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長崎平和祈念式典で献花する参列者=9日午前10時59分、長崎市の平和公園、長沢幹城撮影 :朝日新聞
安保法案「許せない」=「平和への誓い」谷口さん−長崎平和祈念式典
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015080900058&g=soc
2015/08/09-11:51 時事通信
「平和への誓い」を読み上げる被爆者代表の谷口稜曄さん=9日午前、長崎市の平和公園
長崎市の平和祈念式典で、被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた谷口稜曄さん(86)。生死の境をさまよった被爆体験に加え、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案に言及し、「許すことはできない」と訴えた。
谷口さんは当時16歳で、郵便配達の途中、爆心地から1.8キロの長崎市住吉町にいた。背後で虹のような光があり、強烈な爆風で吹き飛ばされて道路にたたき付けられた。しばらくして起き上がると、左手は肩から手の先までボロ布を下げたように、皮膚が垂れ下がっていた。
着ていた服がなくなり、背中一面に大やけどを負った。そのため、3年7カ月の入院生活のうち1年9カ月はうつぶせの状態で生死の境をさまよった。床ずれになり、今も胸がえぐられた状態で、肺活量も健康な人の半分程度しかない。
戦後は、核兵器廃絶と被爆者援護を求める運動を引っ張った。今年4月には、核拡散防止条約(NPT)再検討会議に先立ち、米国で核兵器廃絶を訴えた。谷口さんは「世界の国々で核兵器廃絶の運動は高まっている」と指摘する。
近年は体調を崩しがちで、今年7月には一時入院もした。しかし、2回目となる「平和への誓い」は、いままでの被爆者運動の「集大成」という覚悟で引き受けた。
国会で審議されている安全保障関連法案について、「被爆者をはじめ平和を願う多くの人々が積み上げてきた核兵器廃絶の運動、思いを根底から覆そうとするもの」と批判する。「戦争のない、核兵器のない世界の実現のため、生きている限り、戦争と原爆被害の生き証人の1人として、その実相を世界中に語り続ける」と誓った。
平和祈念式典で、献水する遺族代表ら=9日午前、長崎市の平和公園
長崎平和祈念式典 平和への誓い 谷口稜曄 2015年8月9日
原爆被害の生き証人として語り続ける 平和への誓い全文
http://www.asahi.com/articles/ASH867TTCH86TOLB01B.html
2015年8月9日11時48分 朝日新聞
「平和への誓い」を読み上げる谷口稜曄さん=9日午前11時14分、長崎市の平和公園、長沢幹城撮影
70年前のこの日、この上空に投下されたアメリカの原爆によって、一瞬にして7万余の人々が殺されました。真っ黒く焼け焦げた死体。倒壊した建物の下から助けを求める声。肉はちぎれ、ぶらさがり、腸が露出している人。かぼちゃのように膨れあがった顔。眼(め)が飛び出している人。水を求め浦上川で命絶えた人々の群れ。この浦上の地は、一晩中火の海でした。地獄でした。
地獄はその後も続きました。火傷(やけど)や怪我(けが)もなかった人々が、肉親を捜して爆心地をさまよった人々が、救援・救護に駆け付けた人々が、突然体中に紫斑が出、血を吐きながら、死んでいきました。
70年前のこの日、私は16才。郵便配達をしていました。爆心地から1・8キロの住吉町を自転車で走っていた時でした。突然、背後から虹のような光が目に映り、強烈な爆風で吹き飛ばされ道路に叩(たた)きつけられました。
しばらくして起き上がってみると、私の左手は肩から手の先までボロ布を下げたように、皮膚が垂れ下がっていました。背中に手を当てると着ていた物は何もなくヌルヌルと焼けただれた皮膚がべっとり付いてきました。不思議なことに、傷からは一滴の血も出ず、痛みも全く感じませんでした。
それから2晩山の中で過ごし、3日目の朝やっと救助されました。3年7か月の病院生活、その内の1年9か月は背中一面大火傷のため、うつ伏せのままで死の淵(ふち)をさまよいました。
そのため私の胸は床擦れで骨まで腐りました。今でも胸は深くえぐり取ったようになり、肋骨(ろっこつ)の間から心臓の動いているのが見えます。肺活量は人の半分近くだと言われています。
かろうじて生き残った者も、暮らしと健康を破壊され、病気との闘い、国の援護のないまま、12年間放置されました。アメリカのビキニ水爆実験の被害によって高まった原水爆禁止運動によって励まされた私たち被爆者は、1956年に被爆者の組織を立ち上げることができたのです。あの日、死体の山に入らなかった私は、被爆者の運動の中で生きてくることができました。
戦後日本は再び戦争はしない、武器は持たないと、世界に公約した「憲法」が制定されました。しかし、今集団的自衛権の行使容認を押しつけ、憲法改正を押し進め、戦時中の時代に逆戻りしようとしています。今政府が進めようとしている戦争につながる安保法案は、被爆者を始め平和を願う多くの人々が積み上げてきた核兵器廃絶の運動、思いを根底から覆そうとするもので、許すことはできません。
核兵器は残虐で人道に反する兵器です。廃絶すべきだということが、世界の圧倒的な声になっています。
私はこの70年の間に倒れた多くの仲間の遺志を引き継ぎ、戦争のない、核兵器のない世界の実現のため、生きている限り、戦争と原爆被害の生き証人の一人として、その実相を世界中に語り続けることを、平和を願うすべての皆さんの前で心から誓います。
平成27年8月9日
被爆者代表 谷口稜曄(すみてる)
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