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潮目は変わったか?
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2015-08-08 反戦な家づくり
潮目が変わった、と口にする人が増えた。
たしかに、様々な状況が安倍晋三を追い込んでいるように見える。
これを潮目と言うのならば、確かに潮目は変わったと言えるだろう。
しかし、潮目が変わって、どこに向かって流れようとしているのか、を誰も言わない。
安倍晋三の極右路線、極端な独裁者ぶりは、さすがに嫌気をさそい、支持率は急落した。
沖縄に対しては1ヶ月間の休戦協定を申し出た。
岩手県知事選は自民系候補が出馬取りやめ。
ついでに、新国立競技場の白紙撤回。
これらは、わずかな成果といえども、これまでの安倍独裁を押し返している印象は強い。
潮目が変わったちょうどこの時期、彗星のように現れたSEALDSなどの団体が、国会前や全国でのデモや集会を主導し、メディアにも好意的に取り上げられた。
こうした運動に参加している人たちの目には、今まさに潮目が変わったのは、新しい運動の成果だと映っていることだろう。
国民ひとり一人が声を上げるという、民主主義の「み」の字を忘れた日本人にとって、どんな形であれ直接行動の経験を積み上げるのは、かけがえのない経験だ。
全共闘世代より若い世代にとって、デモや集会や街頭宣伝などは、自分の社会的なポジションを失ってしまうような恐怖の対象だったはずだ。それが、3.11以降の脱原発と、今回の反戦争法案で、世の空気が変わってきた。
それは、窒息していた日本人の肺に、ほんの少し風穴が空いた画期的な出来事だ。
しかし、かけがえのない画期的な動きではあっても、それはまだ端緒であることも事実。
彼我の力の差は、まだあまりにも大きいと言うことも忘れてはいけない。
残念ながら、今の程度の運動で、安倍政権が方針転換することはあり得ない。
支持率急落とは言え、まだ30%以上を維持しており、自民党の政党支持率は余裕のぶっちぎりである。
安倍晋三という独裁キャラを切り捨てれば、自民党にとって、これまでと大きく状況は変わっていない。
これから民主主義を作っていく長い工程を考える時、冷静に「イマココ」を認識することは重要。
いたずらに成果が出たと思い込むと、運動としては寿命が縮むことになりかねない。
これは、集会などの人数を盛るべきでない、という話にも通じる。
では、なぜ潮目が変わったのか、変わったように見えるのか。
■■
敵は一枚岩ではない、ということを知っておきたい。
無理筋で金儲けしたい という点ではかわりは無いけれど、その方法が違う。
戦争を主な収入源にするグループと、金融を主な収入源にするグループがある。
戦争グループは、国家に戦争をやらせ、巨額の武器弾薬を使わせ、「民主化」の名の下に植民地化した地域の利権を独占する。
第二次大戦以来の、米国を使った典型的な戦争経済主義である。
それによって、アメリカ本体を含めた国会はボロボロに疲弊するが、産軍共同体だけはどんどん肥え太っていく。
戦争経済の問題は、利用した米国をはじめとした国家が、破綻するということだ。
戦争経済を推し進める主力であった米軍自体が、もはや予算削減のなかで闘うことが困難になっている。
そこで画策されたのが、日本軍(自衛隊)を米軍の配下として活用することと、大戦争によって米国の借金自体を帳消しにするくらいの秩序破壊、再構築である。
これまでのような、地域的な戦争ではなく、いわば世界大戦によって、米国の圧倒的な覇権を回復させようというのだ。
そのために、不足する現状の戦力と資金力を、自衛隊を動員することで補おうというのである。
これが、安倍晋三をして、集団的自衛権と戦争法案に突き進ませてきた、主な勢力だ。
安倍晋三が、虎の威を借りて中国韓国にに対して戦争を仕掛けたとしても、許容する。ないしは、これ幸いと戦線拡大させてしまえ、という絶望的な破壊力でこれまで進められてきた。
ファシズムをたきつけておいてから、叩きつぶすというマッチポンプを画策してきた。
もう一つの敵の勢力は、戦争は限定的にして、主に金融をとおして富を吸い上げる。
