅持し、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会をリードしていくことを、お誓いしました。(後略)〉
実際の挨拶では言わなかった「非核三原則を堅持」の言葉を、わずか13時間後に修正して、さも言ったかのように広報したのだ。しかも、その一週間後、長崎では、ちゃっかり「非核三原則」を口にする厚顔ぶりだ。これは、ネットで「史上最速の歴史修正主義」だと話題になっている。
こうした安倍首相の姿勢について、まさしく昭和10年代の軍事指導者に酷似していると指摘するのが、昭和史研究の第一人者、保阪正康氏だ。近著『安倍首相の「歴史観」を問う』(講談社)で仔細に分析している。
たとえば、安保関連法案に関する安倍首相の答弁はふたつの論理を盾に進められていると保阪氏は言う。
〈そのひとつは、「国民の生命と財産を守るのが首相である私の役目」、もうひとつが「国家の安全を揺るがすか否かは首相の判断」という点である。ことごとく「私が中心」という発想である。首相が中心になることにより、行政府の責任者が統帥権を自在にふるえるといった錯誤がこれらに二つの論理の背景には見え隠れしている〉(同書より。以下同)
〈安倍首相の発言を聞いているとわかるが、実はこの首相は相手方の質問や疑問に真正面から答えるのではなく、相手の言葉尻をとらえて開き直り、その一方で「問題を整理すると」とか「一般に」といった言い方で、論議そのものを避けているのが特徴だ。いわば相手に丁寧に説明しようとする姿勢がまったくないのである〉
こうした態度は戦前の陸軍の軍事指導部の幕僚たちがたとえば国家総動員法などの審議のときに見せた開き直りとソックリだという。このときも、在留邦人の保護や石油資源の供給が不安定な状態から脱するための自存自衛の策だという言葉が連発された。そのことに国会議員が疑問を口にすると、軍人は「黙れ!」と怒鳴った。つい最近、まさに安保法案の国会審議の現場であったような場面が、戦前にもそのまま行われていたという話である。
昭和10年代の軍人の議会答弁には3つの特徴があると保阪氏は言う。
ひとつは、具体的な説明にはかならず大仰な形容句がつく。「皇国二千六百年、戦って負けたことのない皇軍は…」、あるいは「在留邦人の安全と生命を守るのが軍人の役目」「大御心を体して」などの語を乱発して、相手の質問にまともに答えない。これは、「日本を取り巻く安全保障環境は激変し、もはや一国で平和は守れない」とか、「積極的平和主義」「日本を取り戻す」「美しい国」といった麗句や結論を先に口にするのと同根だという。
第二は、まともな立論がされていないので、その説明が5分と持たない。東條英機が首相、陸相として答弁に立ち、「戦争が終わったとき」というのはどういうときか、と戦時時限立法について尋ねられると、法律上の答弁をしなければいけないのに、「平和が回復したとき」と答えたことなどがその典型だという。安倍首相や中谷防衛相の答弁を聞く限りでも、まともな立論ができているとは思えないし、自民党が安保法案の説明のためにつくったアニメ「教えてヒゲの隊長」がパロディ版であっという間に論破されているのもそのためだ。
そして、三番目の特徴は、軍人は軍事に偏った知識しか身につけておらず、社会科学、人文科学といった分野はまったくダメだったということだ。言葉に歴史的背景や哲学的意味合いが込められていない。安倍首相の「憲法は占領憲法、押しつけ憲法だ」「靖国神社はアメリカ国民にとってのアーリントン墓地と同じです」などといった言い方がこれにあたる。
保阪氏はこれを「形容句」「立論不足」「耳学問」と言っている。安倍首相の答弁の枠組みは、当時の軍事指導者のそれそのものだとも。なかでもひどいのが「耳学問」による半可通の歴史観だ。なにより事実に基づき歴史を記録することを旨としている保阪氏からすると、これは耐え難い歴史への冒涜だという。
〈安倍首相の歴史観はもともとかなりあやふやな論にもとづいている。すでにメディアにも紹介されているのだが、たとえば「侵略には学問上の定義はない」と言ってみたり、「首相として国のために生命を捨てた人を追悼するのはあたりまえ」と開き直ったり、はては平気で「わが軍は…」と弁じたりもする。はなはだしい例では、アメリカは原爆投下したあとに、さあこれを受け入れろと言ってポツダム宣言をわれわれの国に押し付けた、など歴史的事実の基本をまったく理解していない発言を平然と行ったりもしている〉
〈首相の歴史観を耳にしていると、戦後民主主義をどのように捉えているのだろうかと疑問を覚える。保守でも革新でもいいが、例えば自民党の先達たちがいかに呻吟しながら戦後社会を作り上げてきたか、それを思う知的関心、畏敬の念を示す礼節、さらには先達の歩んだ道を点検しつつ教訓を汲み取っていく姿勢、それらに欠けているといっていいのではないか〉
〈ここで私は、現憲法を作成するために当時の政治指導者がどのような努力を払ったか、単に占領憲法というだけでは彼らを侮辱していないかと指摘しておきたい〉
安倍政権ほど、かつて自民党の重鎮とも呼ばれた先輩OBたちから批判されている政権はないのではないか。
こうした歴史観の欠如や立論不足から、国会での審議がかつて例のないほどまったく論戦の体をなさないまま、惨憺たる状況で続いているというのである。特定秘密保護法については「とにかく国の秘密は守らなければならない」、安保法案については「とにかく日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているのだからやらなければならない」と、プロセスや道程をすっ飛ばして、結論のみが声高に語られるのが、この政権の、そしてこの安倍首相の特徴なのだ。
基本的な勉強ができていない。そのうえ理念も信念もない。支持者や周囲に言われただけで、すぐに前言を翻す。そんな政治家がリーダーとして戦後日本が伝統的に守ってきた安全保障政策を根底から覆そうとしていることの恐ろしさを、我々もいま一度、しっかり認識する必要がありそうだ。
(野尻民夫)
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戦後70年の安倍談話を発表 「謝罪続ける宿命を背負わせてはならない」
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