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前回の自民党総裁選は2012年9月14日告示、26日投開票。この時は5人も立候補。安倍首相は当時右端に。自民党はこの時、野党だった(日刊スポーツ/アフロ)
安倍首相が内閣支持率挽回に打つ「秘策」 8月11日以降にやって来る「3つの試練」
http://toyokeizai.net/articles/-/79748
2015年08月07日 かんべえ(吉崎 達彦) :双日総合研究所副所長 東洋経済
「百里の道を行かんとするものは、九十九里をもってその半ばとすべし」。
柄にもなくこんな言葉が脳裏に浮かびましたな。ハワイ・マウイ島でのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)閣僚会議(7月28日〜8月1日)が、実質合意抜きに終了した時のことである。
■TPP実質合意ならず、オバマ大統領は激怒した?
交渉から戻った甘利明TPP担当相は、すぐに官邸を訪れて報告している。このところ逆風続きの安倍首相としては、「これが合意していれば、わが内閣の成果だと喧伝できたのに…」と内心悔やみつつも、甘利さんを頭ごなしに叱責したりはしなかっただろう。
それに引き換え、おそらくオバマ大統領はフロマン通商代表に雷を落としたのではないだろうか。オバマさんは滅多に声を荒げない紳士であるけれども、仮に筆者が大統領であれば、きっとこんな風にどやしつけている。
「お前が大丈夫だと言ったから、閣僚会議をハワイでやらせたんだぞ!」
「地元でこんな醜態をさらしてしまって、俺の面目は丸つぶれだ」
「国際会議を主催すると、カネもかかるんだぞ」
「このままでは合意ができたとしても、俺の任期中にTPP法案の議会批准が間に合わなくなるじゃないかあっ!」
思えば6月24日に米国議会でTPA(貿易促進権限)法案が通ったら、途端に交渉妥結への楽観ムードが流れ始めた。「日米が合意すれば、後は皆ついてきてくれる」とタカをくくったのであろう。日本もまったく同様だが、それまでの駆け引きでヘトヘトになって、日米以外の10カ国の事情をよく考えていなかったのではないか。
ところが他の交渉参加国にも意地があり、国内事情があった。カナダは秋に総選挙を抱えていて、マレーシアも政情が不安定。そしてFTA先進国たるニュージーランドには、「このままでは理想と程遠いものができてしまう」という焦りがあった。
そうでなくとも小国の側は、知的財産権や投資ルールなどでTPPによる不利益がどうしても多くなる。その分、市場アクセスなどのメリットがなければ、何をやっているのか分からなくなる。せめて乳製品の輸出拡大くらいないと、「最初にTPPを始めた国」であるニュージーランドとしては格好がつかないのである。
かくして最終局面になって、通商交渉の大ベテラン、ティム・グローサー貿易相が動いた。この世界の鉄則は、”Nothing is agreed until everything is agreed.”(すべてが合意しない限り、何も合意できない)。かくして乳製品の拡大がなければ、医薬品データの保護期間延長も認めないぞ!という反撃が飛び出したのである。
かくしてTPP交渉は仕切り直しとなった。日米の政権が、ともに政治的得点の機会を逃したことになる。終わってみれば、「負けに不思議の負けなし」といったところか。
■「内閣支持率40%割れ=1年以内に退陣」の嫌なデータ
問題はこれから先だ。安倍内閣にとっては、国会運営や外交日程で綱渡りの日々が続くことになる。新安保法制の不人気や新国立競技場建設をめぐる不手際などにより、安倍内閣の支持率は6月から7月にかけて大きく下落した。以下のデータはほとんど衝撃的だ。
○最近の内閣支持率データ
共同通信37.7%(7/17-18)←47.4%(6/20-21) ▲9.7p
時事通信40.1%(7/10-13)←45.8%(6/5-8) ▲5.7p
朝日新聞39%(7/11-12)←39%(6/20-21) ―
読売新聞43%(7/24-26)←49%(7/3-5) ▲6p
毎日新聞35%(7/17-18)←42%(7/4-5) ▲7p
日経新聞38%(7/24-26)←47%(6/26-28) ▲9p
NHK 41.0%(7/10-13)←48.0%(6/5-7) ▲7p
産経FNN39.3%(7/18-19)←46.1%(6/27-28) ▲6.8p
安倍内閣はこれまで2年半にわたって、一貫して4割以上の高い支持率を維持してきた。だからこそ政治の安定がもたらされてきたわけだが、ここへきて支持率と不支持率がクロス(逆転)している。「内閣支持率が4割を切ると、1年以内に退陣に追い込まれる」というのが過去の永田町パターンだ。
この常識を覆したのは、田中真紀子外相を更迭して支持率が急落し、翌年の日朝首脳会談で復活を遂げた2002年の小泉首相くらいである。
しかもこの後、安倍政権にとって「トリプルデメリット」とも言うべき3つのイベントが控えている。「エネルギー政策」「歴史認識」「景気の現状」という3連発だ。
■もしお盆の時期に支持率がさらに下がったら?
