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女性週刊誌のテーマといえば、芸能ニュースと、健康や家計のやりくりといった生活関連型の話題が中心だろう。ところが、この夏、安保法制の特集記事が立て続けに掲載されている。読者の強い関心に後押しされた結果だという。
自民党の重鎮議員は、日頃読むことのなかった女性週刊誌に、頻繁に目を通すようになった。安保法制が取り上げられることが増えたからだ。当初は「なぜ女性誌が」と思ったものの、記事を読むうちに「相当根深い国民の不安がある」と実感するようになった。自民党の女性中堅議員も「党内で『女性週刊誌対策』をしようという声もある」と明かす。
早くから安保法制について特集してきたのは「女性自身」(光文社)だ。主な読者は40〜50代の女性。健康や美容、税金の話など生活に直結するテーマに軸足を置いてきたが、福島の原発事故以降、「子供を守りたい」という読者から、社会問題を考える記事を求める声が増え始めた。
昨年3月、作家の瀬戸内寂聴さんと俳優の吉永小百合さんが誌上で対談し、戦争や安倍政権への危惧を語って大きな反響を呼んだ。「あの対談に背中を押された」と同誌の田辺浩司編集長。「女性読者は頭でっかちなものを嫌うので、普段から着地点を決めて取材しないよう気をつけている。安保を特集しようと最初から思っていたわけではなく、取材する中で自然と企画が生まれていった」
瀬戸内さんの安保法制への抗議行動を特集した「寂聴さん『このままでは戦争に…』」(今年7月7・14日合併号)は、読者アンケートの人気ランキング1位に。「徴兵制がいつか導入されるのでは」と懸念する声の多さが特に目立つという。普段とは違う読者層からもSNSなどを通じて「応援する」という声が届く。
「週刊女性」(主婦と生活社)が安保特集を始めたのも、読者の要望が強かったからだ。寺田文一編集長は「私たちはもともとは政権に批判的な立場ではなかった。法案が『理解できない』という読者の声があって始めた」と話す。
7月14日号では「『戦争法案』とニッポンの行方」と題し、10ページにわたって法案の中身を特集。法案への反対を公言する自民党の村上誠一郎衆院議員や、共産党の志位和夫委員長のインタビューも掲載した。この号は実売率が平均より3〜4ポイント上がり、追加注文もあった。寺田文一編集長は「特集を支持する声が多くて驚いた。韓流スターや芸能人のニュース以上に反応が来た」と話す。手紙や電話で「普段は美容院で斜め読みするが、今回は帰りに買った」「参加したいから、各地のデモの日程を知りたい」といった声も多数寄せられたという。
その後も、反響に後押しされる形で、7月28日号は「安保法制とブラック国家ニッポン」、8月4日号は「安保法案強行採決 安倍首相をどう懲らしめようか」、11日号は「安倍首相はどうして法案成立にこだわるのか」と、ほぼ毎号特集を続け、8月11日号では「これからも安保関連法案についてしつこく取材・報道していきます」と宣言した。寺田編集長は「読者の女性たちは非常に冷静に説明を求めている。一過性のブームではない。こういう人がますます増えると思う」。
女性誌では、ティーン向けの「セブンティーン」(集英社)も、1日発売の9月号で「17sで考えよう“戦後70年”」を特集。憲法学者の木村草太さんが10代の女性たちと、憲法9条や戦争について対談した。子育て世代の女性誌「VERY」(光文社)も昨年の3月号で憲法を特集するなど、女性誌が政治課題を扱うことは当たり前になりつつある。
7月の自民党議員の勉強会でも講師を務めた御厨貴・東大名誉教授(政治学)は「政権中枢にいる人からも『安保法制に反対する妻を説得できない』と聞いた。『国家のことは女子供にはわからない』と思ってきた男たちに女性たちが復讐(ふくしゅう)する構図にも見える」と指摘。「将来、徴兵制が導入されるのではないかという懸念が特に強く、女性や高齢者、若者の政治への関心は今後も高まる。政権にとっては脅威だが、そうした人々を説得できるだけの論理を、果たして政権側は用意出来るだろうか」(守真弓、竹内誠人)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150810-00000019-asahi-soci
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