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2015年 08月 13日
元記者などがつくる「歴代首相に安倍首相への提言を要請するマスコミOBの会」は11日、歴代首相5人の提言を公表した。
同会は、7月に首相経験者12人に要請文を送ったところ、首相当時、自民党に所属していなかった5人、細川護煕、羽田孜、村山富市、鳩山由紀夫、菅直人の5氏が応じたとのこと。<あら?野田くんは応じなかったのね。^^;>
同会は、この提言を首相官邸に郵送するという。(・・)
でもって、この5人の提言を2回に分けてアップする。(**)
(産経新聞15年8月12日の記事より転載)
* * * * *
『羽田元首相の提言「安倍首相から日本を守れ」
「戦争をしない」 これこそ、憲法の最高理念。平和憲法の精神が、今日の平和と繁栄の基礎を築いた。 特に、9条は、唯一の被爆国である日本の「世界へ向けての平和宣言」であり、二度と過ちを繰り返さないという国際社会への約束でもある。海外派兵を認める集団的自衛権は、絶対に認められない。
安倍首相から日本を守ろう。』
* * * *
『村山富市元首相の提言「国民軽視の姿勢、許せない」
安全保障関連法案に反対するマスコミOB有志が発表した村山富市元首相の提言の主な内容は次の通り。
1、圧倒的多数の憲法学者が今回の安保関連法案は憲法に反すると証言している。また政府が提出する法律案の是非に携わってきた歴代法制局長官が、この法案は違憲であると証言している。
これまでの歴代自民党政府も集団的自衛権は憲法が認めないとして、現行憲法は守られてきた。
にもかかわらず安倍首相は勝手に憲法解釈を変え、閣議決定により合憲として国会に提出した。こうした立憲主義を無視した手法は問題だ。
2、国会提出以降、国民はいまだかつてない国会の審議に注目しているが、首相は野党の質問にまともに回答するのではなく、一方的に長々としゃべりたいことをしゃべっているだけで、問題点が解明されない。
審議した時間が問題ではなく、審議を通して問題点が解明され、国民にも是非についてある程度理解ができたかどうかが問題である。首相自らが、「まだ理解されていない」と認めながら、審議時間だけを取り上げて、質疑を打ち切り強行採決を行い、多くの野党が欠席のまま衆院本会議で採決した。議会制民主主義を無視した横暴なやり方は認められない。
3、炎天下の中、連日、「憲法を守れ」、「戦争反対」を叫んで国会周辺のデモを行っている学生や若い人たち、子供連れの方々、障害をお持ちの方や車いすのご老人などがおられる。「日本はこれからどうなるのか」、「再び戦争をすることになるのか」、空襲を経験された国民の皆さんは「原子力発電所を数多く持っている日本の国が空爆されたらどうなるのか?」、「戦後70年間戦争に加担することなく平和国家としての大道を歩き続けてきた日本がなぜ?」と居ても立ってもいられない気持ちで立ち上がり叫んでいる。
最近の世論調査では、安倍内閣の支持率が下がり不支持率が上回っている。こうした現状も国民の声も無視して力で押し通し、法案さえ通れば最後は世論もおさまると甘く見ているが、こうした国民軽視の姿勢は許せない。
4、現状の国会の状況からするとあるいは数の力で押し切られるやもしれない。参院で議決できなければ「60日条項」を発動して衆院で再議決すれば良いと考えているようだ。
国民の声や意思を甘く見てはいけない。来年の参院選から衆院の解散・総選挙まで展望して勝負を決することが必要だ。主権者である国民が日本のあり方を決めるのだ。あきらめてはいけない。』
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『細川護煕元首相の提言「立憲主義への畏敬の念欠如」
安全保障関連法案に反対するマスコミOB有志が発表した細川護煕元首相の提言の主な内容は次の通り。
1、安保法制関連法案は廃案にすべき
廃案にすべきだと考える理由は、ひとつは法案の内容の点からであり、ひとつは手続きの点からである。
2、内容上の問題点
(1)今の日本の発展と国際的地位は平和憲法のたまもの
戦後日本の発展と国際的地位の獲得は、平和国家としての立場によってもたらされたものであり、かつ平和国家日本は、何よりも憲法9条をもつ平和憲法によって実現された。われわれは、平和憲法をもったことの意義を十分わきまえなければならない。
憲法9条をもつ平和憲法を変えることは(解釈改憲によるとしても)、世界に確立した平和国家日本のイメージを損なう危険があるばかりでなく、日本人自身にとっても、その目指すべき将来の国家像を混乱させる。
(2)集団的自衛権の必要性への疑問
安倍首相は、テレビ番組で、集団的自衛権について、隣の「米国家」が火事になって「日本家」に延焼しそうになったときに、日本の消防士が消火に行くようなものだと模型を使って説明した。しかし火災の消火と集団的自衛権の行使は、全く異なる。消火は人助けで美談の部類だが、集団的自衛権の行使は第三国に武力を行使することであり、その国の人員を殺傷し、場合によってはわが国の人員にも犠牲者が出ることになる。国民に対して集団的自衛権の行使を火災の消火の美談に譬(たと)えて説明することは、武力の行使や戦争の悲惨さから目をそらさせることになる。