1. 九州電力の川内原発が再稼働(8月11日頃)
原子力規制庁の新規制基準における初めての再稼働となる。4年ぶりの起動であるから、トラブルが生じる可能性も否定できない。
2. 戦後70年の安倍談話(8月15日)
どんな内容になっても、「右」と「左」の両方に不満が残り、それ以外の人は関心がない。結果として内閣支持率にとってはほぼ確実にマイナスとなる。
3. 内閣府が4-6月期GDP成長率を発表(8月17日)
個人消費の不振や鉱工業生産の低調さから考えると、どうやら年率2%前後のマイナス成長が予想される。足元の7-9月期は改善しているようなのだが…。
お盆の時期に政権支持率が下がることは、議員にとって重要な意味を持つ。地元で「あいさつ回り」をする際に、世間の逆風が身に沁みるのである。
ある保守王国選出の自民党議員が言っていた。「地元の盆踊り大会で挨拶をさせてもらえなかった。それくらい雰囲気が悪くなっている」。「俺でさえこうなんだから、浮動層の多い都市部の選挙区は大変だぞ」。
もっとも、差し迫った危険を感じているといったほどでもなかった。世論調査の内閣支持率は軒並み低下しているが、自民党の支持率は意外と底堅い。逆に民主党など野党の数字は伸び悩んでいる。そして国政選挙はいちばん近くても来年の参院選だ。
逆に党内のムードは微妙である。9月の自民党総裁選では、未だに安倍首相への対抗馬が出てこない。このまま無投票当選になりそうだが、「こんなときに候補者も立てられない自民党はいかがなものか」との批判が、これから党の内外で湧き上がるのではないか。
○当面の政治外交日程
8月11日 九州電力・川内原発が再稼働
8月15日 戦後70年(*安倍談話はその1〜2日前に発表か?)
8月17日 内閣府が4-6月期GDP速報値を公表
8月下旬 安倍首相が中央アジアを歴訪?
9月3日 中国が抗日戦争勝利70周年記念式典
9月4日 安倍首相が訪中、日中首脳会談?
9月3-5日 東方経済フォーラム(ウラジオストック)*プーチン大統領出席
9月6日 岩手県知事選挙(達増知事vs.平野達男参議院議員)
9月8日 自民党総裁選公示?
9月14日 新安保法制で「60日ルール」が使用可能に
9月15日〜 国連総会、習近平国家主席が訪米
9月16-17 日米FOMC→利上げ?
9月20日 自民党総裁選投開票?
9月26日頃 安倍首相が訪米、国連総会で演説?
9月27日 通常国会会期末
9月30日 自民党役員人事の任期切れ
問題はこの後の政治日程だ。安倍首相は支持率挽回に向けて、おそらく外交カードを使ってくるだろう。
では具体的には、どんな手を打って来るだろうか。ひとつは訪中、日中首脳会談だ。訪米を控えた習近平国家主席としても、「とりあえず日中関係を良くしておく」ことは悪い相談ではないはず。国連総会での演説にも力が入るところだ。あるいは北朝鮮との拉致問題の進展、といったサプライズを仕掛けていることも考えられる。
■問題の自民党総裁選はいつになるのか?
そんな中で、自民党総裁選の日程をどうするかが悩ましい。総裁公選規程によれば、「任期切れ前の10日間で投票」「選挙期間は12日以上」となっている。9月30日が任期切れなので、普通に考えれば「8日(火)公示→20日(日)投開票」となる。
ただし、参院で新安保法制を通せなかった場合が問題で、9月14日以降にいわゆる「60日ルール」による衆院再可決が可能になる。まさか自民党総裁選の最中に、衆院再可決ができるだろうか。総裁選後に再可決を目指すとしたら、今度は外交日程も絡んでくるし、27日の会期末を睨んで瀬戸際の国会運営となってしまう。
もっとも8月に4週間もの審議時間をかけて、新安保法制に答えを出せないとしたら、それこそ「参院無用論」を加速することになってしまいそうだが…。
この問題をクリアするためには、衆院再可決を先に済ませた後で、「9月18日(金)公示→9月30日(水)投開票」という日程も考えられる。ただしこれでは、国会会期の最後10日分が無駄になるし、せっかくのシルバーウィーク(今年は19日から23日が5連休だ!)に、盛り上がらない自民党総裁選を戦うことになってしまう。
さてどうするのか。ひとつだけ間違いないのは、永田町は久々に、「政局の夏、緊張の夏」を迎える、ということである。
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