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「戦争を拒否する強さをもった人間を育てるために戦後教育が行われてきたはずです」〜若者たちを「利己的」と批判した議員にSEALDs KANSAI女子が反論!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/257253
2015.08.10 IWJ Independent Web Journal
「教え子に、人を憎み、差別し、殺し、殺されることを正義として教え、多様な意見を封殺してしまったという反省の上に、戦後教育の70年間の歩みがあります。戦争に行って人を殺す人間ではなく、戦争を拒否する強さをもった人間を育てるために、戦後教育が行われてきたはずです」――。
関東の学生たちが中心となって結成された「SEALDs」に次いで立ち上がった、自由と民主主義のための関西学生緊急行動「SEALDs KANSAI」。2015年6月21日に京都で行なったデモを皮切りに、毎週金曜日、京都や大阪など関西各所で街宣アピールを行ってきた。8月7日には場所を初めて神戸に移して抗議行動を実施。JR元町駅前にはのべ700人の市民が集まり、学者や学生のスピーチに耳を傾けた。
この日、スピーチに立った女子大生の出口さんは、自民党の武藤貴也議員が「戦争に行きたくない、という利己的な主張する若者が出てきたのは、戦後教育のせいだ」と発言したことに反論。「あなたのような発言をする大人を生み出してしまったことこそ、戦後教育の敗北です」と厳しく批判したうえで、次のように続けた。
「それでも私は、ここで、一つだけ断言できることがあります。私が今こうやって、社会で起こっていることを自分に引きつけて考えて、持ち得る想像力を総動員し、自分の意見を、言葉を持つことができているのは、紛れもなく、武藤議員が失敗だと言った戦後教育のおかげです」
以下、女子大生・出口さんスピーチ全文を掲載する。
■抗議の全編動画(出口さんのスピーチは開始53分からとなります)
Broadcast live streaming video on Ustream
・スピーチ 学生ほか/西谷修氏(学者の会呼びかけ人、立教大学特任教授・東京外国語大学名誉教授、哲学・思想史)/柏木宏氏(大阪市立大学教授、NPOマネジメント)/水岡俊一氏(参議院議員、民主党)/井口克郎氏(神戸大学専任講師、社会保障)
・インタビュー 高山佳奈子氏(学者の会呼びかけ人、京都大学教授、法学)
・日時 2015年8月7日(金)19:15〜
・場所 JR元町駅東改札口前(神戸市中央区)
・主催 SEALDs KANSAI(自由と民主主義のための関西学生緊急行動)
■女子大生・出口さんのスピーチ全文
「こんばんは。私は、現政権が成立を目指す、安全保障関連法案に反対しています。
国会での審議の中で、国民の理解が深まれば深まるほど、法案の矛盾や欠陥が次々と明らかになり、国民からの反対の声は、今や無視できないほど大きなものとなっています。
そんな中、先日、自民党の武藤貴也議員が『SEALDs』を名指しして、こう言いました。
『戦争に行きたくない、という利己的な主張する若者が出てきたのは、戦後教育のせいだ』と。しかし、私から言わせると、武藤議員、あなたのような発言をする大人を生み出してしまったこと。そして、そのような人間を政治家にしてしまったことこそが戦後教育の敗北です。
彼だけではありません。国会での政府与党の言葉使いや、審議中、居眠りをする大勢の議員や、ごまかしばかりの答弁を聞いていて、こんないい加減な人たちが私たちの代表だということが本当に恥ずかしいし、こんな人たちがこの国の権力者であるということに私は恐怖を覚えました。
他にもあります。
今、日本の政府与党は、立憲主義や民主主義という近代政治の最低限のルールをよく分かっていない人が沢山いるということを知りました。
憲法に従わなければならないはずの権力者が、自分の都合の良いように憲法の解釈を変えて、平気な顔をしているのを見て呆れました。
投票率は、戦後最低を更新し続け、自分の生きる社会の在り方を決める権利を自分から捨て、誰かの判断や決定に身を委ねて、安穏としている大人が多いことを知りました。
気に食わない意見や異なる意見に対しては、耳を傾けるのではなく、叩き潰せとか、やじを飛ばしたりする大人が、国会の椅子に座っていることを知りました。
人間の命に関わる重要な法案の話を、大げさだと笑い、まじめに話し合おうとしない大人がいることを知りました。