また安倍首相は、集団的自衛権の行使が必要な事例として、朝鮮半島有事の際に韓国から避難する日本人を乗せた米艦を自衛隊が守る場合や、原油輸出の要衝であるホルムズ海峡がイランによって機雷封鎖された場合を挙げている。しかし韓国から避難する日本人を米艦で輸送するというのは、かつて米国から断られた案であるし、そもそも日本人を護(まも)るのなら個別的自衛権の範囲で済む。イランについては、核開発疑惑に関わる欧米との合意が成立して緊張緩和に向かうことになったし、イランのナザルアハリ駐日大使も「ホルムズ海峡の封鎖がなぜ必要なのか」と疑問を呈している。
結局、これだけの無理を押し通して、集団的自衛権の行使を認めなければならない理由は不明であり、もし個別的自衛権によって対処できない具体的事態があるというのであれば、冷静な環境のもとで幅広く国民の意見を取り入れつつ、手続きを尽くして検討すべきである。いずれにしても、日本は、海外での武力行使はダメという一線だけは、これからも護っていくべきだ。
(下につづく)
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(3)概念の曖昧さと政府の恣意(しい)的運用の可能性
首相以下政府の説明も納得のいかないものだが、肝心の法案の規定も曖昧さを含んでいる。
例えば集団的自衛権行使のいわゆる3要件のひとつに「存立危機事態」があるが、しかし、ここには「武力攻撃事態」のような外部から客観的に判定可能な指標がない。この「存立危機事態」に該当することを判断し、自衛隊を動かすのは時の政府だから、従ってホルムズ海峡の機雷封鎖が存立危機事態に当たるとする安倍首相のように、時の首相や政府によって集団的自衛権はいかようにも行使されることになり、恣意的運用の歯止めがない。
憲法前文に、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」と述べられているように、かつての大戦は歯止めのない政府の行為によってもたらされ、その反省の上に今日の日本があることを忘れてはならない。今回の安保法制は、日本と日本人の運命を再び「政府の行為」に委ねる危険な法制である。
3、手続き上の問題点
(1)立憲主義に対する畏敬を
今回の安保法制の最大の問題点は、あまりにも立憲主義が軽んじられていることである。安倍首相は、よく欧米型の統治システムを有する国を「価値観を共有する国」と呼ぶ。その内容は自由、民主主義、法の支配などだが、それらを統一する近代国家の最大の柱が立憲主義である。
安倍首相が、当初憲法改正を容易にするための「改憲条項」の改正を試み、それが行き詰まると閣議決定による「解釈改憲」に切り替えた経過は、立憲主義に対する畏敬の念の欠如を物語っている。内閣法制局を自分の意見に従わせるための異例の長官人事、大多数の憲法学者の違憲論の無視、集団的自衛権行使の容認の論拠として砂川判決をもってくる牽強付会(けんきょうふかい)などは、いずれも同根の手法である。
もし安倍首相が、安全保障環境の変化などからして本当に集団的自衛権の行使が必要だと感じ、国民を説得できるだけの自信があるなら、堂々と憲法改正から手を付けるべきだ。このまま違憲の疑いの強い安保法制を成立させるなら、すべての法律、すべての統治は憲法によって律せられるという立憲主義は、わが国では崩壊してしまうだろう。
(2)重大な問題ほど丁寧な手続きを
今回の法案が成立すれば、わが国の安全保障政策にとっての大きな曲がり角になる。かつ報道機関の調査による国民の反対も強く、法案審議が進むにつれその傾向は強まっている。そういう問題であればあるほど、仮にどうしても成立させなければならないとすれば、丁寧な手続きが必要である。例えば消費税の導入には10年を要し、PKO法案には2年を要した。私が関わった政治改革も区割りの仕上がりまで含めると6年の歳月と実に18回の国会を要している。
反対意見の者や野党との対話も必要である。上述の法案はいずれも野党との綿密な対話の上に成立した。私も、政治改革で河野(洋平自民党)総裁とトップ会談を重ね、参議院での否決後は無論、多数で可決する前の衆議院においても、河野総裁と会談し、合意には至らなかったものの、その意見もくんだ修正を行って参議院に送った。
これに対して国会審議で首相がやじを飛ばし、野党幹部の質問に「○○さん、あなたは間違っているのです」と答弁するのは、あまりにも唯我独尊であり、合意形成を図るべき政治に禍根を残すことになろう。そのような手法で、違憲の疑いの強い安保法制を成立させることは、わが国の国益を損なうことになると言わざるを得ない。』
THANKS
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