いわゆる、新自由主義とか、グローバル金融資本と呼ばれる勢力である。
地域的、限定的な戦争は金融資本をむりやり投下する先を確保することになるが、世界大戦は望まない。
また、無限定な戦争に突き進むファシズムのようなコントロールの効かない勢力は忌避する。
ちなみに、原発のような儲からないでコントロールできないものも、むしろ反対する。(コイズミが脱原発なのは、彼は新自由主義の直轄だからだ)
この血も涙もない合理的な強盗とも言うべき新自由主義は、カネを貸してバブルを作り、破綻させて富を吸い上げる、というビジネスモデルで攻め込んでくる。
貧しい国にも、独裁政権を利用して薄利多売ならぬ、薄利多奪をおこない、その結果が世界の飢餓につながっている。
もちろん、日本のような富がうなっている国は、彼らのメインディッシュである。
1980年代から日本に攻め込み、バブルを作って破裂させ、そこから本格的な日本収奪は構造化した。
日本だけは、いくら働いてもGDPは伸びず、収入は減り、ごく一部の超大企業を除いて、異常な貧困化スパイラルに陥っている。
これは、新自由主義が構造的に富を吸い上げ続けているからなのだ。
せっかくのメインディッシュを、無駄な戦争で疲弊させるのは、新自由主義にとっては得策ではない。
TPPも使って、富を吸い尽くすまで、ちょっと戦争で焼くのは待て、ということだ。
いま新自由主義が狙っているのは、かんぽマネー、ゆうちょマネー、GPIFの年金マネー、などの現生はもちろんだが、それにとどまらず、水道や空港や高速道路などの公営企業を虎視眈々と狙っている。
国の財産を運営する権利を手に入れて、「公共料金」と称して自動的に吸い上げる仕組みを作ろうとしている。
横文字で言うと、「コンセッション」と言うらしい。
竹中平蔵自身が以下のように説明している。
「コンセッション」は日本を変えるか?
ちなみに、新国立競技場の出直し自民党案はなんと、PFIだそうだ。
簡単に言うと、神宮の杜のあの敷地を民間にただで払い下げて、儲かるスタジアムを建てさせる、ということ。
なんだそういうことかい、と言いたくなる
この戦略にとっては、日本が焦土になるのは困るのである。
■■
しかも、70年かけてせっかく日本人を飼い慣らしてきたのに、安倍晋三があまりにも無茶苦茶するおかげて、徐々に目が覚める人が増えてきた。
安倍個人がターゲットになっているうちはいいけれど、見えない植民地支配の網の目を、見える日本人が増えてしまったら大変だ。
今のうちに安倍晋三を切り捨てて、ゆでガエルの日本人に戻してしまおう。
これが、潮目が変わったということの、冷静な分析なのではないかと、私は考えている。
戦争法案は参議院で早期に可決して、安倍はその責任を取る形で切られるだろう。
安倍は切られても、戦争法案は残る。残って、米軍補完の路線は静かに進められる。
大戦争の道は回避されたとしても、特に中東での局地戦争にかり出されるのは間違いない。
ファシズムや極右の熱狂的な戦争ではなく、米軍の配下として淡々と送り出されていく。
辺野古新基地問題で、沖縄県に対して9月9日まで休戦を申し出たと言うことは、これはオール沖縄の戦いの成果と言っていいと思うが、同時に9月9日までに戦争法案を参議院で可決すると言う意味でもある。
岩手県知事選で、現職参議院議員の自民系候補が出馬断念と言うことは、野党連合の成果ではあるけれども、参議院で戦争法案賛成票を減らさないという意味でもある。
参議院を放置して衆議院で再可決というストーリーではなく、参議院で成立させるつもりだ。
とにかく早いこと決着をつけておいて、安倍晋三を切って、新しい運動の成果とマスコミは持ち上げて、日本人はぬるま湯のゆでガエルにとっとと戻してしまうつもりだ。
そして、新自由主義の収奪が始まる。
この流れを、今すぐどうこうできる策はない。
残念ながら。
だが、こうした彼我の関係を冷静に見つめながら、10年後、20年後にむけて考え、発信する人間が少なからずいることを、私は信じたい。
潮目は、変わったことを喜ぶのではなく、冷静に「読む」べきものだ。
そのことを肝に銘じる。
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