先の大戦は過ちだったと、未だに認めることができない人が、この国のトップに立っているということを知りました。
私は、戦後教育はこういう大人を生み出さないためにあったはずだと思います。
教え子に、人を憎み、差別し、殺し、殺されることを正義として教え、多様な意見を封殺してしまったという反省の上に、戦後教育の70年間の歩みがあります。戦争に行って人を殺す人間ではなく、戦争を拒否する強さをもった人間を育てるために、戦後教育が行われてきたはずです。
私は学校でいろんなことを学びました。沢山の友達と学びながら、何通りもの価値観や生き方に出会いました。自分の気持ちをうまく伝えることができなくて、通じ合えないもどかしさに苛立つこともあったけれど、私が言葉をつくして、相手に心を開けば、相手も自分に向き合ってくれるということを知り、そんな時は少し嬉しくなりました。
いろんな科目を勉強する中で、人類の歴史とは対立と争いを繰り返しながらも、多様な他者と共存する道を願い、模索し、実践してきた歩みがあるということも知りました。
自由というのは、みんながルールを無視して、勝手気ままにふるまうことではないということを知ったし、個人主義と利己主義の違いも知りました。
自分の意見を持ち、それを自由に表現することの喜びと難しさを知りました。
教育の達成度を評価することはとても難しいし、70年間の教育の歴史を『戦後教育』という一言でくくってしまうのは、あまりに乱暴かもしれません。それでも私は、ここで一つだけ断言できることがあります。
私が今こうやって、社会で起こっていることを自分に引きつけて考えて、持ち得る想像力を総動員し、自分の意見を、言葉を持つことができているのは、紛れもなく武藤議員が失敗だと言った戦後教育のおかげです。
私を全力で育ててくれた大人や、私と一緒に学んでくれた友達のおかげです。
すべての人間は誰かが手塩にかけて苦労して育てた子供です。私の母親はいつも私に言います。『あんたが、幸せに生きていてくれさえいれれば、そんでええねん』。そう言います。
すべての人間は幸せに生きる権利があるし、幸せに生きてほしいと願われている存在です。
そんな人間を、戦場へ駆り出したり、人を殺させたりするのは絶対におかしいです。
安全保障関連法案は、安全とか平和とか、そういう言葉でコーティングされていますが、この法案は地球上のどこでも他国の戦争へ参加できるようにする法律です。
武力の行使の歯止めは曖昧で、政府の中でさえ認識は一致していません。
戦争を止めさせるための仲介ではなく、戦争に積極的に加勢して、人殺しの手伝いをするような姿勢を『平和主義』と呼ぶことを私は認めません。
彼らは今、国会の中で『核兵器は武器ではなく弾薬だから』とか『自衛のための戦争だから仕方ない』とか、言葉遊びのようなことばかりをしています。しかし、実際にその犠牲になってしまう人々にとって、武器の分類や戦争の大義名分は、一体何の意味があるというのでしょう。
政府与党の答弁では、実際にそれを使ったらどうなるのか、人間にどんな影響が及ぼされるのか、という事実、現実が完全に抜け落ちているし、想像力が著しく欠如しているとしか思えません。
私は人間です。
『べ平連』(ベトナムに平和を!市民連合)の小田実さんの言葉を借りるなら、『権力や軍事力を行使する大きな人間ではなく、戦争の被害を真っ先に受けるような小さな人間』です。
私はそんな小さな人間の一人として、この安全保障関連法案=戦争法案に反対します。
今まで人類は何度も過ちを犯し、命を奪ってしまいました。過去に起きてしまったことは変えられません。でも、過去をどう捉え、意味づけするか、過去をいかにして自分に引きつけて考えるか、それは、今、現在を生きる私たちに決める余地があります。
そして、過去を変えることはできないけれど、私たち次第で、この先の未来をいくらでも良い方向に変えることは可能です。
70年前、多くの大人達が味わった後悔を、私はまた味わいたいとは思いません。
70年前多くの人が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、憎しみを、痛みを、私はまた味わいたいとは思わないし、誰かに味わってほしいとも思いません。
だから、私は絶対に止めたいんです。
本当に止めなければならないと思っています。
だから、私はどこにいても、毎日、声を上げ続けたいと思っています。
一緒に頑張りましょう。
2015年8月7日 私は戦争法案に反対します」
(取材:萩崎茂、記事:沼沢純矢・ぎぎまき)
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